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オッサン(36)がアイドルになる話  作者: もちだもちこ


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47、商店街イベント終了後のあれこれ。

更新滞り気味で申し訳ないです。

「お疲れ様です!344(ミヨシ)の皆さん!」


「大野さん!」


 後片付けの始まった会場に設置されている天幕にて、商店街の商会向けにサインを書くミロク達に会いにきたのは、アニメ『ミクロットΩ』でミロク王子役をやる声優の大野光周だ。

 茶髪にサングラスという相変わらずのスタイルだったが、今日は連れがいた。

 続けて入ってきた二人は大野と同い年くらいに見える。ミロクはもしやと声をかけてみる。


「あの、そちらの二人はヨイチ宰相と、騎士シジュの役の方ですか?」


「よく分かりましたね!宰相役の竹之内俊行くんと、騎士役の高本弘安さんです!」


「はじめまして。今日は勉強させていただきました」


「どうも!小さなイベントとは思えない熱気でしたね!」


 落ち着いた雰囲気の竹之内と、溌剌と答えたメガネをかけている青年が高本だ。

 二人の名前を聞いて、ミロクはハッと気づく。


「竹之内さんと高本さんはラジオに出られてましたよね!」


「はい。『深夜のバリトン』ですね」


「おや、もしかして僕は君に間違えられたってことかな?」


 ヨイチとシジュがサイン書きのノルマを終えて、ミロク達の会話に加わる。


「ずいぶん若い子と間違えられちゃったね」


「え?ミロクくらいじゃねーの?」


「シジュさん、竹之内さんはまだ成人してないと思いますよ?」


「マジか!」


 三人の掛け合いを、目をキラキラさせて見る大野。竹之内は苦笑しながら「まだまだ若輩者です…」と言っている。高本はシジュの衣装に興味津々で「腹筋すっげー」と言い、言われたシジュは腹筋に力を入れてニヤニヤしていた。それを見てミロクはふと疑問に思う。


「お三方とも、この衣装着てイベント出たりするんですか?」


「「「それはないです!」」」


 即反応する声優三人。それにびっくりするオッサン三人。


「これだけアニメとリンクするリアルな三人がいるなら、自分達は声に徹しますよ」


「こんなダンディな人達がリアルにいるって、ある意味奇跡ですからね。でもアイドルなんですよね。なんだか複雑だけど……面白いっす!」


 竹之内が冷静に言い、高本は興奮気味に自分の思いを語る。この組み合わせも面白いとミロクは感じてた。声優は…演じるという仕事全てにおいてだが、様々なキャラクターを演じた上で自分のカラーのようなものを出す必要があると感じる。それは演じる外側での話かもしれないが、ミロクは広い目で彼らを見て、この際色々と吸収しようと考えていた。

 ヨイチはそんなミロクを見て思うところがあったが、今はこの出会いとひと仕事終えた開放感を味わうことにしたのだった。











「おかえりなさーい」

「おかえりミロク」

「良かったんじゃない?」

「お兄ちゃん、グッジョブ」


 玄関のドアを開けた瞬間に、母、父、姉、妹の順で声をかけられる。


「やっぱり……見に来てたの?」


 顔を赤くして恥ずかしがるミロクに、母イオナは笑う。


「当たり前じゃない。ご近所に挨拶もあるし、ミロクのお仕事を知ってもらえたし。お母さんいっぱい羨ましいって言われたわー」


「そ、そう?」


「父さんも会社の人達から色々聞かれたなぁ。なぜか皆ミロクの事を知ってたからビックリしたよ」


「うちの会社の人達には私が色々仕込んで来てもらったけど、そんな必要なかったわね。お疲れ様」


 姉のミハチは微笑んでミロクを労う。そして「これからもっと忙しくなるわね」と意味深なことを言う。何だろう、ちょっと怖いとミロクは怯える。

 妹のニナは今回ヘアメイクなどが出来なくて悔しそうだ。それでもミロクの髪型は及第点だったと、上から目線で評していた。

 遅い夕飯を食べるミロクに、家族はお茶を飲みながら付き合ってくれている。大崎家のこういう所は変わらない。

 テレビを見ると『ミクロットΩ』のCMが流れている。女の子三人のキャラクターがロボットと共に歌っている。ミロク達のキャラクターは五話からの為、CMなどには出ていない。

 自分達はどんな風に思われるのだろうか。

 ミロクは不安でもあり、楽しみでもあった。


「まぁ、大丈夫でしょ」


「え?何を急に」


「アニメ、きっとうまく行くよってこと」


「……ありがとう、姉さん」


 不安が顔に出てたかなと自分の顔を触る弟に、姉ミハチは激励の意味を込めてなのか新しい化粧水の試供品を大量に置くと、「おやすみ」と言って部屋に引っ込んだ。



 律儀にも化粧水を顔にペタペタつけながらミロクは自分の部屋に行く。

 ここ数ヶ月はほとんど寝るだけになってしまった自分の部屋。引きこもってた頃に戻りたくなる事もあるけれど、それを上回る程に今は毎日が面白い。

 生まれて初めての感覚に、ミロクは日々驚いていた。

 これから週末はイベントに出演し、デビュー曲を歌いながらアニメの宣伝活動となる。

 ラジオもあるし、モデルの仕事もある。レッスンも欠かせない。


「今は、やるしかないよね」


 忙しくなりそうな日常にプレッシャーを感じつつ、今日はやり切った充足感に包まれ、夢も見ずに寝るミロクだった。






お読みいただき、ありがとうございます。

盆休みには完治させたいです。

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