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オッサン(36)がアイドルになる話  作者: もちだもちこ


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142/353

118、弥勒は麗香さんと莉乃さんとデートする。

モブ様の増殖は想定外でありますm(_ _)m

「あれ? 麗香さん?」


「おはようございます。ミロクさん。今日はよろしくお願いします」


驚いて目を丸くするミロクに、麗香はつい吹き出す。


「ミロクさん、目が落っこちそうなくらい丸くして、そんなに驚きますか?」


「驚きますよ! まさか麗香さんだと思わないですよ!」


「ふふ、してやったり、ですね」


麗香はペットカフェのオーナーである。看板犬であるコーギーのコロに会うため、ミロクは月に数回店に通っている。麗香とも顔見知りだが、まさかこのデート企画に彼女が参加しているとは思わなかったのだ。


「お店の外で会うと、何やら変な感じですね」


「今日はミロクさん本命のコロもいませんしね」


「コロに会いに行ってますけど、もちろん麗香さんにも会いに行ってるんですよ。俺」


「え?」


思いがけない言葉を受け、ポッと頬を染める麗香を見てミロクは微笑む。優雅で大人な雰囲気の彼女ではあるが、こういう反応を見ると少女のようで微笑ましい。

彼女の服装は、薄手のニットコートに中はブラウスですっきりとした長めのスカートにパンプスを合わせている。女性らしい綺麗な服装だ。

対してミロクは濃いグレーのスーツである。今回のデートはメンバー全員同じスーツでということだった。


「お上手ですね」


「本気なんですけどね」


「もう!」


和気あいあいと語り合う二人を遠くから撮っているカメラマンは、安堵のあまり深くため息を吐いた。昨日のヨイチの撮影時に、相手の女性がすっかりのぼせてしまい、途中で撮影を切り上げてしまったのだ。

急きょ、今日の撮影はミロクに二人相手してもらう事になった。

色々な噂のある彼だが、この分なら大丈夫だろう安心して撮影を続けることになった。


しかし、これは奇跡の為せる技である事をスタッフは知らない。

麗香は常連客であるミロクのフェロモンに多少は慣れていた。

そして常連客であるミロクは、麗香との距離感が分かっていた。

その二点が重なることによって起きた、仮初めの平和なのである。


「今日はどこに行くんですか?」


「ええと、実は私、歌は好きなんですけどカラオケに行った事がなくて……」


「では、カラオケデートですね」


「はい。よろしくお願いします!」


もちろん事前に知っているスタッフはカラオケ店内にカメラを設置している。そこでミロクに出た指令は「自分の歌を歌う」であった。

麗香はもう嬉しくて仕方がない。大ファンであるミロクが自分だけのために目の前で歌ってくれるのだ。嬉しさのあまりずっと笑顔の麗香に、ミロクも笑顔になる。そんなミロクを見て慌てて麗香は俯いた。


「なんで下向いちゃうんですか?」


「いえ、にやけた顔をしているので、恥ずかしくなって……」


「そんな事ないですよ。可愛らしい笑顔で、見ているだけで嬉しくなりますよ」


「はぅ!!」


花の咲くようなホワリとした笑顔を見せるミロク。

スタッフに緊張が走る。

しかし麗香は今までの接客で培った能力を駆使して自分を取り戻した。頬は赤いままだが撮影が続けられるだけ良いだろう。

スタッフ一同、心の中で麗香の健闘を讃えていた。


カラオケ店に入った二人が案内された部屋は、ミニライブが出来るように小さな舞台がついている広い部屋だ。最新のカラオケ機が導入されているらしく、久しぶりのカラオケであるミロクのテンションも上がっている。


