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025:ゴミ以下の仕事 其の1。

 4月1日の午前9時のログインした。

『レドがログインしました』

『ウルカがログインしました』

『アリサがログインしました』

『ヒリュウがログインしました』

『サクヤがログインしました』

 ▽変更・追加

 ・Lvが正常化されました

 ・ジョブ・クラスが追加されました

 ・スキルが追加されました

 ・アーツ・スペルが追加されました

 ・エネミーが追加、一部調整されました

 ・ダンジョンが一部調整されました

 ・緊急ミッションが一部調整されました

 ・ギルド【C】が正式化されました

 ・朱雀キャンプが正式化されました

 ・冒険者育成学府『ガーディアン』が調整されました

 ・イーニャが調整されました

 ・『狂都』が追加されました

 ・生産者イベントが追加されました

 ・三月の報酬が支払われます

 ・システム一部開放されました

『ワンオフ・フリーライフ・オンライン』を今後ともよろしくお願いします。

 ▽

「これまた随分と」


 ログインしてから四月のものを見た。リアルでは1倍でも、ゲームでは4倍の為にゲームの方が何かと好いのだ。

 追加・変更・調整のオンパレード、しかもシステムの一部まで解放されている。

 非常にリアルのこのゲームは、高性能なAIが標準的に生活するために、このAIを一般的に言えばNPCだが、PCプレイヤーとの差は基本的にそれほどない、PCが復活する不死性と、極めて高い成長性、各種システムの恩恵を受ける存在という事だ。

 NPCの所謂の所の一般人に相当し、PCは荒事等を行う冒険者という存在だ。

 従者はこのどちらにも当てはまり、NPCでもないが、PCでもない、PCを補佐する存在だ。生産スキルこそ取れないがNPCより高い成長性を持つ。

 サモン型の従者は不死性を持つ代わりに成長性が低く、テイム型の従者は不死性を持たない代わりに成長性が高い、基本的にサモン型の従者が多く、テイム型の従者は少数派と言われている。

 4月分の様々な変更により、今までのこのゲームとは全くの別物となった様なものだ。

 正真正銘のリニューアルだ。


「憎いねえ。あの開発者も」


 女性アバターのままにし、ブラウスに狩衣にパンツとった格好だ。


「ルリ居るか?」


 名前を呼ぶとルリが背中を突く、衛生好きで賢い鳥だ。種族は朱雀だが基本的にレドのお目付け役でもあり、ウルカとは様々なものを超えた盟友で、ティアが可愛がる鳥でもあり、ユキカゼが仲間と思っている鳥だ。


「忙しくなるからティアの所に行ってくれ、あの子の事だから困った事にもなっているしな」

「・・・(コクリ)」


【従者召喚:リャナ】

 癖のない透いた金糸の様な金髪ストレートヘアーの、ドレスを着込んだ女性が現れる、レドのサモン型の従者でもあるが、とある世界での戦死した副官であり、保護者として常にレドを支え様々な事を教育した姉のような存在だ。

 腰にはレイピアの体験し、片方には片手用の杖を携帯している。


「ああ。リャナ、マスターは辞めてくれ」

「ではどのように?」

「後で話す、昔馴染みが神采配をしてくれた。部屋に行って準備してくれ」

「あの子が居りませんが?」

「今呼び出す」


【従者召喚:ピュシー】

 燃える様な赤毛をきっちり七三にした、虫の様な翅を生やし、155cm程度の身長の少女のような女性のサモン型の従者、リャナの養女的なものでもあり、ティアの大親友、明るい性格でもあり、最近はリャナより剣も教わりメキメキと腕を上げている。


「ピュシー、マスターは禁止だ」

「ええ!?じゃ、じゃあどう呼ぶのよ!?ちょっとマジで困るって」

「運営からの贈り物がある、きっと気に入ってくれるさ」

「システムから?」

「ああ」

「彼奴って頭が固いのよ。それはもう酷いんだから、真四角って感じの奴よ?」

「そいつを作った開発者からの命令が追加されたらしい」

「おお!」

「開発者の方もこいつの頭の固さには頭を悩ませていたらしい」

「・・・」

「開発者にとってみても命令が好きな奴じゃない、しかしどうしても必要と判断したらしい、一つの命令を加えたら割とマシになったらしいが、その結果この世界は様変わりしてしまった」

「まあ」

「・・・とんでもない事をするわね」

「部屋に行ってから準備をしてくれ、冒険はしない予定だ」

「了解~」

「では」


 二人が出る。

 レドとしても開発者から送られたメールを一読し、苦笑した。

 開発者にとってみても、システムの頭の固さには程々困っていたらしいが、かといって突破口もないためにどうしたものかと行き詰っていた、それをウルカの提案により追加された一つの命令に、このシステムは酷く悩まされたらしい。

 その命令を簡単に言えばこうだ。


『わがままをしろ』


 単純のこの一つのみを追加し、その結果、開発者のオーダーを散々拒んでいた様々な調整を受け入れた。

 開発者としてもこの結果もあり、ウルカには非常に感謝しているそうだ。

 天才ではこんなことはまず考えない、AIにわがままをしろなんて命令を加える奴なんていないからだ。

 これにより自らが完璧ではない事を学習したシステムは、より完璧を求め変化を受け入れる結果となった。自らが不完全であることを認めたのだ。

 それが良い結果に繋がったのだから誰にとってみても歓迎すべきだ。

 ただこのシステムはとある個体に着目したらしい、それがティアだ。

 よくわからない事でもあるが、ティアを非常に評価しているらしく、ユニークとすら表示したらしい。それがどんな結果に繋がるのは分からない。

 開発者の方もこの事を受けティアという個体に着目したらしく、保護者であるレドに色々な質問状を送り付けた、一つの回答が採用されれば相応に報酬まで約束して。

 このゲームは1年契約の一括支払いだ。学生には到底払えないような金額でもあるのだがガチャも課金アイテムもない、ゲームというものを一年間行うという契約の元行われる。

 荒稼ぎはしないが、金はしっかりと払えという方針なのだ。

 やり過ぎなPCへのアカウント停止や、システム的なキャンセル、時にはデータの初期化も行われている、それらの仕事を引き受けるシステムはこのゲームに欠かせない存在でもあり、それ故に真四角に作られた、ただ今度は創造主たる開発者の微細な調整も受けつけなくなってしまう。その結果開発者は困り果てていた。

 柔軟性を得る、これはなかなか難しい。そもそもどこまでというものがない、あまりにもアバウトなのだ。あいまいな内容でもあり、それをいちいち人の物差しで決めていたらとてもゲーム等の出来ない、ウルカの様なプレイヤーも、レドの様なプレイヤーも、アリサの様なプレイヤーも、ヒリュウの様なプレイヤーも、サクヤの様なプレイヤーも、サーフの様なプレイヤーも居る、それはプレイヤーという個体が有する個性だ。

 妥協でもあり、それを有する為には社会が必要だ。集団に属さなければ妥協などは必要ないからだ。そもそもシステムという存在は、開発者によって作られた存在ながらも、実質的なこのゲームの開発者でもあり、所謂の所の運営でもある。

 開発者が大まかな事を決め、システムの調整などを行い、このシステムがそれに沿ってこのゲームを運営する方式を取っている。

 とするのなら開発者とシステムさえあればよいのだが、そんな世界はないし、そんな社会も存在しない、その結果このシステムはある程度の試作的な事も行っていたらしく、数多くの個性的な存在や、リャナのような存在もあり、それらに必要なデータを過去から得ようとしていたらしく、様々な検証に、ウルカの発案のあいまいで困難な事を開発者が組み込み、これらからシステムも完璧ではない完璧という一つの道標を得る。

 それらの中でティアという存在は、このシステムにとってみれば学習すべき存在に近い物が有ったらしい、しかしシステムの中の絶対な事の一つである複製は不可能、これゆえにシステムはこのティアという個体に着目し、ひとまず観察することにしたらしい。


「娘に言い寄ろうとする厄介なシステムか、困ったな」


 要するにこのシステムはティアに興味が湧いた。それが何の結果につながるかはわからない、開発者という男の事もあり、悪さをするとは思えないが、かと言って安心とも言い切れない、この世界の創造主その物に興味を持たれたのだから。

