第六百三十七話 テストの心配 (翔)
「おはよー!」
「おっはよ!」
昨日あんなことがあったってのに、日常的に過ごすってのもなんか変な気分がするわな。
結局あの魔神は敵対するつもりがマジでねーのか気になるところだが、いくら気にしたって仕方がない。
なんせ取り憑くタイプなんだから実体がないからな。
「ショー、ね、ね、一つ相談があるんだけど」
「お、どうしたんだリル」
目をキラキラと輝かせながらリルがやってきた。こう言う時は大抵、ときめくようなことを要求してくる……そんな顔だ。
「わ、私もアリムちゃんとミカちゃんみたいに……二人でマフラーしたいなーって…」
「ああ、マフラーか…」
そういえば相合傘もまだだったな。
やることは随分やったが、そう言う細かいところでやってないのは結構多い。
「私、マフラー用意するから…完成したら一緒に」
「おう、いいぞ」
「やったぁ!」
用意してくれるなら俺から何も言うとこはないし断る理由も無い。
……あー、なんて平和な会話をしてるんだ。
みんなどこか魔神が復活しそうってことで少しギスギスしてたような気がするんだがな、あのシヴァとかいう……近所のおじさんみたいなやつのせいで(おかげで)すっかりいつも通りだぜ。
間も無くしてホームルームが始まった。
つっても、少しの雑談と連絡をし、最後にテスト勉強に勤しむように言われたらそれで終いなんだがな。
「テストかぁ……初めてだよ私」
「ん、ここに転入するのに試験とかしなかったか?」
そういえばリルはほぼ満点で通ったんだっけか。
全国指折りの難関校なんだがな、ここは。
「それはもう私がこの世界に来た時には終わってたんだよ」
「なーるほどな」
つまり別の世界線のリル(と仮定しておこう)がすでに終わらせてたってわけか。
「それにしてもなぁ……今年の夏までだったら俺、今頃ヒーヒー言ってたんだがな」
「わふ、部活の大会がかぶって勉強時間がないからだね?」
「そうそう。うちの先生方は配慮してくれるんだけどな。しかしなぁ…」
帰宅部のくせにゲームに集中して全く勉強しなかった有夢と、部活の合間をぬってしっかり勉強してた俺が、全教科プラスマイナス5点くらいしか変わらないってのが妙に悔しかった思いがある。
あいつも結局は叶君とおなじで天才体質なんだよな。
「でも今回からは違うでしょ? ほら、アナズムで勉強し放題だもん!」
「ああ、そうだな」
だから何も問題はねー、今回からな。
強いてあげるとすれば、俺たち6人アナズム組全員がほぼ……いや、ケアレスミスさえしなけりゃ満点は確実なとこだろうか。
いやー、アナズムで勉強するのはせこい。
書いたものを一瞬で必ず暗記できるペンとか、時間の流れがゆっくりになる部屋とか、そんな感じの道具がたくさん有夢の手によって作り出されたからな。
「じゃあやってみるよ」
「でゅふふ」
む、何やらイケザンと有夢と美花が相談してるな。普通に珍しい組み合わせだ。
なんなんだろうか。
「ショー、いまの話聞いた? アリムちゃんとミカちゃんとイケザン君の」
「あ、聞こえてたんだな。なんて内容なんだ?」
「テストバトルだよ! 点数が高かった方が言うこと聞くってのをアリムちゃんとミカちゃんがやるらしい。それをイケザン君が提案したんだね。同点ならお互いに一つずつ言うこと聞くらしいよ」
「なーるほどな」
二人とも満点とったとしてもお互いになにかしら命令できるのか。あいつらだったらお互いにどんなお願いするんだろーな。
「私達もやらない?」
「お、いいぞ」
「わふーん。頑張るよ!」
つっても物事の考察を叶君と同レベルでやることがあることがある時点でリルの方が頭がいいのは確実だし、いくらアナズムで勉強し放題だといってもやはりそこに柔道の練習が付きまとう。
全教科で満点取れる自信はあるが、俺が若干不利だろう。
ま、リルからのお願いだったら全然聞いちゃうがな。
普段からわがまま言わないし。……どうせお願いしてくるのはアナズムでエッチなことしてほしいとか、筋肉触らせて欲しいとかだろうし。
それに俺が勝っても意味ないんだ。何故なら。
「ショーがもし私に勝ったらなにをお願いする?」
「普段しない格好でもしてもらって……そこから先はまた後で考えるぜ」
「わふ、ショーったら私にして欲しいのにお願いしなかった格好があるのかい!? 言ってくれればいつでも聞くのに」
とまあ、こんな感じで恥じらいながらもお願いはほぼ全部聞いてくれるからな。だからこそ下手なお願いはリルにはできないんだが。
ちなみにここまで言うことを聞いてくれるのは俺に対してだけらしく、他の人に関しては普通の対応をしている。
デレデレされるのもいいもんだ。
……あー、やっぱたった一日でこうも緊張感って消えるもんなのか。ははは、いや、良いことなのかもしれねーな。




