表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/44

024:3月編最終話

 3月31日、色々と合って初めてのオフ会に参加する。

 既に自立しているレドは、今回のオフ会に参加するためにその場所に向かう。

 リアルでは高校1年生になる頃の学生の為、金はなさそうだが、中学時代に賭博試合で貯めた金で、今の学校の学費も生活費も工面し、実家を出て借家で暮らす。

 リアルではゲーム世界より身長が低く184cm、主にスーツ姿でいる為に周囲の住民からは学生と思われていないのが悩みの15歳だ。

 タクシーに乗ってその店につく。

 キャッシュで払い、タクシーから降りる。

 店の中に入り、店員にカードを見せる、直ぐに案内され室内に入る。

 居たのは身長が175cmもある銀髪、碧眼、肌の方はばっちり白い、モデルのような女性が一人、服装の方はどこかの制服らしい、朱いジャケットに白いブラウス、ワインレッドのコルセットに、ダークレッドのミニスカート、文様の入ったワインレッドのタイツ、足には黒い皮製の靴、顔付きの方は確かに美人ではあるが、目の合ったレドに微笑むこともなく不愛想な顔で睨む。


「なんだヤクザ」


 ハスキーの声の白人女性がドスの利いた声で言う。


「誰だお前は、ここは、もしかしてウルカか?」


 レドが驚きながら名前を呼ぶ、この名前に相手も驚いた様で頷く。


「レドか?」

「ああ。ウルカ、お前日本人だよな?」

「生まれも育ちも日本だが、両親が帰化した日本人で系統としては北欧系だ」

「こいつは驚いた、てっきり和風美人かと思っていたが、イメージが随分とまあ変わったな」

「お前も随分とまあデカいな、本当に高校1年生なのか?」

「寝る子は育つのさ」

「バカを言い過ぎると殴るぞ」

「冗談にそうカッかなさんな。いやしかし、いやまあまあこいつは驚いた、ティアに見せたらびっくりするぞ」

「間違いない、レドだな、木刀を持っておくべきだった」

「おいおい暴力ばかり振るうなよ。俺だって仲間とは争いたくないんだ」

「ふん」

「しかしお前さんがねえ。いやこれは意外性抜群だ」

「ひとまず性別の方は」

「ばっちり男さ、こんなデカい女が居たら見上げているぜ」

「デカくて悪かったな」

「いやー。こいつはより楽しくなった他の連中が楽しみだ」


 名前に入った席に着く、ウルカの方も席に着く。


「名前の方は後で名乗るが、頭のいかれた親御さんの方は」

「うむ。ひとまず写真の相手と会いに行くと言ったら何故かキレられた」

「訳の分からない親御さんだな」

「あのボケ共はどうでもよいのだ。お前の方は」

「一人暮らしだからな、トラップなんかを作動させてから来たさ」

「泥棒が可哀想だ。不幸な目に遭うに」

「おいおい仲間の心配しろよ」

「お前の心配?悪い冗談はやめてくれ」

「お前の性格は酷くないか?」

「どうせろくでもない薬品入りのトラップを作動させて、捕まえてから実験薬品を突っ込んで、観察してからボロボロにまで追い込み、その後に川なんかに放り投げてさようならだろうが」

「お前の中の俺はいったいどういう奴なのだ」

「可哀想な泥棒だ。きっと騙されたな」

「おいおい俺が被害を受けるぞ?」

「被害?」

「そうだ被害を受けるのは俺だ」

「1に対して1000に返されるのに?」

「そんなに酷くはないと思うぞ」

「嘘だな」

「ほんの100位だ」

「あり得ん、実験体がのこのことやって来たのだ、不幸な泥棒だ」

「お前の中の俺はそんなに酷い奴なのか」

「私の友人の中ではぶっちぎりの最低ランクだ」

「酷い」

「では言え、薬品は使っていないか?」

「・・・ちょっとだけ」

「そのちょっとは未認可の物ではないのか?」

「捕獲用だからな安全には期すさ」

「可哀想な泥棒だ。人生に苦しめられた後にこんな奴に苦しめられるなんて」

「泥棒の方が悪いからいいのだ」

「きっと頑張って貯めた金も奪われ、薬物の実験体になり、ボロボロになって川に捨てられる、助けられてから警察に話してもそんな薬品は、そんな落ちになり不幸な状態から更に不幸な目に遭い、警察が尋ねてきてもこいつの事だ知らない存ぜぬを押し通し」


 どうもこの女性の中ではレドの評価はすさまじく酷く、レドは極悪非道なマッドの奴らしい、色々と助けられたのにこの扱いは酷い。

 しかしウルカの言う通りの事を考えて、期待していただけに強くは言えない。

 そこに人の足音が聞こえる。

 入ってきたのは一人の女の子、慎重は145cm、小学生張りの小ささだ。

 ワンピースの上にオレンジのジャケットを着込み、頭にはベレー帽、どう見ても小学生の可愛らしい女の子だ。美少女ともいえるような顔付に小ささ、スタイルは一言でいえばスレンダーのロリ体型、ウルカの方を見てかなり驚いており、レドの方を見てからさらに驚き、途方に暮れて顔で不安そうに周囲を見渡す。


「レド、アリサ、ウルカ、サクヤはいない?」

「お前、ヒリュウか、ハルバードの料理人のサモナーの」

「うん。ってレド?」

「小さいな、いや私がデカすぎるのか」

「・・うそぉぉぉぉウルカ、ウルカなの?」

「うむ。まあこんなにデカくてすまんな」

「巨人が二人もいるからびっくりだよ僕は」

「間違いなくヒリュウだ。リアルでも僕っ子だったのか」

「うん。デカいね二人とも、どうやったらそんなに大きくなるの、薬、そうかレドの薬かぁ、よかった僕も身長が伸びる、これで安心だ」

「そんな便利な薬はない」

「隠すの?」

「いやまあ本当にない、元々デカいのでな」

「作ってよレド、小さいのは嫌なんだ」

「大きくなったらそれで服が合わずに泣くがな」

「・・・し、身長が・・服」


 身長に悩みを持つヒリュウらしいが、服が合わなくなるのも嫌らしい。

 名前のある席に座りしょぼんとしていた。

 どうもこの少女の希望を打ち砕いたらしい。

 身長の低かった時代を持つレドの方も複雑な顔で、ウルカも気の毒そうに見ていた。

 高校1年生でこの身長はあまりに低い。

 身長は伸びて欲しいが、かといって服が似合わなくなるの同じ位に嫌らしい。

 きっと157cmの身長が理想だったのだろう。


「何で回りは大きいのに僕は小さいの?」

「う、うむ」

「デカくなるさ。あれだろ最近間接が痛いだろ」

「う、うん」

「人より遅い成長期って奴だな。俺もガキの頃は小さかったから覚えがある」

「そっかぁ。大きくなるんだ、でもレド並みに大きくなるのはかなり嫌かも」

「ヒリュウ、それは失礼だぜ。こいつだって」

「やかましいこのマッド!」

「ウルカ並みかぁ。それも遠慮したい」

「・・・酷い」

「ざまぁ」

「くっ。かくなる上はポーション」

「骨を溶かすしかねえな」

「むぅ。嫌だ」

「大きくるのかぁ。うん。来て正解だった」

「次はサクヤか、それともアリサか」

「サクヤはお婆さんだからな、大変な事になって無ければ良いが」

「アリサの事だから世話しているんじゃない」

「なら二人同時ということもありそうだな」

「アリサって思うんだけどね。美人さんだよね」

「・・・おいポーション、妙な事をしたら殺すぞ」

「なんでお前の中の俺はそんなに酷い奴なんだよ」

「可哀想なものを沢山見たからだ」

「えーとエネミーだよね?」

「こいつの薬品で苦しみながら死で行ったエネミーを思い出すと可哀想でな」

「・・・レド、アカウント停止されるよ?」

「安心してくれ、こいつが許可したので共犯だ」

「あ、あれはサクヤに言われて」

「はい共犯者一名追加」

「むぅ。やはり口封じが居るか」

「二人とも仲良くなった?」

「サクヤに怒られてな、私は少し厳しいと」

「俺も過去ばかりに捕られるのはどうなのだと諭されてな」

「うーん。やっぱりプレイするんだった。最近は体の関節がどうしても痛くて、困っていたんだよね。ゲームをすれば痛みから解放されるっていうけど、どうしても許可してくれなくて」

「ああ。親は経験がないタイプか、本来VRのフルダイブ機能なんかは医療用だ。ヒリュウの言葉通りにな」

「さすがは我がPTのポーション」

「どうにかできないポーション」

「親御さんの説得が居るし、それには医者だな。娘さんが成長痛で苦しんでいるので痛みから解放するためにVRのフルダイブ機能が何かとお手軽で安全ですって、何より金と鎮痛剤の副作用なんかを考えればどう考えても安全だ」