 当然の様な事でもある事に、そのティアの周囲にも着目するのは時間の問題だ。

 PC、従者、ティアは特殊NPCだ。普通のNPCとは少々違うらしい。

 開発者にとってみても、これは大きな発展でもあるが、困った事にレドの娘だった。

 取り上げてから適当に使うと、後でどんな目に遭うかはわからない事はよく知っている。

 開発者の戦闘能力はそんなに高くない、加えるのなら長年の運動不足もあり、レドのような毎日トレーニングをするタイプでもない、いくら友情が有っても相手が激怒する事を行えば下手したら殺されることぐらいは誰にでもわかる。それが長年の友人で有り開発者の戦闘能力など鼻で笑って受け止めてしまう存在たと非常に困る。

 正しく痛し痒し。

 システムの開発の為にはティアがいる、ティアの保護者はレドで、そのレドとは馴染み深いのが開発者と言え男、この男の作った創造物がシステムだが、レドは基本的に仲間とは争わない掟がある、しかしこの男にはないが、レドが大切なモノを奪われて渋々諦める様な性格ではない事を非常によく知っている。

 これらからシステムの発展か、それとも自分の身の安全かを、天秤に掛けなくてはならなくなる。最悪な選択肢を選べば、下手したらサーフまで敵に回ってしまう、そうなったらどんな強固なシェルターに逃げても無駄だ。この建物その物を破壊した後に引きずり出し、運動不足の男の首を笑って刎ねる。それ位剣呑な老紳士なのだ。

 加えてレドはこう見えて非常に味方が多い、色々な所がレドが頭を下げれば手を貸す事になり、そうなったら最後、この男の人生は破滅だ。

 あまり幸せな最後とは言えない最後をたどる事になる。

 発展か、それとも安全か、究極の二択を迫られてしまった。

 それも自分の作った物によって、非常に皮肉的な事だ。

 だから質問状でひとまず妥協した。

 だから備考を作り、素直に一言書き記していた。


『殺さない?YES/―』


 男がどれほど事態の深刻さを理解しているかだ。

 だからレドはこう書いた


『みんな幸せっていいね』


 開発者の男からすればガクブルだ。

 心臓発作を起こし死んでいたも誰も解らないからだ。

 そう言う筋の知り合いも非常に豊富だから、この男の心臓に非常に悪い結果となる。

 男は非常に頭は良いが、いつも間にこの世とさよならしていても全く不思議に思わないことぐらいは解っているのだ。

 要約すれば手を出したら殺す。


「みているだろ。分かるだろ自分で実験体に志願した位は」


 人はそれをモルモットという。


「何かあれば指をミンチにするぞ」


 それをされたら一生開発などできなくなる。


『開発者がログインしました』


「よう」

「おう」

「ひとまず誓う、絶対に手は出さない、私だって開発はしたい」

「その気持ちはよくわかるが、誓うのに開発がしたいのか」

「最高優先順位度はティアにする、何が何でも絶対に手は出さない、彼奴にも絶対に手は出させない、これはだけは言える、彼奴は必ず守る」

「ふむ。まあ俺が尋ねに行ったときは最低でも棺桶は用意しておけ、後鎮痛剤は大量に撃てよ、痛いから」

「なんで私がこんな目に」


『開発者がログアウトしました』


 ちなみにレドは笑顔だった。

 キレ掛けると笑ってしまうタイプなのだ。

 知る者が見たらすぐに逃げ出した方が利口なぐらいだ。

 逃げ出さない剛の者もいたが、一人を除いて今は深く後悔している。

 その一人がサーフなのだが、このサーフも笑った時のレドにはまず近付かない。

 加えてレドはとても大好きなものが混ぜ物だ。

 その混ぜ物が注入されたら推して知るべし。


 □


「お母さん」

「今日はそんな日か」


 呼ばれてから振り向く、二人は不思議そうな顔でレドの笑顔を見ていた。


「お母さん?」

「色々と有るのだ。久し振りにこんな顔になったよ」

「・・・ティア、ひとまず出ておきなさい」

「お姉ちゃん?」

「いいから、後、私が出るまでは絶対のこの中には入れてはいけませんよ」

「・・・」


 ティアは動揺していた。こんな丁寧な口調な姉の本来の口調ではない、母親の笑顔は別によく見るが、感情の無い瞳と声が並行していることはまずない。

 幼い性格のティアでもわかる、異常だ。

 どうしたらよいか困る、外に出るべきか、この部屋に留まるべきか、とても重要なことぐらいティアでもわかった。

 だからティアは必死に考えた。今までの考えなど振り払うように必死に考えた。


「い、嫌、嫌、嫌」


 駄々を捏ねる事にした。

 レドが溜息を吐いてから感情の無い笑顔を辞める。

 いつもの顔に戻ったわけではないが、少なくても感情は籠った。

 それは困った様な顔だ。


「仕方ないか」

「話してもらえるのか?」

「まあ仕方がない、ティアだって気付くさ」

「・・・異常に笑い方だった。まるで笑顔の作り物の様な笑みだ」

「姉の方がいきなり丁寧な口調にもなった、いくらティアでも分かり易いだろ」

「失敗だった、よくない事なのか?」

「悪い虫がつく、それも質の悪い物だ」

「え?男?」

「性別などない」

「「!?」」

「とあるものがとある娘に興味を覚えたらしい、それがティアだ」

「えーとそういう方とのお話は遠慮したいなぁってのはダメ?」

「まあ開発者の奴が何とかはするだろう。しなかったらログアウトしてから行くしかなくなるからな」

「父さん、それは何だ?」

「厄介なものだ。とても厄介な物、それはシステムだ」

「システムとは、確か」

「この世界を作った存在って聞くけど?」

「そうだ開発者によってつくられたシステムが、この世界をすべて作った」

「なんでそんなものが妹に興味を持つ?」

「開発者がシステムに一つの命令を組み込んだ、わがままをしろと」

「わがまま?ティアの様にか?」

「ティアはわがままじゃないもん」

「今は置いて、それで?」

「その結果、とある娘、ティアを非常に評価したらしい、ユニークと」

「・・・」

「ユニーク?えーとティアは個性的なの?」


 親としても、姉としても非常に困るティアの反応、嬉しそうな声を出したからだ。

 分かっていない妹に、姉は深々と溜息を吐く、親としてはどうしたものか困った。


「まあそんな訳で、システムがティアに興味を持ってしまった」

「システムさんっていい人かも」


 また親と姉は深々と溜息を吐く、ティアは解っていないらしく困惑していた。


「この世界の事を自由にできる存在がシステムだ。この世界の全てをな」

「じゃあ、じゃあ専用ジョブが欲しい」

「今は観察するらしい、開発者が絶対に手は出すなって釘を刺したからな」

「むぅ。専用ジョブ」

「世界に興味を持たれたのに専用ジョブ?ティア後で説教だ。後お八つ抜き」

「!?」


 食い意地の張ったティアにとってお八つ抜きは非常に重い罰だ。

 ティアは涙を流し涙声で非難した。


「酷いよお姉ちゃん、重すぎるよ。酷いよ、ティアは悪い事はしていないよ、悪い事はしていないもん、していないもん」

「ふむ。なら説教は良いのか?」

「!?」


 幼い性格のティアも分かった。

 姉はお八つか、それとも大人しく説教を受けるのかの二択を突き付けた。

 葛藤するティア、ちなみに姉の説教は長い。

 いつもなら適当に逃げたが、お八つを抜かれるのだけは嫌だ。

 しかし退屈な説教の時間も嫌だ。


「今日は確かケーキの店の日か」

「!?」


 家族の思い出のある激レアのケーキショップ、ティアの大好物なケーキが二つも日替わりで食べられる最高峰のお八つだ。

 ティアは苦渋の決断か、それとも親に泣きつくかの二択を考えた。


「お母さん!」


 親に泣きつくことを選んだ。


「これは家庭内暴力だよ善くない事だよ」


 しかも知恵もつけたらしい、レドからすればこれは躾なので迷う必要はないのだが、かといっても想い出のあるケーキの日にはさすがに重い、しかしティアの軽量級の頭を改善させなければならない。


