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オッサン(36)がアイドルになる話  作者: もちだもちこ


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112/353

91、344メンバーで男子会。

書きたくて…

ミロクの部屋は八畳という広めの部屋ではあるが、ガタイの良い男性二人が自分のベッドに座っているという状況に対し、何だか色々思うことがある。

とりあえず何も言わずに、開けたドアをそっと閉めた。


「何で閉めんだよ! お前が風呂から上がるの待ってたんだぞ!」

「僕も何とかここまで来たのに、労いの言葉をくれてもいいでしょうに」


やいのやいのと騒ぐ二人に、ミロクは渋々部屋のドアを開けてため息を吐く。


「シジュさんはともかく、何でヨイチさんまでいるんですか」


「イオナさんから『ミロクの部屋で男子会やるから来てね!』と、ハート付きでメールが」


「母さんとメールのやり取りしてるんですか……」


がくりと項垂れるミロクに、シジュは「まだ髪濡れてんぞー」とミロクの髪を甲斐甲斐しくタオルドライしてやる。慣れた手つきに色々と突っ込みたいが、まずは彼の着ているTシャツからだ。


「それ、誰のチョイスですか」


「聞くな」


シジュのハーフパンツはミロクのものだが、Tシャツは明らかに違った。前には「Yes!ロリータ!」と大きく筆文字で書かれ、背中には「GO!…いや、NO!タッチ!」と書かれていた。

GO!と言いかけているのを止めている部分に芸の細かさを感じる。


「さっきニナちゃんがすごく良い笑顔でシジュに手渡していたよ。あの子の表情があんなに変わったの初めて見たよ」


ミロクにこっそり情報を提供するヨイチは、ミハチが用意したらしい作務衣を着ていた。


「ヨイチさんは普通ですね」


「でもさっきまでオッサンは、ミハチさんにスゲェ写メ撮られてたよな。こう、胸元をはだけむごごー」


「うるさいよシジュ」


シジュはにっこり微笑むヨイチに殺気を感じ、口を塞がれたままコクコク頷く。


(姉も妹も、客に何やってんだ……)


ちなみにヨイチが色々なポーズで撮られまくっていた理由は、ミハチの帰るコールに返事をしなかった罰である。

尚、シジュについてはコメントを控えさせていただく。


「それにしてもミロクのそのパーカー、すっげー触り心地いいな!」


白いふわふわな素材で出来たパーカーを、シジュは思う様手のひらで堪能する。


「く、くすぐったいですよ!」


「おお! いいなこれ!」


キャッキャする二人をなぜかスマホで撮りまくっていたヨイチは、ふとミロクのパーカーのフードに気付く。


「ミロク君、これ……」


「ああ、これ……ウサギなんですよ」


そのフードには、ロップイヤーなウサギの耳が付いており、ミロクはその耳付きフードを装着して、二人に上目遣いでヘラリと笑う。固まるオッサン二人。


「おい、お前それで三十六とか、マジで気を付けろ?」

「ミロク君、それは自宅用だよ。外では絶対ダメ。社長命令」


心なしか赤らんだ顔に血走った目のおっさん二人に注意され、ミロクはハイと言うしかなかった。これを用意したのは母イオナであるが「この日のために!」と力説していた。どんな日だ。




ひとしきりツッコミ合って落ち着くと、週刊誌の記事の内容についてヨイチと付け合わせる。


「ヨイチさんと尾根江さんのアレコレって、プロデューサーが海外に行く前の……」


「そうみたいだね。ホテルのスィートで打ち合わせがあって……」


「ま、まさか……」


「ミハチさんからも何故か期待した目で聞かれたけど、そういうのじゃないし、二人だけじゃなくて他にも数人が部屋にいたんだよ?」


「なんだ。そうでしたか」

「期待外れだな」


「二人とも減給」


「「酷い!!」」


今夜は何が起こるか分からないので、三人はアルコール抜きで過ごしている。ミロクは茶だけだと味気ないだろうと、ジンジャーエールにライムを絞ってモスコミュールもどきを作った。

シジュは辛口の方が好みらしく、瓶のタイプのを置いてある大崎家をリスペクトしていた。


「それにしても……」


「うん、そうだね、344(ミヨシ)の名前が欠片も出てないよね」


どの雑誌にも、尾根江と元アイドルができているのではという内容で、尾根江が密かにアイドルをプロデュースしているという内容ではない。


「俺らもまだまだだなー」


「でも、今度のCMで少しは名が売れるんじゃないですか?」


楽しみですねぇと言って、ほわりと微笑むミロクに、再びオッサン二人が固まる。


「……うん。とりあえずミロク君、そのフードは外そうか」


「? あ、はい」


「……ぐっは。危なかった」


「??」


深呼吸しているシジュにヨイチは苦笑して話を戻す。


「幸いにも僕はしばらく仕事をとっていない。CMの内容は決定してないようだから、それが決まるまで僕はここでお世話になるよ。ミロク君とシジュは、通常通り個人の仕事が入っているからよろしく」


「え、ここでですか? ……まぁ良いですけど」


ソワソワしながら、なぜか嬉しそうに言うミロクの様子に、ヨイチとシジュは首を傾げる。


「いや、その、俺って引きこもってたし、リアルはぼっちだったから、こうやって自分の知り合いが家にいるって初めてで……お、お泊まり会とか、そういうの憧れで……」


瞬間、ミロクは二人分の大胸筋に包まれる。


「おい! ヨイチのオッサンと一緒に俺もいいか!? いいよな!!」

「ミロク君! ここでは上司じゃなく仲間として、一緒に過ごそう! いいね!?」


なぜか号泣している二人にミロクは少し混乱するも、何だか楽しくて声を上げて笑って過ごすのだった。

お読みいただき、ありがとうございます。


シリアスさんが行方不明です。

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