「一家に一台は欲しいなぁこのポーション」

「うむ。欲しいが目を離すと暴走するのが困る」


 仲間にポーションと思われているところがレドの辛い所だ。


「まあ馴染みの方に話しておこう、開発者の方にも話を通せば万事解決だ」

「えーとレドって医者の知り合いとか」

「今回は許す」

「闇医者じゃない、普通の医者だって、いつも世話になるから知り合いになってな」

「具体的に言うと喧嘩?」

「訓練のし過ぎでの入院とかだ」

「・・・もしかして本当に毎日3時間のトレーニング?」

「毎朝5時から8時まで」

「それで午前9時からのログインなのか、なるほど」

「・・・大きくなるためには」

「だから大丈夫だって、ただ長い間続くぜ」

「うげぇ」

「仕方ねえさ。その代りゲームが楽しめるからそんなに悪くないぜ」

「うーん。うーん。痛いだよね。本当に痛いだよ」

「市販の薬に鎮痛剤は有るが効果が弱い、その代り副作用の少ないタイプもある、基本的に薬品には副作用があるからこれは中々お勧めだ」

「・・・レド、将来は薬品会社に?」

「そこまでは考えないが、有機物の勉強がしたいな」

「なるほど、レドは基本的に植物派だしな」

「薬品の元って植物が多いからね。あ~やっとゲームが出来る」


 ウルカは内心ニヤリと笑う。これで遊び仲間のログイン率が上がるからだ。

 何かと便利なポーションであると思う。


「ウルカよ。一応あれなんだが、そういう人の悪い笑いはどうなんだ?」

「う、うるさい」

「まるで悪代官のような笑い方だったよ」

「単にログイン率が上がると考えて」

「さすがはヘビーゲーマー」

「ウルカも好きだからね。で何があったの」

「便利なポーションが色々としたのだ」

「誤魔化す事なの?」

「頭のいかれた親御さんに許可して貰ったのさ」

「ゲームを自由にすることをな、お蔭で毎日が楽しくなった」

「ふーん。そうなんだ。ふーん。肝心な具体的な内容が欠如しているよ」

「どうする忍者」

「狂ったボンクラ共もに、このポーションの写真を叩きつけた」

「へー。なんといって」

「・・・」

「ヒリュウ、まあこいつの親御さんは頭の方がかなり逝っている、高校を辞めて結婚しろってさ」

「頭がおかしいよ?」

「まあそんな訳で高校とゲームを辞めさせられかけたから、俺の写真を送り付けたのさ、その親御さん払いでの超速達でな」

「その親御さんはレドを彼氏と思って渋々引き下がったって訳?」

「ああ」

「ウルカは晴れて高校とゲームを手に入れて万々歳って訳さ」

「身を切ったね二人とも」

「仲間だしな、助けもするさ」

「まあそんな訳で友人にはカウントしている」

「そんな恩人の様なポーションの扱いが酷いと僕は思うよ」

「う、うむ。私なりに色々と考えてはいるのだが、理性と衝動の狭間でな」

「いやな、俺が思うにそのポーションは辞めてくれないか」

「断固拒否する」

「僕も」

「扱いが酷い、俺は有機物の専門でポーションじゃないのに」

「他人から見れば同じだよ」

「基本的に混ぜ物をして適当に作った物で実験をするマッドだからな」

「ランダム要素が混じるからこそ実験なのだ」

「それってギャンブル?」

「イレギュラーは薬品の進化に欠かせないのだ」

「成功率は?」

「蘇生薬、香水の紅茶、MP大幅増加薬、生産品質+1」

「レドでも四回ってことはそんなに確率が少ないの?」

「かなり珍しいらしい、開発者の方にもそれとなく聞いてみたが、人によってはまちまちだが、一回でもあれば幸運だってさ」

「四回だから余程の幸運か、ピローテス、リャナ、ピュシーの証言通りだな、ルリを実験体にしたことは許せんが、結果として助けたのは許す」

「反省しているって、彼奴が苦しんだから、なるべく控えるって誓ったし」

「まあ薬品の成長の為には必要と僕は思うけど、やり過ぎるとね」

「卒中ルリを怒らせては殴られたり蹴られたりしているしな」

「お前だって蹴られたろ」


 人の足音が聞こえる、そこに居たのは160cmほどの黒髪のストレート、瞳は碧眼、肌の色は色白、顔付きの方は釣り目がちの気の強そうなアーモンド形の目、長い睫毛、目だけ見ても十分な要素がある、顔付きは非常に整っており、きつめの美人だ。

 服装は春物のパンツスーツ姿、ネクタイの代わりにボウタイをつけ、顔には軽い化粧が施され唇が濡れたような赤い深紅だ。


「失礼。この中にポーションは居ますか?」


 魅力的なソプラノボイスだ。

 レドが手を上げる。


「そのポーションは辞めて欲しいという話の真っ最中だ。という訳でアリサお初」

「レドは大きいわね。小さなのがヒリュウで大きいのウルカ?」

「大きいのは余計だ」

「小さくて悪かったね」


 アリサの顔がパッと明るくなり、先程までの険しい顔はなく、人の好さそうな温かい表情で挨拶した。


「本名は後でいうわ。みんな久し振り♪」


 懐かしい友人に出会った様な女子高生の挨拶に、レド、ウルカ、ヒリュウの意見は共通しており、三名とも頷く。


「この弾む様な声はアリサだ」

「このテンションは間違いなくアリサだね」

「リア充が、なぜこんな理不尽な」

「まあまあ、ウルカは大きいのね。ヒリュウは小さいわ可愛いわ、レドは相変わらずで大きいけど縮んだ?サクヤはまだなのね。お婆さんだから電車に乗れたのかしら、向かえ行くべきだけど、あらあらまあまあ」


 怒涛の様なハイテンションでのお喋り、このテンションにはついていけないとレドは思う。


「アリサ、名前のある席についてから話そう」

「身は硬いわよ」

「何の話だ?」

「聞いてよ。長く続いた彼氏があたしを振ったのよ、あの男玉無しだわ」

「・・・リア充が」

「酷いよ」

「で、長く続いたってどれくらいだ」

「新記録よ何と三日も」

「なんでまた」

「ゲームばかりする女は要らないって、あの玉無しが」

「その男はひとまず殺しておくべきだ」

「うん。ゲーマーに喧嘩を売っているよ」

「まあその幸ってことで、ゲームが出来るようになったのだから幸いか?」

「まあね。フォルストやフォルゼンにも会えるし悪い話ばかりじゃないわ、彼奴には次ぎあったら玉を蹴り上げてやる」

「それは幸いだ。なるべく硬い物でな、武器とかはなくてもいい、硬い物で蹴り上げられたら下手したら失神するさ」

「さすがはレド、話しが分かるわ♪」


 北欧系のウルカ、低身長のヒリュウ、男運の無いアリサ、デカいレド、四人とも高校生に上がる位の年齢の少年少女だが、アリサを除いてとても見えない。

 相当にストレスが溜まっていたらしく、アリサの怒涛のお喋りは続く。


「全く酷い男よ。最初は甘くして次の日にはベッドに連れ込もうとして、少し顔が良いぐらいでいい気になって、あたしがゲーマーと分かったらすぐに振るなんて彼奴は絶対に玉無しだわ」