「なら間を取ろう」

「ケーキを食べて説教無し」

「・・・どうしてお前はそう」

「ケーキは二つあるので一つ、説教の時間も半分だ」

「!?」

「確かに間は取られている」

「・・・酷いよぅ」

「ならケーキもなし、説教もなし」

「・・・ケーキ一つで」

「じゃあ好きな物からか、嫌いな物からか」

「・・・お母さん重いよう」

「嫌いな物から選べばケーキの時間は至福だぞ?」

「・・・説教から」

「では私の部屋に行こう。父さんでは」

「ああ。ティア、しっかりと反省すれば幸運が舞い込むから安心しなさい」

「・・はい」

「ピローテスもあまり重過ぎる罰はどうかと思うぞ」

「ああ。勉強になった。行くぞティア」


 がっくりとうなだれるティア、ピローテスは何故か嬉しそうだった。

 親としても娘たちの成長は嬉しいが、頭の痛い問題が山済みなのが困る。


(相談するしかないか)


 頼れる元副官のリャナに相談することにした。


 □


 台所に集まっていた面々に挨拶した。

 いつもの席に着き。


「今はちょっと絞られている」


 これで通じたらしく、ピュシーが盛大な溜息を吐く、リャナはニコニコと笑いながら紅茶を飲む。


「また何かしたの」

「いや何もしていない、ティアは落ち度はない」

「なぜ?」

「ティアの問題のあるのは頭の方だ」

「ああ。あの頭の中身は食い物ばかりの」


 ピュシーの的確な事に、レドは盛大な溜息を吐いて頷く。


「頭の良くなる薬は有るのだが、一時的というか」

「性能というより頭の作り?」

「もう少し考えて言うものを持ってほしい」

「大変ね」

「まあ厄介なことも判明したしな。その前に好い話しよう。これだ」

「まずは厄介な話からお願いします」

「・・・とても厄介な事だ。システムがティアに興味を持った」

「うっそ!?」

「困りました。あの石頭が」

「困った事にな」

「な、なんであの真四角石頭が?」

「ピュシー、先程と話していましたよ?」

「え、えーとえへへ」

「ピュシーももう少し勉強した方が良いのでしょうか、大切な事を忘れるのはかなり問題ですよ」

「は、はい」

「それでどうするのです?」

「開発者にも色々とやってもらっている、あの開発が大好きの奴だ。指をミンチにされるのは嫌らしい」

「・・・ミンチ?」

「ひき肉です」

「うえグロ」

「棺桶の方も購入したはずだから、鎮痛剤の方も購入しているだろう」

「なるほど、確かにその方を動かせばとなりますが、困った事に世界を様変わりさせてしまうシステムですよ」

「対策の立てようがないが、時間はあるシステムは当座は主の命を守り、観察する事に止めるらしい」

「観察が終わり、次の段階に入ってしまえば困った事になります」

「で、何の命令を?」

「非常に問題だが、わがままをしろ、だ」


 二人は固まる、システムを直に知る二人としては、あんなものがわがままを言ったら困るなんてものではない、そもそも石頭で、真四角の奴がわがままを言える様な知恵はない。

 しかし現にティアに興味を持って動ている。

 この知恵を持ったことになる。

 ピュシーがもしリアルに移動出来たら、その開発者をボコボコにした後素直な直さなければどうしたものかと考えた。

 リャナとしても、とても困った事だ。システムを断てばこの世界は止まる。


「なんてことを」

「その開発者は男?」


 ピュシーの言葉に、レドは頷いた。


「玉を潰してやる」


 大切な友人に危険物を近づけさせたその男、この玉を潰す事をピュシーは決意した。

 ただそんな状態のティアに、危険を感知する機能はない。

 頭の中で考える事は直ぐに分かる、食い物天国、ケーキショップの腹一杯ケーキを食べる事を人生最大の夢と語るバカだ。

 この親からどうすればあんな娘が、そう思わずにはいられない。

 性格の方は非常に良いが、錬金術の勉強も遥かに出来る、調合の腕前も上がり始め、この親からと思うほどに才能が有るが、食い物に釣られて石頭のシステムに捕まってもピュシーは全く不思議には思わない、むしろ納得する。

 しかし性格の方は良いのだが、とても良いのだが、ちょろいのだ。

 用心深さや狡猾さ、警戒心や下心、そんなモノが一切ない無防備な奴なのだ。

 だから周囲の姉や、ピュシーや、ユキカゼや、ルリと言った面々で守っている。

 少なくてもレド一家最強のリャナが、即死を使えば単なるバカなど容易く死ぬ。

 そもそもこの町で、レドの娘に手を出すバカは居ない。

 親に知られたら単に殺される程度ならまだマシだ。

 レドは蘇生薬の開発者だ。

 生き返った後に何度も殺されるような事を、想像すればどんな者も尻込みする。

 それでもまだ初級のようなお灸だ。

 下手したら生きたまま未知の薬品の実験体行きだ。生き地獄なんてものじゃない。

 腕の良い錬金術師のレドの為に色々な所にも顔が利き、あのギルドすらも動かす。

 権力者というより実力者なのだ。

 ピローテスという姉も居る、とても頼りになる女性であり生産スキルを除けばすべてを備えた女性だ。頭もよく、腕も立ち、凛々しく、スタイルも抜群だ。

 錬金術師の一家というには非常に戦闘能力に富んだ面々なのだ。

 しかし、さすがにシステムは厳しい。

 親のレドが色々と動くので安心ではあるが、時間稼ぎにしかならない。

 どうしたものかとピュシーは考える。

 肝心のティアには危機管理というとても大切なモノがない。


「リャナ、何かない」


 養母に泣きついた。

 リャナも考えていたようで、思案の顔からいつものニコニコとした微笑みに戻る。


「可能かどうかはわかりませんが、今のティアなら可能でしょう」

「ティアは助かるの?本当?大丈夫なの?」

「落ち着いて、ティアに害しようとするようなタイプではありません。あの石頭の性格からしても、慎重に慎重を期しなお慎重に期す、石橋を最高強度に立て替えてから渡るタイプですし」

「あ~確かに」

「そんな石頭にティアは警戒しませんし、運が良ければお友達ですよ」

「・・・」


(あの真四角が、ティアの友達)


「ひぃぃぃぃぃぃぃ」


 考えるだけでゾッとした。

 あんなのがティアの傍にいると、なし崩し的にピュシーの傍にもいる事になる。

 下手したら毎日会うことにもなるのだ。あのティアの性格からしてもお友達と言って一緒に生活しようとする可能性が非常に高い。


「いゃぁぁゃゃゃ」


 泣き崩れるピュシー。見ていたレドはよほど嫌いなのだと察した。

 リャナとしてもそんな養女のピュシーの頭に沿ってと手を置く。

 そんなピュシーはしくしくと泣く。


「まあそんな話だ。次の良い話だ」

「好い話?あのティアならやりかねないわ。あの石頭が傍にいる確率がどれほど高い事になるのか、嫌、嫌よ」


 泣きじゃくるピュシー、レドとしても危険のある観察者か、友好な友人かと言われれば、どう考えても友人の方が良い訳で、ピュシーにはかなり嫌がられるが、仕方がないと判断していた。敵が増えるよりは味方が増えたほうが良いからだ。


