第八百九十六話 聖龍の気になる異変
「さて、出てくるが良い」
<なるほど、これが召喚される感覚か>
ファフニール・ロットが国王様の魔法陣から小さくなって出てきた。すでにつけられていた傷は完治している。やっぱりすごい回復力。
「何百年も封印したというのに、腕はなまらなかったんだな」
<ほぼ封印されていた間のことなんて覚えてないからな、身体はともかく感覚は鈍ってはいない。しかし強かったな国王は>
そういや今回、ファフニールは自分より巨体な二匹、しかもSSSランク相当を相手にしたわけだからかなり不利だったわけだ。超スピードで移動しながら光魔法と風魔法と打撃で攻撃してくる上に異常な自然治癒力もあるだなんて普通は自分と同じかそれ以下の大きさの相手には余裕なはず。
「なんとお呼ばれしたいかなどございますか?」
<ないぞ姫よ。ファフニールでもロットでも、ファフニール・ロットでも聖龍でも、好きに呼ぶと良い>
カルアちゃんの問いにそう答える。俺も好き勝手呼んでたからな。魔物ってペット……じゃなくて使い魔になった途端、魔物の名称で呼べばいいのか、召喚主が名前をつけてやって、それで呼べばいいのか、まだイマイチわかんない。
<しかし国王よ>
「なんだファフニール」
<貴殿と余が組めば百龍力だ。これから起こる大戦争も怖くはないだろう、大空を飛んでいるつもりでいてくれ!>
「なに!? 大戦争がこれから起こるだと?」
俺とミカを含めて、その場にいた全員がざわつく。これから大戦争が起こるってどういうことだろうか。SSSランクの魔物が言うんだ、何かを感じ取っているに違いない。
<な、なぜ皆、そう狼狽えている? 準備しているのではなかったのか? その一貫で余を仲間にしたのだろう?>
「いや、大戦争が起こるなど……SSSランクの魔物が大量出現してこそいるが……」
<そのSSSランクが大量に出現している原因は明確だろう>
「なんだその原因は!」
<わからないか? 魔神に決まっている……!>
真剣な面持ちでファフニール・ロットはそう言った。でもそれはもちろん、俺たち全員には的外れな考察。なにせ魔神はすでに……。
<魔神はアナズム中に総計三柱存在しているが、この地方の魔神は特に数を集めるのが得意だと聞いたことがある。SSSランクの魔物の大量出現もそれが理由だろう。実際、元勇者は私が其奴に操られることを恐れて……>
「あ、あの……ファフニール?」
<なんだ美少女よ>
「魔神はもう出現しないけど……」
俺がそう言うと、ファフニールは「は?何言ってんだこいつ」と言いたそうな態度をとった。いや、仕方ないかそれも。まだ俺が勇者ってことしか知らないはずだし。何をしたかまでは教えてない。
<しっかり封印されてるからか? そんなはずはない。現にこうして異変が起こり、美少女という現代の勇者まで見つかっているではないか! 魔神が出現するときには予兆が必ずあると………>
「でもね、去年全魔神が現れたけどボクがみんなと協力して全柱封印しちゃったんだよ。そのままボクが管理してるし」
<……ん?>
「ちゃんと説明するとね?」
魔神は全て出現したが、それぞれ主に俺達が封印し直してしまったこと、その上で今の現象が起きてるから困っているんだということを話した。後半はずっとファフニールは目を丸くしていた。
<じゃあ何か? 美少女は全魔神封印したとんでもない人間だということか>
「さっきから何回もそう言ってるじゃない」
<こ……国王よ、余の力は必要なのか?>
「SSSランクの魔物が出現していることには変わらないからな、必要だ」
でも本当になんなんだろう、やっぱり何度考えてもおかしいことばかり。
そう、さっき自分で説明した通り、魔神は俺が全員封印して管理してるんだ。
手下だっていうデイスって人も魔神達の命令で活動を停止してるらしいし。ちょっとそれが不安な要素だけど。
まあ……SSSランクの大量発生なんて、ファフニールが魔神の仕業だと考えてしまうのも自然なこと。だけどそれも三柱それぞれと対峙した俺だから言えるけど、魔神はせいぜいSSランクの魔物の大量発生くらいしかできないと思われる。
アナズムだけじゃなくて地球にも干渉してることから考えると……こうなるともう、あとはアナズム自体が何かしたいのか、魔神より上位の神様のようなものがいるとしか思えない。
でもそんなの……いや……心当たりがある。思ったよりしっかりくる心当たりだ。
「どうしたの有夢?」
「いやちょっと…ひとつ考えがよぎったんだよ。今はこの場で気にすることじゃないよ。家に帰ってからね」
「そう?」
俺は見落としていたのかもしれない。この世界じゃ魔神は地球でいう邪神と同じ扱いだ。リルちゃんが信仰しているのは別の神。この世界のことだ、ちゃんと人から信仰されている神様がしっかり存在していてもおかしくない。
それにあともう一人。信仰されている神とは別の、神様といえる人が……。
<なるほど、魔神は完全に関係ないはずなのにSSSランクが出現するという異変! 確かに早く解決せねばな。余もその一環でいいように蘇えさせられたと思うとなんだか悔しい>
「是非とも、頼んだぞ」
「勿論だ」
頼もしい、なんにせよ今度、思い浮かんだことを試してみよう。
ふと、元勇者であるヘレルさんの顔をみてみた。
良い協力者……じゃなくて協力龍ができたというのに浮かない顔をしている。そういえばこの現象が起きる前、異変が起きそうだとかって予言してたよね……?
やっぱり、それが今なのかな。
だとしたら納得がいく。
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7/1となりました。
本日から『Levelmaker』は隔日投稿、『私は元小石でございます!』は週に一度の投稿となります。
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