「ベッド?やったのか?」

「まさか軽くかわしたわよ。付き合っても簡単に身は許さないわ」

「ならよいが、そういうタイプの男は確実にゴムをつけだからないからな、しかも自慢げに話すし、頭が悪いなんてものじゃない」

「レドの知り合いに居たの?」

「知り合いじゃない、適当にハメて実験体行きだ」

「そうね。そう言う奴は確か撲殺しておくべきよ。女にも人生があるもの。しっかりと相手を思いやらないと、あの玉無し」

「まああまり言いたくはないが、なんでゲームをしたら振るんだ?」

「ゲーマーは寄生虫になるオタクだって」

「酷い偏見持ちだな。頭が悪いなんてものじゃない、どうしてそんな馬鹿な男に適当に付き合う」

「虫よけスプレー」

「ああなるほど、適当に遊んで弾除けになるのなら別によいかなって訳か」

「そう!それなのに、あの玉無しの偏見男め!」


 北欧系の美人さんだが、長身のウルカには全く共感できない事だ。

 日系の美少女だが、低身長の小学生体型のヒリュウにはさっぱり話だ。


「だから次の弾除けが必要になる訳なのよ。困ったわ」

「紹介はしないぞ、そもそも寮暮らしだろ、なんで必要になる?」

「カーゴ」

「荷物持ちの適当な弾除けになって安全な奴ね、顔はそこそこからそれなりのレベル、程々のイケメンタイプで、頭は軽い方がいい、その方が扱い易いからか」

「詳しいわねレド」

「女に騙されて酷い目に遭った奴らが恨みを言って色々とな、ありゃ大変だった」

「あたしも気をつけないと」

「男の俺が言うに、適当な餌でもくれてやれば好かったんじゃないか」

「嫌よ。男の為に金を使うなんて絶対に嫌!」

「不自由しないだろうしな、次の哀れな被害者が出ればよいが、上手く扱えよ」

「あら、レドは糾弾しないの?」

「なんで仲間を糾弾しなければならないんだよ」

「まあそうよね家のリーダーだし、レド量産型でも紹介してくれない」

「いねえな。俺みたいな奴の量産型が居ても性格から言っても女についていくタイプは皆無だ」

「ちっ」

「頭が悪くて、適当に使えて、適当な餌でも放り込めばすぐに食いつく様な」

「要らないわ」

「この手のタイプは結構な資源でな、情報の方は結構なお手軽さだ」

「仲間に商売する気?」

「いや、その手の男の情報を扱うタイプの女に心当たりがあるだけだ」

「紹介してもらってもよいのだけど、なんで二人とも固まっているの?」


 アリサが心底不思議そうに二人を見る。

 見た目は美少女の様なアリサだが、ゲーム版とは違って性格の方は男を消耗品としか思わない悪女らしい、ウルカもヒリュウも信じられない顔でアリサを見ていた。


「い、いや、なんていうか」

「う、うむ」

「まさか男に金を使えと?」

「難しい」

「なんかイメージが」

「男なんてのはゴミ、仲間は大切、友人も大切、家族も大切、それじゃあいけないの?」

「アリサ、悪くはないんだが、こいつらには少し早いじゃないか」

「ポーションは男ではないのか?」

「ええそうね男ね。こんな立派な体格の女性は少なそうよ」

「・・・アリサ、酷い様な気がしてならない様な」

「でも仲間よ。大切なね」

「要するに優先順位度が違う訳さ。こういうタイプの奴は知らないのか?」

「お前は何かと経験があるな」

「家のリーダーは基本的に寛容だよね」

「レド量産型が一人いればよいのよ。一人だけ」

「だから女についていくタイプは居ない、そもそも他人を何とも思っていない奴らが多いしな、俺みたいに実験体ぐらいに思う奴らが多い」

「じゃあ少ない方の」

「そう言う奴らは何かと女が多くてな、アリサみたいな女は好きじゃないんだ」

「残念」

「おまけに扱い方も詳しく教える奴も居るし、あのバカもよくまあ、女なのか男なのかさっぱりな奴だからな」

「おかま?」

「凄い美人さ、男にも女にもな、しかもどっちもOKな奴だ」

「二刀流はよくないわ。それはまあ人それぞれなのはわかるわ。でも何事も八方美人はよくないわ」

「そう言うタイプじゃない、金さえもらえば何でもする厄介な奴だ。俺がさっき紹介しようと言って女だ」

「要らない間に合っているわ」

「色々と世話になっても彼奴だけはあんまり親しくもないし、そもそもああいう奴は好かんのでな、会いたくもないし、正直ほっとした」

「あらこんなあたしにそんな嫌な奴を紹介しようとしたの?」

「使えはする。有益な道具のようにな、値段の方はまあ紹介料をふんだくられるだろうが」

「あらら、レドなりに身を切ろうとしたのね。やっぱり持つべきものは仲間ね」

「こう言うのもなんだがなアリサ」

「何かしら?」

「ポーションだけは辞めてもらいたい」

「嫌よ。大切な冒険のお供でしょ」

「なんで家のPTの女は全員がこうも頑固なんだよ。サクヤが居ればな、少しは良くなるのに」

「サクヤは大丈夫かな、お婆ちゃんだし」

「うむ。元気そうだが、計算が苦手だしな、意外にも孫なんかに送ってもらっている最中かもしれない、もしくは弟子だな」

「サクヤも直ぐに来る予定なのだけど、連絡したのよ。ちゃと時間通りに間に合わせるって」

「・・・時間?」

「ええ」

「時間?何時だ?」


 アリサが店の時計を指さす、全員が見るが予定の時間までは間がある。

 レドは奇妙に思った。

 なんというべきか時間の流れが遅い感じだ。タブレットを見ると特に変わらず。

 こう言う仲間との時間は常に時間を忘れがちになる。つまり時間の流れが速く感じるのが当たり前なのだ。


「おかしい、そもそもなぜ店員がこない」

「「!?」」

「武器はないし、サクヤが来るのを待つしかないか」

「意外にサクヤの仕業だったりしてなんて落ちは?」

「サクヤは魔法使いではない、武人の方だ」

「そうよね。ここに来るまで普通に店員も居たし、案内もしてくれたわ。対応もしっかりとしていたし、服装の乱れもなかったし、汗もなかったし」

「アリサ、店員の匂いは嗅いだか?」

「マナーに反するから軽くだけど、柑橘系ね」

「影は」

「足元だったからよくわからないわ」

「なら入口の太陽の位置は」

「真上よ。お昼頃だったし」

「ふむ。さすがにそれは弄れなかったか」

「どういうことレド」

「よくわかってはいないがな、サクヤはどうも普通の老人ではないらしい、槍の達人で有り、弓や剣にも心得がある、これまでは普通だな」

「少なくても昔取った杵柄と言えるな」

「テイム従者は嫌いで、騎士も嫌い、とったのは召喚士と、弓使いと、元々の戦士だ」

「サクヤなりに理由があったんじゃないかな」

「例えばペットが死んだとか?」

「弟子も居たな」

「なら聞くがサクヤの剣や弓や槍の流派は?」


 三人とも知らない、だからレドは合点が行く。


「普通武道家というものは流派をよく名乗るものだ。それが名乗りの様なもので自分の証だからだ」

「どこそこの何々さんと言った所か、要するに名前だな」

「ああところでサクヤの愛鳥の名前は」

「ドレよ?」

「逆に読めばレドだな」

「そうだね。はて?」

「ではサクヤの使った固有名詞は」

「私達の名前ぐらいだ」

「ならサクヤと特定できる固有名詞は」

「何が言いたのよレド?」

「まるでサクヤは痕跡を残さないように工夫している様だという訳さ」

「「!?」」

「まっ来るだろうが、サクヤを単なる老婆とか、単なる元武道家とかは思わない方がいい、普通にできる事じゃない、余程慣れた、まあ言わぬが花か」

「忍びか?」

「そういうものじゃない。お前さんらではまず合わない人種さ」

「なんだ?」

「俺も本職の方とは何度かやり合ったこともあるので知っているが、暗殺者という」

「バカな!サクヤはそんな奴ではない!」

「あたしね。ウルカに賛成よ。仲間をそんな風に言うものではないわよレド」

「僕もそう思う、だってお婆ちゃんって言っていたし、それは嘘には思えないし」

「若いねえ。暗殺者って言うのはあれだが、何も人を暗殺する殺しの専門家ばかりじゃない」

「「・・・」」

「中には色々な役割を互いに持つ集団や、暗殺者の育成なんかを行う者も居る」

「それで?」

「サクヤは恐らく後者、それもかなりの上位の立場だろう。あれだけの経験が出来る時代じゃない、あれだけの武を扱える時じゃないのさ」

「それを言うのならお前もなレド」

「俺も色々と合ったのさ、まあサクヤの槍捌きから言っても、東洋風じゃない、体格に合わせてから柔よくって奴じゃない、剛の方、俺の得意とする分野の方だ」

「だから?」

「そう言う槍の術ってのは日本じゃない、つまり国外さ」

「じゃ、じゃ国外からログインしていたの?」

「サクヤは言ったなかなか時間がないって、ログインするためにやってくる時間がないって訳さ、何せこのゲームは海外展開をしていないからな。会社の方も有るし、元々のゲーム会社から数えて二番目だしな、中身は変わらないが会社名は二番目だ」

「じゃ、サクヤは暗殺者を育成する組織の長って奴?」

「もしくはその上位、長たちを選別する立場だ。もちろん罷免する権力もある、会社でいうのなら絶対的な権力を持つ御隠居だ」

「ちょっと信じられないわ。でも痕跡がないって事なら確かに」

「もしくはその逆の立場、対暗殺者の組織だな。今でいうカウンターテロの方の」

「相変わり妙な事に詳しいな」

「色々と合ったのさ。まあ俺のような騎士タイプとは相反するやり方だ。騎士は名声だからな、対暗殺者、つまり暗殺者に対抗する組織って奴はバレない事が大前提でな、日本でいうのなら忍者とかを逆に叩きのめす奴らだ、現代でいうのならテロリストを逆にぶっ潰すのような仕事の、な」