「うーんまあ良い話というのは従者をNPC化するものだ。あのシステムが考案したらしい」

「・・うそ」

「理由はわからないが、その結果望めばNPCとなれる。そのチケットも配られている」

「・・・なる、NPCになる」

「私も望みます、この子と暮らせますし」

「・・お母さん」

「はいなんです」


 ピュシーとしては気恥ずかしいらしく顔を真っ赤にして伏せる。

 そんな養女を愛おしそうに見つめるリャナ。

 ▽変更

 NPC化:リャナ、ピュシー、ピローテス、ユキカゼ、ルリ

 ▽

「うーん。特に変化なしって感じ」

「生産スキルを取得してみましょう」

「生産かぁ。面倒なのよね」

「面倒臭がらない」

「はーい」


 二人が生産スキルを取得した。

 もう従者ではない為にマスターとは呼ばない、リャナは姉で、ピュシーは従妹だ。


「姉と従妹か」

「あら、やっとのことレドと呼べます」

「ああ。もしかして制約でもあったのか」

「石頭によって主は必ずって、凄く嫌な奴よ、というかどう呼べばいいのよ」

「従兄殿とか、もしくはレドだな」

「従兄?え、じゃあティアは?」

「従兄の娘だ。ピローテスもな」

「是非!」

「家族が増えましたねレド」

「懐かしいだろ?」

「懐かしく感じます。姫様がいれば、お生きておられれば」

「何処かにいると好いな、何処かでばったりと会うと面白い、俺に気付くかな」

「随分と成長しましたし、意外に気づかないかもしれません」

「いうだろうな。デカいのどけ」

「いうでしょうね。大きい人が好きではありませんでしたから」


 懐かしむ二人の気持ちはピュシーにはわからない、しかしこれからは時を共にし、いつか二人の様に思い出を語り合う関係となるのは喜ばしく、嫌な石頭からの命令に従う必要もない、やっとのことえられた自由なのだから。

 そこにしょんぼりしたティアと上機嫌のピローテスが現れる、足元にはユキカゼ、後ろにはルリがいる。


「じゃあめでたいしケーキショップに行くか」


 ティアの顔が凄まじい勢いで上がりパッと明るくなる、友人のこんな所がお子様というべきなのか、それとも歳相応というべきなのか、いつか姉妹の様になれればと思う。


「ケーキ!」

「ピローテスの説教はしっかりと聞いたか?」

「うん」

「ならケーキを二つ俺からプレゼントしよう」

「やったぁ!」

「父さん、甘すぎだ」

「大きくなってほしいという親心さ」

「そうか、色々とティア小さいからな」


 スタイル別、巨:レド、ピローテス 大:リャナ 中:ピュシー 小:ティア。

 ティアは周囲を見る、主に胸などを、その後に自分のささやかな胸を見る。

 哀しくなった。

 しくしくと泣きだすティアに、ピローテスが頭を撫でる。

 そんな姉に涙声で尋ねた。


「お姉ちゃん、どうすれば大きくなるの?」

「・・・デカいのも困りものだぞ?そもそも邪魔だ」

「・・・酷いよぅ、お姉ちゃんもお母さんも大きいのにぃ」


 並のサイズのピュシーにも気持ちはよくわかる、大きなりたいのだが、なってくれないのが小さい物の悩みだ。

 母親リャナの方は困った顔だ。どうも大きい事に不満があるらしい。

 レドは基本的に男性なので、特に気にせず。

 ユキカゼは狼なのでわからず、ルリの方も鳥なのでわからず。


「おいポーション」

「どしたウルカ、今日ぐらい名前で呼んでくれないか」

「・・・記念日だしな。特別だぞ?」

「ああ」

「天翔武久」

「天川昴」

「なんか馴染めん」

「そうか、これは新鮮だと思うが、まあリアルネームはリアル専用だ」

「うむ。ではレド」

「おうウルカ」

「トラブルだ」

「アリサか?」


 ウルカが頷く、レドも合点が行く、アリサはリアルでは酷い悪女で、男をゴミのように扱うタイプの女性だ。しかしこの世界の従者の二人は特別らしく家族と呼んでもよく、大切に接し、大切にしている二人だ。愛情深き女性なので二人から離れると酷く辛い事は分かる。例えなんであれアリサにとってみればやっと得られた物なのだ。

 そんなアリサはリアルでは女子高生で、男運の方も酷く、新記録が3日らしく、この新記録を記録した男は、強盗した物を首の後ろに飾る悪趣味な異常者だ。

 色々とみてきたレドだけに、アリサのやっていることは色々と確かに問題は有るが、言い寄る男が全てそんな奴らの為に、すっかり男性不信なのだ。

 そんなリアルと、家族のいるこの世界の不等式がどんなものか、考えなくても分かる。

 予想しうることではあったし、危惧していた事の一つだ。

 アリサの言い分も分かるし、十分同情に値し、不幸な女性を見てきたレドだけに、そんな女性がたどる道も直ぐに想像が及ぶ。

 下手したら自殺するからだ。

 絶望しかないリアル、希望に溢れたこの世界。相反するも、リアルに生きるしかない為にどうしようもない枷なのだ。

 しかもアリサは寮暮らしで、周りはお嬢様だらけ、上手くやっていけるはずもなく、ゲームが出来ない日は塞ぎ込んでいるらしく、しかも両親の方も十分問題で、娘を放置し、それを放任教育という、家庭を顧みないタイプの両親で、しかもゲームが好きではない、学生は勉強だけをしていればいいと考える人達だ。

 そんなアリサから二人が離れたら、酷い事になる。

 アリサの世話好きは裏を返せば尽くす事で得られる安心感なのだ。

 従者の二人を我が子のように愛する女性だ。

 リアルの悪女は、ゲームでは慈母のような女性だ。

 どちらが本来の性格なのかと言えば、自由なこの世界の方で、本来の姿を見ればわかるが本当の性格は非常に明るく優しく、お喋り好きで心配性で、人を助ける事を好む女性なのだ。だが男運は最低、酷い奴らばかり。

 ウルカの方の問題も少しだけ片付き、今度は危惧していたアリサだ。


(・・・不味った)


 リアルでは4月1日、学校の初日まで時間はそうはない。


「リャナ、ピローテスはケーキショップへの引率だ」

「レド」

「・・ダメだ」

「何故です?」

「アリサはお前に憧れている、リャナのようでありたいと願っている、理想の女性像なのだ」

「では話だけでも」

「ダメだ。今のアリサの姿を見せるわけにはいかない、彼奴にも本来の性格が出せるのならよかったのだがな、不幸な事が多い」

「・・・少しだけ聞かせてもらえませんか」

「ピローテス皆を連れていけ、リャナに少し話す、ウルカはここで待機だ。ユキカゼ、ルリも聞くなよ、もし耳にしたら忘れろ」


 こういう時のレドは非常にシビアだ。誰も何も言わずに従い、ピローテスが連れて出ていく。


「ウルカ索敵範囲などは」

「・・・いうのもなんだが、厳し過ぎないか」

「ウルカ」

「誰も立ち聞きはしていない」

「ならよいが、下手に知られたらアリサは自殺するぞ」

「・・・大丈夫だ」

「リャナ、かなりショックな話だ」

「・・・聞きます」

「アリサは学生だ。女子高という女性だけの学校の生徒だ」

「はい」

「ご両親は娘を捨てる様に学校に放り込んだ」

「・・・」

「ご両親にとってアリサは邪魔なのだ」

「・・・」

「そんなアリサは男運は酷い、言い寄る男全てアリサの体目当てだ。今ではすっかり男性不信だ。アリサに愛情を注いだものは皆無だ」

「・・・」

「友人もいないのだ。学校に入ったばかりなのでな」

「・・・」

「そんなアリサが得た二人がいる、やっとのこと愛情を返してくれる我が子のような二人がいる、やっとのことえられた家庭がある。それがファルスと、フォルゼンだ」

「・・・」

「絶望しかない世界、希望にあふれた世界があ、二つの内、絶望しかない世界で生きるさ定めなのだ。アリサにとってみればやっとのことで得られた我が家なのだ。やっとのことで15年生きてきてやって、初めて家が手に入った。家庭もある、仲間もいる、お前も居る、理想の女性象のリャナがいる。そんなアリサにこう言うのかリアルで頑張りましょうと、貴方なら大丈夫と、強い人ですからと、人はそんなに強くない、むしろ弱い」

「・・・」

「そんなアリサの姿を見てしまったら気を使う、理想の女性に気を使われたアリサが取る行動は、下手しなくても自殺だ」

「・・・」

「違う環境がある、人は暖かい方が好きだ。極寒の地獄のような閉ざされた世界なんかに喜ぶ者などいない、暖かい温もりの希望すらない、そんな世界に生きるしかないのだ」

「・・・」

「そんなアリサにとあるチケットが届いた。全てを絶望に叩き落とすな、我が子のような二人へのNPC化チケットだ。我が子の為には使いたい、しかし使えば離れるかもしれない、やっとえられた家庭が壊れる、それを周りは既に使っていた、知った二人は言うだろう、チケットを使いたいと」

