第六百八十九話 冬休み
「冬休みだねぇ」
「そうねぇ」
美花は俺の部屋に来ている。
俺と美花二人でコタツにくるまってるんだ。
「それにしても自分の部屋をマジックルーム化させて、コタツ置くスペースを作るなんてね」
「このコタツもミカンとお菓子と好きな飲み物が無限に出てくるから好きなだけ食べてよ」
「そんなの地球に持ち込んで良かったの?」
「まあこのくらい良いでしょ」
美花は蜜柑を一つ手に取り、皮を剥き始める。
「美花がミカンもってる…美花が…」
「もうそれ聞き飽きた」
美花が蜜柑を食べる度に昔から言ってるの、このダジャレ。ついね。
コタツの中で脚が当たった。
お互い靴下は履いてるんだけど、美花の肌がすべすべしてるのがよくわかる。
「足絡めて来てもいいのよ?」
「絡めて何するのさ」
「……いろいろ?」
蜜柑を食べ終えた美花は、今度はコタツの機能からアイスキャンデーを取り出した。寒いのによく食べる。
「それにしてもさ、私たち二人とも約束どおり学年一位とったじゃない」
「賭けかぁ…どっちも言うこと聞きあうんだったね」
「どういうことお願いするの? 私に」
そうは聞かれても実はまだなにも決まってないからなぁ。いつもだったら何か買ってあげるとか、お出かけに付き合ってあげるとか(今考えたらデートだね)だったから。
「決まってないんだね? 私は…その、極端に嫌なことじゃなきゃなんでもいいのよ。もう…幼馴染なんて超えた関係を持ってるんだし、エッチなことでも良かったりするんだよ?」
「えぇ…うーん、いや選択肢としてはアリかもしれないけどね」
「まあ私も決まってないし有夢のこと言えないけど」
逆に美花は決まったらどんなお願いしてくるんだろう。今まで変なお願いなんてなかったけどね。でもその都度ドキドキはするんだ。
「ところで年末は親戚で過ごすんでしょ、毎年そうだもんね。それで初詣はいつ行く? 今年は二人で行こうよ」
「いいね、そうしようか」
うちは初詣が一般的に正月とされてる日にち以内に行く年と行かない年がある。だから美花と初詣行ってもなんら問題はないはず。
どうせ叶と桜ちゃんも隣室で同じような話をしているでしょう。
「大掃除とかもしなきゃね」
「ふふふ、実は大掃除が楽になるようなアイテムはすでに考えてあるんだよ。埃とかは家自体に一旦エンチャントをすれば真っさらになるけど不要物はそうはいかないからね」
「ズルしようとしてるー。エンチャント含めて私にも貸してー」
「いいよ。もう翔には渡してあるんだよね。美花にも後であげるね」
「うん」
これで来年をすっきりと迎えられると思う。
でも俺、定期的に部屋の掃除してるし要らないものなんて無いんだけど。
「アナズムでも大掃除みたいなことするの?」
「その必要はないし、年末近くのお祭りで忙しくなる可能性があるからやらないよ。ただ、ね」
「ただ?」
「皆んなの無限マジックポーチをかき集めてさ、物品の管理システムみたいなもの作ろうと思って。数カ月前から眠らせていたアイテムの消費をしてるけど、肝心のポーチの中身を把握してなくて」
「へえ、いいんじゃない? そう言えばダンジョンで見つけたマジックカードとかも一切手をつけてないもんね」
そう、あれだけ周回してたくさん手に入れたマジックカード。必要だとその時思ったもの以外、一切使ってない。
とてももったいないよね。
枚数が枚数で、売りに売れないし。
「……もしかして、『男女変換』あったりする?」
「そりゃ、1~2枚は最低あるかも」
「……へぇ、じゃあ私使おうかな」
てことは美花が男になるのか。
美花が男になる……どんなイケメンになるんだろう。案外俺みたいに顔は全く変わらず体だけだなんてこともあるかも。可愛い系男子みたいな。
「いいよ、使いなよ」
「やった! ……あ、お願い決まったかも!」
「え? まさかカード使う程度のこと? そんなのお願いじゃなくても…」
「ううん、違うの。その…これは嫌だったら…断ってもいいんだけどね?」
美花がもじもじしながらそう言う。
なんだろう。なんか怖いんだけど。
「な、なに?」
「アリムの初めて、私がもらおうかな…なんて」
「ほえ……!? アリムとそういうことしたい…ってこと?」
こくこくと頷く美花。
まさかそんなお願いをされようとは。
「流石にちょっと考えさせてね」
「も、もちろんよ。私だって初めてはとっても大切にしてたんだから」
ミカと俺が初めて交わった時、地球でもアナズムでもミカはとても痛そうな顔をしていた。すぐ嬉しそうな顔を浮かべてたけれど目には涙溜めてたし。痛いんだろうなぁ。
でもアリムのお相手って男性化した美花ぐらいしかいない。……こんな話が出た以上、遅かれ早かれそういうことにはなるかもしれないね。
「わかった、いいよ」
「ほんと?」
「うんっ」
「えへへ…ありがと。責任はちゃんととるからね?」
「ああ、うん、そだね」
よくよく考えるととんでもない交渉をしたのかもしれないけれど……でも俺たち二人なんだし別に構わないよね。