「まあそういう話だとしても、サクヤは変わらんだろ」

「俺は言ったと思うが、サクヤは必ず来る、だがある程度の何かしらの対策は必要だ」

「えーと。要するに」

「サクヤは普通の老人じゃない、かなり危険な仕事をこなす立場の相当な上位の権力者だ。まっそんなんだから信用できるがな」

「おいポーション、何が言いたいかいえ」

「だからサクヤは普通じゃない、心配ご無用って訳さ、今頃自家用機なんかで空港にいるんじゃないかな、意外に直ぐに来るかもな」

「紛らわしい!」

「家のリーダーって時々変なことを言うのが困るよね」

「話は長かったけど、要するに心配するなって事よ?とても回りくどいわ」

「もう少し分かり易く言うなら警察とかの組織の長のその上さ」

「警察?その上?政治家か?」

「だからさっき説明したと思うが、教育を行う機関の組織の長などに影響を及ぼす存在、簡単に言えば理事長だ」

「・・・えーとつまるところ」

「かなり社会的な身分が高すぎる様な人?」

「むぅ難しい」

「警察官を教育する機関の中でも、カウンターテロなんかに人員育成為に教育機関の組織の理事長って事さ。日本ではなんというかは知らないが」


 そこに足音が聞こえる、レトがちらりと時計を見る、やはり時間の流れがおかしい、と慧の後にタブレットを見る、こちらも同じ時間を正確に合わせているのが合点が行った。


「ようサクヤ」


 レドが声を掛けると足音は止まり、ひょいと一人の変な物が現れる。

 身長は155cmぐらい、金髪の髪、灼眼の瞳、肌の方はペールオレンジ、極めつけは狐の様な耳、背中には見える狐のような尾をした、顔付きの方は少女の様だ。

 服装は胴着、腰には朱いベルト、朱いミニスカート、黒いスパッツも見え、黒いハイソックスに白いロングブーツをした少女だ。左腰には細い日本刀を指している。

 レドはこれで納得した。腰に差すような真似をしたら警察に捕まるからだ。

 そして護身に持つにはあまりにも目立ち、何より一般的ではない。

 老人がこんな変な事はしないのが当たり前だ。仕込み杖なら納得するとしても。


「なんという顔をしておるんじゃ主ら」

「お前さんの噂話さ。ちょっとホラー風味でな」

「殺すぞポーション」

「ハルバートが欲しい」

「首を切り落としたいわ」


 三名がそれぞれ口にするが顔は安心といった顔でホッとしていた。

 サクヤとしては外見にかなりのインパクトを期待したので残念だ。


「色々じゃのう、普通の女子に、のうレド」

「ああ普通さ、サクヤは仕事は良かったのか」

「主もよい顔をしておるの、好い事じゃ、仕事の方はバカ弟子に押し付けたから安心じゃよ、あの弟子も偶には気を利かせての、老人を労わるのは好い事じゃ」

「年齢の方も弄れるのか、凄いな、一応特殊メイクって落ちにしておくぜ」

「主も色々と知っておるの、まあおいおい聞くがの、まずは」

「若いしな、酒はなしだ」

「む。酒がないのに、香水の紅茶もないしの、困ったのう」

「ところでサクヤ、時間を合わす技術って大変だったか」

「レド、あまり言いたくはないがの、色々と妾も大変なじゃ」

「別にいいさ。座ってケーキでも食べながら話そうぜ」

「日本じゃし、味わいが好さそうじゃ」


 サクヤが座り、これで全員が揃う。


 □


「じゃあこれより第一回星空の記録オフ会を始める。リーダー役の主に錬金術師のレド、本名は天照宗久、来月の学校よりスライトリー学園普通科1年生の年齢は15歳だ。現在は実家を出て借家での一人暮らし、じゃあ普通じゃない枠№1のサクヤ」

「妙な枠は要らんのじゃがの、まあ本名は別にあるが日本語で言うのなら鳳鳴じゃ、仕事はまあ別によいか、とある企業体の総帥じゃ、色々としておるの、まあ企業体の名前は言えんのじゃ、ちと厄介なしがらみが多くてのぅ、家族は昔は居ったんじゃが、今は絶えておる、分家筋が今は主に担当しておるの」

「一応聞いておくが、どんな時代から来た、宇宙時代じゃないだろ」

「主は何処で気付いたのじゃ」

「時間を調整するなんってのはかなり無理だ。そもそも太陽が微かにも動かないなんてことはまずない、何より匂いが妙だ。薬品なんかじゃない、ついさっきまで風呂に入っていたような匂いを誤魔化すために臭いだ、その割には髪が濡れていない、特に後ろ髪の深い所の髪がな、後日本刀はこの時代には使えないんだ。それは本物だろ」

「ぬ、主はよく見ておるの、賢い事は好い事じゃ、まあ別によいかの、ちょっと別の時代からのぶらり旅じゃ、レドはこの世界の者にしては妙に詳しいの」

「まあな、昔のとある事件でな、別世界に行ったことがある、所謂の所の世界漂流って奴だな、もしくは異世界転移ともいうな」

「なるほどのう、主の妙な所はそこで身に着けたのか、まさかその世界で、リャナは」

「後で話すさ。大変だった。よしウルカ」


 現実主義者のウルカから言わせれば眉唾の様な、鼻で笑う様な事ではあるが、それはかつての事、色々と長けているレドに、時代に合わない格好に外見のサクヤを見れば納得がいく話だ。

 ただぶっ飛び過ぎた会話の為に、逆に冷静になった。


「サブリーダー役の主に忍者のウルカだ。本名は天川昴、学校は創成学園、普通科しかないのでこれは省く、学年は1年生、今はマンション暮らしだ。という訳でヒリュウ」


 ヒリュウは名前を呼ばれ慌てて名乗る。


「桜木このは」

「おーいヒリュウ色々と抜けているぞ」

「あ、うん、主にサモナーのハルバード使いの料理人、プレイヤーネームはヒリュウ、本名は桜木このは、学校はリーオン学園の1年生になる予定、現在は一人暮らしのアパート暮らし、女性のみのアパートなんだけどね。最後にアリサ」

「主にテイマーの細工師よ、プレイヤーネームはアリサ、本名は皐華菜、学校は宝満学園の1年生になる予定、小さな学生寮暮らしよ。もっとも女子寮だけどね」


 一通り挨拶が終わる。

 店員がやってきて注文を聞く、三人とも妙なと言った感想で、まるでぴったりと合うかの様だ。タイミングを見計らったにしては合い過ぎた。

 レドはにこりと笑い、メニューにない言い回しのメニューを頼む。

 店員はわからないので、メニューにないと答える。

 レドは更ににこりと笑い、このメニューですと指定した。

 サクヤとしてはこの少年が妙に知恵が回る事が困る。

 言い回しが分かればこの時代の人、言い回しが分からないのならこの時代の人ではない、メニューからのミスを誘い、言葉巧みに引き出そうとするような手口だ。しかも偽装までするあたりがなんとも、言葉で責めれば詫びて適当に誤魔化し、また言葉を引き出そうとする。

 店員も全員から注文を受けて、離れる。


「サクヤ、その刀の姪は」

「分かったわい、ちゃんと話す」

「時代検証が間に合わなかった、切っ先が鋭すぎる鞘なんて日本にはないぜ」

「ぬぅ、色々としたのにこうも知恵が回るとは、賢過ぎるのもなんじゃな」

「人間ってさ、ぴったりが出来ないんだ知っていたか?」

「・・・」


 サクヤは困る、他の三名も困った。レドはニコニコと笑いながら、出された水を飲む。


「人間は不完全、だからぴったりが大の苦手、日本でのあり得ない服装、日本ではありえない刀、日本ではありえない鞘、日本ではありえない対応、日本ではありえないタイミングでの注文の受け方、受け答えは出来ても言い回しが分からない、メニューに乗っているのに、それに対応する言い回しが分からない店員ってのはプロ意識に欠けるぜ、サクヤ入れ替えってのはどうかと思うぜ」

「人間は色々じゃな、主のような特殊なタイプの個体もおる、他の三名の様な普通と言っても過言ではない個体もある、ゲームでいう所のノーマルとユニークかの」

「しかも店と店の客と従業員を丸ごとってのもな、今の店員柑橘系の匂いがした、サクヤは蜜柑が好きだったな」

「とことん追いつめるの」

「所でさサクヤ、この柑橘系の匂いってどこに売っているか知っているか?」

「香水ショップとかかえ?」

「売ってねえよ。だってこの匂いは俺の知り合いが作った独自の品種の蜜柑の匂いだ。種から育てているから何処にもない、香水師も匂いを知らない、知らない物は作れない、それが店員二人がつけているなんて、どう考えてもおかしいだろ」

「・・・匂いとは厄介な物じゃな」

「それにな、人間には体臭が有るし、その人特有の匂いがどうしてもある、例え表情や受け答えが出来ても、工業製品が同じような香水をつけて歩き回ればすぐにわかるさ、だから案内は一人だった、注文を受け取りに来る者は別の者にしたのは評価が出来るが、ピッタリ賞は人間には出来ないんだ。無機物は専門外なんだがアンドロイドと言ったかな」

「大当たりじゃよ、しっかりと調べてはずなのじゃがな、主が妾の世界の者なら間違いなく出世したの、あのバカ弟子もこういうふうに成長しておればの」

「人間とばっかり戦って居たからな」

「それで主としては何が聞きたい」

「そうだな次のログインは出来そうか」

「・・・できるぞえ」

「なら問題はない」

「・・・散々追い詰めて、まあええ、で主は」

「ガキの頃に異世界転移、とある会社のゲームに酷似した世界にな、その世界に転移したのは俺を含めて5名、全員で帰還する予定だった」

「・・・」

「俺達はそんな自分達をゲームの世界に似ているからプレイヤーと呼んだ。その酷似した世界の名前はナイツ・オブ・ナイツ、この星空の記録の活動するワンオフ・フリーライフ・オンラインの前前作だ。データは3年前にぶっ飛んだ」

