021:四門ダンジョン。其の8
3月28日の午前9時のログイン。
始まりの町の『イーニャ』このPT『星空の記録』の定宿『金色の猪亭』の自室での目覚め。
黒髪おかっぱ少女のティア、テイム型従者のダークナイトエルフのピローテス、テイム型従者のリトルフェンリルのユキカゼ。
いつもの2名と1匹を見て安堵したレドは、周囲を見る。
「居ないな」
レドの独り言に、ティアとピローテスが首を横に振る。
ティアがレドの後ろを指をさす。
レトが振り向いたとろには、朱い鳥、朱雀のルリだ。
その顔を言い表すなら無表情、瞳を言い表すなら。
『居るぞ?』
そんな目でレドと瑠璃色の目を合わす。
MP20%を消費する朱雀が常にいた。
「呼んでねえよ。何でいるんだよルリ」
「・・・(ぷい)」
「頼むから呼んでもないのに現れるなよ」
「・・・(ぎょろり)」
「分かったよ。そう怒るな」
「・・・(こくり)」
「困った鳥だぜ」
【従者召喚:リャナ】
癖のないストレートの、金糸と思う様な金髪の美女が現れる。
【従者召喚:ピュシー】
赤毛の七三、虫の様な翅の生えた女性が現れる。
「おはようさん。次からもっと大きい部屋で呼び出すよ」
「おはようございますマスター」
「おはようマスター♪でも狭いかも」
「はいはい。出ようね。部屋の前で待っていてくれ」
ティア、ユキカゼ、ピローテス、ピュシー、リャナが出る。
「お前もだ!」
ルリは特に気にした様子もなくベッドから降りてとことこと出ていく。
ベッドの上に座り、ちょっと考えなくもないが、ルリには色々とお世話にもなっているしと、考えないようにした。
いつもの女性アバターではなく、男性に変更してからスーツを身に纏う。
右腰には暗黒騎士剣、背中には小盾、肩から吊るすクロスボウの武装も確認した。
一人の時間を少しだけ楽しみ、外に出る。
「おはようお母さん」
「おはようようマスター」
「ああ。おはよう」
下に降り、いつものようにヒュディックがメニューを準備し、女将が客用の新聞を読んでいた。いつの朝だ。
仲間のウルカ、サクヤ、アリサ、ヒリュウはまたログインしていない。
「今日は朝から自由行動だ」
「マスター?」
「どうしたのお母さん?」
「ちょっと辛い事が多すぎて、ソロプレイがしてみたい」
「マスター?私達は?」
「食事が終わって準備を整えてから一度戻りましょう。よいですねピュシー?」
「別にいいけど、ちょっと寂しいかも」
ルリが足を蹴る。
「痛いぞルリ。一度でいいからソロプレイがしたいんだ。悪いな」
ルリが更に蹴る。
「すまん」
ルリが仕方がないと溜息を吐く。
「ただ消える必要はない、帰る必要もな。そのまま留まってくれ」
「えと?」
「所謂休暇というものですねマスター?」
「そう言うのも偶には必要だろ?ルリもよいか?」
「・・・(コクリ)」
「ティア?」
「それならよいけど」
「マスターも偶には一人になりたいときもあるのだと覚えておく」
「そう言う事だ。夕方に落ちあおう」
「はーい」
「心得ました」
「了解だ」
「ティアは久し振りに会ったんだけどな」
「すまんティア、5時間だけ時間をくれ、今日は夜までいるか」
「うん♪一緒に寝ようね♪」
「ああ」
昼飯を食べてから、久しぶりに南側に行く。
様々な反応があるが、友好的な臨時を見付けて挨拶する。
「錬金術師だが、参加してもよいか?」
「・・・別にいいが」
「あんたレドだろ?」
「プレイヤーネームはレドだ」
男性プレイヤーの二人はそれぞれ名乗る。
「騎士職魔法騎士のカズヤだ」
「戦士職斧使いエギルだ」
「錬金術師職調合士のレドだ」
「海底ダンジョン行きだぞ?」
「行った事がないからOKだ」
「へー意外」
「四門をぶっ潰したプレイヤーがよく言うな」
「あんまり言うとPKしちゃうぞ?外野?」
クロスボウを向ける。
外野呼ばわりされたプレイヤー達が一斉に武器を向ける。
しかしなんというべきか。
「もしかしてビギナー?」
そう初心者装備張りの様なナイフ、シャツ、ズボン、サンダルと言った格好だ。
「悪かったな、初心者虐めはしない主義でね」
「初心者じゃねえ!」
こう叫ぶ逆毛頭の男。
「お前らに装備を剥がされたんだ!」
勇ましく情けない事を吼える金髪リーゼント
「俺達の装備を返せ!」
涙を流し叫ぶ長髪男。
「なんでこんな目に」
すっかり弱気になっている唯一の斧使い。
「軽い出来心だったんだ装備を返してくれ!」
涙声で懇願する杖を持った男。
「酷いよ」
既にやる気が破壊された気弱な茶髪。
「売った」
「「のぉぉぉぉぉぉぉ」」
「悪いとは思うがな、まああれだ。まあ返せはないが、同じもの位なら買うぜ」
「「ありがとうぅ」」
「ちょっと臨時を抜けるぜ?」
「ああ」
「別にいいぜ」
「買い物にGO」
装備を整えてから、コーティング剤を調合し、これを提供した。
「「レドのコーティンク剤だ!」」
「おうやるぜ。じゃあ楽しめよ!」
「「あざーす」」
そんな事をしてから臨時現場に、装備を剥がされた多数のプレイヤーに謝罪され、レドも謝罪して、装備代とコーティング剤を提供した。
そんなこんなで臨時メンバーと合流した。
「戻ったぜ」
「ああ」
「おかえり」
「海底ダンジョンに何時間の狩りだ?」
「待ち時間が1時間、行くまでに30分、海底ダンジョンでの狩は2時間だ。期間までに30分、4時に帰還する予定だ」
「なら問題ない、5時には戻ってなきゃあいけないんでな」
「なら余裕だな」
「そろそろ時間だ」
『PT海底ダンジョン行き(臨時』
リーダー:カズヤ
メンバー:エギル、レド
「そこの臨時」
赤毛の男が声を掛ける。
「まだ間に合うか?」
「問題はない」
「エギルだ」
「レドだ」
「臨時PTのリーダーのカズヤだ」
「クラインだ。よろしくな」
▽メンバー加入
クライン
▽
四人でのPTを組み、東側に移動し、船着場から船に乗る。
暫くの船旅を楽しむ。
レドはスーツ姿で、右腰の片手剣、背中の小盾、肩から吊るすクロスボウを点検していた。
PTリーダーのカズヤは、右腰の片手剣、左腰の片手剣を点検していた。
エギルは両刃の戦斧を確認し、クラインは背中に差す大太刀を確認してた。
「ガズヤは双剣士か?」
「ああ。魔法剣の双剣を使う」
「そいつはMPを使いそうだな」
「それがどうした?」
「MP増加薬が必要になるっ事さ」
「なるほど」
「必要経費って奴は要らないからさ。趣味で冒険するからな」
「それならば問題はない」
「おう。エギルは斧か」
次に褐色の髪の薄い丸刈りのエギルに話しかける。
斧使いは斧から目を離し、レドの顔を見る。
「ん?ああ見たまんまの斧使いさ」
「とすると防御?それとも攻撃?」
「重視するのは攻撃だが、防御の方もそこそこある」
「なるほど、なら防御を増すような薬が良いな」
「そうだな。それなら十分かもしれない」
「支払いは請求しないから安心しな」
「それなら問題はないな」
最後にクラインに話しかける。赤毛の侍は太刀から目を離す。
「ようクライン」
「おう。錬金術師のレドか」
「薬の事の要望を集めているんだが、クラインが伸ばしたい数値は」
