家族はニアリーイコール
3月31日(日)晴れ
≒
【読み方】
nearly equal ニアリーイコール
【意味】
「ほとんど等しい」「ほぼ同じ」「約」
【使い方の例】
円周率は、3.1415926535897・・・と、永遠に割り切れない。
こういった場合に、円周率 ≒ 3.14という表し方をする。
円周率は、3.14と「ほぼ同じ」という意味である。
いや、ま、厳密には違うんすけどね、ま、ここはひとつ、だいたい正解ってことで、よろしくどぉ~ぞぉ~。という時に使用する記号である。
「おーい!〇〇君!」今日も今日とて、会社で業績のかんばしくない部下を呼びつけ。他の社員のいない場所で決して感情的にならぬよう注意しながら檄を飛ばし。社長には「今期はマジ本気出します!売り上げ五千万UP、乞うご期待!」なんつってハッタリをかまし、会議を制し、現場から現場へ飛び回り、オフィスでは部下たちへの明るい声かけも忘れない。
あ~職場はいいなあ~。職場、最高ー! 仕事の方程式って、まじ単純明快だもんなあ~。縦の長さ×横の長さ、イコールで答えが出るもんな~。
……それに引きかえ。
……家族って、超難解だよね。
てか、家庭って、玄関を一歩入れば、治外法権だよね。社会的な秩序、道徳、法律、いっさい通用しない独立国家だよね。
「おーい、妻さーん! 長女ちゃーん! 次女ちゃーん! おーい! おーいってばー!」
ほんと、呼べども呼べども誰も返事しないもんね、テレビ観てっから。「逃走中」に夢中だから。なかなかの近距離だぜ? 目と鼻の先。あれ? 見えてねーのかな、え? 嘘? 僕死んでる? 妻にゃ、トイレットペーパーを使い切ったのに新しいものと取り替えていないことを鬼の形相で子供らの前で公開処刑され。寝相の悪い次女は、ウトウト寝ている僕の顔面に、無意識とは言え、思いっきり屁をかますし。リビングを制され、寝室の片隅に追いやられ、クローゼットの中で夜を明かし、愛犬にひたすら声を掛け。てか、何事も実践だね。最近、犬語けっこーおぼえたから。日常会話ぐらいならワンワンいけちゃうから。
円周の直径に対する比率が円の大きさに依らず一定で、それが3よりちょこっとだけ大きい数値だっちゅうことは、な、なんと、古代エジプトやバビロニアの幾何学者たちは、すでに知っていたらしい。でも円周率は、そんな大昔から今も割り切れていない。その後人類は、月にロケットを飛ばし、AIは、人類をしたたかに脅かすまでの存在になったが、今だ円周率を割り切ってはいない。
円周率は、2019年時点で、最先端のコンピューター駆使しすることで、な、なんと、小数点以下31兆4159億2653万5897桁まで計算されている。んが、恐らく永遠に割り切ることは出来ないであろう。僕たちは、円という極めてありふれた図形の面積すら、所詮は正確な答えを出せずじまいなのである。
いいねえ、人間。人間らしくて。
てゆーか、家族って、円周率に似とらっせるね。どうしても割り切れない。なんとも言い切れない。永遠に答えが出ない。よくも悪くも、それが家族っちゅうものじゃなかろーか。
だから家族の方程式の答えはいつも、「≒」ニアリーイコールなんだよ。家族との生活のあらゆる場面において、夫として、父として、これが正解! これぞ真実! って答えは、自分なりに導き出してはみるんすけどねえ。なんか「≒」ニアリーイコールな感じなのよね。「ほぼ等しい。でも厳密には正解ではない。」みたいな。もうね~、大声で「おい! 俺様は一家の大黒柱だぞ!」なんつって思いっきり怒鳴ってやろうかしゃんと思うのではあるが。「おい! ぽっくんはこの家を支えている材木チックな存在かな? なーんつって思ったりなんかしてぇ~。」ぐらいのことをボソボソ言ったとか言わなかったとかの毎日で。
ああ、今日もまた円周率の一日がはじまる。まったく3.141592な暁だ。しっかし、俺っちも懲りないね。この割り切れない生活のなかに、とても大切なことがあるような気がして、この言葉にならない気持ちを、いつか言葉に出来るような気がして、明日も「家族」という永遠に答えの出ない方程式に、頭をひねってみようか、なんて。




