表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オッサン(36)がアイドルになる話  作者: もちだもちこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/353

42、弥勒は白か黒か。

ミロク君のイメージが崩れる恐れありです。

心の強き方はお読みください。


「今日までに決済が必要な案件は以上です」


「ありがとう、如月君」


 重ねて置いていた書類を集めて整えているフミに、ヨイチは「さてと」と叔父の顔になる。


「で、フミ。ミロク君の事なんだけどね」


「ミロクさん?」


「この前の食事はどうだったんだい?」


 キョトンとしたフミの顔が、みるみる赤くなる。そんなフミの愛らしさに笑顔を向けるヨイチは、内心ミロクに舌打ちをする。叔父心は複雑なのである。


「えっと、ファ、ファミレスに行っただけで、べ、別にマネージャーとして普通の事じゃないの?」


「ええ?それだけ?フミの理想なんだろミロク君は」


「え?何のこと?」











「……ってフミは言ってたけど、一体どういう事なんだいミロク君」


「何がどういう事なんですか?」


 デビュー曲のダンスレッスンと振り付けの確認をする三人は、小休憩をとっていた。

 そんな中、ヨイチはフミとの会話で違和感を感じ、休憩時にミロクを問い詰めている。


「まぁ、落ち着けオッサン。まずあの子の理想って何なんだよ」


 シジュはヨイチにスポーツドリンクを渡して、落ち着かせようとしている。ミロクはしばらく考えていたが、不意に目元を赤くすると慌ててヨイチに詰め寄る。


「ヨ、ヨイチさん!なんであの事知ってるんですか!」


「ミロク君が近所の喫茶店で暴漢を取り押さえた話?ミハチさんから聞いたよ?」


「ああ、それ俺もニナちゃんから聞いたな」


「な、ちょっと!二人してうちの姉妹に何聞いてるんですか!」


 ヨイチはともかく、シジュの言葉は捨て置けないと憤慨するミロク。


「それは置いといて。なんでフミはミロク君が『あの時のヒーロー』だと知らないの?」


「……言ってませんから」


「そうなの?僕はてっきりそれを知ってるからフミは……だと……」


「それを言わずして、お前はあの子にグイグイと迫っていたのか?」


「そうですが、何か?」


 ミロクは首をこてりと傾げる。

 なぜ、四十代二人がそこを気にするのかというと、ミロクは体型の事もあり年齢イコール彼女いない歴であるのは確実だ。

 女の子との付き合いなど、なにかプラスの要素がなければ無理だろうと思っていた。

 この場合のプラス要素とは『フミにとって理想のヒーローの正体はミロクだった』という事である。


「お前、何もない状態であれだけ迫れるなんて、勇者だな」


「そりゃ、嫌われてないのは分かってますから。今は兄くらいの距離で攻めてます」


「あれが兄としての距離?あれはもう……」


 完璧に恋人の距離じゃないかと言おうとしてヨイチは口を噤む。あれが妹への距離……だと?


「害がないのは分かってもらえたと思います。幸いにも女の子に好かれる顔をしているようなので、自分の顔をフル活用しますよ。

 そして確実に、フミちゃんが俺に落ちるように、ドロドロデロデロに甘やかして惚れさせます」


 熱く語るミロクに、四十代二人はドン引きだ。


「それからで良いでしょう?」


 ミロクはニコリと無邪気に微笑む。その綺麗な笑顔はさながら天使のように、キラキラと輝いている。


「フミちゃんが俺がいなきゃ生きていけないくらいに惚れさせて、さらに『憧れのヒーロー』が俺だと知ったら……ふふ、楽しみだな。どんな可愛い顔するのかな」


「……ミロク君?それって……今すぐの話なの……かい?」


 ヨイチは少し震えながらも、果敢にミロクに質問をぶつける。


「そりゃ、俺だって今の自分じゃフミちゃんを養えませんからね。誰も文句が言えないくらい売れてやりますよ。とりあえずデビュー曲の作詞は出来たので、多少の印税が見込まれますけど、売れなきゃ意味がないですからね。アニメの宣伝とデビュー曲の宣伝、俺はこれにまずは力を入れていこうかと。

 でもモデルの仕事も続けたいですね。

 あれ?どうしたんですか?ヨイチさん?シジュさん?」


 ミロクの『(精神的な意味で)フミを虜にしちゃうぞ作戦』はともかく、色々考えていることは分かった。分かったがしかし。

 頭を抱えるシジュ。それを横目で見つつ、ヨイチは何と言えばいいのか考えるが、何も思い浮かばない。


「とりあえず……ミロク君のフミへの距離は、妹相手とは思えないよ」


「そうですか?難しいなぁ女の子って」というミロクに、ヨイチは『距離感』の事を伝えるだけで精一杯だったという……。


 頑張れヨイチ。








お読みいただき、ありがとうございます。


ミロク君は、今は病んでません。基本は良い子です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 天然ブラックなミロクさん、出てきました。 この後、一体どうなるんだろう?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