「STR」
「逆に低いと自分なりに思う事は?」
「AGI」
「なるほど、なら弱点をおなう薬の方が良いな」
「くれるのか?」
「ああ無料だ。代金を後で請求するよなせこい真似はしないさ」
「そいつはありがてぇ」
三名の要望を聞いてからある程度加工していた原液を混ぜ、それぞれに渡す。
「まずカズヤの場合はMP増加薬だ。追加としてINT上昇も入っている」
「なるほど」
「エギルの場合はVIT上昇、DEF上昇の二つに重点の置いたATK上昇も入っている」
「感謝する」
「クラインの場合はAGI急上昇、STR・ATK微上昇も入っている」
「尖ってんな」
「時間はあれなんで、飲むなり掛けるなりしてくれ、飲めば100%効き、掛ければ60%の効果だ。適当には作っていないのでイレギュラーは発生しない。味の方は俺の好きな蜜柑味だ」
「効果時間は?」
「ざっと4時間だ。副作用はないが、気になるなら掛けるなりしてくれ」
「ゲームだしな」
クラインか飲む。
「おっ美味いなこれ」
「そうなのかクライン?」
「ああ蜜柑ジュースのようだ」
エギルも飲む。
「確かに美味い。蜜柑味だな」
「飲み易く加工しているのか」
カズヤも飲む。
ちょっと驚いて薬を見る。
「飲み易い蜜柑ジュースだな」
「だろ?飲み易さに関してはそこそこ自信があるぜ」
「薬と言えば不味いのが定番だが、これは良い」
「薬の効果を確認したらそれで十分だ」
三名がそれぞれ確認した。
それぞれ満足のいく効果だったらしい。
「問題ない」
「十分な効果だ」
「悪くないぜアルケミスト」
三人の言葉に、レドは鷹揚に頷いた。
「なら問題はない」
□
海上都市『シーキャッスルタウン』の船着き場に付き、そこからカズヤに案内されて海底ダンジョンに付いた。
「ここだ」
「うーん。なんか薬でも作っておくべきだったかな」
「そんなに時間もなかったし十分だ」
「美味かったしな」
入ると、直ぐにエンカウントする。
イソギンチャクだ。近くにはクラゲがいる。
「イソギンチャクは、足元から攻撃してくるぞ。クラゲは電撃を使う」
「イソギンチャクは引き受けるぜ」
「クロスボウか?」
「ああ。こうするのさ」
レドが〝ポンプ式クロスボウ〟から矢を放つ、高速でイソギンチャクに当たり、イソギンチャクは動きを止めた。
「こんな感じだ」
「何故動きが止まった?」
「バテステさ」
「そうか。クラゲを片付けるぞ」
カズヤの言葉に、エギル、クラインがそれぞれ答えて飛び出す。
クラゲが気付き、雷撃を放ちクラインに直撃しそのままクラインが動きを止める。
「おーいクラインどうした?」
返答はない。
近付きレドがポーションを取り出して掛ける。
HPゲージは回復したが、一向に動かない。
「感電か、少し待てよ」
レドが薬を調合し、クラインに掛けた。
クラインは息を吹き返したように起き上がる。
「助かったぜ」
「感電していると飲めないから気をつけろよ」
「おう」
治療が終わってから、クロスボウを持ってイソギンチャクに射掛けた。
カズヤの双剣がクラゲを削り、エギルの斧がタゲを取る、クラインも混じっての刀を食らわせた。
程なくして終わり、イソギンチャクの方に三人が攻撃して終わる。
この間に調合し終えたレドが三人のポーションを渡す。
「耐電用のポーションだ。感電防止もある」
「そうか」
「飲めばよいのだな?」
「ああ」
「ありがてぇ」
三人が飲み、歩きだした。
レドも後ろを歩き、今度はカタツムリ、二足歩行の貝、中ぐらいのカニの三体だ。
「こいつは厄介な」
「レド、クロスボウで」
「無理だ」
「何故だ?」
「甲殻類には利かないんだ。甲羅に弾かれる」
「厄介な」
「まあ適当に作ってダメージでも与えるさ」
「なら三名で散開して当たるぞ」
「了解」
「おう」
三名が別々に攻撃し、その間に調合を終えたレドが薬の入った小瓶を矢に括り付け、比較的装甲の薄いカタツムリに攻撃し、運よく隙間に入り込み、そのままカタツムリの動きを止める。
続いて調合し同じ様なバテステ用の薬を括り付けた矢を、貝の開いた口にぶち込む。
「ナイスレド」
「おう」
「こっちも頼むぜ」
「カニさんは無理だ」
「そんな」
クラインの悲鳴が聞こえる。他の二人が攻撃を行って片付け、カニに攻撃して片付ける。
ダメージを負った三名用にポーションを調合し渡す。
三名が飲む。
「おっスイカ味か」
「悪くないな」
「相変わらす飲み易い」
次に遭遇したのは魚、鼻が剣の様に突き出た魚だ。
「今度は効くぜ」
クロスボウで射る。突き刺さり魚が動きを止めた。
三人がそれぞれ攻撃し、片付ける。
□
海底ダンジョンでの狩り、上手く行っていた。
魚類や貝類はレドの薬物で動きを止め、甲殻類は集団でボコり倒していた。
そんな1時間を終え、近くの安全エリアで休む。
「お握り食べるか?」
「・・いただこう」
三名に渡し、コーンスープも渡した。
味の悪くないが、バフ効果化がかかるので三名は納得していた。
レドも飲食し、ポーションなどの調合を行ってた。
「そろそろ狩りに戻ろう」
「了解」
「おう」
「んじゃこれをもって体力が減った時に飲んでくれ」
「体力?」
「隠しゲージの疲労だ。所謂疲労回復薬だ」
三名が受け取り、狩りに戻る
特にアクシデントもなしに終わる。
海底ダンジョンから城下町に戻り、船着場から船に乗る。
ドロップアイテムなどはカズヤに集めてカズヤが売却し、資金は山分けした。
□
船着場から『イーニャ』で別れ、レドは直ぐに『金色の猪亭』に向かう。
建てられた真新しい厩舎に居る騎獣に挨拶し、屋内に入る。
「おかえりにゃ」
「おう女将さんか、彼奴らは居るか?」
「居るにゃよ。ソロプレイはどうだったかにゃ」
「ソロじゃなくて臨時だけどな。楽しかったぜ」
「あんまり女の子を泣かすものじゃないにゃ」
「謝っておくさ。じゃあな」
まずはティアを探す、図書室に行くとティアが居た。
黒髪のおかっぱ少女は、熱心に読書をしていた。
「ようティア」
「お母さん?」
「おう」
「お母さんだぁ」
椅子から立ち上がって飛び付いてきた何故か胸に顔をうずめようとするが、生憎男性アバターなので埋められない。
「胸が硬い」
「そりゃあ男だしな」
「偶にはいい、偶にだからね」
「ありがとよ。寂しくさせたか」
「うーん。読書して居たら時間が経っちゃってよくわかんない」
「それは幸いだったな。じゃあ他の面々でも探しに行こう」
「うん。でも本を戻すね」
「出来た娘だ」
「えへへー」
ティアが照れながら本を戻し、次に会ったのはピローテスとユキカゼだ。
「わん」
「ユキカゼがおかえりって」
「おう只今」
「おかえりマスター」
「今帰ったぜ。リャナとピュシーが集まった飯にしよう」
「ああ」
リャナは自室にいた。
「ようリャナ」
「これはマスター。おかえりなさいませ」
「あれだな。偶には臨時も悪くはない」
「臨時メンバーでの狩りですか、収穫はございましか?」
「いやあんまり」
「それは残念です」
「ピュシーは」
「あの子なら買い物に行っています。」
「おう休暇を楽しんでいるね」
「こう言う時間も偶には良い物です」
