257、グルメ温泉レポをする三人。
活動報告に、面白いお知らせを載せてます。
よろしければ見てやってください(*´∀`*)
温泉駅の近にある比較的新しいそのレストランは、夜はバーもやっているらしく観光客がふらりと飲みに来るそうだ。
オッサンアイドルの三人は、シェフおすすめのローストビーフ丼を注文する。特製クリームソースと半熟卵で、暴力的なまでに肉の旨味を引き出しているその一品をじっくりと堪能していた。
「あー、こりゃ美味いな」
「ひとくち目は辛うじてコメントできたけど、後はもう無理だったね」
「この後にも食べるんですけど、大丈夫ですか?」
「……マジか」
「すっかり忘れてたね!」
ペロリと一人分を食べてしまったヨイチとシジュだったが、ミロクも半分以上食べてしまっている。そしてその勢いは止まらない。
「ところで、このカレーが気になるんですけど……」
「ダメだよミロク君。ここに来てカレーを注文するとかってないでしょ」
「でも、なんか面白いよな。温泉まで来てカレー食うのかよ! みたいなツッコミされそうだな」
どうしても気になるミロクの(上目遣いのオネダリ)に、(ハートを撃ち抜かれた)番組スタッフが食べるということで注文することとなった。
さすが人タラシの王子である。彼の場合「ここぞ」という時に発動させるため、周りがつい許してしまうのが怖いところだ。
出されたカレーライスは、シンプルなルーにゴロゴロと入った牛肉。野菜は素揚げして彩り良く飾られている。
「美味いローストビーフ出すところだから、不味いことはないだろ」
「ああ、カレーのいい香りがするね」
「いただきまーす」
さっそくミロクはスプーンを持ち、ライスにルーを絡めてあむっと頬張る。
「んんんん!?」
「ど、どうしたミロク!!」
「辛かったのかい!?」
「……どうしましょうヨイチさん、シジュさん。これ、めちゃくちゃ美味いですうう」
なぜか涙目のミロクから目線をそらす年長の二人。再びミロクはカレーにスプーンを差し込み、今度はヨイチの口元に持っていき「あーん」をする。
スタッフの間に緊張が走る。
これはもしや、オッサン同士の「あーん」が録れてしまうのではないかと、カメラマンもいつになく緊張した面持ちだ。
穏やかな旅番組のロケとは思えないこの緊張感。その渦中の人であるミロクは笑顔でヨイチにスプーンを差し出し、少し照れたようなヨイチがそれを頬張る。
「んんんん!?」
「おい、どうしたオッサン!!」
「ですよね? そうなりますよね?」
「……なんかすごく美味しいね。何だろうこの爽やかな辛味とカレー自体が味わい深い」
目を閉じてうっとりしながらコメントするヨイチの横で、今度はシジュがミロクの「あーん」対象者として捕捉されている。
「自分で食えるっつの」
「シジュさん、俺の絶妙なライスとルーの配分なのに……食べてくれないんですか?」
涙目のミロク発動(本日二回目)。王子からは逃げられない。
腹をくくったシジュは、ため息を吐きながら渋々ミロクの手ずからカレーを頬張り、そのまま固まってしまう。
「……なんか、すげぇ負けた気がする」
「ですよね。なんか悔しいですよね」
「たかがカレーと侮ってしまった、僕らの負けってやつなのかな……」
なぜか少年漫画のヤラレ役のようなオッサン三人に、貴重なシーンも録れてホクホクな番組スタッフも、カレーの残りを食べて固まるのだった。
「で、また温泉に戻ってきたね」
「昨日とは別の宿だけどな」
「あの、こういうのって別撮りで女性が入ってませんでしたっけ?」
番組スタッフに案内され、宿の夕食の紹介と温泉の紹介をすると打ち合わせで言われたが、まさか自分たちが入ってレポートするとは思っていなかったミロクたち。
しかしヨイチは一応受けることにした。これをみて全国放送で使えるか使えないかは、番組制作側が決めれば良いことである。
なんにせよ、高級旅館にそのまま泊まれるということで、オッサンたちは楽しむことにした。
「わぁー、広いですね!! 露天風呂もいくつかあるみたいですよ!!」
「ミロク、もう一枚タオル巻いた方がいいんじゃねぇか? 湯で色々透けてんぞ?」
「君、もうちょっと厚手のタオルあるかい?」
湯殿の外で待機している女性スタッフに声をかけたヨイチだが、うっかり上半身裸の状態で出てしまいフミが慌ててタオルを投げる。そう。試合終了のタオルだ。
ミロクはタオルの巻き方が甘く、すぐに緩むためカメラマンがハラハラしている。見かねたシジュがしっかりと巻いてやると、照れたように微笑むミロクの可愛さに周りが「温泉シーンはやめておけば良かった」と後悔したとかしないとか。
トドメとばかりにカメラの前で肌色をみせまくったオッサン三人だったが、彼らの温泉グルメレポは高視聴率を叩き出す。またぜひ頼むと後日、番組プロデューサーが直々に挨拶に来るほどであった。
「温泉のシーンはあまり出てなかったですね」
「そりゃそうだろ。ゴールデンタイムにゴールデンなもん出してんだから」
「ゴールデンなものって何かな?」
「こいつ、タオルの巻き方が下手で何度が落ちてなぁ」
「や、やめてくださいー」
「そりゃ……番組スタッフの皆さん、色々と大変だったろうね」
恥ずかしがるミロクを見ながら、ヨイチとシジュは「しょうがない弟だなぁ」と苦笑するのだった。
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