第三百六十四話 終焉の炎 (叶)
「オオラァヨォッ」
スルトルによって放たれた火球がカナタに迫る。
それを消し、闇魔法で応戦。
「フンッ」
しかし、さらに撃ち込まれたもう一つの火球によってそれも打ち消されてしまう。
槍や魔法によるこのような攻防を、長く続けていた。
カナタは、考える。
どうすればあの魔神を封印できるか…を。
魔神の能力は憑依先の能力を跳ね上げること。
そして、ローキス国王の絶対死のスキルが死んだ後に肺になる効果へと変わったように、進化したスキルが炎に関する効果を追加されること。
リルの氷を溶かしたのも、同様のことだと考えた。
そして今は、炎魔法のありえないような火力…しかも、本気を出していない。
カナタのSSランクの魔法では火力不足であった。
そのうえ、触れたものを溶かしてしまう上に、炎と化している身体であるとカナタは推測していた。
召喚した槍が溶けてゆくのと、その後、ショーの身体の一部が炎のように揺らめくのをを見たためだ。
さらに憑依先がショーであるため、宇宙に送ることもできない。
物理攻撃を使わずにスルトルを無力化し、その上で物体を溶かしてしまうスキルも切らせてやっとグングニルを刺せるのだ。
カナタはそれではあまりに勝ち目が薄すぎると、もう一度、頭をひねくり廻し始めると、スルトルが口を開けた。
「なかなか煮えねェなァ…この身体が知り合いだからッて手ェ抜いてんじャねェか? ……そうだ、ここでテメェに本気を出させてやる方法を思いついた」
スルトルはやはりニヤニヤ笑いながら、カナタの方を見る。
「テメェが俺をこれ以上楽しませることができネェんだったら、ここから…テメェの可愛い彼女を殺す。…クカカッ…ここからあの国に直に、国の2~3は滅却できるようなスキルの魔法陣を出せば…十分、殺せるだろ?」
カナタはその言葉に目を見開き、頭の中で今言われたことを反復。唇を噛む。
「やらせないッ…絶対に」
「なら、オレを楽しませろよ? じゃないトォ…あの狼の娘のようにィ…灰になっちゃうゾ?」
地面の土をおもむろにひっ掴み、スルトルはそれを強く握り込んだ。そして手のひらから火花がでる。
手を開かれた時には、パラパラと、燃え尽きた土だった何かが手から落ちた。
「こんな風に…な」
「……ッ!」
カナタは片手に、作ったばかりの単体の槍の召喚魔法を発動させ、厳かな見た目のソレを掴む。
そして、それを思いっきり______
「ああああああああああああッ!」
カナタの余裕のない叫び。
ともに様々なものを付加させられ、豪速で投げられる魔法の槍。それはもはや音速などとっくの昔に超えたような速さでスルトルまで飛んで行き、その身体を貫_____
「あ?」
抜けなかった。
刺さるはずだった場所を中心に、火でできているその身体が槍を通過させたのだ。
今のスルトルには実態がないのと同じだった。
また、一瞬しか触れていないにもかかわらず、槍の先端は溶けかけている。
槍はそのままの速さでどこか遠く、飛んで行ってしまった。
「………その程度…なのか?」
「い、いや、まだだッ!」
スルトルの至近、周囲を多重の魔法陣が囲む。
それこそ、カナタの所持している強力なスキルの全てがそれぞれ数枚ずつ。
「これで…どうだ?」
一斉に放たれる、国を一つ滅ぼしかねないレベルの魔法の連弾。槍は振り、黒い魔法は唸る…予定だった。
「……ホォ」
しかし、スルトルは余裕であった。
すぐさまにレーヴァテインを抜刀すると、それに、SSランクスキルで作り出した、炎の魔剣、ムースペルを即吸収させる。
その途端にレーヴァテインは、燃え上がり、スルトルは、それをすべての魔法陣に向かって振るった。
一振り…たった一振りであるがそれは全てを破壊し燃やし尽くす事ができる一撃。
カナタのスキルにより発現した魔法陣をすべて、轟音豪速、凄まじい風圧と供に吹き飛ばした。
その一撃は魔法をかき消すだけにとどまらず、島を半分に切断。そしてさらにその後方。
その先の海は、真っ二つに切断された。
「どうだ…!! これがオレ様の本気だぜ?」
真っ赤に燃え上がるレーヴァテインを肩に起き、自慢気にカナタの方を見る。
カナタは、今の強力すぎる一撃に呆然としたのち、すぐに気を取り直す、しかし。
「次の手は…どうするんだ?」
「……」
次の手が無くなったのだ。
こちらの攻撃があたらねど、向こうの攻撃もこちらに当たらない…などという余裕は、サクラを標的にされた時点ですでに無い。
「う…ぐ…。…ああああああッ…!!」
再度、強力な槍を数本召喚し、それらを投げ始めるカナタ。スパーシ・オペラティンのスキルと併用され、様々な軌道を描きスルトルに当たるも、スルトルの炎の体を通過してしまう。
その通過したその最中に、槍に魔法陣が発現。
「喰らえ…!」
剣を振るう暇もなく、スルトルは魔法を浴びせられた。
それが2本…3本…4本、5本。
多くの槍が同じことを繰り返す。
一度刺さり、彼方に飛んで行った槍も、カナタによって引き戻されて再度、スルトルを通過…からの魔法の発射。
「どうだ!」
緊張と焦り。
それによって発汗した顔を、スルトルに向ける。
煙がスルトルが居た場所を囲って居た。
カナタは魔力を図る。
絶句。
「……まあ、簡単なことだよな」
煙の中から出てくるのは、しぶとい、実にしぶとい黒き魔神。ニタリと笑っている。
カナタの行為を嘲笑うかのように。
「回復魔法をずっと唱えてりゃ…凌げたぜ?…テメェとの戦い…かなり楽しかったぜ! 過去最高だ! でも、オレ様は飽きちまった!」
理解こそ追いついていたものの、次の手を考えようとしているカナタ。
それを無視してスルトルはゆっくりと、手を天にあげた。空を指差す。
「上を見ろ、カナタ」
言われるがままに、カナタは上を見る。
眩しい。
目が焼けるようである。
それはそう、太陽が13個もあれば、眩しいだろう。
「これを…世界中に、サクラがいる場所を中心にばら撒くからな。盛大なモノが見られるぜ? よかッたな。今、サクラは城の中に______ん?」
スルトルはあげていた手をおろし、顔の笑みをぴたりと止めた。信じられないモノがサクラと供にいる気配。
それを感じたのだ。超多量と魔力。
カナタはその様子を、ただ、眺めはせず、今のうちにと、瞬間移動により12個の偽の太陽を宇宙まで飛ばした。
しかき、それでもまだ、スルトルは笑っている。
もはやカナタには興味がないかのように。
…それはもう、満足そうに。
「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ! やッときたのか…? メインディッシュちゃん達がヨォッ!!」