「そう言ってもらえる嬉しいものだ」
近くのベッドにはルリがすやすやと寝ていた。
「起こすのもあれ何で、下に行こう」
「はいマスター」
□
レドの一家のティア、ピローテス、リャナ、ユキカゼ、まだピュシーは戻ってきていない、元気な子なので安心ではある。
程なくしてピュシーが戻り、大量の食べ物を食べ歩きながら戻ってきていた。
「おうピュシー」
「はふたー」
「ピュシー、食べながら歩き物ではありませんし、食べながら話すものでありませんよ」
リャナが窘めるが、くどくどしくはないのでピュシーも頷いてから咀嚼し、それから挨拶を改めて行った。
「よし夕飯にするぞ」
「はーい」
夕飯時は騒がしく、ヒュディックの作った料理を食べる。
狐に色のクロワッサン、貝のシーフードシチュー、猪肉のステーキ、魚のソテー、森のサラダ。これらの他多数。
匂いに釣られてか、ルリも起きだしてきてレドの近くに座り、夕飯にありつく。
「頂きます」
「「頂きます」」
夕飯時は騒がしく、全員でわいわいしながら食べる。
その後の風呂の時には女性アバターに戻し、大きな風呂場で湯を浴び、浴槽に入る。
珍しくルリも入り、気持ち良さそうに浴槽の上で丸くなっていた。
当然の様にユキカゼは逃げ出したものの、ティアに捕まり、強制的に風呂に入れられた。
見るからに心が痛むように悲痛な悲鳴を上げるユキカゼに、ティアは生き生きと手入れをしていた。
ピローテスとリャナは風呂場での浴槽に入りながら酒を飲み、ピュシーは浴槽に使って潜水中だ。
正しく大家族のような光景だ。
その後の時間はのんびりと紅茶を飲みながら思い出話、ティアも眠くなるとウトウトし始めるので、レドが寝かしつけ、ユキカゼもティアのベッドの上で丸くなる。
レドはピローテスとリャナと酒を飲む。
ピュシーは疲れていたのが既に寝ていた。
□
ログアウトしてからの忙しい昼間を過ごし、PC仲間もログインする予定らしい。
午後1時30分のログインした。
『レドがログインしました』
『ウルカがログインしました』
『アリサがログインしました』
『ヒリュウがログインしました』
『サクヤがログインしました』
朝方の6時、しかし冒険者の朝は早い。
すでに準備をし整えていた一家の者は、ルリを連れてレドが部屋から出る。
近くの部屋から現れた純白のワンピース姿のアリサと遭遇した。
獣使いの装鎌士の細工師は、ご機嫌の様な弾む様な声で鼻歌を歌う。
「あらレド久し振り♪」
「おうアリサも久しぶりだな。ひとまずは飯だな」
「朝はいいわァ♪」
続いて遭遇したのがヒリュウ、眠そうな制服姿の僕っ子は、適当に動きながら挨拶してきた。
「おはようレド、アリサ」
「おうおはようヒリュウ」
「はようヒリュウ♪」
適当に降りていき、朝早くから料理をしていたヒュディックが料理を並べながら、それぞれが定位置に座り、食事し始める。
「おうウルカ眠そうだな」
「ふっ。ちょっと親ともめてな」
「また結婚話か」
「ああ高校を辞めて結婚しろと言ってきた」
「ぶっ飛んだご両親だな」
「常識では測れない連中なのだ。頭がおかしいとしか思えん」
「十分おかしいと思うぞ」
「だろ?」
「普通は高校位は行くものだからな」
「そうなのだ、あのくそボケどもに、ああ言葉が汚かったな」
「教育上悪いから慎んでくれ」
「すまん、すまん」
食事を再開し、あれだこれだと騒ぐ。
朝の行事が終わり、今日の狩りはという話になる。
「何も言わず青龍Get」
「賛成だ」
「問題なし♪」
「賛成~」
「悪くはないのう」
「という訳で青龍を手に入れに行くぞ」
□
『シーキャッスルタウン』より海底ダンジョンに入り、そこからモブを蹴散らし、最下層の門の前。
ボスのジャイアントクラブを倒し、門の中に入る。
小さな蒼い龍が現れる。
アイリスの青竜とは違う、東洋的な龍の青龍だ。
レド、ヒリュウ、サクヤ、アリサに額を当て、契約した。
□
『イーニャ』に戻ってきてから、レドが見たサクヤは浮かない顔だ。
自由時間に買い物に出かけ、とあるプレイヤーショップでサモン型レンズウェアラブルPCと入力リングを見付け、思い至ってから購入し、サクヤを探してから見つけた。
「サクヤ」
「なんじゃレドかえ」
「はいプレゼント」
渡したコンタクトレンズとリングに、サクヤは探していた物が見つかったのが、嬉しそうに受け取った。
「探しても見つからなかったのじゃ、感謝するぞえレド」
「いつも世話になっているからそのお礼だ」
「そうかえ?しかし、なんというか主はデカいの」
「元々デカくてさ。リアルでは184cmあるんだ」
「デ、デカいの」
「昔は小さかったんだがな」
「とてもそうにも思えんわい」
「誰にでも小さい頃はあるさ」
「そうじゃな」
「ガキの頃は小さかったし、よくディリッピに叱られたものさ」
「誰じゃ?姉か?」
「リャナの本名だ。いや懐かしいねえ~」
サクヤもリャナとレドの関係については聞いている。
壮絶なもので、最終的な決戦に赴き、リャナを庇い、逆に庇われてリャナは猟犬に殺されて死んだ。その後にレドが猟犬を殺す、普通の者なら二度とゲームをやらないような壮絶なものだ。
このゲーム『ワンオフ・フリーライフ・オンライン』のNPCは、オンリーワンの存在だ。死んでも復活せず、また似たような外見の者が居ても、同じ者は存在しない。
PCやサモン型の従者は死んでも復活するが、テイム型従者やNPCは復活しない。
つまり不死の存在である片方と、死せる定めの中に生きる者達とのゲームなのだ。
だからこそ人はNPCやテイム型従者とは関係を持ちたがらない、特にサモナーはこの傾向が強い、自分の従者を失った者は特に関係を持ちたがらない。
人は何であれ共に過ごしてきたモノとも想い出に縛られがちだ。
その絆が深ければ深いほどに、失った時の痛みは何十倍にも増す。
だからサクヤはテイム型従者を持たない、自分の心を守るために。
ウルカの似た様なものなのだろう。
むしろウルカの様なPCが普通なのだと言え、サクヤの様なPCも当たり前の存在だ。
故にアリサやヒリュウにレドは特異な存在と言える。
テイム型を好むアリサや、サモナーながらもテイム従者を連れるヒリュウ。
当然の様に別れは辛いものだ。
特にアリサは従者を深く愛し、家族の様なものだと言い切れる。もし片方でも失えば心を壊しかねないほどのダメージを受けるかもしれないが、それはサクヤが言う領域ではない。
レドもサモナーでもあるが、テイマーでもあり、テイム型従者のピローテス、ユキカゼを連れる、思いが過るのはティアの存在だ。
ティアはサモン型の従者でも、テイム型の従者でもない単なるNPCだ。
死んでも復活しないテイム型従者、NPCだ。
レドが何を思ってこのようなテイム型の従者のピローテスやユキカゼを連れ、NPCのティアを娘の様に思うのかはわからない。
考えなしの若者でもないし、決して無能というレベルの者ではない、人の好く情に弱い口の若者だ。ややもすれば困ったところではあるおふざけや、人体実験が好きな所もあるが、基本的には人の好い青年だ。
