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オッサン(36)がアイドルになる話  作者: もちだもちこ


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24、周囲の反応と弥勒の距離感。

「ラジオ聴いたよ!応援するぞ344!」

「あの、ゆるくてまったりとした雰囲気が好きです……」

「ミロクさん、歌出すの?」

「アイドルデビューって、あの三人で!?」


 ミロクがモデルの仕事に行くと、早速ラジオ出演の反応があった。

 事務所側としてヨイチが宣伝活動をしていたのだが、SNSや公式サイトだけではなく、ミロクの知り合いや仕事先のスタッフあてにメールや広告を渡すなどをしていた。

 お陰で多くの人がラジオを聴いてくれたらしい。


「事務所近くの商店街からも、イベントのゲストとして参加してほしいと依頼がきてますよ」


「そうなんだ、ありがたいね」


「あの発表会で、あの近辺ではすでに有名な三人ですからね!」


 今日は久しぶりにフミが付いてきていた。久しぶりの二人での行動に、少しぎこちなくなるミロクだったが、仕事だからと切り替えて何とか普段通りに対応している。


「それにしても……ミロクさんの人気は際立ってすごいですね」


「ん、まぁ先にモデルとしてやってたからね」


「そうじゃなくて、です」


 なぜか少し機嫌が悪いフミ。それを感じたミロクはつい茶色の猫っ毛にポンと手を置く。


「どうしたの?話してよフミちゃん」


 伏し目がちのフミに視線を合わせようと、腰を屈めて彼女の顔を覗き込む。


「……っ!!そ、それです!そういうやつです!」


「それって?」


 ミロクは困りきった顔でフミに問う。先を促すその声も甘く響き、ミロクの耐性を持つフミでさえ顔がどんどん赤くなっていく。


「い、い、色気のダダ漏れ禁止です!!!!」


「うわっ、なんだかごめんフミちゃん、よく分からないけど分かったよ!だから落ち着いて!」


「分かってないですー!!!!」


 背中辺りをポカポカ叩くフミと、なぜ叩かれているのか分からないミロクの二人の姿は、撮影現場ではあまり珍しい光景ではない。


「信じられるか、あれ、付き合ってないんだぜ?」

「二人とも可愛くて癒されるけど、なぜか涙が止まらない」

「爆ぜろ」


 一般的にほんわかする光景でも、独身恋人無しスタッフに対しては精神をゴリゴリ削る光景であった。

 爆ぜろ。










「二人のイチャつきレポートはゴミ箱にポイして、デビューするには歌を出すというのが定石らしいな」


「何ですかそのイチャつきレポートって。しかも捨てられてるし」


「ミロク君、王子様にも程があるということだよ」


「意味が分かりません!」


 事務所の会議室では、次回のラジオを内容を決めておこうと集まった三人と、隅っこで赤くなっている一人。


「それにしてもミロク君は、初見の人になればなるほど近づくよね。距離感が近いというか」


「ああ、そういえば俺と初めて会った時も近かったなぁ。今は普通だけど」


「え?そうですか?」


「言われたことないのかい?」


「無いですけど……あ、なんか最近目が悪くなってきたかもって思います。人の顔覚えるときによく見えなくて……」


「「それだ」」


「ミロク君、普段はメガネかけようか。変装にもなるし。撮影とかには影響ないんだよね」


「はい。ちょっとぼやけてるくらいの方が緊張しなくてすむので」


「よし、とりあえず王子様フェロモンは、これで少し治るだろ」


 会議室にホッとした空気が流れる。フミも原因が分かってホッとする。あの距離感は色々ヤバいと思っていたからだ。


「そんな事言って、シジュも女の子からしょっちゅうキャアキャア言われてるよね?」


「あれは元客と、そこから広まった子達だ。俺の人気じゃねぇよ」


「いや、それは君の人気でしょ」


「ヨイチのおっさんだって、ラジオの時に出待ちされてたじゃん」


「あれは……なんか声で声優と間違えられたらしいし……」


「でも結局応援しますって言ってくれてましたよ?……あと、収録かと思ってたら、あれ生放送だったんですね。俺勘違いしてて……」


「それは皆一緒だから。尾根江プロデューサーが手を回してて、そのままな僕たちを出したかったらしい。放送終わった後すぐにメールきて……」


「「はぁ?」」


 ラジオの放送が収録ではなく生放送だったという、そんな仕掛けが出来るのだろうか。

 それは尾根江だからという、それだけでは済まないような気がしてきた三人であった。




今日はもう一回更新予定です!

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