「・・・リャナは」

「その世界に住人で、まだ6歳だった俺を一生懸命助けてくれた人だ」

「6歳?」

「戦いは12年続いた。リャナはその当時の名前は言わないでおこう、12年間、6歳だった俺をひたすら助けてくれた、無償の愛のようにな、本当に成長できればと何度も泣いたさ。他の連中と違い俺は小さかった。バカなガキだった、騙されてそれを認めずに戦い続け、サーフと共に戦場にいた、俺達は不死だったし、死んでも復活するプレイヤーだった、だが老化はしないという束縛は有った」

「・・・」

「だがな、その中にも奇跡と呼んでも好い事は有った、サーフはその世界の住人との間に子供を作った」

「・・・」

「戦死したがな」

「辛いのう」

「奥さんも病死し、サーフは泣かなかった、息子が戦死したことを聞いた時もな、黙って首のない遺体をもって墓場に一人で葬った。それからというものサーフは憎んだ、息子を奪った敵も、その国も、その全てを憎んで憎んで憎み切った。憎くてたまらなかった」

「気持ちはわかるの」

「息子と仲の良かった俺には色々と教えてくれた、息子が姉のように慕ったリャナもな」

「人とは妙なものじゃな」

「俺達は5名だったが、二人は最初で裏切って宿敵の国に寝返った、残った俺達三名は長い間抵抗した、一人は俺、一人はサーフ、一人の方は名前は伏せるが今はワンオフ・フリーライフ・オンラインの主任開発者だ。腕前の方は完璧さ。頭も頗るよかった、博識だったし、この俺達の中でも飛び抜けて頭が良かった。こいつは本心を中々言わない奴だったが、俺達三名はいつも一緒に動き、いつか帰る事を夢見ていたのは俺一人だけだった」

「・・・だからバカなと自らを言うのかえ」

「ああ。なにもわからないバカな愚かなガキだった。最後の戦いの前に俺はその夢を捨てた、考えを改め、最後の戦いにおいては絶対に生きて帰るんだってそんな淡い物も捨てた、最後まで立っていればそれでいいってな」

「騎士となったわけか」

「最後に自分の上司である姫将軍に剣を捧げた、姫さんは俺の剣を受け取り、自分の剣を渡してくれた、やっとのこと最後に騎士となり、最後の戦いに赴き、激戦の末に神謀の首を取る為に突撃した、姫さんの剣もあり、獅子奮迅だなあれは、ばっさんぱっさん切り倒し、何せ姫さんが鍛えた魔法の剣だ。振れば数十mのかまいたちが発生し、敵を薙いで薙いで薙いだ」

「・・・」

「結局本陣まで行き着いた、あのクソッタレの猟犬さえ邪魔しなければ勝てていた、おまけにリャナを殺しやがったし、まっ最後にリャナの槍で突き刺して敵は取ったが、神謀の弓に射られてな、俺はそのままセーブポイント送りさ、その後サーフに殺された神謀の結果もあって作戦は成功したかに見えた、ところがどっこい神謀の頭は酷く冴えていた、最後の補給地点を強襲し、焼いた、俺達は餓死する羽目になるか、最後に全滅覚悟で戦うかの二択を迫られた」

「どうしたのじゃ、助けてくれるような敵ではあるまい」

「まあな、万に一つも助けてくれるような奴らじゃないのは解ってはいた、彼奴らの王を殺した王女が率いた軍だしな、それはもう憎かったんだろうな、死体に突き刺すぐらいにな、最後の決戦に敗北した俺達は、姫さんの最終的な敗北宣言を受け、最後の選択をした」

「投降でもしたのかえ」

「いや全員で逃げた、国の全てを焼いてな、姫さんの責任を取って俺の剣で戦い抜き、何千という騎士を虐殺した後に、炎の付いた神殿で姫さんは落盤に逢い戦死した」

「誇り高き女じゃな。主の王は」

「ああ。覇王の娘にして最も憎まれた姫だった、父親を殺し、その首を持って俺達の国に寝返り、民も家臣も国の全てを捨てた、猟犬も、神謀もそれまでの部下だった」

「・・・なぜそんな事をしたのかえ?」

「父親に政略結婚の道具となれってさ見た目が良かったからな姫さんは」

「・・・愚かな話じゃ、それ程の者を御せ者が居るはずがない、結婚とは言うが、要すれば政略結婚ではなく、子供を残す事を強要したに過ぎん」

「姫さんも解っていたのさ、頭の良い姫さんだ。直ぐに分かって自分の剣で父親の首を刎ねた、要するに姫さんが裏切ったのではなく、父親が道具にしようとして失敗したのさ、娘は道具じゃないのにな。そんな事を一切ぶちまけずあのクソッタレ共はねつ造し、自分たちが君臨した」

「酷い話じゃな」

「逃げ出した俺達を、彼奴らは最後の一人まで殺さないと気が済まなかった、抵抗と敗走を重ね、最後の海まで追い詰められた。俺は仕方なしに戦った。姫さんの剣でぶった切りまくり、まあ単なる騎士や兵士では俺の相手にならないと分かったんだろうな」

「・・・汚いのう」

「船と食料と水をやるからと言って俺の裏切りを強要した、まあそんなことを言った奴は結局死んだ。サーフがそんな事を許さはずがない、その場で切り伏せられた」

「それはもう憎しみしかなかったろうの」

「しかし、提案された物は別動隊が奪って逃げだした、最後の一隻ぐらいは何とか逃がしたがな、まっそんな後に残った者は戦って果てていった」

「最後は首を刎ねられて海かえ?」

「ああ。俺とサーフは最後のセーブポイントに送られた、まっこんな話だ」

「最後に一つだけ」

「年齢か?」

「12年と言ったがの、とてもそうには思えん、リャナは21年と言った」

「地球基準時間と、その世界の時間の違いだ」

「なるほどのう暦かえ」

「ああ。そんな訳で俺達は帰還しましたとさ。めでたしめでたし」

「全然めでたくないがの、まあよい、その姫というものと酒が飲みたくなったぞえ」

「イーニャの上空にあるそうだ」

「行ってどうするのじゃ?」

「・・・分からん、まあ姫さんの剣位は持ち帰りたいがな」

「・・・・妾も似たような経験をしての、妾も騎士じゃった、国を奪った者を憎んだ、その復讐だけに生きた、いつの間にか虐殺騎と呼ばれた、我が子のようなバカ弟子はそんな妾を憎み見限った、別の世界に転移していた再会したバカ弟子は言った、あんたのやった事は人生の中で反吐の出る様な虐殺ばかりだったとのう、しかし弟子は変わっておった、妾を逃がすほどにの、襲えば倒せたのに、殺せたのに、絶好の機会だったのに、逃がし有ろうことかもう一つの世界を見せた、幾つもの世界を見せ、まあ結果としては和解しての、今は妾の世界で生活しておる」

「色々だな本当に、娘達には言えないぜ」

「娘達?なんじゃ誰か増えたのかの?」

「ピローテスがお父さんって、すげえ嬉しかった」

「・・・羨ましいのう、妾も娘が欲しいぞえ、どうも男の家系らしくての、娘が生まれんのじゃ、あのバカ弟子に期待するしかないのがなんても悔しいがの」

「孫になっちまわねぇか」

「いいんじゃ、孫娘だろうが娘なら別にいいんじゃ、男ばっかりはもう嫌じゃ」


 そんな二人の会話を聞いていた三名はどうしたものかと悩む。

 どうも二人とも年齢という点に置いて途方もない時間を生きたことは想像に難くない。


「・・・納得がいかん」

「長く生きたいの?」

「そうではない、このポーションが冒険している間に私はあの狂人共にゲームを封じられた生活を強いられた、納得できん、どう考えても理不尽だ、ああゲームがしたい、冒険がしたい、生産がしたい」