とはいえ、そんな死せる定めの者に混じって暮らすのはサクヤも同じ、テイム型従者達や、ティアを仲間と思う心はある。
サクヤですらそうなのだから、まだ若いウルカもそんなところはあるだろう。
そんな者達との別れを覚悟して連れて過ごすのだ。
サクヤからすれば愚か過ぎる行為ではあるが、そんな愚か者は嫌いではない。
「何故笑えるのかえ?」
「ん?」
「かつて最終的な決戦に赴き、猟犬に殺されたリャナ、主は神謀に殺された」
「そうだな」
「今となればリャナはサモン型の従者となった、そんな虫の良い奇跡を信じるのかえ?」
「まあな。まあちゃんと奥の手はある」
「都合の良い復活薬でもあるのかえ?」
「ああ。ある」
「レド、主は」
「イレギュラー薬品だ。どんな副作用があるのかはわからない」
「なるほどのう。しかし、それでも欲する者は多くないかえ?」
「だろうな」
「売れば誰もが買い求めるじゃろ」
「そうだな」
「レド、主は奥の手があるから連れるのかえ?」
「家族だからな」
「別れは辛いぞえ?」
「・・・だろうな」
「主なりに考えがあるのは分かった、復活薬の事はどうにか量産せえ」
「店の目玉にでもしようかと思ってな」
「ならよいがの」
「なあサクヤ」
「なんじゃ?」
「もし、もし大切な時間が戻るかもしれないなら」
「そんなモノはありはせん」
「あの時のあの場所が直ぐ傍にあるんだ」
「今を捨てて過去に出戻るのかえ?ティアをどうするんじゃ」
「・・・わりい、ついさあの時間が戻ってくるんだって、思っちまったんだ」
「そんなモノが帰らなくても主は幸せじゃないのかえ?」
「そうなんだよな。まっあの連中の顔面には拳でも食らわせるがな」
「分かればよいんじゃ。ティアを泣かすような真似だけはするな」
「勿論だぜ。じゃ」
「贈り物は感謝するぞ」
「おう」
レトが去る。サクヤは色々と説教臭く言ってしまったことに少し残念な気持ちにもなる。
□
レド達の共同住宅『星空の記録』邸が完成し、『金色の猪亭』より移った。
大忙しとなり、一行揃って二度目の住宅に、せっせと荷物を運んだ。
工房の付いた店をそれぞれが持ち、今日は泊まり掛けで作業を行った。
そんなリアルでは午後7時30分に一度ログアウト、午後9時よりログインした。
真昼の正午、ヒリュウの料理を食べ、それぞれが作業を開始、レドはティアのレシピを全て教え、その中には蘇生薬もあった。
「じゃあ作って店に売り出すぞ」
「まずは店番はピュシーは私が担当します。不在の時はティアとピローテスが行ってください」
「了解した」
「はいは~い」
「賛成~」
「マスターよろしいですね?」
「ああ」
「ルリとユキカゼも店番担当です」
「わん」
「・・・(こくり)」
「とりあえず在庫を解放します」
薬品だけがひたすら並べられる。
生産者二人とピローテスは工房でせっせと混ぜ物を行う。
すでに店の前には長い列ができ、主にコーティング剤を買い求める客で溢れていた。
そんな売れ筋商品もあり、他の薬品の耐性薬品や増加薬品なども売れ、バフ効果を持つ強化薬品なども売れる。
大量に有った薬品は直ぐに底をついた。
何せPCだけではなくNPCまで買いに来るために、薬品などは重さもないので、大量に買われていった。
その後に、生産した蘇生薬をテイム型の従者を持つ者に、一つ10Gで売却した。
人数分の為に、従者がお置けれはその分個数は増えた。
店としては蘇生薬は赤字だが、他の商品で儲かっているので特に気にしない方針だ。
在庫が切れたら、倉庫から素材を取り出し、また中間素材の原液などの加工し、最終的な調合を行い、生産した。
他の店なども人気の順に売れていき、生産者としては一番数が少ない召喚具や屋の専門店のサクヤの店は、生産と店を往復し何とか揃えても直ぐに売れてしまうので、当人としては複雑なとこらしい。
従者を持つアリサやヒリュウなどは比較的楽だが、ウルカは一人で行うために忙しく、レドに助けを求めた。
「ピュシーGO」
「いつもいいように扱われている」
「後で酒を奢るからさ」
「ラジャー!」
助っ人のピュシーが派遣してやっとのことウルカの店は、まともになった。
そんな忙しい午後が終わり、夕方の店仕舞い。
売り上げなどを計算し、明日の仕入れなども行い、周囲の店などにも挨拶し、それらの作業が終わった夜。
ヒリュウの作った夕食を食べ、風呂などに入り準備をしてから就寝した。
□
ログアウトしてから翌日の3月28日。
午前9時にログインした。
昼間のヒリュウの料理を食べてから、今日の予定を考える。
「よし北部に行こう」
全員が黙る。
ウルカが代表していう。
「北部にどうやって行くのだ?」
「玄武ダンジョンに繋がる境界線ダンジョンを攻略する」
「あの猫女か?」
「ああ白虎も、朱雀も、青龍もしっかりと手に入った事で、安心して四門ダンジョンが攻略できるので、今度は玄武ダンジョンに行くことが提案されたらしい」
「なら問題はないが、他のPTはどうする?」
「全員参加するらしいぜ。四門ダンジョン攻略スレにあった」
「スレか」
「色々と噂されていたな、和風大好き忍者とか、アリサは首狩り姫とか、ヒリュウは精霊使いとか、サクヤは狐様だったな」
「レドは巨人族ね」
「凄いよね」
「兎に角デカいからの」
「というか女のスタイルとは思えん」
「はいはいという訳で今日の午後は玄武ダンジョンに行くための準備だ」
「異論はない」
「問題なし」
「特に反対する理由はないね」
「玄武かえ、大変な事になるの」
□
準備に入り、今日は店仕舞いですと看板を立てる。
玄武ダンジョンの事も噂になっており、四門攻略への色々な希望が零れる。
PT『星空の記録』の私有地にある工房は全て休み、ひたすら生産を行う。
そうやって完成した各自の装備。
▽
□□□□□□□□□
名称 ウルカ用装備
装備項目 忍者刀・手裏剣・忍者装束
品質 ☆×3
□□□□□□□□□
名称 サクヤ用装備
装備項目 槍・サクヤ衣装
品質 ☆×3
□□□□□□□□□
名称 ヒリュウ用装備
装備項目 ハルバード・ヒリュウ用衣装
品質 ☆×3
□□□□□□□□□
名称 アリサ用装備
装備項目 大鎌・アリサ用衣装。
品質 ☆×3
□□□□□□□□□
名称 レド用装備
装備項目 片手剣・槍・盾・クロスボウ等。
品質 ☆×1
□□□□□□□□□
名称 人型従者用装備
装備項目 武器・衣類・防具・装飾
品質 ☆×3
□□□□□□□□□
名称 獣型従者用装備
装備項目 衣類・装飾
品質 ☆×1
□□□□□□□□□
名称 ティア用装備
装備項目 片手剣・槍・杖・盾・クロスボウ等
品質 ☆×1
□□□□□□□□□
▽
『ワンオフ・フリーライフ・オンライン』の翌朝の午前6時。
全員が用意された装備を身に纏い、騎獣用にも作られたものを装備させ、騎獣にも乗り込み、集合場所に向かう。
レド達『星空の記録』と仲の良い『南十字星』『ノラノラ』『戦乙女騎士団』『アマツカサ』『剣客商売』の6個PTは集合場所で共闘し、生産品などの物々交換を行う。
6個共闘PT名『☆野良天剣騎士☆』という名前に落ち着いた。
