表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オッサン(36)がアイドルになる話  作者: もちだもちこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

111/353

90、芙美と真紀の内緒話。

女子会。

まだまだ一緒に居たそうなミロクを家に帰し、フミは真紀を確保したまま自宅へ帰った。二人は駅前の惣菜コーナーで明らかな酒のツマミの品揃えを網羅し、しっかりと冷えたビールも補充する。

フミの住むマンションは一人暮らしタイプだ。真紀はよく泊まりに来ている為に勝手知ったる様子で部屋に入って行く。


「王子様も一緒で良かったのに」


「良くない!! それにミロクさん達は最近休みなく働いているから、オフの時くらいゆっくり休んでもらわなきゃ」


「フミだって残業じゃん」


「マネージャーだからってタレントにずっと付いてなくていいって、叔父さんが週二回ちゃんと休ませてくれるんだよ。叔父さんの負担が気になるんだけど……」


「さすが宰相様」


「……真紀は本当にミクロットが好きだよね」


「うん! 今回のは本当に当たりだよ!」


そう言って真紀は鼻歌を歌いながらメイク落としのシートで顔を拭く。どこかで聴いたようなメロディーだと思ったら、344の『puzzle』のようだ。


「で?」


「ん?」


「なんで王子様とお付き合いしないの?」


「!?」


鳥の唐揚げのパックを開けようと、格闘するフミの動きがピタリと止まる。それを真紀は取り上げてあっさり蓋を開けると、冷えたビールのプルトップを音立てて開けると「かんぱーい。負けの方のかんぱーい」と言いながら飲み始める。


「……アイドルなんだよ?」


「じゃあ、そうじゃなきゃ良いってこと?」


「ミロクさんが……良ければ……」


「そうじゃなくて、フミが、だよ」


「……」


「私は……」


まだ一口も飲んでないはずのフミは、顔を赤らめて俯く。赤面症は昔からだなぁと真紀は苦笑して言った。


「そんなんじゃ取られちゃうよ? 王子は私の物だって主張しなきゃ」


ミロクは優しい。でもそれはフミだけじゃなく、家族にも、事務所スタッフにも、ファンにも、誰にでも優しい。だからこそ……


「怖いんだよ」


「何が?」


「主張して嫌がられたら? 例えば、誰かに優しくするミロクさんを見て、相手に嫉妬して、そんな鬱陶しいことしたら絶対嫌われちゃうよ……」


「ほほう」


真紀はニヤリと笑う。


「普段、嫉妬してるんだ?」


「た、例えば! 例えばだからね!」


「ハイハイ。友達の話ってヤツねー」


「違っ! それって本人の事でしょってオチじゃないから!」


「ハイハイ。ハイサイ」


「真紀!!」


急遽始まった女子会だが、真紀は徹底的にフミを弄りまくるのであった。










電子音が鳴り、ミロクはスマホを手に取る。


『激写』というタイトルに添付画像を確認すると、もこもこの手触り良さそうなルームウェアに包まれたフミが、その艶やかな唇を可愛く少しだけ開けて、酔い潰れて寝ている姿がおさめられている。


「……ぐふっ」


リビングで寛ぐミロクの突然の鼻血に、妹のニナは愚兄にティッシュを投げつけ「部屋でやって」と冷たく言い放つ。


「俺は無実だ……」


人知れずダメージを受けているミロクに、姉のミハチが帰ってきた物音が聞こえる。

リビングに入ってきたミハチは珍しく焦った顔で弟に近づく。


「ちょうど良かった。ミロク、これ見て」


ティッシュ鼻を押さえるミロクの前に、雑誌を数冊置かれる。どうやら芸能雑誌のようだがミロクはあまり興味がないためほとんど読んだことがない。

ミハチが貼ったらしい付箋の所を開くと、ミロクは驚き固まる。


「え…『あの敏腕プロデューサー尾根江の新たなるプロジェクト始動』?」


「こっちには『某元アイドルとの密会、やはり尾根江はオネエなのか』だって」


脇から取った雑誌をニナが読み上げる。尾根江がオネエなのかとは今更な感じもするが、言わんとすることは何となく分かる。


「姉さん、ヨイチさんとは連絡とった?」


「繋がらなくて……いつもなら私が会社を出るってメールすると、しつこいくらいに着信があるのに……」


どうでもいい情報が聞こえたがスルーしたミロクは、そのままシジュに連絡を入れてみる。少し気だるげに電話に出たシジュは、ミロクから説明を聞くなり目が覚めたようだ。


『事務所には行かないほうがいい。今からそっちに行く』


「フミちゃんは寝ているみたいで、友達と一緒にいるみたいです」


『見た所、ターゲットはうちの社長だけみたいだしな。俺らはまとまっていた方がいいだろ。悪いけど今日はミロクん所に泊めてくれ』


「分かりました。うちは大丈夫です」


話を聞いた母のイオナは「息子の初めてのお泊まり会だわー」と嬉しそうだ。ちょっと違うと思いながらも、ミロクは母親の楽しそうな様子に強張っていた顔が緩むのを感じる。


「ヨイチさん、どこにいるんだろう」


「とにかく、メールしたし、やる事はやってるから今は待ちましょう」


ミハチは背筋を伸ばすと、ミロクの顔を見る。


「笑顔。アイドルの命。大丈夫だからそんな顔しないの!」


「ん、分かった」


姉の気丈な姿にミロクは頷くと、ウキウキと客用布団を出す母とニナの手伝いに向かった。






お読みいただき、ありがとうございます!


男子会。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