第八百五十三話 二回目のアナズム旅行
「ふっ……我々は暇を持て余しているな」
「そうね」
眼帯をしている叶と桜は自分たちの部屋で暇そうにしていた。暇すぎて叶は桜の目の前で厨二病を発揮させている。
「勉強はしなくていいの?」
「はははははは! 我の人生にとって必要だと感じたものは粗方学び尽くしてしまったわ!」
「だよね、見てたもん」
「どうする? ゲームなんて気分じゃないもんね」
「うん、ゲームもやりすぎて飽きたわね。い……イチャイチャしよっ…か?」
「今してるでしょ?」
実際、桜は叶に今も寄りかかり、軽くハグまでしていた。叶は叶で半ば無意識と条件反射で桜の頭を優しく撫でている。完全になれたものだった。
「うん、そうだった」
「じゃあまたどこか旅行でも行こうか? あー、温泉はなしで」
「旅行いく! で、でも温泉はなし……ね、わかった」
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「というわけで馬車乗り場までやってきたよ」
「もうプラン立ててるなんてさすがかにゃた!」
前回も乗った超高級な馬車に二人は乗り込んだ。
前回、馬車内で男女が営みに使う際のアイテムを発見してしまった叶だったが、今回は直前に取り除くように頼んであり、ハプニングの心配はない。
「今回は半日かけて港までいくよ」
「港から船に乗るの?」
「その通り、その後すぐ船に乗って1日半移動するんだ。そしてメフィラド王国以外の国に行く」
桜はそれを聞いて目を丸くした。嬉しさより驚きの感情の方が大きい。
「へー……へー! 外国に行くんだ! エグドラシル神樹国じゃないよね?」
「あそこにはもうちょっと国自体が安定してからじゃないといかないよ。ブフーラ王国ってところに行くんだ」
「ブフーラ王国は確かシヴァがもともと封印されてた国だっけ?」
「そうそう」
桜はブフーラ王国の文化はほとんど知らないといってよい。一度だけ国を挙げて行われたSSSランカー同士の結婚式にブフーラ王国の国王が出し物を見たきりだった。
「どんなところなの? 地球で言えばインドっぽいってのは覚えてるんだけど」
「うーん、俺も経路やプランを調べただけだからわかんないなぁ。あ、目的地は決まってるから安心してね。ブフーラ城の城下町に行くからね」
「わかった」
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「お疲れ様っ! 船着場に着いたよ」
「アナズムで海の匂い嗅ぐの久しぶりかも」
あれから12時間後、叶と桜は港に着いていた。馬車の中では添い寝し合いながらお昼寝しただけなのであっという間に時間が過ぎ、退屈はしなかったようだ。
「それで、船はいつ着くの?」
「もう着いてるよ。あとは俺たちが乗るだけ。時間を逆算して指定しておいたんだ」
「そ、そうなんだ……。個人用なの?」
「んふふ、とりあえず俺たちが乗る船まで行こうよ」
叶は桜の手を引っ張りながら船を待たせている場所まで向かった。そこにあったのは中くらいの大きさの船。
しかし装飾だけでわかるほど、とんでもなく豪華なものだった。
「これ?」
「そうこれ。個人用」
「うっそでしょ……いくらしたの?」
「ひみつー」
呆然とする桜に叶はニコニコしながら改めて手をつなぎ直し、船の前で待っている人に話しけた。
「予約していた者ですが」
「カナタ様とサクラ様ですね、お待ちしておりました。……どうぞこちらへ」
案内人に導かれるまま二人は船の中に入る。そこは王室と見間違うくらいの豪華絢爛な部屋。
快適な旅に必要なものが揃ってるだとかそんなレベルではなく、家具や設備はすべて一級品であることが見てわかる。
「す、すごい……ですね!」
「ありがとうございます。では10分後に出航いたしますので、どうぞごゆっくり。船内の説明は机の上にございます冊子をご覧になってください」
案内人は二人を置いて部屋の外へ出て行った。
桜がボーゼンとした顔で叶を見つめる。
「かにゃたさ……」
「んー?」
「前回といい、いつからこんな成金趣味に……」
「別にここまで豪華じゃなくていいんだけどさー。ほら、俺たちこういう時以外お金使う機会ないから。どうせなら国の中で最高のものを頼もうかと思って」
「そ、そっか……確かにそうかも。えっと、とりあえず冊子読んでるね。机の上にあるキャンディは食べていいのかな?」
「ダメなら置いてないでしょ」
「それもそうだね」
桜が机の上の冊子とキャンディ籠に手を伸ばした隙にカナタはベッドへと急いで移動し、中をくまなく調べた。
そしてホッとため息をつく。
「よかった、こっちも頼んで置いた通り卑猥なグッズは置かれてないね。男女二人旅だからってすぐエッチなことすると思ってるんだから、もー」
とても安堵した表情で寝室から離れ、桜の下に戻り、一緒に説明冊子を読みつつ船内を探検して回った。