「落ち着いてウルカ、ひとまずレドは年上よ」

「ふっ。だからどうした?」

「強いわねえ」

「武士だね」

「おいポーション」

「だから俺はポーションじゃないんだがな、でなんだ」

「その世界への行き方は?言え、言わねば殺す」

「ねえよ。何せ知っている奴は絶対に口を割らない奴だ。俺の頭を0.1としたらそいつの頭は1000万位だ」

「・・・とんでもない天才なのか?」

「ゲームの開発者だ」

「・・・あ、頭の出来が、ち、違い過ぎる」

「・・・しいて言うのならLv1と、LvMAXのINT特化位の差だね」

「・・・顔は?」

「アリサ、そんな奴が女に御せると思うか?」

「や、やってみないと」

「辞めとけ、無理だって、そもそも仕事中毒者だ。しかも開発現場にテントを作って暮らしている奴だ」

「「・・・」」

「筋金入りじゃの」

「世界を作る事に人生を全て賭けるような奴さ」

「老後みたいなモノじゃからの」

「そう言う事さ」

「道理で妙な事に詳しいはずだよ」

「超お爺ちゃん?」

「6歳のまま時間が過ぎただけさ」

「親御さんは?」

「もしな子供が神隠し会った、帰ってきて、様変わりしたように力を求めたらどうする」

「・・・親としては辛いのう」

「しかし遅いなあ」

「人生色々ね。まあポーションには感謝しているわ」

「なんだよ藪から棒に」

「だってあの子達を助ける薬があるのよ?男仲間第一号に認定したのはそれが理由」

「・・・酷くないかアリサ?」

「結果よければすべてよし、男は細かい事に拘らない」

「悪女だからなアリサは、男をゴミとしか思っていないのが、なんというか」

「ウルカ、言うのもなんだけど、ゴミは必要ないからゴミなのよ」

「よかったねポーション、ゴミから仲間に昇格」

「お前も大概な辛口なヒリュウ」

「仲間限定だしね。普通なら男なんかと口きかないし」

「なんで?」

「小さいとか言って虐めるし、中学になったら可愛いって言って近寄るし、碌なものじゃない」

「適当に利用して仕向ければ楽よ?」

「嫌、話したくないし、むしろ近寄るな」


 男をゴミのように扱う悪女のアリサ、男に嫌な思い出しかないヒリュウ、ウルカとしてはヒリュウに似た様な思い出があるのでそれは理解できた。


「私の場合は巨人扱いだ。男も、女も、死んでしまえ」


 人間不信気味の経験があったらしいウルカだ。

 ゲーム世界ではいたって普通な少年少女も、リアルでは色々と合ったらしいことが伺える、なんとも人間というもの変な生き物だとサクヤはつくづく思う。


「この店遅すぎる、なんでケーキの数個程度にこんなに時間がかかる」

「・・・はて、さっき」

「言わない言わない、質の悪い機械のすることだ。融通の利かない事をしているのだろうよ」

「ティアちゃんとか、ピローテスとか、リャナとか、ピュシーとか、アイリスとか、十分特別なんだね」

「まあな。あの世界のAIはオンリーワンだ。どんなものもこれに反する事は許されん、たった一つのたった一つの自由な人生、それ事が彼奴の作ろうとする世界さ」

「・・・あの子達に逢いたい」


 男をゴミのようにし考えないアリサも、我が子のような二人はよほど大切の様だ。

 ヒリュウも常に要るセリルやアイリスという者も居るので、気持ちの方はわかる。

 ウルカも昔なら鼻で笑ったが、今はNPCも一つの仲間と思うほどに気持ちは有るので痛いほどわかる、先程までのワイワイ言っていた3名が俯いて黙る。


「人間というのは不思議なものじゃの、のうレド」

「人間だから、不完全なのさ、完璧だったら愛なんて要らない」

「主の王はどうなんじゃ」

「完璧な奴が友人を作るのか?」

「そうじゃの」

「完璧だったら何もいらないさ、完璧じゃないから何かが要るのさ、呼吸をして朝日を浴びて、毎朝の日課のように愛用の剣を振るう、それを重ね、それを共有したいと思う衝動が有っても満たされない時間を生きるのは辛い物だぜ」

「世界はかくも苦難を与えたりじゃの」

「苦難ねえ。今が幸せだから別にいいがな」

「弱き者にムチ打つのが趣味じゃからな世界は」

「悪趣味だぜ。しかしこいつらも少しずつ変化する、サクヤも変化を望むのか」

「望むのう。いつの日か、そう思うわい」

「パンドラって知っているか、あれが無ければ人は苦しまなかった」

「されど人は知ってしまうものじゃ、知ったらその味を求めるものじゃ、それは渇きを潤す水を求める様なものじゃ」

「どうしてってかな、彼奴ら」

「人は儚いぞレド」

「じゃあどっちに生きるんだ。夢見て走って果てるか、悔いて歩いて死ぬか」

「お主らしい賢い事じゃ」

「俺なら夢見て走って死ぬ、それの何も悔いがないはずがないが、姫さんは言った生きろって、リャナは庇った俺を庇って死んだ。色んな奴が生きろと言った、この醜い世界で生きて、生きて生きて、死んで行って奴らの分も生きるのが今の俺の使命さ。まあそんな使命も忘れるものだがな、いつかくたばったら、くたばった連中に説教してから説教し返される物なのさ」

「変な生き物じゃ人間とは、妾の様なモノからしても、人は変じゃ」

「いいじゃないか、人それぞれさ、それこそが個性というものだ。あの世界にはそれはあったと思うぜ。もう一つの世界にな」

「生きる世界こそが世界かえ?」

「じゃ、この世界は誰が作った、あの世界は誰が作った、その満たされた心にある絆は誰が作った、そこにある一つの自由な人生を歩む誰かと誰かの時間の結果じゃないのか」

「・・・主があの時おればのう、妾も馬鹿な事はせぬかったじゃろうの、せんのない事じゃな、しかしいつになったら来るんじゃ、少しこれは可笑しくないかえ」

「腹減った、もうこの店から出て適当に飯でも食うか」

「妾としては別の良いがの」

「おい忍者」

「・・・いつか殺すべきと思っていたが今殺してやろうか?」

「いつまでたってもうんともすんとも言わない、腹も減ったしどっかに食いに行くしかないぜこれは、悪女」

「・・・話は分かるけど酷いわ」

「最後にシェフ、料理」

「お菓子は専門じゃないよ。しかし水の一杯しか出ない店なんて聞いた事もないよ」

「よし飯でも食いに行こう、このままじゃあ倒れちまう」

「うむ賛成だ」

「リーダーに賛成」

「あたしも今ならヒリュウの料理なんて贅沢は言わないわ」

「決まったの」


 □


 店を出てから適当な飯屋に入る。

 腹ペコの一行は席に着き、直ぐにメニューを見てから注文した。

 店の者も妙な一行の注文を受けて作り出した。

 直ぐに出された料理は、一人一人違うものの、食べようとするレドを四人が見る。

 理解したレドが首を振る。


「調味料はないぞ。さすがに持ち込めないからな、そもそも今日はオフ会だろ」

「使えないポーションだ」

「ポーションが完備しないとかどんな不備」

「適当に調合して」

「ないのかえ?味が困ったのう」

「そもそも材料がない」

「むぅ。さすがに空気は嫌だ」

「材料無しじゃあ作れないね」

「残念ね」

「・・・本当にないのかえ?」

「ない」

「仕方ないのう。料理人次第か」


 レドが食べ始めると他の面々も食べる。

 味の方は悪くはないし暖かく美味しい料理だが、ゲームでも常に美味しい物ばかり食べる為に物足りないのは仕方がなかった。

 店の主の方は、この妙な一行の会話に舌打ちしていた。

 所謂の所の嫌な客と判断したらしい。


「カレーは安定しているな」

「今日のハヤシはちょっと甘すぎるかも」

「むぅ。物足りん」

「味は決して悪くないのじゃが、いつもうまい物ばかり食べるせいじゃからの」

「当たりじゃない」


 食べ終わりそれぞれが感想を言う。

 店の主の盛大な舌打ちが聞こえる。

 そこに一人の男の声が聞こえる。


「うげぇ皐かよ」

「玉無し男!」


 理解したレドが懐から一つの手帳を取り出して見せる、簡単な警察手帳だ。

 店の主人も凍り付く、元彼氏さんも凍り付く、他のお客さんも吃驚。


「事情を聞かせてもらえるか」

「刑事?」

「俺は何も!」

「男の証言は半分近くがな。まずそこに座って、話を軽く聞くだけだから」


 元彼氏は怯えていた。

 レドもこれはおかしいなと思うほどだ。


「小物捕まえる仕事じゃないから」


 元彼氏の男はコクコクと頷く。

 席を移って互いに対面し、店の主が水を出して去る。


「名前は伏せる、その方が何かと好いからね、お互いに話を聞いただけ、それで互いにさよならして万事めでたし、名前を言えばどうしても法的にね。君も少し困って話を聞いてもらっただけ、俺は少し話を聞いただけ、とある女性の名前は互いに出さない」

「は、はい」

「うんじゃあまあ、職業は」

「学生です」

「学生ねえ。その割にまた随分と派手な物をつけているね」

「こ、この指輪は」

「おっさんもね。昼飯時には仕事はしたくないが、君が熱心な刑務所暮らし愛好家なら別にいいんだがね、違うだろ」

「は、はい違いがいます」

「指輪じゃなくてその首筋にある物だよ。それは確かとある景品だ。何処でも手に入るものじゃない、誰でも手に入るものじゃない、確立すれば、まあおっさんの給与はぶっ飛ぶね」

「・・・」

「学生さんが、時価の物を身に着ける程、羽振りが良いのは、しかもそれは換金するとしたら楽しい数字だ。ネットに流せばかなりの収入だろうね。前期の学費も吃驚だよ」


 元彼氏がくがくと怯えが酷くなる。


(当たりか、悪い奴っちゃな)


