第八百八十四話 雷の後で
避雷針の改良・修正が10分くらいで終わった。このまま回収しておくべきかどうか迷ったけど、美花との相談で、この一連の騒ぎが解決するまで空き地に置いておくとにした。
金曜日、朝ごはんを食べにリビングに降りてニュースを見ると俺たちの学校で大量に雷が落ちたことが災害事件として報道されていた。
幸い被害は0であったことと、雷が異様な軌道を描いてどこかに飛んでゆく異常さが主にピックアップされている。
「おはよう有夢。ところでこれ有夢の仕業じゃないの?」
「あ、お父さん……流石にわかっちゃうか」
「うん、だって全部の雷はそこの空き地で集まって消滅してるって調べが昨日の時点でついたし。雷を事前に察知して対処したのはスキル的に叶か有夢……で、完全に消滅させられるのは有夢だもの」
「さっすがー」
まあ、そりゃわかるよね。お父さんたちの技術力と、何かがあった時の分析力を物心つく前から知ってるから、お父さん以外にアナズムのことがバレないかちょっと怖いんだ。
「しかしあの変な軌道、どうしたの? 避雷針的なものでかき集めたんだろうけど……設定ミスった?」
「そうなんだよ、滅多にないんだけどさぁ……こんなこと」
「まああれだ、隠蔽とかその他諸々はお父さんが上手くやっておくから任せてね」
「うんっ」
そう言ってくれるとすごーく頼もしい。
最初はお父さん達を親孝行目的でアナズムに招待したわけだけど、こうして逆に助けられることになるとは思ってなかった。
「お父さん忙しいね」
「仕方ないさ叶。……ふっふっふ、私は魔法と科学を両立する者だからな、凄き者は忙しいのだよ」
「ふははは、さすがは我が父上だ!」
うちの科学者二人のこの性格についてはちょっと引くこともあるけど。お母さんも苦笑い……あ、普通に微笑んでたわ。でも確かに魔法と科学を両立させてるのはかっこいい。そこに異論はない。
「そうだ有夢、もし有夢が雷を対処してなかったら起こってたはずの被害なんだけど」
「それまでもう割り出せたの?」
「メディアははやく情報を出せってうるさいからね。お父さん頑張ったんだよ。天候は専門分野じゃないのにを。……簡単に言えば酷いことになってたよ。場所によってはひとクラスまるごと感電死なんてこともあったんじゃないかなー。高等部と中等部と大学を合わせて被害は200人前後、学園内で出てたと思う」
「でもうちの学園ってお金持ちだから災害に対して最新鋭の装備が……」
「それをもちろん考慮しての計算だよ。えらいぞー、あゆむ」
そう言いながらお父さんが俺の頭を撫でてきた。ただ、お父さんに撫でられるって……側から見たら女の子が俺の頭を撫でてるようにしか見えないんだよね。
俺も女の子っぽいから女の子が女の子の頭を撫でてるわけだ。雷の軌道よりこっちの方が異質じゃないかな、二人とも男で親子な訳だし。
「しかし……このままじゃそのうちもっと大きなことが起こるぞ」
「やっぱり?」
「うん。しかも怖いのが科学じゃ絶対観測できないってことだね。魔法に科学が負けた瞬間だよ……悔しい」
「むしろここまで太刀打ちできてる方がすごいと思うけど」
そう声をかけるとお父さんはハッとしたような顔で俺のことを見た。口元にご飯粒ついてる。……あ、お母さんが取って食べた。
「そういえば有夢はどうやって雷を察知したんだ?」
「あ、俺も気になるそれ」
「私もー」
そう訊かれては仕方ない。うまいこと表部分だけを話すとしようじゃないか。
「実はこうやってこの地域に異変が起こる前から、異変を起こしていたモノがあってさ」
「幻転地蔵じゃない? そうでしょ、にいちゃん」
「なんでわかるの?」
「いや、ここら辺でアナズムに関係あって俺たちが作ったものじゃないのってアレしかないし」
む、むぅ……お地蔵様ってとこまでは伏せておくつもりだったんだけどなぁ。仕方ないかぁ。でも叶とお父さんには話しておいた方がいいかも。
「異変に気がついてしばらく経った後から俺はお地蔵様の周りに監視カメラ置いてるのね? それでこれがつい一昨日あった映像なんだけど」
俺はスマホからお地蔵様から魔法陣が出てきて、その魔法陣そのものが空の彼方へ消えてゆくというムービーを見せた。
「なるほど、これで雷が次に来ると」
「うん。まあ予想が外れても、避雷針は置いておいても損はないかなって思ったし」
「ふむふむ……わかった。とりあえず有夢はそれの監視を続けててくれよ」
「そのつもりだよ」
だいぶ話し込んじゃったけど、このくらい話し込むのは普通なので、いつも通りの時間に朝食を食べ終わった俺は外に出た。美花がいる。可愛い、天使だ。
「おはよー」
「おはよ、やっぱりニュースになってるわね」
「ねー」
何も知らない人から見たら、今最も災害が起こっている危ない地域だろうね、間違いなく。
「あの変な軌道の雷のこと、がっつり報道されちゃって……」
「お父さんがなんとかしてくれるって」
「おー、さすがおじさんね。あ、私の将来の義父さんか」