どたどた走り、通常の騎獣の足の速度は20キロ程度、装備で強化し40キロ程度、馬車なども有るので30キロ程度だ。
「軍学」
固有スキル【軍学】のスペルを使う。
【疾風迅雷の陣】
範囲[味方]効果[AGI急上昇・MOV急上昇]
備考:MOV上昇の付いた強力な移動用の陣。
怒涛のように移動速度が上昇し、共闘PT『☆野良天剣騎士☆』は目的の場所につく。
他のプレイヤー達のPTの姿も見える。
今回の北部進行作戦を説明するのなら、境界線ダンジョンより進行する。
ただ西の方からの第1、東の方からの第2と別れた。
作戦その物の提唱者はギルド【C】だ。
生産者たちのもイベントが欲しいとの要望で、今回の企画を思いついたらしい。
「不味いぜ」
「おいクライン、エギル、カズヤ」
三名に挨拶する。三名も気づきこちらに挨拶する。
騎獣を寄せて挨拶した。
「久し振りだな。昨日の朝振りか」
「ああ久し振りだ」
「しかし大所帯だな」
「そんな大所帯でも無駄だぜ」
「どういうことだクライン」
「それがよ、全ての境界線ダンジョンの秘宝が居るとさ」
「ふーん。その奥は」
「分厚い壁に阻まれてどうしようもない」
「そっか。なら爆破しよう」
「レド?爆破?」
「可能かもしれんが火薬がな」
「掘削ならできるが、爆破は専門外だ」
「もしくは火炎をぶつけて、氷で冷やして、火薬で爆破しての繰り返しだな」
「まあレドの薬品があれば可能か」
「MPが尽きても回復してしまうからな」
「さすがはポーション」
「俺はポーションじゃない、いつもいつも俺をポーションと」
「え?」
「いつもな、俺をポーション呼ばわりする奴らがいるのさ。大切な会話の時ですら俺をポーションと呼ぶしな、危うくキレそうになった」
「悪かった」
「ああケースバイケース、じゃあ俺は仲間に伝えてから作業を開始するよ」
三人が返答し、共闘PT『☆野良天剣騎士☆』の面々に伝える。
「火炎担当、冷気担当、爆破担当に分かれてくれ」
「マスター、私の植物の力を使えばより易くなるのでは?」
「ふむ。岩などが出たら頼もうもう」
「心得ました」
元素魔法使い達、従者達を使い、火炎での熱膨張、冷気での急速冷却を繰り返し、爆薬での爆破も行う、特にRPGなどが大量に有るユキカゼのアイテムボックスの中身が活躍した物だ。
「面倒だ」
【従者召喚:白虎】
での最大MPから20%消費。
【従者召喚:青龍】
での最大MPから20%消費。
残る9%。
「やっちまえ!」
「グルォォォォォ」
「ルォォォォォォ」
白虎の雷撃、青龍の津波がぶち当たる。
他のサモナーもこれに気付き朱雀と白虎と青龍を召喚した。
後はひたすら攻撃続行での壁を破壊するために攻撃していた。
リャナが固有スキルを使う【豊饒の大地】での植物育成により壁を背後より押し出した。
壁が崩れ落ち、作業中の面々は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
「リャナ!ナイス!」
レドの言葉にリャナは恭しく頭を下げる。
壁の後ろもまた壁、知っている者はつい思ってしまう。
金太郎飴の様だと。
「掘削作業続行!」
火炎、冷気、雷撃、津波、リャナの植物の力、最終的な火薬の力。
ティアも原液からスタミナ回復薬やMP回復薬等を大量生産し、消費する者達に配る。
割と暇な者は、騎獣達の世話。
他のPTなどは天変地異を使って掘削作業を行う一団を見ていた。
少なくてもサモナーの人気は急上昇するのは間違いないが、相乗効果でのテイマーの人気も上がるかもしれない。
「原液が!」
ティアがアイテムボックスを調べて悲鳴を上げる、近くにいたバッシュがすかさず原液を出す。ティアは顔を明るくさせて受け取り礼を言う。
「ありがとうございますバッシュさん」
「いい。」
保護者とは似ても似つかない可愛らしい娘さんだ。
ただ将来ああなるのはかなり嫌な話だと、男性プレイヤーは思わずにはいられない。
「珍しいではないかバッシュ」
ウルカがそう言う。
バッシュは苦笑してから返す。
「俺も錬金術師のジョブを取ろうかと思う」
「ふむ。割と良いのではないか、バッシュの秘薬の話は伺っているしな」
「単なるスキル効果だ」
「レドのより効果が高いそうではないか」
「全然さ」
バッシュの様な調合スキルを持つ者もいるが、バッシュの様なユニーク生産スキルを持つ者はバッシュの知る限り、自分ただ一人だ。
レドの様な才能のあるタイプの生産プレイヤーとは違い、バッシュの方は生産スキル任せだ。
ティアのような少女らしい錬金術師も要るし、バッシュも生産ジョブとクラスを取るべきだと仲間にも言われていたが、いまいち気が乗らなかった。だが今ならどうしても必要と思える、むしろ生産プレイヤーの居るPTは、何かと便利であるし、何かと好い。
サモナーやテイマーたちによる怒涛の掘削作業は続き、次第に壁が削れていった。
「おし一旦休むぞ!」
レドの怒声で、作業が中断されそれぞれのPT同士で集まる。
全員が生産スキルを持つ『星空の記録』『南十字星』等の面々の調合担当の者が、直ぐに調合したポーションを渡す、サモン型従者やテイム型従者も受け取ってから飲む、
「目測で50m位か」
ウルカが渋い顔でいう。近くで料理人ジョブを取ったヒリュウの固有スキル【調理】のスキルにより作られた焼きそばをセリルとアイリスが分けてから全員に手渡していた。
他の面々も受け取ってから頬張り、従者達も美味しそうに食べていた。
「思いの外に、削れなかったな」
「そうでもない、むしろ短期間での50mは御の字だ」
「経験者か?」
「かつての『ナイト・オブ・ナイト』での作業を考えれば楽なものさ」
「中世の騎士のゲームか、特に言わないがな」
「割と楽しかったぜ。なあリャナ」
「はいマスター、懐かしい話ですね。でもあの頃より今の方が賑やかで楽しいですよ」
「・・・そうだな」
「マスターの事ですから言っておきますが、過去には戻ってはなりませんよ。それは単なる幻想です。有るのは辛い結果でしかないのですから」
「・・・・分かってはいる。サクヤにもそう言われたよ」
「男は昔の事ばかりを考えるのか」
「誰にでも捕らわれてしまうものはあるぞえ?」
「・・・そうだな」
「まあ苦い思いで話をしても意味はない、飯でも食ってから作業を開始しようぜ」
焼きそばを食べ、これらが終わってから一休み。
他のPTからも協力の申し出があり、結果としてサモナー達、テイマー達、魔法使い達も参加し、ひたすら掘削活動。
結果として5時間で貫通した。
料理人たちもせっせと料理を作り配る、調合士たちも作り減った者に配る。
「原液がぁ」
割と有名になった原液(調合の中間素材)が相次いで底をつく、調合士たちの悲鳴もあり、料理に達も正直心許無い調理素材もあり、一度近くの村『鈴々』に行き、補給した後に、それぞれの共闘PTなり、PTなりの規模での活動となる。
村の共同生産所や外で調合する錬金術師たちや、料理人たちの仕込み作業もよく見られる光景だ。
裁縫師のウルカ、細工師のアリサ、召喚具師のサクヤ等は比較的暇でもあったが、忙しく働くレド親子、従者二人と共に仕込み作業をするヒリュウ達の、手伝いの行う事になる。
