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オッサン(36)がアイドルになる話  作者: もちだもちこ


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114、出張・アニメ緊急発信〜司樹・与一編〜

着ぐるみバージョン→着ぐるみパジャマ…に、変更しました。

え?どうでもいい?


近くにワイン工場があるからか、テーブルにはルームサービスで頼んだらしい赤ワインが置いてあった。

複数あるグラスに一瞬女性と寝ているのかと身構えるも、着ぐるみパジャマでついてきたミロクの「昨日三人で飲んでました」という言葉に力が抜ける。置いてあるグラスは三つだった。

一応調べたが、口紅の汚れはない。


(よし、今度こそ上手くやらなきゃ!)


声優アイドルの名?にかけて、大倉弥生はシジュの寝るベッドの側に忍び足で行く。カメラマンとミロクも彼女に続く。

どうやら酔いが回っていたらしく照明がついたままだ。これは省エネじゃないな……と思うも、今消すと起きてしまう可能性がある。

しかし、照明のお陰で室内の様子がよく分かった。ワイングラスの確認もできたし、ファンも安心だろう。

シジュは明るい中で寝ているせいか、布団に頭まで潜り込んでいるようだった。



カタン、キュキュ……ザーザー。



あり得ない物音にびっくりする三人。奥のシャワールームから水音が聞こえてきたのだ。


「え? 何? 何で?」


危うく上げそうになった悲鳴を飲み込んで、弥生は小声でカメラマンに問う。カメラマンは「分からない」と首を振り、ミロクはスタスタとベッドの側に行き布団を勢いよく引っぺがす。再び叫びそうになる弥生はベッドを見て絶句する。


そのベッドには、誰も寝ていなかった。


「まだ温かいです。まだ遠くには……じゃない。今シジュさんがシャワー浴びてるんじゃないですか?」


「え? ええ!?」


すっかり混乱している弥生に代わり、ミロクはスタスタとシャワールームを確認して声をかける。


「シジュさーん、応答してくださーい」


「あん? どうしたミロク。カギかかってなかったか?」


「えっと、開けてもらいましたー」


「ちょっと待ってろ」


「はい。あ、服着て出てきてくださいねー」


「おう」


戻ってきたミロクが見たのは膝をつく弥生と、彼女を慰めながらもカメラを回し続けるカメラマンだった。


「寝起きが……寝起きが……」


ブツブツ呟く弥生を申し訳なさそうに見ていたミロクだったが、奥からシジュが出てくる音に振り返ると、慌てて出てきたらしい彼は腰にタオル一枚巻いた状態だった。

水も滴る……というイイ男の前につく言葉を体現してみせるシジュ。滴る雫が伝うのは日焼けした肌、引き締まった筋肉は四十に入ったとは思えない若々しさを見せている。その壮絶な色香に唖然とする弥生とカメラマンの男性。

シジュはミロクの側にいるカメラマンを目を眇めて一瞬睨むが、苦笑しているミロクに気づき、いつもの如何にも「くたびれた大人」のシジュに戻った。


「なんだ。『寝起きドキドキ』の撮影かよ。今もあるんだな」


「大倉さんの番組の特別企画みたいですよ」


「へぇ、そうか」


「へぇそうか、じゃないわよ! もう! 王子といい野獣騎士といい、どうして放送事故的な感じになっちゃうのよー!」


「ミロクは何やったんだ?」


「今日に限って全裸で寝てました。はは」


ウキー! と騒ぐ弥生の横で、コソコソやり取りするミロクとシジュに、なおさらウキー! となる弥生であった。











「で、何で俺も着ぐるみパジャマなんだ?」


何故かフミが用意していた『モフモフわんころ餅・着ぐるみパジャマ・黒色』を着ているシジュは、むすっとした顔で呟く。ちなみにミロクが着ているのは茶色だ。


「テイク2撮るのは、もう面倒だし眠いからさっきの半裸を使うからね! 寝起き撮れなかった罰として着ててよね!」


「お、おう」


眠いせいか不機嫌になっている弥生の頬は未だに赤い。

尾根江の血縁者だけあって、彼女はイケメンに耐性がある方なのだが、さすがにフェロモンと色気に満ち溢れた美中年の裸体二連発はキツイらしい。


「さすがに宰相様は大丈夫よね?」


「オッサンは昨日飲んでた時に『全裸では寝れない』って言ってたな」


「ですね。落ち着かないって言ってました。あと睡眠時間はちゃんと確保するタイプだとも」


時間は三時半を過ぎている。確実に寝ているであろうと、ヨイチの部屋に入っていく四人。


「真っ暗ですね。さすがヨイチさんオトナです」


「くくっ、お前は明かりがないと寝れねぇもんな」


「ちょっと、静かに!」


囁き声でやり取りしつつ、もうすっかり慣れた忍び足でベッドルームに行く弥生。ペンライトで確認すると、どうやら服は着ているようだ。第一関門突破である。


「寝てるわよね……」


遠くからそっと顔あたりを照らすと、すっかり寝ているヨイチが確認出来た。


「んぐっ…」

「がっふ…」


普段は切れ者といった雰囲気であるヨイチの寝顔はとても幼く見える。女性であれば母性を刺激されてキュンキュンするであろう。

そして実際、弥生はその可愛らしさの直撃を受け、カメラマンの男性は妙な色っぽさを感じて咽せそうになっていた。

色っぽい理由は、やけに仕立ての良い浴衣の所為だろう。

少しはだけた胸元から覗く鎖骨は、全部見えてないだけタチが悪い。そこから上に喉仏と少し開いた薄い唇、通った鼻筋、おろした前髪がまた……


「よし、行くぞミロク」


「了解です」


「「おにいちゃーん!!」」


寝ているヨイチの両側にボフーンと飛び込む弟……ミロクとシジュ。うわっと叫んで起き上がったヨイチは、抱きつく大きな弟二人に翻弄され、イチャ……ワチャワチャになって終了した。

ちなみに、何故かフミが持っていた『モフモフわんころ餅・着ぐるみパジャマ・灰色』をヨイチも着させられていたが、案外気に入ったようだった。




後日、『アニメ緊急発信、344寝起きスペシャル』は前代未聞の視聴率を叩き出し、弥生は少し複雑な気持ちになったという。




お読みいただき、ありがとうございます。



次回、ヨイチさんが短かったので、寝起きドキドキ延長戦〜ポロリもあるかもよ〜をお送りします。

放送は途中予告なく変更される場合があります。

ご了承くださいませ…m(_ _)m

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