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オッサン(36)がアイドルになる話  作者: もちだもちこ


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ラジオ『ミヨシ・クラウン!』〜バレンタインなスペシャル〜

バレンタインに間に合った…

<オープニング『puzzle』>




「皆さんこんばんは! バレンタインって何? ミロクです!」


「お菓子の会社の戦略かな。ヨイチとー」


「毎年なんか貰うけど、菓子なら甘さ控えめなやつで頼む。シジュだ」


「三人そろってー」


「「「344(ミヨシ)です! よろしくお願いします!」」」


「シジュさん、毎年なんか貰ってるんですか……」


「去年はホストやってたし、お得意さんがくれるんだよ。俺の仕事内容を知ってる子とかは万年筆とかポストカードとか」


「シジュって字を綺麗に書くよね。この前の祝い事で『のし』書いてくれて助かったよ」


「ハイスペックシジュさん……」


「いや、別に普通だろ」


「あれってすごく緊張するんですよ? 俺は営業の時、総務の女性に頼んでました。会社絡むと失礼のないようにしないとだから、自分じゃ無理だって思ってましたよ」


「そんなもんかー」


「そうそう、今日はスペシャルなんだって? 何をするの?」


「バレンタインにどんな言葉が欲しいかみたいなアンケートを、リスナーさんに募集したそうです。それを俺たちが読み上げるというコーナーをやります!」


「へぇ……それって需要あるのかなぁ」


「オッサンに言われて嬉しい言葉か?」


「例えばですね……

『これ、俺に作ってくれたの? 嬉しいよ、ありがとう。……ん? 俺は甘いもの好きだよ。だから後でいただくよ。チョコも君も、ね♡』

うわぁ、すごいです。すごいです恥ずかしさが!!」


「甘い。やめれ」


「無理だよシジュ。今日はこんな事ばっかり言わされるデーだよ」


「俺は今日、甘い言葉絶対言わないマンになるんだ」


「何バカな事言ってるんですか。はい、これを読む!」


「うわあああ、やめろおおお……なになに?

『バレンタインか、チョコありがとなー。ん? 俺が本命? 何言ってんだ、オッサンを揶揄うんじゃねーよ。本気だぁ?……じゃあ、もらっとく』

これいいのか? 本気でもらっていいのか?」


「シジュ落ち着いて。相手の親御さんに許してもらってからだよ」


「落ち着かなきゃいけねぇのはヨイチのオッサンだろが。何で冷静に混乱してるんだよ」


「いやぁ、あまりの演技の上手さに、つい」


「ドラマで培った力が、演技に活かされていますね!」


「唐突に番宣(番組の宣伝)入れるのやめろよな」


「じゃあ、次は僕かな。

『チョコをあげるからお返しよろしくって、お返し欲しさにチョコをくれるの? 悪い子だね。一ヶ月後じゃなくて今夜にでもお返しをあげるよ。……お仕置き、して欲しいんでしょ?』

ねぇ、何で僕のは黒い感じなのかな?」


「うーん、なんでですかね」


「俺からは何も言えねーな」


「シジュ、ボーナスをカット」


「何で俺だけ!」


「ミロク君は可愛いから」


「可愛いは正義って本当だったんですね」


「なんか違う気がするぞ……」


「一旦CMです!」




<CM>




「ラジオ、ミヨシ・クラウン! 今日はバレンタインなスペシャルということでお送りしています!」


「ここからはアレだな。バレンタインに欲しいもの、だ」


「僕は何でも良いよ。甘いのは嫌いじゃないけど、自然な甘さの方が好きかな」


「ヨイチさんはコーヒーもブラック派ですよね」


「コーヒーそのものを楽しみたいんだよね。そういえばシジュは甘いもの苦手なんだよね?」


「甘過ぎなきゃいいぞ。ビターチョコとか酒と合うしな」


「そういえば、バーでワイン頼んだ時に、チョコが一緒に出てきたことがありますね」


「ああ、あそこのマスターな。必ず酒に合うアテを出してくれるから嬉しいよな」


「シジュお酒の話じゃなくてお菓子の話なんだけどね……ミロク君は?」


「俺、マカロン好きなんですよ。でも甘すぎないマカロンが食べたいんです。歯ざわりが好きなんですけど甘すぎるんで。まぁ俺にはバレンタインなんて縁のない話なんですけどね」


「な・に・を・言ってるんだ?」


「いひゃい、いひゃいれふよ、ひじゅひゃん!」


「こらこらシジュ、ミロク君のほっぺが餅のように伸びて、戻らなくなるかもだから。やめときなさい。僕たちの年齢は戻りづらいんだから」


「今年は違うだろ? 俺らのかわいこちゃん達がいるし、お前を好きだと言ってくれる子に悪いだろうが」


「そうでした。俺が間違ってました。今年も頑張ります。バレンタインのリア充撲滅運動を……」


「何でそうなるんだよ!」


「毎年ネットのイベントに参加してましたし、今年もちゃんと参加しないと」


「そこは律儀にしなくても良いと思うよミロク君。あと残念ながら今年から君は『狩られる側』だからね」


「狩られる側……だと!?」


「いい加減自覚しろミロク。参加すんなら体重増加は必須だぞ」


「それは困ります。体重増えると肩こりと腰痛が酷くなるんですよ」


「オッサンか」


「オッサンだね」


「ですね」


「さて、落ち込んだところでドラマの番宣しようか」


「そうだな! ミロク頼むぞー」


「はい! 僕ら344(ミヨシ)が出演している新番組、ドラマ『戦国武将の家臣が出来ました!』は、来週の土曜夜九時からの放送です! 原作・脚本は俺の大好きなライトノベル作家、ヨネダヨネコ先生ですよ! 原作の小説は『俺のクラスに戦国武将が転移してきた件』という題名です!」


「ミロクは高校生の役なんだよなー」


「僕とシジュは教師役なんだけどね。ふふ」


「絶対無理があると思うんですよ……皆さんノリノリでOK出してくるから不安だらけなんですけど」


「大丈夫だって。さっき伸びた餅みてぇなほっぺも元に戻ったぞ」


「若いねミロク君」


「なんか嬉しくないです……」


「んじゃ今日はこの辺で、か?」


「そうですね。せーの」


「「「344(ミヨシ)でした!また次回!ハッピーバレンタイン!」」」




<エンディングテーマ『chain』>




お読みいただき、ありがとうございます!

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