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オッサン(36)がアイドルになる話  作者: もちだもちこ


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113/353

92、お泊まり後の朝のこと。

遅くなりました。

カメラのシャッター音が聞こえたような気がして、意識が浮上する。

うっすら目を開けたミロクが見たのは、スマホを向けて満面の笑みを浮かべる姉の姿だ。寝たままの状態で挨拶をする。


「おはよ、姉さん」


「おはようミロク。朝から良い画が撮れたわぁ。朝ご飯出来てるから、お兄ちゃん二人起こしてくるのよ」


「……うん」


少し照れながらも嬉しそうに頷くミロクに、姉のミハチは満足げに頷いて部屋を出て行った。

さてオッサン兄貴の二人は起きそうかなと右を向くと、目の前に思いっきり整った日焼けした顔があり、ぎょっとして固まる。

恐る恐る反対方向を向くと思った通り、切れ長の目を閉じて少し幼さを感じさせる顔が目の前にあった。

二人とも通常は髪をセットしているため髪を後ろに流しているが、家では前髪を下ろしたままらしい。そんな二人は普段よりも若く見える。


「これが、ギャップ萌えかぁ……」


自分も前髪を上げようかと、つらつら考えていたミロクは、朝食に呼ばれていたのを思い出し、慌ててヨイチとシジュを揺さぶって起こしにかかった。










(何だこれ……)


真紀は二日酔い気味の頭を抱え、スマホのSNSトークルームに百件を超える通知があるのを見てギョッとする。よく見るとミロクの姉のミハチが作ったトークルームだ。

メンバーはミハチ、ニナ、そしてフミと真紀が入っていた。


(すごいな。データが重くてなかなか表示が……)


「真紀、お米炊いてるからお茶漬けに……真紀!?」


「むぐごー……」


「ちょっと、ティッシュティッシュ!」


なぜかスマホを見て鼻血を出す友人に、フミは大慌てで新しい箱ティッシュを持ってくる。原因はスマホだろうが深くは追求しない。自分の友人の趣味は知っているし、それを押し付けられる事もないので特にフミが口出すことはない。たまに引くこともあるが……。


「ごめん、ありがとう、でもこれフミも見れる画像だから、気をつけたほうがいいよ」


「え? そうなの?」


「トークルームに上げてるから。ミハチさんとニナさんの二人が大量に画像上げてるから」


「そ、そうなんだ。気をつけるね」


真紀が興奮している時点で、自分はそこまでじゃないだろうと軽い気持ちでスマホを見て……


(こ、こ、こここ、こ、これ、これわああああああ!!)


フミが、初めて真紀の言う『萌え』という感情を理解した瞬間であった。










「「行ってきます」」


「はい、行ってらっしゃい」

「フミをよろしくね」


イオナとヨイチに見送られ、フミの出した車に乗り込むミロクとシジュ。

幸いにもミロクの部屋にあるパソコンは、サイバーチームのメンバーが手がけていた為、ミロクのパソコンを使えばヨイチの業務に支障は無かった。

少し頬を赤らめているフミは、車を事務所へと走らせていた。


「裏口から私だけ入るので、二人は車で待っててください」


「大丈夫? フミちゃん、なんか顔赤いけど……」


「だ、大丈夫です! 必要書類取って来るだけですから!」


「そう?」


事務所のあるビルから少し離れたパーキングエリアに停めたフミは、車から出るとパタパタ走って行った。

何だか心配だなぁと、フミの後ろ姿を目で追うミロクに、シジュはククッと笑う。


「心配ねぇって。うちのマネージャー、ああ見えて成人してんだぜ?」


「そりゃ分かってますけど……」


「大方昨日の俺らの画像を送ったんじゃないのか? ミロクのウサ耳パーカーとか、寝顔とか」


「ええ? なんか変な顔してたら嫌だなぁー」


「変な顔とか、お前どの口が言うんだ……」


シジュの考えは合ってはいるが、ミロクだけではなくヨイチとシジュも大量に撮られていて、尚且つじゃれ合ったりしているところまで撮られていることを彼は知らない。そしてそれは真紀の糧となるのであろう。

世の中には知らなくて良い事もあるのだ。




フミがビルの裏手で、体格の良いサラリーマンらしき男性と言い合っている様子が見える。


「あれは……」


シジュが行った方が良いかなと、言うか言わないかの内に車から飛び出すミロク。苦笑して彼の後を追った。


「社長に会いたいんですよ。如月社長に」


「困ります!」


言い合うフミと男性。どうやらヨイチに会いたいと事務所に来たらしいが、フミは断固拒否しているようだ。ビルの裏手とはいえ言い合っていると目立ってしまうので、場所を変える提案をしようとミロクがそばに寄った途端、その男性の目が輝く。


「ミロクきゅん!!」


「は?」


サラリーマン風のグレーのスーツに、短髪黒髪を綺麗に整え、そこそこ悪くない容姿の男性から突然の「きゅん」呼ばわりに、ミロクの顔が思いきり引き攣る。追いかけてきたシジュも思わず鳥肌を立てた。


「分からないかな?」


そう言うと彼はサングラスを取り出して、そのままかけてニヤリと笑って見せた。


「「尾根江さん!?」」


「正解よ〜」


ミロクとシジュに尾根江と呼ばれた、いかにもサラリーマンという姿の男性はサングラスを外し、腰をくねらせて二人に向けてウィンクした。









お読みいただき、ありがとうございます。

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