「水飲む?」

「は、はい」


 がくがくと震える男に水を渡す、見るのも可哀想になるほど震えてから飲む。

 飲むというより零す方が多い。男の手元を見ていたレドはこいつはと思う。


「じゃあ次の方に行こう、前にね。とある話を聞かされてね。詳しく言えばまあおっさんは晴れて無職だ。そう言うお話を君が聞くと、君の生活は大きく変わる、学校ではまず教師から煙たがれ、生徒からは不審な目で見られる、晴れて君は不登校になり、適当な理由がつけられて補導され、まあそんな物騒な話は置いて、そんな時にちょっと小耳にはさんでね。とある景品がどこかに歩いて行ったらしい、足でも生えてくれたなら適当に捕まえていればよかったんだがね」


 元菓子の男はすさまじく震えだす、しかも大量の冷や汗まで流していた。


「外しちゃあだめだよ。それが完全に見えたらおっさんはどうしても名前を言わないといけなくなる、後袖の下にあるキラキラとしたものは隠しておくといいよ。こんなお話で怪我はしたくないしね」

「ど、どうすれば」

「君は交番に行って落とし物として提出すれば感謝されるよ。持ち主はマニアだったらしい、ただ途中でちゃんと捨てからの方が良いよキラキラとした物はね」

「・・・」

「そう言うキラキラ物は持たない方がかえって安全だよ。そもそも扱う為の訓練も受けていないようだしね。完全に見えたらその時は君の両目を潰してから取るしかないからね。じゃあそう言うことで、ああそうそう君はマニアか、二つもつけて、反対側の首裏の方は学費10年分だろ」


 男が刃物を抜いた、レド手元の水を目にかけて腕から取り上げる。


「悪い奴だな。強盗した物を首の後ろにつけるとか、悪趣味な、おっさんもね昼はね。神聖なものと思っているんだ。何より食事の後はゆっくりしたいしね。ほらら行った行った」


 男が逃走しようとするが、直ぐにサクヤの刀の鞘が置かれ足を引っかけ捕まる。


「主のう、こんな奴を逃がそうとはどういう了見じゃ」

「面倒だから、いやだってさ飯食ってから適当に証拠写真を送りつければ晴れて逮捕、俺がやる必要ないじゃないか」

「相変らず悪知恵が働くな」

「ポーション、こんな奴を逃がそうとしたの?」

「いいじゃねえか強盗位、適当に普通の警官が捕まえるさ、そいつは後に俺に感謝して適当な情報が流れれば万事めでたし、俺も幸せ、みんなも幸せ」

「これだから男は」

「それにさ管轄って奴がどうしてもあるんだよね」

「そう言う問題じゃない!」

「はぁなんでこうも若い女性は正義感が強いんだろうね。単なる悪趣味な強盗犯なのに、一応言っておくが管轄が違うは捕まえちゃあいけないんだ。下手したら職権の関係で逆に縄が付くね」

「色々と厄介なものね」

「じゃあ捕まえて突き出すのは?」

「おっさんがお縄になるね。まあ公務中でもないからね。店内での刃物を振り回そうとした未遂だね。未遂だからね。おっさんは話を少し小耳に挟んだ世間話をしただけ」

「責任逃れに、保身の塊か主は?しかも警官に恩を売って情報とは」

「だって管轄が違うし」

「突き出そう」


 女性陣は突き出す事を選んだ。

 レドとしてもこうなったら渋々に付き従う。

 交番に突き出された元彼氏、レドが説明し、首後ろの物と刃物を見せる。

 警官も吃驚と、女性陣も納得した。


「これは感謝します」

「あ~うん。世の中世知辛いよ」

「まず」

「捕まえたのはこっちなので俺には手柄はない、つき出したのはこっちの方なので本来俺が書面する必要もない、俺はあくまでも説明を軽くしただけ」

「・・詳しいですね」

「色々と不幸があってね」

「・・・」


 若い警官が年上に警官をちらりと見る、年上の警官はじっとレドを観察し、若い警官に頷く。


「少しお話は聞けますか」

「そうなるよね」

「ええそうなります。直ぐに済みますから」

「しゃあねえか、ちょっと電話を借りるよ。お話が通じれば直ぐに分かるから」


 固定電話のボタンをプッシュし、直ぐに応答が出て、若い警官に貸した。

 名前を聞いた若い警官は唾を飲む、ただならぬ空気を察し年上の警官が変わる。


「後で説教されるから嫌なんだよ」

「誰じゃ?」

「すげえ面倒になるから話さない」

「くだらぬ事をしたら斬るぞ?」

「分かったよ。長官だよ。馴染みなのでね。ああ説教が二乗になった」

「色々と訳の分からない仕事を受けていそうじゃの主は」

「はぁどうしてオフ会でこんな目に」

「・・・本当にこいつは」

「忍者それ以上は言うな、言ったら俺の説教の時間が更に増加される」


 色々と叩けば埃の出そうな奴であった

 年上の警官が若い警官に言う、若い警官の方はかなりショックだったらしく年上の警官を睨み、意を決してレドに言う。


「今すぐに来いとの事です」

「そうなるよね。そして嫌な仕事を押し付けられて働けって言われるんだろうね」

「ひとまずオフ会は延期じゃな」

「面白そうだし」

「興味あるかも」

「碌な事になりそうもないが、一応な」

「知らないっていいね。あんなにこき使われるのに、しかも俺一人が苦労するんだろうね」

「お主の人生じゃ好きにせえ」

「逃げたら倍化されるんだ」

「主の上司も大変な苦労をしたの可哀想じゃ」

「いやいやおかしいでしょ、俺が働いて彼奴は執務室で適当に遊ぶだけだぞ?」

「主が逃げるからじゃ」

「不等式がおかしいって!俺だってやっとのこと縁を切ったんだぞコツコツと失敗もしたし、失態もしたし、失言もしっかりと重ねたし」


 聞いている者の頭が痛くなりそうな台詞を言う。

 ウルカの目が険しくなる、こういう奴が大嫌いなウルカの生真面目な性格が動き出したらしい。


「俺だってちゃんと金と仕事が見合えば働くさ、彼奴は馬鹿げたはした金で必要経費も支払わずに、自腹切れとかいうんだぜ!酷い話じゃないか、働くだけ赤字だ」

「どっちもどっちの様な」

「この部下にして扱う上司は立派ね」

「バカ弟子並みに酷いの」

「おいポーション、ひとまず話そうか、逃げたら倍化ではすまんぞ」

「なんで俺はこう言う不幸が、生きる為に働くのに生きる為の金を奪う仕事なんてやってられるか」


 悲痛な叫びであるが、聞いていた人々はどちらも碌なものじゃない、少なくても積極的にかかわろうと思う人はいないだろう。

 しかしウルカは素早く接近しレドの首を掴む、万力のような力で占めて持ち上げる。


「公僕が、仕事を何だと思っている、本気で殺すぞ」

「落ち着かんかウルカ、コヤツは本当に死ぬぞ」

「死ねばいい、いや今すぐに殺そう」

「このええもう」


 サクヤが刀を抜き一瞬で抜刀するも、ウルカは冷静にレドを反対側にし、盾にした。


「えげつない事をするの」

「死ね」


 更に力を籠める、レドの方は暴れずに何かをしていた。


「いかん薬品は!」


 サクヤが叫ぶ、ウルカも冷静に対処し、レドを放り投げる、レドは空中で一回転し直ぐに身を翻した。


「逃げても無駄だ。特化されたセンサーが働くからな」


 一般枠のアリサとヒリュウは展開についていけず硬直中だ。

 ウルカが本当にキレていた。


「やはり殺しておくべくきだった、ああいう屑がいるから」


 本気で殺す気らしい、サクヤとしてもどうすればよいのかが分からない。

 基本的にこの世界の事に疎いサクヤには、どうしてよいものかが分からないのだ。


「ああもう、このバカたれが」

「邪魔をする気かサクヤ」

「沸点が低すぎるわい、この頑固生真面目娘は」

「殺すのは忍びない、気絶だけですます」


 よくわからないがサクヤを敵と認識したらしく、信じられない速度で接近し溝に拳を当てようとする、サクヤも避けようとするも、後ろには二人がいるので苦渋の決断で刀を盾にした。