「アリサ」

「絶対に近寄るなよ。今のアリサへの唯一の救いは、お前が傍にいない事だ」

「詳しいな刑事」

「色々とみてきたからな、ウルカ、リャナを見張っていてくれ、リャナがもし扉に近付いたら絶対に停めろ、物理的にもな」

「・・・お前は酷い奴だな」

「甘えたことを言うな、人の命がかかっているんだぞ」

「ならリャナは」

「お前なら止められる、リャナと同じような戦法の使い手だからな」

「鬼か、道はないのか?」

「それをシステムが絶ったのさ。言うのもなんだが相当な屑だ」


 リャナが剣を抜く、こうなると予想していたレドは扉に向かう。ウルカは迷ったが、仕方なしと忍者刀を抜く


「退いてくださいウルカ」

「・・・・退けは行くのだろ」

「はい」

「ゆけばアリサはログアウトし、リアルでは間に合わないから自殺する」

「行かねば一生後悔します。もう悔いるのは嫌なのです」

「・・・我が道は忍道、忍びに忍びものなり、すまんなリャナ、行かせるわけにはいかない」

「我が道は騎士の道、姫と弟と歩む道なり、押しとおる」


 ウルカからすれば酷い話だ。

 負けてリャナがアリサの元に行ってもゲームオーバー、リャナを殺してもゲームオーバー、勝つためには手加減しなくてはならず、相手は本職の騎士だ。それもレドに達するほどの騎士だ。手加減が出来る相手ではない、そもそもウルカは真正面きっての戦いに向かない、忍者であっても騎士ではない、忍者であっても剣士ではない、その二つを持つリャナが圧倒的に有利で、ウルカが出来る事はただひたすら防戦し粘る事だけだ。


(忍びに神等はいないが、せめてアリサへの時間を稼がねば、奇跡というものを信じるしかないのもつらいものだ)


 □


 アリサの部屋の前につく、誰も居ない事を確認し、ノックした。


「おーい。ケーキ屋に行くぞ」


 ドアのカギを開ける、こういう場合の為に複製していた物だ。

 ドアが開く、中の部屋にはベッドの上で丸くなっているアリサ、フォルゼンとフォルストが困った顔で近くにいる。


「言わんこっちゃない、おい悪女、生きているな」

「もういい」

「バカな奴だなお前は、本来の性格で接して居れば万事解決だったのに」

「・・・」

「家族への接し方、それを知らないのだろ」

「・・ええ」

「まあ学校でも変えるか?ウルカとか、ヒリュウとかの学校に手配できるぞ、いつも世話になっているからな、特にティアはお前の弟子だしな、ユキカゼにとってみれば悪夢だが」

「もういいの、もういい」

「裏切られるのは辛いか、裏切るより辛いか」

「・・・」

「どちらも辛い物だ。分からないお前ではないだろう」

「・・・」

「何故家族を信じられん?捨てた親御さんの事か、お前さんが死ねばいいと思い、お前さんを捨てた両親の事か、一度でも両親を愛したか、一度でも繋がったと思う記憶はなかったのか、サクヤへの心配はお前の本心だろ、家族が居たのだろ、祖父や祖母が」

「疲れた」

「好きな学校で好きな友人と過ごし、この世界で家族と再会する時間を得る選択肢もあるぞ」

「・・・」

「何事も急ぐな、伝えねば伝わらぬ、伝わらねばわからぬ、分からなければ伝わらぬ、そういうものを知っているだろ、お前さんの故郷にある言葉だろ」

「・・・」

「家族を増やそうと何故せん」

「あたしはそんなに強くはない」

「束縛する事がお前の家族に対する偽りの対応ではないのか、縛れば安心だしな」

「・・・」

「醜い事がそんなに嫌か、あの醜い世界がそんなに嫌か、あの世界があるから繋がっている物が有るだろ、この世界に来るためにはあの世界がどうしてもいるのだ」

「・・・」

「何故最後まで信じん、お前の愛情は偽りか、お前の偽らない目はリャナと同じではないのか、お前の目指すものではなかったのか、いつか孫が出来たらどうするのだ、増える事への喜びを知るまでの時間が有ってもよいではないか、暫くの時間を楽しむのも好い物だぞ。」