そんな作業が終わったのが二時間後。
『アマツカサ』『剣客商売』の二つのPTは暇すぎて遊んでいた。生産スキルもジョブもないためにすることがないのだ。
そんな12名を殺意のこもった瞳で見る、生産スキル持ちや、ジョブ持ち達もいるなかでだ。
かなりの強者と言い切れる。
他のプレイヤーは仲間の手伝いなどを行う中、こいつらはと思う者が居るのも当たり前だ。
「おし、集まれ!」
『☆野良天剣騎士☆』の面々が集まる。何も言わず玄武ダンジョンに突っ込む事だ。
「玄武ダンジョンに行くぞ。まっ軽く攻略できるとは思うがな、一応騎獣達は連れて行く、だ馬車は置いていく、積載量もあるが如何せん入らないからな」
これには誰も異論はない。
「作業開始するぞ。時間はアプリ?」
『ノラノラ』のリーダーのアプリを呼ぶ。元素魔法の使い手も理解した様子で話す。
「20分もあれば完了できる」
「よし20分後出発だ」
馬車を持つアプリ達『ノラノラ』は、馬車を曳く四騎の騎獣達から縄を外し初め、他の者達は騎獣達に乗り込む。
準備が完了し向かう。
□
玄武ダンジョンへと通じるトンネル。
巨大なダンジョンで有り、あちらこちらに第1組のプレイヤーがいる。
固有スキル【軍学】のスペルを使う。
【疾風迅雷の陣】
範囲[味方]効果[AGI急上昇・MOV急上昇]
備考:MOV上昇の付いた強力な移動用の陣。
「突っ走るぞ」
それぞれが返答し、直線距離を突っ切る。
巨大なトンネル構造の光景が続き、立ち止まるとモブがポップする仕組みだ。
光が見え、その中に突っ込む。
「おお」
見渡す限りの荒野だ。
「正しく北部」
「後ろが詰まるぞポーション」
「悪い」
突っ切る中、北部のモブなどを無視して進み、32名の数もあり、疾風迅雷の陣の効果もあって何とかエンカウントせずに突っ切った。
□
町が見えた。近寄ろうとするとサーフが制止の声を出す。
「まて、どうもおかしい」
誰もがサーフを見る。
「ここはイベント用の北部だ。そんな所にPCは来ない、いや来れない、なら何故町がある?」
サーフの指摘に、ざわざわと騒がしくなる。
「どの道行くしかねえよ?」
『アマツカサ』のリーダーのマユアがそう言う。
誰もが納得しかける。
「私が潜入してこよう。忍者だしな」
ウルカがそう言う。
レドが頷くと、ウルカが騎獣から降り、スキル構成を変更し、特殊展開装甲を展開して突っ込む。
遠目からも分かるほどの町に接近し、中には入らず、色々と調べていたらしい。
戻ってきた忍者娘が報告した。
「なるほどね」
「さしずめ死せる町かしら」
「縁起でもないのう」
ヒリュウとアリサとサクヤがそれぞれ口にした。
「突っ込むしかない事には変わりないさ。その前に薬を配ろう」
「おおやっとポーションのポーションか」
「ウルカ、妙な事を口にしているわよ」
「POTの薬でいいんじゃない」
「ポットの薬って言われてもね」
レドの薬品を渡し、全員に強力な効果を発揮する。
騎獣達にも飲ませ、更に軍学を使う。
【電光石火の陣】
範囲[味方]効果[特技再使用待機時間減少]
備考:特技の再使用待機時間が減少する陣。
【疾風迅雷の陣】
範囲[味方]効果[AGI急上昇・MOV急上昇]
備考:MOV上昇の付いた強力な移動用の陣。
「行くぞ!」
『星空の記録』『南十字星』『ノラノラ』『戦乙女騎士団』『アマツカサ』『剣客商売』の6個共闘PT『☆野良天剣騎士☆』の面々が拳を天に突き出してから声を出した。
「「おお!!」」
突撃した。
怒涛の様にPCと従者達が、突っ込む。
『死せる町[デスタウン]のイベントが始まります』
モブがポップする。
「サモナー!」
「「おお!」」
レド、ヒリュウ、サクヤ、アリサ、リード、バッシュ、チャイムが従者を召喚する。
【従者召喚:朱雀】×5
【従者召喚:白虎】×7
【従者召喚:青龍】×7
サモナー達が命じる。
「「――!」」
炎の海が作られ、落雷の雨が現れ、大津波が現れて、ポップしたモブたちを薙ぎ払う。
「もう一丁!」
再度命じる。
業火、雷雨、大津波の三段階の攻撃で、死せる町への道ができる。
「追加!」
最後の命令を行い、出来上がった道周辺を更に拡張した。
召喚した従者を帰還させた。
騎獣達は猛烈な速度で駆け、左右を守る左の『アマツカサ』、右の『剣客商売』が押し寄せるモブを蹴散らして進む。
元素魔法使いのチャイム、アプリ、モノ達に、従者達の魔法攻撃により、接近しようとするモブは蹴散らされ、クロスボウや弓に射撃武器による打撃も与えられ、手裏剣等の投擲武器も使われて、更に蹴散らす。
「モブに構うな!突っ切れ!」
レドが勇ましく叫ぶ。他の者にもよく聞こえ、攻撃より移動を優先する事で、死せる町に入る。
「そのまま突っ切れ!」
レドの勇ましい声で、更に速力を上げる一行。
先頭のレドが、直進し広場を突っ切り、壊れた城の前につく。
レドの薬品により、自然回復効果を発揮しているので、MPは回復していた。
「サモナー隊!ぶっ壊せ!」
サモナー達が従者を召喚し、そのまま命じ、扉を一撃の下で破壊した。
「突入!」
内部に入る。
城の広場は広大で、数千騎が入りそうなほどだが、瓦礫が多くそれ程入らないかもしれないほど手狭だ。
「レド、セーフティエリアだ」
「中立地帯か、よし騎獣達を置くぞ」
騎獣達から降り、近くに休ませる。
「よし奥に進むぞ」
「軍学で何かないか?」
「疾風迅雷の陣、電光石火の陣しかない」
「ならよいが」
ウルカとの短い会話を終え、直ぐに進む。
城の広大なフロア、ひたすら壊れた柱と天井の世界。
灰色の世界が続く中、歩き、それぞれが武具を握りしめる時、謁見の間の中の中に入る。
『四門ダンジョン。イベント用ボス、獣王が現れました』
獣達の王が現れる。
しかし外見は巨人族だった。
「ぐぉるるる」
獣王が吼える。
「剣客商売、アマツカサは突撃!」
「「応!」」
「世界樹が設置可能な者は全て設置してくれ」
次々と世界樹の木が設置される
「アイリス!青竜召喚!フォルゼン!エントナイト召喚!」
次々と命令し。
「サモナー隊はサモン攻撃」
更に命令を重ねる。
「ヒーラーは回復を行え」
続いても命令を行う。
「魔法攻撃!射撃攻撃!」
殆どの命令を終える。
「星空の記録、南十字星、ノラノラ、戦乙女騎士団の前衛達!何れ突撃するの備えよ!」
射撃可能な者は射撃武器に切り替えての射撃を行う、魔法攻撃が可能な者は魔法攻撃を行う、完全な前衛の者は暫く待機だ。
『星空の記録』の射撃部隊のレド、ヒリュウ、サクヤ、ピローテス、ティア、投擲担当のウルカ、魔法攻撃可能なリャナ、ヒーラー担当のピュシー、セリル、フォルスト、その他の魔法担当のアリサ、アイリスとフォルゼンは完全前衛の為に待機、ユキカゼ、ルリ、ドレは固有スキルでの攻撃を行う。
『南十字星』のリードはクロスボウ、バッシュは弓、チャイムは魔法攻撃、従者達も攻撃を加える。一時メンバーのユウヤ、ツグミは待機。
『ノラノラ』のアプリは魔法攻撃、マキはヒーラー担当、残る二人も魔法攻撃。
