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恋の魔法が解けた時 〜 理不尽な婚約破棄の後には、王太子殿下との幸せな結婚が待っていました 〜  作者: 鳴宮野々花@書籍4作品発売中


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36. 馬鹿な姉の愚かな復讐(※sideミリー)

 なぜこいつがそんなことを知ってるの?


 焦りと混乱で頭がうまく回っていない私は、下品な高笑いをする姉をただ呆然と見つめていた。

 姉は嬉しくてたまらないという風に目を三日月の形に歪めてクックッと笑い続ける。


 そして信じられないことを口にした。


「……ねぇ、()()()()鹿()()()?まだ気付かないの?ここまで言っても?……ふっふふふ……。いつもあんなに周りを見下して偉そうにしているくせに、自分のこととなると案外盲目なのねぇ。まるであんたが馬鹿にしてきたその辺の女たちと同レベルだわ!あんたはねぇ、引っかかったのよ!あの“サミュエル”っていう偽名の詐欺師にね!!あはははははははは!」

「………………。……は?……な、何?何を言っているの?」


 意味が分からない。


 騙された?私が?


 ……サミュエル…に?まさか。嘘に決まってる。


 だけど姉はニヤニヤと嬉しそうに笑いながら続けた。


「ふふふっ、あの男はね、貧民街の詐欺グループの筆頭なのよ。すこぶる美丈夫であらゆる女を引っかける天才だって悪評高い奴だったから、私が人を使ってスカウトしたの。あんたを惚れさせて、手酷い痛手を負わせてやってほしいってね。うっふふふふふ……、賢い賢いミリー嬢がどこまで引っかかってくれるか疑問ではあったけれど……、まさかの予想以上のドハマリっぷりだったみたいね!あははははは!あんた……、ふ、ふふ……、あんた、真実の愛って……はははははは!あの男に真実の愛だって言ってたらしいじゃないの!!二人の関係を!!ただ詐欺師に引っかかっただけなのに!もう私、報告を聞くたびおかしくておかしくて……あはははははは!」

「………………な……」

「あんなに私のことを馬鹿にしてたくせにねぇ?!私とダリウスのことを、真実の愛なんて馬鹿らしいって、あんた笑ってたわよねぇ?!それなのに、……ふふふ……自分は詐欺男のことを愛してくれる相手だなんて見誤って、うっとりと身を任せては愛を語っていたそうじゃないの!あーっははははは……っ!」

「……………………う、……うそ、よ……」


 体中がガクガクと大きく震えるのを止めることもできないまま、私は悪魔のような顔で下品に笑い続ける女をただ見つめていた。

 そんなこと、信じられない。そんなこと…………。


「あんたの不得意な分野って何かなぁって、私ずっと考えていたのよ。どうやって復讐すればあんたのそのひん曲がった高い鼻をへし折ってやれるかってね!それで思いついたの。あんたって子どもの頃から勉強ばっかりで、男に対して免疫ゼロでしょ。真実の愛を馬鹿にして笑うぐらいだもの。愛も恋も何も知らない頭でっかちなんだから、いい男からちょっと優しくされたら案外フラフラッと行っちゃうんじゃないかってね!それで今まであんたの周りにいなかったようなタイプの男を使ってみたのよ。ふふふ……結果は予想以上の大当たりだったわ!目新しくてハマリすぎちゃったみたいねぇ!!うふふふふふふふ…………あはははははは!」

「…………う…………うぅ……」


 体中の血管が破裂しそうだ。私は床に両手の爪を力いっぱい立てた。わなわなと震える指が折れそうなほどに。怒りのあまりゆらゆらと揺れる視界の片隅に、口をあんぐりと開けたまま姉を凝視する母の姿があった。


「あの男が重宝がられているのはね、容姿の美しさだけじゃないのよ。逃げ足の速さもすごいんですって。これまで何度も詐欺行為を繰り返してきているのに、まだ一度も捕まったことがないそうよ!ねぇ、最後はどんなだったの?やっぱり殿下から問い詰められるあんたのことを見捨てて自分だけ脱兎のごとく逃げ出した?うふふふふふふ…」

「………………あんたなのね……。殿下に密告したのは……あんたが、やったのね……」

「だから、当たり前でしょう?詐欺男を手配したのも私。ウブで愚かな妹を籠絡しろと指示したのも、密会の記録を殿下宛てに送ったのも、もちろん私。分かる?天才のミリーさん。あんたはね、私に出し抜かれたの!あんたは私に負けたのよ!」

「ぅ……ぅぁああああああっ!!」


 殺してやる。殺してやるわ、この女……!!


「いた……っ!いやぁぁぁっ!!」

「きゃぁーーーっ!ミ、ミリー……!止めてミリー…!だ、誰かぁっ!」


 ふざけやがって。馬鹿のくせに。調子に乗って、この私を……!絶対に許さない!!


 許さない、許さない、許さない…………!!




 使用人たちから羽交い締めにされて引き剥がされるまで、私は姉を力の限り叩きのめした。殴り、引っかき、髪を引っこ抜き、姉にもやり返されたけれど痛みなど一切感じなかった。


「いい加減にしろミリー!!」


 父の怒鳴り声と、頬への強い衝撃を最後に、私の記憶は途絶えた。






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