第七百七話 駆け込んできた翔
「ミカっ…」
「有夢ぅ…」
朝っぱらから熱烈キスをする俺とミカ。
昨日の夜はお楽しみでしたとも、ええ。あんな祭りがあった後にそんなことしたから身体はつかれきってるけども。
「じゃあ朝ごはん作っちゃうね」
服を着てからミカは台所へと向かった。さて、これから新年までの5日間。できることからやっちゃわないとね。
まずはリルちゃんのお誕生日の準備。
これはいつもの広い食堂にドラゴン肉のステーキやケーキを用意して…折り紙で作る輪っかをぶら下げたりすればいいね。定番通りにやれば問題ない。
プレゼントは神具級の獣人用毛の手入れブラシにするよ。
あとは…マジックポーチの中身の整理と在庫確認できるようにするシステム開発。まあ、これも多分1日もあれば完成するかな。
そしてお父さんやお母さんをこの屋敷と世界に迎える準備。お部屋の方は空き部屋が腐るほどあるし、増やせるから問題ない。
しかしレベル1でこの世界を歩かれるのは困るから、俺が個人所有しているダンジョンの周回をまたやらなくちゃいけないね。
俺自身も転生ガチャがあるし、転生回数増やしておいても困ることはない。
「はい、朝ご飯」
「ありがと。いただきます」
今日の朝ごはんは和風に、焼き鮭と納豆、ほうれん草のおひたし、ゆで卵、ご飯にお味噌汁。
こういう朝食はなんだか嬉しくなる。
そんな時間もかからずにたいらげた。
「ごちそうさま」
「お粗末様でした。それじゃあ有夢はやることたくさんあるでしょ? 私は1人で漫画でも……ん? なんかこの部屋の呼び鈴かなってるね」
「誰かな。叶?」
俺とミカはこの部屋の戸を開けた。
そこにいたのは困った顔をしたショーだった。
「ショーおはよ。どうしたの?」
「ちょっと…相談させて欲しいことがある」
「ん、わかったよ。あがって」
「すまんな」
ショーが俺達を頼ることってなんだろう。リルちゃんと喧嘩したから同じ女の子であるミカに仲直りの方法をききにきたとかかな。
「それで要件は?」
「有夢、俺は少し前にミカからお前のアイテムマスターの劣化版となるスキルがあると聞いた。それの合成レシピを教えて欲しい」
至極真面目な顔だ。
食料だとかには困らないように『なんでも出せる機械』を渡してあるはずなんだけど。ま、いっか。
この屋敷の住人なら全員に教えてもいいくらいだし。
サクラちゃんとかが、そのスキルを手に入れた途端に甘いモノを際限なく作って食べまくるだとか、そういうことされないために今まで教えなかっただけで。
「そういえばちょっと雑談してる時に言ったわね」
「何に使うの?」
「……超情けない話だが、リルへの誕プレが決まらなかったんだ」
「ああ、だから自分で作ってしまおうと」
「おう」
親友が困っている。
仕方ない、助けてやろうじゃないか。
でもとりあえず。
「スキルを教えてあげるのは全然いいよ。ついでにダークマターの方もあげよう。でも本当に誕生日プレゼント思いつかなかったの?」
「ああ、ずっと悩んでたんだけどな……。俺、地球とアナズムを合わせたらリルと付き合って一年になるが、思ったより何も知らなかった」
肩をしょんぼりとさせながらショーは話し続ける。ここまで困ってる様子を見るのも久しぶりだな。
「…….好きな食い物はわかる。だが食い物自体を誕生日に渡すのはない。地球ならレストランに招待するとかあったがな。アナズムじゃ自分で作った方がいい。 次にリルの好きなものを考えた。あいつは________」
なにかリルちゃんのことをよく知ってるのか知らないのかわからないな。要約するとショーは自分の彼女なのに趣味とかについて知らないことが多すぎるって言いたいらしい。
いつもはちゃんと話せるのにパニックになると長々と話し続けるのね。
「ん? リルちゃんの好きなものなんてすぐわかるじゃない」
「マジでかっ!」
「うん。あの子、趣味らしい趣味はストレッチとか整体とか、身体を動かすことだよ。ま、それは翔もわかるでしょ」
「まあな」
「しかしそれは日頃の趣味であって心の底から好きなものじゃない。好きなものを例えるなら有夢はゲーム、カナタ君は中二病チックなアイテムとかね。それを踏まえた上であの子が好きなのは……」
「す、好きなのは……?」
「翔、あなたよ」
「お、俺?」
ショーはキョトンとした顔をした。今日のショーは表情がコロコロ変わって面白い。
あ、ちなみにミカの好きなものは俺を女装(着せ替え)させることで、サクラちゃんは甘いものだよ。
ショー自身は筋トレだね。
「そりゃ、彼女だし。惚気になっちまうが、毎日好きだって言われてるから、そりゃー…。だが、んなこと言ったら…」
「恋愛とはまた別だと思う。多分…あの子の行動理念全てがショーになってるのよ。あと今言った通り、私もそこが有夢になってるの」
「マジかよ」
「マジよ」
「マジなの?」
てっきり俺を着せ替えるのが好きなのだ思ったら、俺と一緒にいること自体がもう満足することだったのか。
言葉では何度もそう聞いたけど、まさかマジだったとはなぁ。俺がゲームを今でも、抑制はできてもやめられはしないように、美花は俺を……。
とても嬉しい。
「うん、そうだよ有夢。私は有夢といる時が一番…! と、今はまずリルちゃんのことね」
「す、すまねー。教えてくれよ」
ミカによるリルちゃん講座が始まった。女の子同士だからわかるというやつだろう。ちなみに俺は今はれっきとした男なので、リルちゃんの気持ちはわからないのです。