『戦乙女騎士団』のユララは魔法攻撃、パティも魔法攻撃、モノはヒーラー担当、ローラは射撃攻撃、トーマは魔法攻撃、レベッカはポーションピッチャーを行う。
朱雀、白虎、青龍等は絶え間ない攻撃中だ。
侍系剣客集団の『剣客商売』、騎士系竜騎士集団の『アマツカサ』は獣王を押す。
「ピローテスは猛攻の踊り!ティアは調合攻撃を行え!」
「了解した」
「分かったよお母さん!」
猛攻の踊りでの特技再使用待機時間減少、ティアの調合による多彩な攻撃。
「リャナは固有スキル!ピュシーは鱗粉をティアに!」
「承りました」
「了解したよ!」
リャナの固有スキル【豊饒の大地】により持続型ダメージ、ピュシーの固有スキル【妖精の舞】での鱗粉製作を行う。
「ユキカゼ、ルリ、ドレはそのまま攻撃!」
3匹が頷く。
「ヒリュウ、サクヤは射撃攻撃、ウルカは手裏剣と忍法の両立」
「分かったよ」
「心得たぞえ」
「了解」
「アリサは弱体化魔法と状態変化魔法の二つで魔法攻撃」
「分かったわ」
「サモナー隊、よく聞け!総合的な火力を重視せよ!要すれば持続的なダメージ量を意識しての攻撃を絶えず行え、瞬間的なダメージより総合的には上回る!」
サモナー達が頷く。
「ヒーラー隊は前衛の支援を欠かさずに行え!」
ヒーラー担当の者達が頷く。
「完全な前衛達、よく聞け!恐らく手下なり眷族なりを召喚するぞ!現れたら迎撃を行う!故に今は待機せよ!」
完全な前衛達が頷く。
「テイマー達はよく考えて行え!今回のキーマンに属するぞ!要するにフォローを大切にしろ!」
テイマー達が頷く。
「攻撃魔法隊はそのまま火力を叩き込め!」
攻撃魔法の魔法使いたちが頷く。
「射撃部隊、投擲部隊は出し惜しみは無しだ!余さず攻撃せよ!」
二つの部隊の者が頷く。
6個PTの共闘PTの『☆野良天剣騎士☆』達、この攻撃が四本腕の巨人の獣王に攻撃が集中していた。
「ルォォォォォォ」
【従者召喚:スケルトン】
手下を召喚した。
召喚されたスケルトン達。
「来たぞ!アイリス!フォルゼン!アロマ!クー!の四人は迎撃を行え!」
「「応!」」
「アロマ!エントナイトはまだ召喚するな!フォルゼン!エントナイトを迎撃に回せ!」
「「了解」」
「ユウヤ、ツグミの二人は暇か?」
「兄ちゃん、おふざけは禁止だぜ?」
「暇じゃないですよ!」
「二人も迎撃隊に加わってくれ」
「「了解!」」
一しきり指示が終わり、攻撃は比較的順調だ。
スケルトンという数もあるが、従者4名の戦闘能力は高く、エントナイトの攻撃も随分と高い、ツグミ、ユウヤの二人も成長しているし、十分戦力となり得る。
「リャナ現状をどう思う」
「はいマスター、現状は十分獣王に攻撃が集中し、また各隊の統率、戦闘持続能力は依然と存在し、問題はないかと存じます」
「何をすべきと思う?」
「アロマのエントナイトがありますが、予備兵力という点に置いて温存は大正解です」
「なるほど」
「アイリスの青竜召喚もありますが、今は冷却中ですし、特に必要ないでしょう」
「ふむ」
「現状においては指揮に徹されるのがよろしいかと存じます。お暇であられるのなら射撃での攻撃を行うべきではないかと思いますが」
「そうしよう」
「ルォォォォォォ」
【従者召喚:スケルトン】
更にスケルトン達が現れる。
「だと思ったユララ、仲間を率いて迎撃してくれ」
「了解しましたわお姉様。皆行くわよ」
「「了解」」
(手持ちが減ったか)
次に迎撃に出せるPTは『ノラノラ』のみとなる。
テイマー&サモナーの『南十字星』は前衛のクー、アロマが不在の上に、一時メンバーのツグミ、ユウヤも居ない為に、優先して動かすのなら『ノラノラ』だ。
「マスター」
リャナの慈しむ声が聞こえる。
「前で戦って居る二つのうちどちらかを迎撃に回さざる得ないでしょう」
「もしくはノラノラか」
「そうなります」
「予備戦力を増やすべきか?」
「アロマのエントナイト召喚ですね?」
「ああ」
「エントナイトは強力な従者です、切り札にすべきですが、出し惜しみをして敗北しては何の意味もありません、よって今の内に使うべきかと存じます」
「そうだな。アロマ!エントナイト召喚をしてくれ!」
戦闘中のアロマが後方に飛び下がり、エントナイトを召喚する。
「エントナイトもアロマに付属、そのまま迎撃に回ってくれ」
「了解」
「ルォォォォォォ」
【従者召喚:スケルトン】
三度目の従者召喚をする獣王に、レドは舌打ちした。
「レド、私達の番か」
「まて、前衛から引き抜くべきか吟味中だ」
「言葉は言い様だな。まあ時間も有るし考えてくれ」
「分かった。アプリ仲間を率いて迎撃してくれ」
「意外に決断は早かった。行くぞ」
手持ちのPTはこれで『南十字星』のみとなった。残るは本体の『星空の記録』のみだ。
目に見えて火力の減った事により、獣王への攻撃は減り、各迎撃班によってスケルトン達は押しとどめられているが、世界樹様々の様にヒールを絶え間なく放つ。
「残るは前衛から引き抜くか、南十字星を再構成して迎撃に当たらせるか、こいつは辛いな」
「前衛から引き抜きべき事です。南十字星は動かせません。なにより攻撃の中核です」
「なんだよなぁ・・・」
「前衛から引き抜くのならアマツカサです」
「・・・そうだな。しかしこうも数で押してくるとは」
「・・・・即死が効けば楽だったのですが」
リャナがそう言って頬の手を当てて溜息を吐く、長年の副官も困っているらしい。
「ルォォォォォォ」
四度目のスケルトン召喚。
「アマツカサ、迎撃に向かってくれ」
「ああ。行くぞ!」
「「応!!」」
ギリギリだ。
(不味い)
獣王の左右に現れるスケルトン、既に迎撃班に『戦乙女騎士団』『ノラノラ』『アマツカサ』の3個PTに撃撃班の四個が迎撃している。
あと一つが現れれば『南十字星』を再編成し、当てるしかない。
「仕方がないか、リード」
「なんだ!」
「再構成し、今迎撃班の続いてくれ」
「バカな!一つになるぞ!」
「時間が惜しい、五度もあるだろう、いずれは構成し直すしかない」
「しかし!」
「すまん、作戦は後に伝える」
「分かった。アロマ、クー、ツグミ、ユウヤ、暫くの間は留まれ」
四人から返答が届く。
チャイムの従者のホウヅキ、バッシュの従者のディードリット・エント、ホタテにも伝え、リード達が他のサモン型従者を連れて迎撃班に後に備える。
「アイリス、フォルゼン戻れ!」
「了解」
「了解した」
二人が戦闘を中断し戻る。
「アイリス主砲を放て」
「は?」
レドのおふざけの言葉に、アイリスは意味が分からずに困り、古参のPTメンバーは頭の手を当ててストレスに耐える。
「青竜召喚だよ」
「あ、ああ了解だ」
【青竜召喚】により召喚された青竜がブレスを放ち、スケルトン達を蹴散らす。
「さすがは主砲」
「マスター、おふざけが過ぎますよ」
「小粋なジョークじゃないか」
「マスター?」
「分かったよ。各PT獣王に総攻撃!」
6個PTの総攻撃を受けた獣王は、たまらず防御を行い、真正面の『剣客商売』に向けてブレスを放つ。
【ポイズンブレス】
猛毒を含むブレスも、レドの耐性効果が混ざったレドの薬品によって防がれる。