 バキ

 鋼の刀をたたき割り、サクヤの溝を拳の衝撃が突き抜ける。

 周りの者は凍り付く、警官達も硬直する。

 サクヤが撃沈し、ウルカは素早く跳躍しレドを追う。


「人間じゃない」

「は、鋼を素手で」


 警官が戦う相手は人間だ。鋼を素手で叩き割る剛力を持つ、一つの化け物と戦う訓練など受けていない。

 逃げ出したレドは、用意していた装備を確保するために直ぐに仲間に連絡する。


「おいサーフ生きているか」

『・・だから言ったではないか、ウルカとはリアルでは会うなと』

「いいから装備を持ってこい」

『今向かっておる、ウルカの様な生真面目な娘からすれば、小僧の様な不真面目な奴が許せないことぐらいわかるだろ』

「後の祭りだ」

『予想しうることじゃな、小僧らしくもない』

「いま直ぐに着け!彼奴は本気で殺す気だ」

『じゃろうな小僧がそんなに慌てる相手じゃ、余程のことになったとしか思わんぞ』

「どこだ!」

『その陸橋の真下に飛び降りろ』


 レドか陸橋より飛び降りる、オープンカーのジャガーのボンネットに落ちる。

 老紳士のサーフが装備の入ったボストンバッグを投げてよこす。


「サクヤはしくじったか」

「サクヤの装備ではどうしようもない、細身の刀一本で止められる奴じゃない、俺の首を持ち上げて吊るしたたんだぞ?」

「それは本気でキレておるぞ、理性のぶっ飛んだ人間相手には並みの装備は効かんぞどうするんじゃ小僧」

「どうしよう」

「ひとまず逃げるしかないな、車にはさすがに乗れんじゃろ」


 レドかふと視線を感じその方向を見る。危うく悲鳴を上げそうになった。

 サーフはそんなレドを見て悟り、直ぐに車を発進させる。


「ちっ車で逃げたか、まあいいどのみち何処にいても分かる」


 ウルカの顔は能面の様に動かず、淡々とした声で呟く。

 怒りがMaxの為に本来なら理性はないはずだが、理性が残り、しかも体内のリミッターの解除近くまで言っているらしい、後の事は全て切り捨てた危険なブーストだ。

 レドに特化されたセンサーにより、冷静に追う。

 全てはレドを殺す為だ。


 そこに通信の音が響く。

『ワンオフ・フリーライフ・オンライン』の運営からだ。

 要件の方はとあるお願いを聞いてくれたら専用の和風ジョブをプレゼント。

 恐らくレドの仲間の開発者という男だ。

 迷うこともなく通話した。


「はい」


 □


「なるほどね」

『余り世話を焼かすな』

「感謝するぜ」

『まあ別にいい彼女からの提案で色々と企画も考えられたしな』

「今回はさすがに殺されるかと思った」

『だからああいうタイプの女とは付き合うなと口を酸っぱく言ったぞ?』

「いやだって仲間だしな」

『・・・悪くない話だ。彼女もそう言っていた』

「よくある喧嘩って奴さ」

『そうだな。性格は全く違うが、それも一つの出会いではある』

「感謝するぜ。ところで本名を言う気にはなったのか」

『名前など捨てた、じゃあな小僧』


 通話が切られてから、サーフは車の運転を再開し、レドは専用装備を外し収納した。


「今回も無事完了だ。いや~好かった」

「いつかウルカに殺されないとも限らんのに、暢気なものじゃ」

「所でサーフ、どこに向かっている?」

「ボスが連れて来いと、名前を出しそうじゃの」

「長いんだよな。説教がさ。あのキャリア」

「安心しろ。彼奴らも回収している」

「碌事にならないと思うがな、どうせサクヤの事だろうが」

「話しておく必要があるのはわかるだろ」

「いやだねえこれだから官僚って奴は」


 酷く嫌な事になりそうなので、ひとまず寝た。


 □


 とある大きなビルの最上階の執務室。

 そこには『星空の記録』の面々とサーフ、一人の剃髪の偉丈夫がいた。

 この偉丈夫がレドの元上司、サーフの現上司だ。

 説明された後に、若い秘書が去る。


「さっ楽しい説教タイムだ天照宗久。最近色々と増えてね。仕事と説教のどちらがいい」

「どちらも嫌だ」

「そう言わんでくれ、説教は私の大好物で、仕事の方はとある老紳士からのささやかなお裾分けだ」

「てめえサーフ」

「知らんのう。儂も腰が痛いのでの、老人には運転は疲れるわい」

「よく言うぜ。そんなに変わらない癖に」

「まずだが、大赤字になる仕事と、赤字になるがつまらない仕事と」

「おい黒字にしろよ」

「予算は有限なのだ」

「そう言って俺をタダ働きしているじゃねえか、サーフには大金でなんで俺には一円もないんだよ」

「君の華麗な破壊の結果だ」

「知らねえな」

「海外からも話が届いているそうだね」

「ああいう仕事はどうも、好きじゃない」

「君に大金を積んでいるとも聞くが」

「その金って奴が偽物じゃなきゃあな、偽装通貨なんてものだったらまあ色々とな」

「一応調査は続行しておいてくれ、その手の事は君の大得意だ。世間的には言えんがある程度の工作は許可するしね」

「時給10万円ぐらいは」

「0円で」

「なんで俺の周りの奴は俺を労わらないんだよ」

「君は裏切らないからね。君なら雑に扱っても安心だ」

「酷い」

▽登場人物紹介

[レド]:星空の記録のリーダー。主に錬金術師

特徴:186cm。髪色は白髪に近い銀髪、瞳色は黒、肌色は褐色。

種族:ダークエルフ 性別:男性・女性に変化させられる。

[リアル]

身長:184cm 髪色は黒、瞳の色は黒、旗の色はペールオレンジ。

国籍:日本 性別:男 借家暮らし

職業:学生 学籍:スライトリー学園 学年:1年生

氏名:天翔宗久

[人物紹介]

人が好く情に弱い性格、おふざけ、実験好き、過去に壮絶な経験をしたことがあり、過去の恨みを晴らす事を目的に生きていた、サクヤに諭され過去に拘らず生きる事に改めた、リアルではがり勉で、ゲームするために勉強するタイプだったが、現在は主に有機物の知識を追い求め、勉強を楽しむようになる、毎日三時間のトレーニングを行う体力派の高校1年生、仲間とは学校が全て違うが、ゲームを通じ繋がる。


[ウルカ]:星空の記録のサブリーダー。主に忍者

特徴:160cm。髪色は黒、瞳の色は黒、肌の色は白色

種族:ハイヒュム 性別:女

[リアル]

身長:175cm 髪色は銀髪 瞳の色は碧眼 肌の色はホワイト

国籍:日本 性別:女 マンション暮らし

職業:学生 学籍:創成学園 学年:1年生

氏名:天川昴

[人物紹介]

『始まりの七日間』より行動を共にするPC、レドの男性アバター時には物理的な突っ込みを入れる役目も持つ、脇役好きで時代劇好きな少女、リアルでは親より結婚しろと言われている為、ストレスからよくゲームに没頭するタイプの女性だったが、レドの妙案により解放されたヘビーゲーマー、その後にサクヤにも諭され、少しはレドに譲歩した。最近は裁縫師(生産ジョブ)を取り、トレジャーハンター(戦闘ジョブ)も取った。


[サクヤ]:星空の記録の大御所、主に槍使い。

特徴:150cm 髪色:金色 瞳色:紅玉 肌色:ペールオレンジ

種族:フォックス 性別:女

[リアル]

身長:150cm 髪色は金髪 瞳の色は茶 肌の色はペールオレンジ

国籍:未来 性別:女

職業:総帥 学籍:― 学年:-

氏名:鳳鳴

[人物紹介]

かつてレドと『刀京』のPVP大会で決勝を争った女性プレイヤー。その後も縁があり呪われし海での時にも協力し、レドの勧めで召喚士ジョブを取得、その後に正式に加わり、弓使いのジョブも取得している、リアルでは信じられない高齢の為に、言葉には重みがありPTでの大御所の様になる、朱雀のドレは愛鳥で、プレイするときは必ず召喚し、ティアに通訳を頼むこともある、槍の達人で弟子も居たらしい。


[アリサ]:星空の記録の世話役、主に獣使い

特徴:白髪に近い銀髪 瞳色は銀色 肌色は乳白色

種族:ハーフエルフ 性別:女

[リアル]

身長:160cm 髪色は黒 瞳の色は碧眼 肌の色はホワイト

国籍:日本 性別:女 寮暮らし

職業:学生 学籍:宝満学園 学年:1年生

氏名:皐華菜

[人物紹介]

『始まりの七日間』より行動を共にするPC。弾む様な声を出すのが特徴、世話好きの女性でいつも誰かの世話をする、動物に詳しく狩り好き、従者の二人を家族のように接し、深い愛情を注ぐ、レドの作った蘇生薬で二人が助かると分かり、レドに強い仲間意識を持つ、ウルカやヒリュウとも仲が良く、生産では細工を担当する、最近では細工師も取り、生産の確かさを増やすも、リアルが忙しく中々プレイできないのが悩み。


[ヒリュウ]:星空の記録の料理人、主に召喚士

特徴:157cm 髪色はペールピンク 瞳色は碧眼 肌色は乳白色

種族:エルフ 性別:女

[リアル]

身長:145cm 髪色は黒 瞳の色は黒 肌の色はペールオレンジ

国籍:日本 性別:女 アパート暮らし

職業:学生 学籍:リーオン学園 学年:1年生

氏名:桜木このは

[人物紹介]

『始まりの七日間』より行動を共にするPC。一人称は僕、所謂の所の僕っ子、いつもは陽気で少し臆病ながらも、戦闘では勇猛果敢になりスイッチが入り変貌する。生産では主に調理の他に鍛冶、木工を行う、召喚士としての腕前は高く豊富な召喚従者を持つ、精霊使いという異名を持ち、現在のPTの主な火力、テイム型の従者もおり非常に強力な召喚を可能とする、リアルでは背が低く、ゲームではかなり盛ったらしい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