第七百六話 お祭り終了
「わぁぁ! ママみて! すごい!」
パレード終盤に差し掛かり、大目玉という設定らしい俺の演出も火を吹いた。
子供達もはしゃいでる。
と言ってもただの花火なんだけど。普通とはスケールが違うだけ。数ヶ月前の流星群を再現するのとか大変だったよ。
「空をふんだんに使ってますね、アリムちゃん!」
「雪が降ってる上であの綺麗な花火……ん? なんで雪が降ってるのにここまで快晴なんだ? アリムちゃん、何かしたかい?」
「い、いえ、偶然ですよ多分」
国王様は気付いてるようだし、ルインさんも気づきかけてる。この雪は人工のものだと。まあバレたところでなんてことないけど。
「あと数分でパレードも終わる。パレードが終わったら祭りも終わりだ。そのあと5日間、年が明けるまでのんびりするのが新年を迎える流儀なのだアリムよ。……そちらの世界では新年はどう迎える?」
なんでも、この祭りが終わってから新年までの五日間、働く時間をかなり制限されるらしい。
日本でいう寝正月を軽度に強制されてるみたいなものだね。
「えーっと、国によって違います。ボクが住んでいる国では12月の24日から25日をクリスマスというイベントがあります。新年はお正月といって、年越しを迎えるために特別なものを食べたり、親戚一同集まったりしますね」
「そうなのか。異文化を知るというのもやはり面白いな……っと、どうやらもう終わりのようだ」
俺が用意しておいた花火の最後のものが空に放たれた。フィナーレはとても豪華で派手にしてある。
なんせオーロラを大量発生させるからね。……もうそれ花火かどうか怪しいけど。
「……今年は人生で一番といって良いほど良い年だった。新年までの5日間は我々王族も空気を抜く。また、来年に会おうアリムよ」
「来年もよろしくお願いしますね、アリムちゃん! ミカちゃん!」
「うん、また来年ね!」
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祭りの余韻というのも大切。
いろんなものを残したまま祭りは終わった。
まだ屋台とかはで続けてるし、明日まで本質的には終わらない。
だからイルミネーションとかその他飾り付けも明日の朝午前4時に自然消滅するようにできてるの。
「かんぱーい!」
「お疲れ様っ」
俺と美花はいつかラブラブなデートをした、最高級レストランに来ていた。でも姿は地球での俺と美花。もちろん性別も。
変装はしているから他の人には全くの別人に見え、『あの女の子、ミカ・マガリギに似てる』だとか『あの女の子アリムに似てる』だとかなんてことは起こらない。
ちなみに乾杯して飲んでるのはジュース。
お酒じゃない。未成年だからね。
「はぁ……アナズムもほとんど今年は終わったようなものか」
「短いようで長かったわね」
「うん」
こうやって大人な服着て、大人な雰囲気でご飯を食べるのも素晴らしい。
「明日からは何をする予定なの?」
「アナズムの年末では俺達6人でリルちゃんのお誕生日パーティをするって翔と話をつけてるよ。年が明けてから2日後に全員の両親とシヴァをこっちの世界に連れてくる」
「そうなんだ! まあ色々と忙しそうね」
「まあねん」
でも楽しいからいいの。
何にでも楽しまなくっちゃね。ベストを尽くして。
だから今回も席は一番いいところを取りたかったんだけど…。
「そうだ、一番良い席とれなくてごめんね。結構前から予約が入ってたんだってさ」
「拘ってないから別に良いよ。……ん、あれルインさんとリロさんじゃない?」
「え、どれどれ。ほんとだ」
ルインさんがリロさんの手を握り、店員さんに案内をされていた。おお、ルインさんの顔が大真面目だ。
ここでカッコつけるつもりなんだ、きっと。
……と、考えていたら2人が座ったのは俺がとれなかったこのお店で一番良い席。随分と前からルインさんはリロさんをこの店に誘うことに決めてたみたいだ。
てっきりリロさんが恋愛を引っ張ってくものだ思ってたけど、ルインさんもやるねぇ。
「絶対ルインさん本気出してるよね」
「ええ…。リロさん良かったわね。ルインさんの空いてる片手が震えてるのが気になるけど」
「緊張してるんだよきっと」
俺だって初めのうちのデートは緊張したもの…なのかな? 幼馴染だから2人で遊びに行くなんてしょっちゅうだからな……震えるほど緊張してるなんてことはなかったかな。
「じゃ、私たちも今日の残りはラブラブしよっ」
「いいよ、ラブラブねっ」
家に帰ってからのやることが決まった。
こんないい雰囲気なんだもん。自然の流れだね。
「あの2人も早く大人の階段登らないかなぁ」
「それはまだでしょ。付き合って数ヶ月だし」
「んー? 私たちは数ヶ月でことに至ったでしょー?」
「ま、まあね」
ミカがニコニコとなぜか嬉しそうに笑ってる。
まだお料理は運ばれてきてないし、2人っきりの夜はこれから。