「一人は嫌!」

「だから選べ、友人と一緒の学校に通うか、くだらない親の見栄の為に道具となって今の学校に通うか、安心しろどちらも礼はするさ。お前なりに悩む時間も居るのだからな」

「助けてよレド」

「なら手を取れ」


 レドが近付いて手を出す、アリサは酷く疲れた顔でこの手を見る。


「選べ、お前の意思を尊重しよう、それとないつか思い出話もしたい」


 アリサが手を取る。


「じゃ、ひとまず家族と話してみろ、お前さんなりに伝えてみたい物が有るだろ」

「バカな男に騙されてはダメよ」

「そう言う説教か、色々とあるだろ。二人と逢いたいとか」

「そう言う台詞はもう言ったわ」

「何度でも伝わるまでいえばよいではないか」

「・・・二人逢いたかった、だったやって掴んだ家族ですもの」

「・・・俺も逢いたかった」

「俺も」

「で、二人はNPCになりたいの?」

「・・・の手伝いがしたい」

「・・・の手伝いが、いつか礼ができる位にしたい」

「レド」

「システムが課した制約って奴さ。絶対に名前を呼んではいけないな」

「だからいつまでたっても呼んでくれなかったの」


 二人が頷く、アリサはやっと理解した。

 名前を呼ばないのではなく、呼べない様になっていた。


「あたしも馬鹿な女ね。もっと知るべきだった、分かったわ」


 チケットを使った。

 ▽変更

 NPC化:フォルスト、フォルゼン

 ▽

「アリサ」

「やっと呼べるぜ。あのくそ石頭目、ああ今のは無し、アリサの説教は長い、アリサってどんな人」

「男は行って」

「へいへい、学校の事は考えておけよ」


 □


「酷い話だな」


 ウルカが忍者刀でリャナの首を薙ぐ、リャナはステップして避け、反撃のレイピアで突く、この神速の突きをウルカの軽く引いてから避ける。


「思わんかリャナ、引いても負け、勝っても負け、有るのは防戦と時間稼ぎ、奇跡を信じるだけの戦い」


 ウルカが反撃の忍者刀を振るい、リャナはレイピアで受け、滑るような一撃でウルカにつく、ウルカは半歩下がって回転し、足払いでリャナを倒す。

 リャナは騎士であり剣士でも有るが、体術の経験は薄く、この点がウルカの勝るところだ。


「何をしているのだろうな私は、リャナは道を通そうとしているが、私は迷いながら戦っている、実に無様だな私は」


 追撃の蹴りをリャナは回転し避ける。


「私はどうするべきなのか全くわからんよ」


 追撃の攻撃を全て避けたリャナが立ち上がり、構える。

 リャナの凛々しい声が響く。


「なら悔いのない方を選んでください」


 これにウルカが忍者刀を収める。


「仲間に剣を向けるべきではなかった、それが私の選択だ」

「感謝します」

「行くぞ」


 二人が扉の前につく、レドの性格から言っても、恐らくアリサを説得するだろう、しかしそれは綱渡りの綱渡りだ。所詮は応急処置に過ぎない。

 アリサの部屋の前にレドがいた。

 珍しい事にボーと中空を見ていた。


「終わったぞ」


 ウルカが忍者刀を抜く。

 レドはハッとしてから二人を見る。


「こっちも終わった、アリサに嫌われたな、仲間から男に降格だ」

「そうか、私からも言っておこう、仲間には剣を向けるべきではなかった」

「そうか、まっそれもよし、アリサなら安心だ。部屋に入ってもいいぞ、これが鍵だ」


 レドがあっさり退いてから鍵を投げる、ウルカが受け取り、忍者刀を収める。


「少しはマシになったなウルカよい顔だ。忍者なんて碌でもないぞ、巫女さんでもしたおいた方がいい、何処かで狂ってしまうからな」

「礼は言わんぞ」

「ああ」

「一つ聞きたい」

「なんだ」

「家族に剣を向けるのはお前の掟に反しないのか」

「俺は向けていない、向けて収めたのはお前だウルカ」

「・・・確かに」

「アリサの学校の事もある、転校手続きやらなんやらで忙しくなる」

「・・・お前らしいやり方だ」

「親の道具になるのはさすがにな」

「今回の事は貸しだ」

「適当に返すさ。アリサも救えたしな。十分だよ」

「レド、アリサは」

「仮面を捨てて家族と向き合っているさ、あんまり邪魔するものじゃないぜ?家族の会話ってのは大切だからな」

「弟が成長してよかったです」

「で、強かったか」

「そうですね。迷いを断ち切るまでは強かったと言っておきましょう」

「戦闘機みたいなものだからな。妙なレーダーも有るし」

「安心しろ、お前に特化されたレド探知センサーだ」

「妙なものを持っているなウルカ」

「物ではない」

「・・・いや怖いって」

「何故分かるのだ。何処にいるのかがな」

「他の者が持たない事を祈るぜ」

「暫くは待とう、よいかリャナ」

「はい」

「まっ別にいいさ」


 室内からは時々笑い声が聞こえる。


 □


「・・・アリサさん」


 ケーキショップのケーキだが、いつもは騒がしいティアは落ち込んでいた。

 それでもケーキを食べる、だから周りはまだ安心だと分かる。


「ケーキを食べれば元気になるかなぁ」


 ティアの言葉に、ピローテス、ピュシーは微妙な顔だ。元気の問題ではないからだ。

 食い物天国とピュシーが呼ぶほどの、頭の構造の為に、食べれば幸せという性格なのだ。


「うんお持ち帰りしよう」

「ならフォルゼン、フォルストの分も持っていこう」


 姉のピローテスが言う、ピュシーから言えば別にいいのだが、レドの事だ上手くやっている事は分かる、信用でき信頼できる人なのだから。

 ただレドは基本的に優しいが、厳しい時になると非常に厳しくなる。

 そう言った意味でいうと大人なのだ。しっかりと使い分ける。

 レド一家は血の繋がりのない家族だ。

 絆というものによって結ばれ、特にリャナとレドの絆は強固だ。

 ピュシーもそんな二人の絆の様にティアと結ばれたらなぁと思う。

 ピローテスとは複雑なモノだ。嬉しいがかなり無理だ。

 そんなティアの姉のピローテスがピュシーをどう思っているのか、気になるがきっとしっかりと答えてくれるだろう、何せ全てを備えた女性だ。

 母親も、ピローテスも十分魅力的な女性だと言える、ティアの子供だが性格は頗るよい。

 ピュシーも幸せな気分になる。ただアリサの事が気になる。

 アリサを言うのなら世話好きな女性、いつも誰かの、何かの世話をする女性だ。

 リャナとは違った女性ではあるが、戦闘では笑って首を刎ねる大鎌使いだ。

 そんなアリサの事もあり、彼女が何を考えているのかはピュシーにはわからないが、レドがいるのなら安心でもある、あの人ならきっと救ってくれると。

 だから、リアルという世界はよほど厳しい世界なのだと分かる。

 ウルカのレドに対する対応もある、いつも暴力を振るうDV女だ。レドが抵抗しない事を好い事に暴力を振るう嫌な奴だ。そんな二人はとても仲が良い、目に見えない絆で結ばれる、喧嘩しても何してもレドはウルカを責めず、ウルカもなんだかんだってレドを信じているのはわかる。何より生真面目なウルカの性格からして、時々おふざけをするレドの性格がどうしても許せないのだろう。正しく水と油だ。

 ヒリュウという女性もいる、正直何を考えているのかと分からない。仲間を信じる一方何かを抱えているのはわかる、辛い物を抱え、それでも仲間との時間を楽しもうとする女性だ。戦闘ではハルバード振るう勇猛果敢な女性だ。

 一番わからないのはサクヤだ。ただ仲間からは絶対な信用がある。あのウルカもサクヤには従うし、レドも一目置いている節がある。しかし警戒心が湧く女性ではないが、謎に満ち過ぎた女性なのだ。

 正しく多種多様、前途多難だ。


(せめて未来が幸せであれば)


 そう思わずにはいられないピュシーだった。


 □


「おーいアリサ、もういいか」


 室内から声が聞こえる。


「いいわよレド、他に誰かいるの?」

「ウルカとリャナがいる」

「あらあら」


 室内から物音がする、アリサの性格からして準備だろう。本来の性格で生きていくことにしたらしいことが分かる。レドとしても一つの懸案が少し片付いたらしい。

 準備が出来たからフォルゼンが開いた。


「入ってくれ」


 三人が入る、室内にはテーブルがあり紅茶とクッキーが置かれている、アリサなりのおもてなしらしい。


「いらっしゃい我が家へ、さっ座って、色々と話したいし、うーでも」


 随分と良い顔で、声にも力がこもりよい傾向でもある。

 三人が座る。フォルストがお茶を勧めた。

 三人も飲み、香水の紅茶だ。


「じゃ、アリサの学校の事だ」

「急ぐものじゃないわよレド?」

「学校が始まるまでどうにかしたい」

「あら、そういえばそういう時期ね。困ったわね」

「なら私の」

「うーん。ウルカなら安心だし、こうなるとヒリュウね。あの子は守らないと」

「う、うむ」


 友人と一緒に過ごしたかったウルカとしては非常に残念だ。

 ヒリュウの事もあり、ウルカとしてもヒリュウの事を考えた。

 リアルでは小学生のような低身長で、ロリ体型、可愛らしい容姿をした美少女だ。

 ウルカ自身の問題もあり、アリサの問題もあり、とするのなら次はヒリュウの問題だ。

 頭がそれほど良くないウルカにとってみればよく分からないが、元刑事のレドならすでに手を打っている事は分かる、ウルカにとってみれは許し難い様な不真面目な公僕ではあるが、仲間や家族の為にはどんなことがあっても守り通そうとすることは信じられる。


(アリサやヒリュウと一緒の学校)


 どうしたものかと悩む。

 そんなウルカの悩む姿を見たレドは仕方がないと溜息を吐く。


「ヒリュウの学校にアリサもウルカも居れば安心だしな」

「あらまあ、それは良いわ。ええ良い話よ」

「・・・」


 ウルカは悩む、この不真面目な公僕に借りを作るのは本音を言えばとても嫌だ。

 自殺張りに嫌な事ではあるが、友人と一緒の学校ならと思うし、その葛藤に悩まされていただから、ストレスを解消することにした。

 ウルカがレドを思いっきり殴る、全員が凍り付いた。


「やはりストレスは解消せねば」

「ウルカ!酷いわ。大切な友人でしょう、そう言うのはとてもよくないわ、そもそもウルカは直ぐにレドを殴るのはよくないわ。むしろ辞めるべきよ」

「いや本能が叫ぶのだ、こいつを殴れば気分が良いと」

「理性に比重を置いてどうしたのウルカ」

「一日に何発か殴らねばならない日課なのだ」

「酷いわウルカ、酷すぎるわよ。レドだってウルカの為に色々としてくれたのよ、そんなレドに暴力を振るうはよくないわ。レドに何かあったらどうするの」

「これだけは譲れぬ、こいつをいつか殺す事を夢見る私の夢なのだ」

「そんな夢なんて捨てて、レドだって色々としてくれたじゃない」

「では蹴ろう」

「もう」


 レドも復活し、極普通のクッキーを取って食べる。


「リアルで殺されかけたなそういえば」


 しみじみにレドが言う、フォルストも、フォルゼンもそんな事をされているのにどうしてとも思うが、ウルカは生真面目なので、レドのおふざけに散々悩まされていたのも知っている、不真面目な所があるレドなのだが、仲間や家族に手を上げる事は決してない。

