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オッサン(36)がアイドルになる話  作者: もちだもちこ


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125、メイドになる芙美と真紀と。

ミロクは床に膝をつき、そのまま動けなくなっていた。


ポワポワな茶色い猫っ毛の頭にはホワイトブリムを付けていて、細かなフリルに長めのシルクのリボンが両脇の耳元にかかるように飾ってある。肩までの髪は、今日は毛先が綺麗に巻かれており、くるんとした茶色の髪が動くたびにコロンと揺れてとても可愛らしい。

大胆にも、首にあるフリルのついた襟はチョーカーのようになっており、鎖骨と肩を出したフミの意外と盛り上がっている胸元まで触れたくなるような白い肌には薄っすらパールで化粧されている。

黒を基調にしたメイド服ではあるが、膝上までの長さで、なかのペチコートの白いフリルがふわふわと見え隠れするように絶妙な作りとなっていた。

白の膝上までの靴下に、靴下どめも白のフリルがふんだんに使われていて、服との間に肌色を少し見せるお約束の『絶対領域』はしっかりと確立されていた。

つま先がぽっくりと大きいリボンの付いたパンプスは、フミの身長からとても似合っている。


(これが、神の創りたもうた奇跡なのか……)


「ミロクさん? えっと、似合いませんか?」


どこか遠くを見たままブツブツ言っているミロクに、フミは同じ目線になるようしゃがみこんで話しかける。パチンとフミと目が合ったミロクは、みるみる顔を真っ赤にしていく。


「ミロクさん?」


恥ずかしいのと自分の格好に自信のないフミは、上目遣いでミロクを見て言葉を待つ。

普段、あまり肌を見せない彼女の鎖骨や肩、着痩せするタイプらしい胸元。さらにしゃがみこむことによってスカートから出ている太腿、そしてその奥の……


「ああああ!! フミちゃん!! ダメです!! これはダメなやつです!!」


真っ赤な顔をさらに真っ赤にさせたミロクは、慌ててフミの腕をとって一緒に立ち上がるも、そのまま立ち眩みを起こしてしまう。


「危ないです! ミロクさん!」


ふらついたミロクは柔らかなもので自分の顔を受け止めてもらう。その甘い匂いに、思わずクンカクンカと嗅いでしまうのは、本能なのか習性なのか……あまりの心地好さに、その柔らかくて良い匂いのするものに顔をグリグリと押し付ける。


「ミロクさん、あ、あの、くすぐったい、です」


「ん?」


「はい! ラッキースケベ終了!」


フミの友人である真紀がパチンと手を叩くと、ミロクはハッと我に返った。

目の前には白い肌。

そう、白い肌。

顔を上げると、頬を染めて困った顔をしているフミ。

赤くなった顔を今度は真っ青にして、慌ててフミから離れるミロク。


「うわぁ!! ごめん!!」


「い、いえ、だいじょぶ、です」


「フミの叔父さんが居なくて良かったよ……」


文化祭二日目の今日は、何故かメイドとして企画に参加することとなったマネージャーのフミと、その友達の真紀の準備のため、朝早くから二人は学校に来ていた。

ミロクはフミのメイド姿を早く見たくて、ヨイチとシジュよりも一足先に来ていたのだ。

そこで起こった悲劇。いや、ミロクにとっては人生のトップテンに残る素晴らしいひと時になったであろうこの事件は、ミロクとフミの懇願で真紀の(ささやかな)胸にしまわれることとなった。


ちなみに真紀の格好は、フミと違って露出は少ないものの、長めの丈のメイド服にショートボブの黒髪にはフミとお揃いのホワイトブリムをつけている。細身の体に、ふんだんに使っているフリルが良く似合う。これはこれで需要があるだろう。


「とりあえず、フミちゃんは裏方ね。着替えしないならカーテンから出てきちゃダメだよ」


「ちょっと! そうしたらメイドが足りないじゃない!」


「こんな可愛いフミちゃんが表に出るなんて……男子生徒もいるんだよ! 見せたくない!」


「独占欲か!!」


ミロクのどうでもいい我儘に、真紀は思わず言い返す。フミは露出の多い格好で外に出たくないので、ミロクの提案はありがたかった。せめて他のメイド服は無かったのだろうかと、衣装を確認しているフミはある事に気づく。


「ねぇ、真紀、これって……」


「ん? あらまぁ」


「どうしたの?」


衣装を手にして何かを考えている二人を覗き込んだミロクは、フミと真紀の満面の笑みに、何やら嫌な予感を感じていた。











「遅いぞ、オッサン!」


「ごめんごめん、ちょっとメールの返信に手間取って……」


事務所で所用を済ませたヨイチとシジュは、連日通っているため慣れた様子で校門から『執事・メイド喫茶』のある音楽室へ足早に向かう。

早くも昨日の客だったであろう女子生徒達から歓声が上がっており、男子生徒達も興味津々で二人を見ている。


「今日は新規のメイドもいるから、男子も来いよー」


シジュが軽い口調で男子生徒達に声をかけると「おおーっ」と、どよめきが起きる。メイドというワードに宿るパワーは物凄いらしい。


「おや?」


音楽室の前に立つフミをみてヨイチは首を傾げる。なぜかフミは執事服を着ており、それはそれで可愛らしいが彼女はメイドという予定だった。


「どうしたのフミ、その格好は……」


「叔父さん、あのね、ミロクさんがダメ出しして……結構露出が多かったから私は助かったんだけど」


「サイバーチーム、何を用意してくれてんだよ。勿論写メったよな?」


「真紀ちゃんが連写で撮ってて、すごく恥ずかしかったです」


「グッジョブ!!」


「バカなこと言ってない!」


スパコーンとシジュの頭をスリッパで叩くと、ヨイチはドアの奥を見る。


「それで、なんでフミはここに立っているの?」


「今、真紀ちゃんがミロクさんの用意をしていて……」


事情を説明しようとするフミの後ろのドアが開いて、真紀が顔を出す。


「あ、ちょうど良かった。みんな入って。用意できたよ」


そこに居たのは、綺麗な立ち姿をしたクラシカルなメイド服を着た、モデルのような美しい女性だ。

背中まである黒髪は緩やかにウェーブがかかっており、長めのドレスのようなメイド服は黒を基調としているが白いフリルのついたエプロンが黒の重たさを軽減していた。

白い襟と袖口は清潔感のあるかっちりした作りで、彼女の白い肌を引き立てている。

黒目がちの瞳に、薄く化粧をしている肌は柔らかな白さで、スッと通った鼻筋に薄桃色の唇は艶やかに弧を描いている。

その目が離せなくなるような魅力的な唇から発せられる声に、全員が我に返った。


「おかえりなさいませ。ご主人様」


甘く響くテノール。

微笑んで、ゆっくりとお辞儀をするミロクを、真紀は満足気に頷き、フミは顔を真っ赤にし、ヨイチとシジュは唖然とした顔でメンバーの女装姿を見ていた。











予想通り!でしたか?( ´ ▽ ` )


お読みいただき、ありがとうございます。

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