第八百十二話 両親にご挨拶を
「ごめんね、引き戻しちゃって。すっかり忘れててさ」
「まあ、仕方ないよ。なんせこの国の国王だもの、戻ってきてちゃんと挨拶しないと」
カルアちゃん達とたっぷり遊んだあと、すぐに俺とミカはみんなに国王様に頼まれたことを報告した。
リルちゃんの両親は関係なさそうな顔をしてたけど、とりあえず来てって言っておく。なにせ戸籍作ってくれるらしいからね。まだこの二人も正式なこの国の住人じゃないし。
それでその翌日……つまり今日、予めワケをメッセージで話した上で、お父さんとお母さんをカナタに頼んで瞬間起動で屋敷まで戻してもらったってところだね。
「そうそう、息子達がお世話になってる人だもの、ちゃんと挨拶しないとね」
「それにしてもお城かぁ……楽しみだなぁ」
お世話になってるってか、お互いにお世話してるようなものだけど。総じてお母さん組はお城を楽しみにしてるみたい。ミカのお父さんもカフェの内装のアイデアにできるかもって喜んでるし。
リルちゃんの両親は、初めてお城に行く前のリルちゃんと同じくらいプルプル体を震わせている。それをリルちゃんがなだめてる。
「国王様ってどんな人?」
「貫禄はあるけど優しい人って感じかなー」
「実はいいように利用されてたりしてない?」
「あはは、それは大丈夫だよ。物語に出て来るような悪い王様じゃないし! あー、でもカナタ達が最初に訪れた国の国王はやばかったんだっけ」
「うん、やばかった」
「そうなんだぁ」
そのあとはとりあえず、俺がどうやってこの国の王族とコンタクトを取るようになってかを全員に詳しく話した。
いやー、アナズムではまだ一年も前の話じゃないけど、大会とかお城に突入してきたサンダーバードとかなんだか懐かしいなぁ。まるで二年も前のことに感じるよ。
「あと王子様とかお姫様ってどう?」
「イケメンと美少女だよ。たぶん、これは本当に物語のイメージ通りでいいと思う」
「へー、期待しちゃおー」
「会えるかどうかわからないよ?」
「んー、まあ確かに」
そのあともお城の中の人について色々教えたり……事前知識として必要なものはゆっくりと教えていったよ。
これで粗相とかはないでしょう。いや、対人を生業にする人が多いしみんな大人だからこんな風に注意したりしなくても大丈夫だったとは思うけど。
そしてその次の日、俺たちはメフィラド城へとゾロゾロと向かった。もちろん、周囲から注目されないようになるアイテムを使ってね。
門の前では大臣さんが待ってくれていた。
「おお、お待ちきておりましたぞ。アリム殿、この方々が親御様ですかな?」
「うん、全員の両親連れてきました!」
「そうですか、お初にお目にかかります。この国の大臣をやっているものです」
「ああ、大臣様、これはどうも」
「……うん? それぞれショー殿と同じ年齢に見えますがアリム殿、これは」
「あー、この世界に来る時の影響で若返っちゃったみたいなんですよね二十年以上」
「なるほど」
本当はこっちにきてから活動しやすくしたりするためにアムリタで若返らせたんだけど、ここの嘘でなるほどで通じるのがアナズムの有難いことだよね、なんでもありえないことではないからさ。
実際、俺とミカはこうして若返ってるわけだし。
「(ね、大臣ってこの国の二番目よね?)」
「(うん。……きっと有夢達はそんな人に直接案内させられることができるようなことをしてきたんでしょ)」
お父さんとお母さんのひそひそ声が聞こえる。こういうひそひそ話をするときは、普通はメッセージ使うんだけどね、まだ慣れてないから仕方ないね。
でも確かにお母さん達の言う通り、そう考えるとかなりの好待遇を受けてるんだね、俺たち。
案内とかなら別にそこら辺の兵士とかでもいいのに。
ま、国王様や大臣さんのご好意だろうし、別にいいか。
「では、皆様、まずは我が国の国王と挨拶をお願いします。そのあとは城内の案内でも致しましょうか」
「大臣さん、よろしくお願いしますね!」
大臣さんはそのまま真っ直ぐ玉座の間に進んで行く。
すぐに玉座の間に全員入ることができるんだけど、そこには国王様だけじゃなくて、騎士団長さんと大司教さん、ルインさんにオルゴさんにリロさんにミュリさん、カルアちゃんにカルナさん、エルさんにへレルさん……とまあ、国王様ファミリーがずらりと並んでいたの。
「ようこそ、おいでくださった。私がこの国の国王である。そこに人数分の椅子を用意したので、どうぞお座りになってください」
ん、敬語!?
国王様ファミリーのメンツを集めたってこともあるし、どうやらかなりちゃんと挨拶したいみたい。
たぶん、今一瞬放たれた敬語は国王様がまだ一般の冒険者だった時代の素が出ちゃったんだと思う。
「ああ、すいません……」
「ごほん。えー、忙しいところ、わざわざ呼び出して申し訳ない。とりあえず自己紹介でも。先ほども言った通り、私がこの国の現国王で____________」
国王様サイドの自己紹介が始まった。結構人数いるから長く感じたよ。