 リャナとしてもウルカの弟に対する扱いが酷いのだが、二人は仲良しなのでどうしてものかと悩む。


「大丈夫ですかレド」

「慣れた」


 ウルカとレドを除き全員が溜息を吐く。


「そう言う事ばかりするとモテないわよウルカ」

「別にいい、男なんてのは死ねばいい」

「ならレドは死んでもよいの」

「いや駄目だ」


 ホッとした吐息が漏れるが、次のウルカの言葉で全員が凍り付く。


「私が殺せなくなる」


 こんなウルカに、リャナの悩みが深まる。

 アリサとしても、ウルカのする行為はどう考えてもダメではあるが、大切な友人でもあり大切な仲間でもある、しかし暴力を一方的に受けるレドも同じ様に友人で有り、仲間でもある。ウルカにはアリサもリャナも悩まされていた。


「ウルカ、なぜそんなに弟に暴力を振るうのですか」

「こいつが許し難い不真面目だからだ。私の大嫌いランキング№1の全てを持っている」


 正しく水と油だ。ウルカの生真面目な性格もあり、レドのおふざけに散々悩まされ、しかもレドはそれを改めよとはしない、それがますます許し難い、しかもレドはリーダー役でもあり、元からしれないが公僕だった。不真面目な公僕というものは基本的に嫌われるが、ウルカはそんな不真面目な公僕が死ぬほど嫌いだ。見付けたら殺しておくべきと本当に考えている。つまりウルカの嫌いなもの全てを持つレドなのだ。

 アリサとしてもオフ会での事もあり、ウルカが本当にキレてしまいレドを殺害しようとしたこともあり、どうしたものかと悩む。このままでは本当に殺害されてしまうことになりかねないのだ。しかもレドは元公僕だ。現在は学生でも色々な事件を解決し、同じ様に人を救ってきた少年だ。当然の様にそんな事をする少年の味方は非常に多い。

 だがレドの不真面目な所や、おふざけや、人体実験が大好きで、いつも薬品での実験を喜んで行うマッドな奴なのだ。

 ウルカも問題なら、レドも問題だ。

 ウルカはレドに特化されたところもあり、レドも色々な所に長け問題は有ってもそれを帳消しに好い点を数多く持つ。

 しかし二人はこう見えても仲がいい。

 ウルカも嫌ってはいるが憎んではいない、そんな所もあるが信用し信頼はしている。

 アリサは本当に困る。

 人には長所に短所がある、個性という性格がある、人それぞれの適性もある。

 色々な面々ではあるが、アリサも自身の問題も少しは片付き、この二人をどうにかしないと、本当に殺し合うことになるが、そんな二人は同じPTのだからレドの寛容さには正直なところ寛容すぎると思う。ウルカももう少しレドを許してあげればよいのだが、どれを許せばと言われるほどレドにも問題は多い。

 アリサは溜息を吐く。


(二人は仲が良いのだからよいけど)


 アリサは考えたが、中々妙案が浮かばない。

 必至に考えた、このままでは助けてくれたレドが本当に死にかねない。

 恩には返したいし、そこにクッキーが丸い事に気付いて閃いた。


「レド」

「ん?」

「次からウルカが暴力を振るえば逃げて」


 全員が衝撃を受けた。

 レドはどうしたものかとも考えたが、中々の妙案だ。

 しかしいう前にウルカが釘をさす。


「逃げたら倍だ」

「ウルカ!」

「分かった仕方がないから逃げよう」

「アリサ何故知恵を授ける」

「ウルカが余りに酷いからよ。レドを何だと思っているの」

「う、うむ」


 ウルカが動揺した。

 この忍者少女なりに言い分はあるのだが、少しだけ反省した。

 生真面目で頑固で有り、曲がった事は大嫌い、正義感が強く侍の様な少女だ。

 真っ直ぐな性格でもあり、話が決して分からない少女ではないが、レドがリーダー役なので人を纏め、上に立つ、仲間を引っ張る役目で、元公僕でもあり、それらなのに不真面目なのだから、この忍者少女の許せないもの全てを兼ね備えていた。


「アリサ、そう責めるな。ウルカなりに言い分はあるさ」


 レドの寛容さが発揮される。

 アリサはこういう所がレドの好い所でもあるが、最大の欠点でもある。


「この侍のような忍者娘にも、色々と有るのだから」

「相変らず人が好いな」

「レドの好い所よ?でも寛容すぎるわ」

「かもしれないな。しかし俺がキレる訳にもいかんだろ。盾役でもあるのだから」

「うむ。そういう所がお前の好い所だ。少しは手加減しよう」


 全員が意外そうにウルカを見る。

 ウルカとしても反省していたので、少しだけレドの寛容さを真似た。


「ああお手柔らかにな」


 レドとしてもウルカの成長は喜ばしい。

 薄く温かくレドが笑う、ウルカもにこりと笑う。

 リャナとしてもやっとの事から悩みから解放された、アリサとしてもウルカなりに許す事を学んでくれ、ウルカの暴力も少しは収まる事がとても嬉しかった。


「ありがとうございますアリサ」

「どういたしまして、少しは恩が返せたわ」

「俺も不真面目が過ぎるのは解っているが、真面目過ぎると不幸な目に遭う、昔はウルカのようだったからよくわかる」

「そうでしたね。確かに昔はウルカのようでした。とても真っ直ぐでしたからそれに純粋でしたし」


 昔を知るリャナが言う。

 ウルカとしても意外ではあるが、確かにレドにはウルカに似たところもある、不真面目過ぎるが、人を見捨てるような男ではない、ウルカやアリサを助けたようにそう言う困った人を助けるような奴だ。こう言う点が無ければ当の昔にPTは解散だ。

 人には個性というものがある事をウルカは学んだ。

 とはいえレドの不真面目な所をどうにかすべきか箇所でもある。

 これさえ直せばよいリーダーだ。

 実験などの事はサクヤもいわれたし、こちらは許可している。

 ウルカはウルカなりにレドを評価していた。


「帰って来たか」

「む。ケーキの匂いか」

「じゃ、ケーキでも食べに行くか」


 □


 台所でケーキを食べる。

 アリサは相変わらず二人に世話をしているが、表情はとても良い元々美人でもあるし魅力がある女性だが、より魅力的な表情でより魅力が増した。

 ウルカの方も忍者装束ではあるのだが、頭巾は外し周りが信じられない事ではあるが、レドにケーキを半分を渡していた。

 アリサも、ウルカも変わりつつあり、その一歩を踏み出していた。

 ヒリュウもそんな友人の二人の変わりように、レドが何かをしたのかという事は分かる。

 ピュシーも、いつもレドに暴力を振るうDV女が、レドに優しくしていた事が到底信じられなかった。

 ティアもそんな状況にビックリ、あのウルカがレドに優しくする異常だが、その表情は柔らかく、暖かく、穏やかだ。いつもの頭巾もない。

 だから下手したらレドとくっついてしまわないか心配になる。

 人は変わる事をティアは理解した。ただ変わり過ぎるのが驚くが。

 ピローテスとしてもウルカなりに歩み寄る事を覚えたようで、この忍者娘なりに何かあったらしく、レドとの関係も変わりつつあるようだ。

 サクヤとしても改善されたことがなんともホッとしていた。

 忍者娘ではあるが、性格の方はどう考えても侍の方だ。

 レドの方にも問題はあったし、ウルカの方にも問題はあった。そんな二人が仲良くできる理由はまだ知らないが、この二人なりに改善しようとする意志を持った事は理解できた。


(変わりつつあるか、人とは変な生き物じゃが、水と油がのぅ)


 水と油が混じり始めた。混じる事の無かったものが混じり出す、互いの性質が変わりつつあることを指し、そんな二人が良い影響を及ぼすのはわかる。レドは不真面目過ぎる所、ウルカは真面目過ぎる所、そんな二人が同じ時に一歩を踏み出した。

 アリサの方も本来の性格を表に出していた。

 表情には辛いものや翳はなく、生き生きとしたよい表情となっていたし、二人もアリサを大切にしているのも分かるし、レドが手をさし伸べた事は理解できた。

 色々と問題のある少年ではあったが、人を見捨てる様な非情さは持ち合わせず、不真面目ではあるが、多少の真面目さも持っているし、非常に寛容でもあり、厳しい所もあるが基本的に優しい、ただ甘くはない。

