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オッサン(36)がアイドルになる話  作者: もちだもちこ


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64、予想外な売り上げの伸び。

何とか今日は投稿できました(´Д`)

344(ミヨシ)のラジオ放送の為に、三人揃って事務所に集まったミロク達はフミも一緒に会議室に集められ、社長のヨイチから思わぬ報告を受ける。


「ダウンロード回数がトップテン入り?動画サイトで話題?」


「そうなんだ。ダウンロード回数はアニメが好評だからある程度予想していたんだけど、動画サイトの方は予想外なんだ。それと合わせ技で『puzzle』のCDの売り上げも、また伸びてきている」


「それって予想外なんですか?」


ミロクは首を傾げる。社長であるヨイチやプロデューサーの尾根江なら予想できたように思えたのだ。


「伸び方が普通じゃないんだよね。まぁ原因は分かっているんだけど」


「どういう事だ?」


言いづらそうにしているヨイチに、シジュは先を急かす。


「ほら、ミロク君のデビュー前の動画がさ、ここに来て再び再燃したみたいで……」


「あの動画ですか……」


ミロクが辛そうな顔で俯く。そんな彼をヨイチとシジュは痛ましげに見ていた。あの時の動画に対してコメントは荒れに荒れていた。ミロクはそのコメントに傷ついたのではないかと二人は思ったのだ。


「私、好きですよ。あの動画のミロクさん格好良かったです」


フミの一生懸命な言葉に、ミロクは微かに微笑んだ。


「ありがとうフミちゃん。でもあれは不完全な出来で、素人丸出しの歌とダンスで恥ずかしいよ。どうせアップするなら、もっと完璧に仕上げたかった……」


「「え?そこ?」」


「そうですが、何か?」


一気に力が抜けるヨイチとシジュ。余計な心配かけさすなと怒られたミロクは、なぜ怒られたか分からず再び首を傾げる。


「それにしても、なぜ今あの動画が出たんですか?元のは消したって話でしたよね?」


フミもミロクと同じように首を傾げながら問う。


「ああそれは、ミロク君のネット仲間が上手いこと誘導したみたいだよ」


「「ええ!?」」


驚くシジュとフミの横で、しばらく考えていたミロクは、ポンと手を打って呑気に呟く。


「ああ、そういえば、あの人達そんな事を言ってたような?あの動画使うよーって」


……事務所の一室に、雷が落ちた。















「もう、あんなに怒らなくても……」


「ダメですよミロクさん。上司にはホウレンソウ『報告・連絡・相談』ですよ」


「まさかあの人達、社長に言ってないとか思わなかったんだよ……」


しょんぼりすりミロクを、フミはよしよしと慰める。前を歩く年上二人は怒っているフリをしているが、内心では苦笑いだ。

何せプロデューサー尾根江の裏をかいた売り上げの伸びっぷり。本来なら良くやったという場面だったのだが、いかんせん事前の報告が無かったのはよろしくない。


「あんまり年寄りを驚かせるなよミロク」


「シジュ、君はもういい加減ブーメランという現象を認知すべきだと思うよ……」


「すみません社長、以後気をつけます」


「次から気をつけようね。ミロク君」


ペコリと頭を下げるミロクの頭を、ヨイチはポンポンと叩いた。

そこにキャーという女性の声が上がる。ラジオ局の出入り口に、十数人の女性が固まってミロク達を見ている。


「なんだありゃ?今日は芸能人の収録でもあったか?」


「こっち見てるね」


「俺、あの人は知ってます。鼻血出した人です」


ミロクがその女性に手を振ると、再びキャーと悲鳴が上がった。対象の女性はしっかりとハンカチを鼻に当てている。準備は万端らしい。


「ラジオ、頑張ってください!」

「初の冠番組ですね!おめでとうございます!」

「私達ここで聴いてます!」

「ヨイチ宰相様!素敵です!」

「シジュ様!愛してる!」

「王子!目線こっちください!」


どうやら344(ミヨシ)のファンだったと気づいたミロク達。

ヨイチは微笑んで手を振ると再び悲鳴が上がり、シジュが「俺も愛してるぜ、かわい子ちゃん」と返した為キャーがギャーになり、ミロクが「目線?」とメガネをとって言われた女性をジッと見ると、数人がふらりと倒れそうになり慌てて周りが支えていた。


ラジオ局に入ったミロク達は、控室に入りホッと息を吐く。


「なんか急にすごいことになったね。ラジオ局の方に言っておかないと」


「それは今フミちゃんが相談しにいたみたいですよ」


「さすが俺らの敏腕マネージャーだな」


ふと沈黙が降りる。

自分たちの年齢からアイドルという自覚はあまりない。たださっきのように自分達の行動を追ってくれる、固定で応援してくれる人達を見ると、なんだか急に「アイドルっぽい」と思ったのだ。


「よし、やろうか」


「おう!」

「はい!」


三人は気合を入れる。

マイクの前に座り、手慣れた動作でヘッドフォンを着ける。

そう、これは344(ミヨシ)初の冠番組なのだ。


<タイトルコールお願いします!>




「「「ラジオ『ミヨシ・クラウン!』」」」





お読みいただき、ありがとうございます!

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