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オッサン(36)がアイドルになる話  作者: もちだもちこ


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58、嵐が過ぎても安心できない。

時間がずれました!m(_ _)m

ミロクがスポーツジムに通い始めた頃、太ってはいたが格闘技のイメトレは欠かしていなかったのと、喫茶店にいた暴漢が思ったよりもひ弱だったことが幸いし、あの日ミロクはヒーローになった。

そして、そのヒーローの正体を知らないのは、この場の四人中ただ一人、フミの友人の真紀である。


(弱った……ここであの時の重量級は俺ですと言ったところで信用されないだろう)


困ったミロクはニナに視線を送るが、大崎家の知恵者と名高い彼女も無言で首を横に振る。

するとそこで顔を真っ赤にしたフミが、決死の覚悟を決めたかのような表情で口を開く。


「真紀ちゃん!ごめん!」


「え?どうしたの急に?」


ポワポワな茶色の猫っ毛頭を深々と下げて謝るフミに、真紀は慌てる。


「私の憧れの人、見つかってたの!そこにいる大崎ミロクさんなの!」


「えええ!?」


驚いてミロクを見る真紀。そしてすぐに「重量級の柔道家?」と呟く。

それは無理もない事だろう。今のミロクは引き締まった細マッチョ体系で、どう見ても重量級ではない。


「ええと、事務所のホームページの、344(ミヨシ)っていうユニットの……」


「ちょっと待って。344って、アニメの曲とか歌ってなかった?」


「ああ、よく知ってるね。俺たちのデビュー曲が『ミクロットΩ』の挿入歌で使ってもらったんだ」


「そうそう。お兄ちゃんアニメ好きだから大興奮だったよね」


嬉しそうに語るミロクと、そんな兄を微笑ましげに見るニナ。フミは慌ててスマホで344公式サイトを開き、ミロクの過去の画像やプロフィールを真紀に見せる。


「え……あ……これ……」


「ね?ミロクさんすごく痩せたから最初分からなくて、でもある時ミロクさんがヒーローだって知ってびっくりして、それから事務所も忙しくて真紀に全然話せてなかったの。だからごめんなさい!」


「フ、フミは叔父さんの事務所で働いてるって言ってたけど、もしかして……」


「フミちゃんは、俺たち344(ミヨシ)のマネージャーなんだよ。いつもお世話になってます」


ようやく(フミの真っ赤な顔を除いて)話が落ち着いてきたと、ミロクはメガネの奥の目を細めて微笑む。それを見た真紀はゆらりと立ち上がった。


「ん?」

「?」

「どうしたの真紀?」


その瞬間、真紀の目がキラリと光ったように見え、彼女は叫ぶ。そして光の速さで手を伸ばす。


「っっっっそおおおおおおおおおおおいいっっっっ!!!!」


一陣の風が吹き抜け、真紀の手には黒ぶちのメガネがあり、メガネを取られ呆然と素顔を晒すミロク。フミとニナは唖然としていた。


「お……お……」


ミロクの整った顔を見て、真紀はワナワナと震え、そして叫ぶ。


「おおおお王子しゃまーーーっ!?」













「やぁ、取り乱してすみません。私って俗に言う『オタク女子』ってヤツでして、アニメ『ミクロットシリーズ』の大ファンなんです!」


ミロクのメガネを取り上げて大興奮の真紀を落ち着かせ、お騒がせしてしまったお店の人に謝ったりなんだりで、やっと静かに四人で話せるようになるまで結構時間がかかった。真紀は「本当にすみません」と言って頭を下げる。


「真紀ちゃんは昔から、漫画とかアニメが大好きで……」


「今期の『Ω』の第五話で、もうびっくりしちゃって……アニメの敵役三人のキャラクターもさることながら、第五話のみのエンディングでちらりと映った344(ミヨシ)の御三方を見て、こんな格好良い人達が二次元以外で存在するのかと、心ポンポン?したんですよ!」


「そ、そうなんだ……」

「よ、よかったね……」


真紀の豹変っぷりに、さすがの大崎家の兄妹でも引きに引いている。その引きっぷりにアサリやハマグリも大漁だ。


「ああ、でも本当にミロク王子はリアル王子ですねぇ……」


頬を染めてホゥっと息を吐く真紀をフミは複雑な顔で見ている。リアル王子と言われたミロクは「大野さんと同じ事を……」と落ち込み、ニナによしよしと慰められていた。


「フミ、ちょっと」


小声で真紀にちょいちょいと手招きされて、彼女はフミの耳元に近づいて話す。


「私はミロク王子の大ファンだけど、フミみたいに『大崎ミロクさんを大好き』なわけじゃないから」


「なっ……!!」


言われた瞬間フミは真っ赤になり涙目になる。

ミロクは心配して訳を聞くも、彼女は頑として答えなかった。ふわっとしているように見えるが、意外と頑固なフミであった。




後日、真紀から事務所のミロク宛に送られてきた今一番のオススメだという『ミクロットΩ』の同人誌の作者名が、某人気声優アイドルに似た名前であるのは気のせいだと思いたいミロクであった。

そしてその本は、そっとヨイチのカバンに入れておくミロク。




色々な方のプライバシーに関わることなので、その同人誌の内容は割愛させて頂く事をお許し願いたい。











こんなオチでしたm(_ _)m


お読みいただき、ありがとうございます。


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