歌の中の女性に心を奪われる
3月6日(土)晴れ
斉藤由貴の「卒業」という歌が好きです。
1985年にリリースされたこの曲を聴いた時、僕は小学四年生だった。同時期に菊池桃子や尾崎豊が同じ「卒業」と言うタイトルの歌をリリースしていたが、その世界観は他の歌とは一線を画していた。
歌の中では「卒業式で泣かない」醒めた女性の気持ちが綴られ、サビの歌詞は「もっと悲しい瞬間に涙はとっておきたいの」で結ばれる。
当時僕は、この歌の中に登場する女性に心を奪われた。悲しいでもない、嬉しいでもない、切ないでも、虚しいでもない、そんな上手く形容出来ない気持ちで胸がいっぱいになったのだ。
僕が小説を書く行為とは、この歌を聴いた時のような「名なしの感情」を捕らえ、なんとかして言語化する行為なのかなと、そこはかとなく思っている。
斉藤由貴と言えば、もう一曲特記しておきたいナンバーがある。「かなしいことり」という曲で、彼氏がいるくせに他の男と付き合って、でもあなたへの気持ちは嘘ではなくて、でも彼氏と別れるつもりはありません、と言い切る、そんな救いようのない女心が歌い上げられている。この曲を聴いた時も「名なしの感情」で胸がいっぱいになった。
あと、中島みゆきの「御機嫌如何」の歌の中にでてくる、別れた男に「あなたを忘れました。嘆いていないわ。うぬぼれないでほしいのよ」とうそぶく女性。
あと、ジュディーアンドマリーの「そばかす」の歌の中にでてくる、失恋したばかりの切ないはずの夜に、もう彼氏の顔を思い出せないでいる女性。
こう記していくと、どうやら僕は、したたかで強い女性が好きなのかなあ。いや、でも情念の濃いドロドロ失恋ソングも好きだしなあ。う~ん、どうなのだろう。




