第八百九十七話 災厄の前兆
「考察するだけジャなんもなんねーヨ。実際に起こっていることなんだ」
三柱は会議を行っていた。
ここ最近、アリムが忙しく近況を報告しに来ないため、魔神が封印された際の特権として指定した場所を中から自由に見ることができるというものを行使し、最近起こっている出来事をそれぞれ分担して把握していたのだった。
「まさか最近あゆちゃんが来ないのが、SSSランクの魔物への対策に追われていたからだなんてな……」
「普通にイチャイチャしていた時間の方が長かったと思うが、シヴァ」
「あれはSSSランクの魔物の管理より必要事項だぞサマイエイル」
「………そうか」
サマイエイルはシヴァに呆れたが、当の本人は至って真面目にそう答えている。しかしそんなふざけたやり取りもスルトルが一括した。
「ンナコトァ、今はどうでもいいだろーがヨォ! 問題は、あいつらの話しじゃ、地球のゲートが不安定などころかそこから雷魔法が発生したり、こっちじゃ過去に封印されたり倒されたはずのSSSランクの魔物が蘇ってることダッテェの!」
「そうだぞサマイエイル。あゆちゃんたちの話をしている場合ではない」
「一番はテメェーだわアホ」
「いいから話を続けるぞ、もう時間はあまりないかもしれない」
話し合いが仕切り直しになった。シヴァも二柱から注意され、流石に真剣な面持ちになる。意図せずいつもよりスルトルとシヴァの立場が逆転していた。
「どう考えても、結局は姿を表そうとしていのだろうな、アレが」
「アイツが現れちまったら……ヒデェぞ」
「だが、あれが姿を現わせる条件が揃っていない。なぜこんなに前兆が……」
「そうだ、こうして私達全員が勇者に捕まっている」
わけもわからず、自分たちの想定外の自体で想定したくなかったものがあらわれる。これが魔神達の一番の悩みだった。
神である彼らにすら何がどうなっているのかわからない状態を、今起こっている現象全てが作り出しているのだ。
「でもSSSランクの魔物に反乱されずにどうこうするなんざ、アレにしかできネェ。ましてや蘇らせるなんてアレか今の勇者以外無理だ」
「勇者が無意識に何者かに操られてアレと同じことをしているなどはあり得ないか? 現勇者なら擬似的に行えるだろう。しかもレベルメーカーだ」
「いや……プライベートなところ以外四六時中のぞいていたが、アリムちゃんが不思議に他所で行動を起こすなんてことはなかったな」
手がかりがない。
八方塞がりといっても間違いではなかった。そして、彼らのいう存在が現れた時に困るのは人間だけでなく、魔神三柱もまた、非常に自分たちの存在を脅かすほど危険な目になるのことがわかりきっている。故に慌てているのだった。
「休暇を取らせたところ悪いが、デイスに仕事を任せるか」
「そうだ、それがイイ! 未来が見えるアイツに任せちマウゾ! 今すぐ!」
「そう急かすな……って、もう呼び始めてるのか。気が早いな」
「当たり前ダロォがよ」
スルトルはメッセージでデイスを呼んだ。しかし、1分経っても返答はない。
「んだよ、こんな時に! アイツいつもすぐメッセージに応答するだロォガよ!」
「繋がらないのか」
「まだバカンス中なんじゃないか?」
「……そうかもしれネーな。何回も掛けりゃ繋がんダロォ」
スルトルは続けてメッセージをデイスに送った。さらに1分経っても返信はなかった。ここまで彼女に無視されたのが初めてだったスルトルはむかっ腹が立ち、何度も何度も同じ内容のメッセージを連続して送り始めた。
「クソが!」
「どうした、断られたか?」
「チゲーよ、200回はメッセージを送った! だが一回も返信なしダ!」
「いや、そんなはず……」
「テメェらもやってみろよ」
サマイエイルとシヴァもデイスに向かってメッセージを送る。しかしやはり返信がない。嫌な予感。三柱の間に沈黙が流れる。
「…………まさか」
「イヤイヤイヤ、そのまさかはありえネーヨ。アイツは未来が見えるし一瞬で長距離移動することもできんだゼ? 強さ自体は人間のSランク程度だが、仮にSSSランクの魔物の対峙しても余裕で逃げ切れるダロウが! オレ様達でも殺すのには一苦労するはずだ!」
「しかし、我々への忠誠心が非常に高い彼女がメッセージを誰にも返してこない、となると」
「やられたか」
この考えが三柱に、もはや不味いの一言では済まないことになってると気がつく。上から眺めて情報集収し、封印されている状態に甘んじて会話をするだけではダメだとそれぞれが悟った。
「どうするよ」
「もうダメかもしれんが……」
「まさか頼るのか? あゆちゃんに頼るのか!?」
「オレ様達が封印を自力で解けねーんだから、それしかないだろ……」
「我は絶対に嫌だぞ。あの子達を危険な目には合わせられない」
「だが対処しなきゃどっちみち危険な目にあう。むしろ何も知らずにいる方が危険だと思わないか?」
一瞬、シヴァは黙る。しかしすぐに口を開いて二柱に抗議をした。
「すると、我々の知っていることをほとんど全て教えることになる。あゆちゃん達が禁忌に触れてしまうじゃないか……!」
「その禁忌サマの方からイマ、近づいてきてる状態なんだが、それでもそんなこと言えんノカ?」
「っ………わかった。一週間時間、我のために時間をくれ」
「イイけどよ、あゆちゃんの方から訪ねてきたら、もう話ちまうゼ? イイな?」
シヴァは黙って頷いた。