減ったHPは世界樹が猛烈な速度で回復させていく。
「ルォォォォォォ」
再び従者達を召喚し始める獣王。
「さっきと同じ」
「マスター、しっかりと指揮は行ってください」
「分かった。アプリ、スケルトン第01を頼む」
「了解した。行くぞ!」
「南十字星はノラノラの支援を頼む」
「了解した!」
「剣客商売、アマツカサ、戦乙女騎士団は獣王に集中砲火!」
「「応!!」」
絶え間なくブレスを吐き続ける獣王だが、10数本もある設置型ヒールポットの世界樹により回復されていく。
「押せ押せ!」
「お母さん、全員分の薬が完成したよ」
「おし、よくやったピュシー、ティア。各員に配れ」
「「おぉー」」
浮遊薬を全員に配り出す二人。
薬を飲む者から浮遊し始める、これにより地属性の攻撃が効かなくなった。
効果時間こそ短いが有効なものだ。
「ルォォォォォォ!ルォォォォォォ!」
二回同時にスケルトン達を召喚した。
ティアとピュシーの近くに現れ、二人は慌てて逃げ出す。
「ティアちゃん!ピュシー!」
ユララ達がすかさずスケルトン達の間に割り込む。
「た、助かった」
「骸骨の癖にぃ」
「ユララさん達に任せて私達は逃げるよ」
「ラジャー」
二人は直ぐに逃げ出した。
逃げ帰ってきた二人の頭に手を乗せたレドがなでなで。
「よく頑張った。次の指示があるまでは休め」
「うん」
「ラジャー」
「ルォォォォォォ!ルォォォォォォ!」
再び二回同時にスケルトン達を召喚する。
「マユア!」
「了解だ!行くぞ!」
マユアたちが迎撃に向かう。
二回同時に召喚する様になったのは、HPゲージが5割を切ってイエローゾーンになってから。
「レド!青竜召喚が可能になったぞ」
「おう、ぶちかませ」
「了解だ」
三度目の青竜召喚を行い、再びブレスでスケルトン達を一掃する。
レドが楽器を取り出した
「マエストロコピー」
固有スキル【演奏Ⅱ】を使い、アイリスの召喚をコピーした。
「最初から使え!」
ついにウルカがキレた。
「そいつは悪かった。まっこれからは二回連続と思ってくれ」
悪びれる事もなくレドが言うが、二度の青竜召喚は強力でスケルトン達は全滅、獣王も通常の32倍ものダメージを受ける。
「各員総攻撃、フォルゼン暇か」
「割と」
「ユキカゼ、RPGを渡してくれ、フォルゼンにな」
「わん」
ユキカゼがRPGを出し、フォルゼンは懐かしく受け取ってからスキル構成を変更し、獣王に向ける。
ロケットの砲撃を受けた獣王は初めてノックバックする。
総攻撃を受ける四本腕の巨人。
「踏ん張り時だ!誰もくたばるな!くたばった奴はあの世で説教だ!」
レドの偽らざる本音の言葉だ。かつての戦いを知る者はつい笑ってしまう。
「レド~召喚獣たちのMPが尽きるよ!」
ヒリュウの言葉にレドは考える。
(どうする)
「ティア、MP回復の原液はまだあるか?」
「さっき確認したけどあるよ」
「よし朱雀、白虎、青龍達に調合し配ってくれ」
「了解だよ」
「ピュシーは、まだティアのガードを頼む」
「了解マスター。ティアまた一緒」
「うん!」
「サモナー達は召喚獣の攻撃を中止せよ!MP回復薬が提供され次第飲んだのちに攻撃を再開する」
「「了解!」」
苛烈な攻撃がしばらく減少し、サモナー達の呼び出した召喚従者達の中の、召喚獣達は攻撃が中止され、暫くの間は待機していた。
「ルォォォォォォ!ルォォォォォォ!ルォォォォォォ!」
HPゲージがついに3割を切り、イエローゾーンからレッドゾーンへと近づいた時に、獣王は三度鳴いた。
【従者召喚:スケルトン】
【従者召喚:リビングアーミー】
【従者召喚:スケルトンアーミー】
「アイリス!」
「青竜召喚」
「マエストロコピー」
アイリスに召喚された青竜、レドの演奏によってコピーされた青竜の二体が現れる。
二体同時のブレスにより、呼び出された従者達は一掃される。
6400ものダメージを瞬間的に受けた獣王は叫ぶ。
「ルォォォォォォ!ルォォォォォォ!ルォォォォォォ!」
【従者召喚:バリスティックライノ】
巨大な甲冑をつけたケンタウルスの騎士が現れる。
「アプリ、リード迎撃しろ!」
二人が返答し仲間と従者を連れて迎撃に向かう。
(瞬間的なダメージが青竜2体分になると騎士召喚か、こいつは要注意だ)
「お母さん完成したよ」
「よし、ピュシー、ティア二人で配ってくれ」
「うん」
「了解だよマスター」
二人がサモナー達に配る。
サモナー達も受け取り、レドも受け取ってから白虎、青龍に飲ませる。
MPが全快し、再び攻撃が再開される。
「ルォォォォォォ!ルォォォォォォ!ルォォォォォォ!」
再び三種類の召喚。
「ルリ、ドレ、ちょっと一吹きで片付けられるか?」
「・・・(ふるふる)」
「くぇぇぇ」
「無理か、ユララ、マユア、迎撃を頼む」
二人が返答し、迎撃に回る。
「サモナー隊、最後ら辺だ。ここは一発デカいのをぶちかますぞ」
サモナー達が頷き、範囲攻撃を命じた。
【炎の海】
【雷雨】
【大津波】
大量の範囲攻撃により、呼び出された不死性の者達は消え去る。
獣王のダメージを受け、既にHPゲージは2割を切る。
「最後だ。慎重に行くぞ」
詰めをしくじらないのが良い成長の証だとサーフは思う。
最初から踊りまくりのピローテスに、ティアがスタミナ回復薬を提供する。
「すまんな。さすがに疲れた」
「お姉ちゃんガンバ」
「ピローテスファイトー」
妹の様なティアの仲間と言えるピュシーに励まされて、薬を飲んでからまた踊り始める。
「召喚とブレスか、意外と少なかったな」
「十分厄介な攻撃ですよマスター。特に召喚に関していえば最強のサモナーです」
「趣味が悪いがな。まっ終わりだな」
「はい。すでに総攻撃中ですし、十分かと」
すでに1割を切りつつあった。
アーツやスペルによって猛烈な攻撃にさらされる獣王は、最後の技の様に大きく吸い込む、そこにフォルゼンのRPGのロケットが直撃し、ノックバックとディレイによって動きがキャンセルされる。
「何してんだあのボス」
「よくわかりませんが、混乱中なのでしょうか」
やたらと苦しそうな顔の獣王だ。
RPGのロケットの爆発で見えなかったために、誰にも分らない事だ。
よくわからない状態化もあったが、攻撃が最後の仕上げのように強力な攻撃が次々と決まる。
「アイリス、青竜」
「了解した」
アイリスの青竜召喚により残ったHPゲージは殆どない。
レドのマエストロコピーによる青竜のブレス攻撃を受けて、HPゲージ無くなるも、ボスらしく最後の切り札を使う。
【踏ん張り】
HPがわずかに残るり、大呼吸を行うが、フォルゼンのRPG砲撃を受けて消し飛んだ。
『獣王撃破、おめでとうございま』
『従者召喚スキルのある者は玄武を召喚出来る様になりました』
『お疲れ様でした』
長い戦闘が終わっことを告げるシステムアナウンスが流れた。
空からポツリと雨が降り出し、天井の無い城の上に大粒の雨が降り注ぎはじめる。
慟哭か、狂喜か、それとも歓喜なのかは人それぞれだ。
「ひとまず帰るぜ」
レドの女性アバター時のハスキーな声で、いつものような言葉を出した。
いつものように帰宅する事になる。