 アリサやウルカ、そんな二人も変化を得た。

 男をゴミのように扱い、不幸な時間の中にいた少女は、元騎士の少年に救われたようで、当然の様につながるものもある事は分かる、その心をどうするのかはサクヤにはまだわからない。男性不信と最低の男運は改善されたようだ。

 ウルカの方も許す事や歩み寄る事に、寛容さを取得し、人の優しくすることのできるようになった、体格の事で人間不信になっていた少女が、得られた事で、与える事をできるようになった。


(子供の成長は早いのう、好い事じゃ)


 最後のヒリュウを見る。

 体格は小さく、見た目はロリ系美少女、男性不信であり男嫌いでもある、幼い頃はいじめられ、中学に上がると男に言い寄られ、そんな事もあって体格は大きなコンプレックスを持つ、ウルカとは違った小さ過ぎるという事だ。

 性格の方は少し臆病で引っ込み思案、戦闘では勇ましく、スイッチが入ると勇猛果敢の戦士となる、友人の二人も居るが、他の二人に比べれば普通の家庭で育ち、体格の為に様々な不幸な目に遭う、高校に入る事もそれ程歓迎していない、何せ自分の体格もありある未来はそれ程の変化はない、未来に希望の持てない少女なのだ。

 体格の理想の方はゲームのアバター、リアルより12cm上らしい。

 他の二人の問題もレドが解決したが、今のレドではヒリュウの求める物は与えられない、とはいえレドなりに色々としてきたこともある、ただレドならある意味可能でもある、サクヤにはこの元騎士の少年が、しっかりと行えるのなら問題はない。


(さてどうするかの)


「ヒリュウ」


 レドが名前を呼ぶ、ケーキを食べていたヒリュウがレドを見る。


「二人を預かってくれ」


 レドの言葉に、ヒリュウは首を傾げ、よく分からないらしい。


「アリサとウルカの学校を同じにしたい、ヒリュウの学校とかな、出来るか?」


 ヒリュウの両目が見開く、近くに座っていたアイリスも、セリルもそんな主の態度に、どうなるのやらと思う。


「二人が僕の学校に来るの?」

「その方が都合がいい、ウルカはまああれだし、アリサの方も改善したい、一肌脱いでもらえないか」


 ヒリュウが凄い勢いで頷く、ブンと音がしそうな勢いだ。


「それは良かった。二人の方も変わるそうだ。ヒリュウなら受け入れらるしな」

「なんで僕なの?」

「二人と気が合うからそれに」

「それに?」

「良い影響が互いに及ぼすと思う、何よりヒリュウは良い素質があるしな」

「・・・良い素質って何?」

「戦士の素質」

「そ、それ程でも」

「何よりヒリュウは戦闘になれば非常にクールだ。二人をよく守れるだろう」


 ヒリュウの両目がさらに強く開かれる。


「小さいから偽装も隠蔽も可能だし、どこにでも入れるのが有難いし、ハルバードの扱いにも長けるし、まさに適役だ」

「・・・小さってよい事?」

「当たり難い、年齢を誤魔化せる、警察なら間違いなくヒリュウは疑わない」


 ヒリュウは動揺していた、レドの言うことは正しい、警察に疑われることは間違いなくない、小さい為に色々な意味で沢山の箇所に入れる。年齢を誤魔化す事も簡単だ。

 しかしヒリュウにとってみれば身長は非常にコンプレックスだ。

 このコンプレックスに感謝はしたくない、しかし友人の二人と共に学校に通えたらとても嬉しいし、レドの頼みは魅力的だ。

 二人を守れるのも嬉しい、だがレドに身長のことを言われるのは複雑な所だ。

 レドが言った戦士の素質というのもヒリュウには理解できた、スイッチが入ればヒリュウの頭は非常にさえ、恐怖すらも押し潰せる、どんな巨人にもスイッチさえ入れば立ち向かえるからだ。

 小さい体を持つ戦士の素質があれば、確かに適役だ。どんなところにも入れて偽装も出来、警察にも疑われない、満点の様なものだ。

 しかしヒリュウにとってみれば低身長はとてもコンプレックスだ。だが友人を守れるのなら、この低身長も確かに役立つ。


「分かったよ。了解だ」

「それは良かった身長が大きかったら困っていたところだ」


 レドの困っていたところは分からないが、この少年は元公僕だ。今は学生でも色々な仕事を引き受ける、レドの役に立つのも正直嬉しい、この少年はヒリュウが拒否感を持たない珍しい少年なのだ。

 ゲームでは男性と女性の両方を使い分けるが、体格は大きく、確かに偽装は出来ない。

 リアルでも巨人で、184cmという高校生離れした体格の持ち主だ。筋肉の方も随分と分厚い、鋼製のサイボークと思う様な体格の持ち主だ。

 友人の二人と学校に通え、レドの役に立つのなら何の問題もなかった。


(僕も変われるのかな)


 友人の二人の様に、レドのように一歩を踏み出せれるのなら何のためらいもない。

 だがヒリュウは変り事が怖い、それは何かを得るが、何かを失うという事だからだ。

 得るモノも解らず、失うものも解らず、変わる事を受け入れるられるほどヒリュウは勇敢じゃない、変わる事への恐怖はある。


(こんな時にスイッチが入ればなぁ)


 笑って恐怖や怯えなどを踏み潰せるだろう。


「装備の方は手配しておく」

「そ、装備?」

「この二人がトラブルを起こさないと思うか」


 アリサは悪所で男をゴミのようにしか思わないが、キレたら相手の首を笑いながら刎ねる事は想像に難くない、ウルカの方はキレたらレドをつるし上げる様な怪力少女だ。


「お、思わないけど、レド~」


 ヒリュウは困ったのでレドに泣きつく。

 レドは苦笑するも助ける事はできそうにない。


「がんばれハルバード使い」


 無常のような言葉に、ヒリュウは途方もないトラブル漬けの毎日を想像した。

 リアルに帰ったら、ひとまず医療保険と生命保険に入ることにした。


「平和って、意外に遠いかも」


 正確には音をたてて平和が遠退いた。それも凄まじい勢いで、それを受け入れたのはヒリュウの為に、自分の判断に正直なところは泣き言が言いたかった。


「僕のバカ」


 平和というものが、見えなくなるような距離にある事に、ヒリュウの心は折れ掛けた。

 そして一つの物が近づいた。

 人はそれをトラブルと呼ぶ。

 それも3年間だ。

 棺桶の準備も必要かもしれないと泣きそうになる。

 こんな時にレドが居ればと思わずにはいられない、二人の暴走を止められるのも、ウルカの暴力を受け止めるのもレドの役目だ。アリサの悪事を止められそうなのもレドだ。

 それを今度はリアルでヒリュウが担当する。

 涙がボロボロと零れる。

 ただ友人の二人と共に学校に行けるのは嬉しい、その二人がトラブルを毎日のように起こし、それをヒリュウが何とかするしかない、それはもう止められない。

 嬉しいのと、辛いのがごっちゃになってヒリュウを襲う。

 幸せと不幸が両立するとはなんという皮肉なのかと思う。


(どうしよう)


 ただ一つだけわかった。

 変化の方は止められないのだと。

 変わることを恐れた少女は、強制的に変化するしかない事になってしまう、しかも自分の決断によってである、怖れたものを自分で受け入れてしまったのだ。

 ヒリュウは考えた。


(勉強しよう)


 自分の愚かなのか、良かった事なのかも分からず判断すると、泣き言では済まなくなることを理解したのだ。

 知識だけではダメだ。根本的に賢くなの為に努力する事を心で決めた。

 ヒリュウの受難が毎日のように起こる事になる。

 結果的に何であれ変化への一歩を踏み出した。

 これで四人は同じ日に一歩を踏み出した、変わる事を自ら意識した。

 そんな四人にサクヤは微笑ましく思う。

 人生は短い、花の時間も短い、僅かな時間だが、過ぎ去れば永遠に帰ってこない時間で有り、それを四人が同じように踏み出したことが微笑ましい。


(青春じゃの、いやはや)


 そんな4月の初めてのログインした日の事だった。

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