「では、指令もあるので、まずは『puzzle』から」


「はい!!」


もちろん、カラオケでミロクが全力を出さないという選択はない。完璧に歌って踊りきるミロク。その綺麗な声とキレのあるダンスに麗香は大興奮だ。


「あの、あの、以前『歌ってみよう』でアップされていた歌をリクエストしてもよろしいですか?」


「もちろん。麗香さんのために歌いますね」


「はぅぅ!!」


踊ったせいか、息を切らし上気した顔でニッコリ微笑むミロクは、店に来た時とは違う色気が出ている。

それでも麗香は耐えた。どうしても彼の歌を聴きたかったのだ。



そして、某艦隊アニメのエンディングを歌いながら踊るミロクを存分に鑑賞し、彼女はやり遂げた笑顔を浮かべ、ゆっくりとソファに身を横たえたのであった。




ーーーーーーーーーーーーーーーー





本日二回目のデート。

一回目の撮影の時間はギリギリOKとのことで、ミロクはホッとする。麗香さんには後で菓子折りを送っておくように、ヨイチさんに追加してもらおうと心に決める。


「初めまして。莉乃です。よろしくお願いします」


「ミロクです。よろしくお願いします莉乃さん」


スラリとした細身のスタイルで、カジュアルなスーツに身を包んでいる。どうやら午前中仕事だったようで可愛くない服装で申し訳ないと、ひたすら彼女は恐縮している。


「そんな事ないです。お仕事お疲れ様です」


「ふぁ、あ、ありがとうございましゅ……」


思わぬミロクの言葉に、莉乃はつい噛んでしまう。それでも職業柄イケメンに一々反応してはいられないため、彼女は早々に自分を取り戻す。

心の中でスタッフ一同どよめく。スタッフ達の中では猛者が来たという認識になっているようだ。

失礼な話である。彼女は一般人だ。


公園デートということで、喫茶店で軽食と飲み物をテイクアウトする。

天気も良く暖かい日差しの中、近くのベンチに座って会話をすることにした。


「お仕事は何をされているんですか?」


「区役所の職員です。番組に出ることも許可を得ているので大丈夫ですよ」


「そうですか……」


そう言いながらミロクはじっと莉乃を見る。それは甘い雰囲気ではなく見定めるような視線だった為、彼女は首を傾げる。


「私、何かおかしいですか?」


「いや、そうじゃないんですけど……なんか莉乃さんってギルドの受付に居そうだなぁって」


「へ!?」


驚いた莉乃は、思わず変な声が出てしまう。ギルドというと……


「えっと、それってライトノベルに出てくるギルドですか?」


「はい。俺ラノベが好きで、いろいろ読んでるんですけど、冒険者って冒険者ギルドというところに登録するじゃないですか……あ、ごめんなさい。ラノベとか読まないですよね」


「いえ! 実は私ラノベ好きなんです! ミロクさんがプロフィールで趣味にライトノベルを読むことってあって、とても嬉しかったんです」


自分の好きな話になったせいか、肩から力が抜けて自然体に話す莉乃。そしてミロクは同じ趣味ということでテンションが上がる。


「ライトノベルはイコール『ファンタジー』というイメージですけど、現実世界の読み物もあるし少し不思議な話とか歴史物とかもあって、最近は幅広くあるから一概に『気軽に読める』という感じではなかったりもしますよね」


「私は仕事柄、堅苦しいことが多いので何も考えなくても楽しめる娯楽性の高い読み物が良いですね。でもたまにはシリアス物も読みたくて……そういう選ぶ楽しみも出来たのでラノベ万歳って感じです」


「ネットで検索すればジャンルで選べたりしますからね。店員さんに聞いたりもしますけど、最低限の情報がネットで見れるのは便利ですよね」


思わぬラノベ談義、そして本についての考察、自分の好きなジャンルのラノベの話など、話は尽きない。

そしてスタッフ全員が心の中で同じことを思っていた。


(お前ら、これデートする番組の撮影ってこと、忘れているだろ……)


だいぶ経ってからテレビの撮影だと思い出したミロクは慌てて莉乃に謝るが、彼女は嬉しそうにすごく楽しかったと言ってくれたのでホッとする。しかし番組スタッフの皆さんにとっては良くないだろう。

残る344(ミヨシ)のメンバー、シジュへ思いを馳せる番組スタッフの皆さんにも後日、如月事務所から菓子折りが届くことになるのであった。









お読みいただき、ありがとうございます。

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