第三百五十一話 魔神の優越 (翔)
「はァ…ンン。テメェラ、自己紹介とか必要か? オレ様は魔神スルトルってんだ、ヨロシクな! ああ、テメェラの自己紹介はイイよ。もう知ッてッから」
国王の身体を乗っ取った魔神スルトルは、勝手に自己紹介をし始めた。
誰もそれに反応する者はいねーな。
リルと桜ちゃんは戸惑ってるし、叶君は魔神を睨みつけている。隊長2人もそんな感じだ。
「……ッ!!」
突然、目を見開き何かに耐えるような表情をする魔神。見れば、叶君が何かスキルを使ったようだが…魔神はニタリと歯をむき出しにし、笑い始める。
「ハハッ! やっぱその瞬間移動ッての? イイネーッ! だけど、ざ~んねんッ。賢者のMPを消費したもんは呼び出した本人には無効になるんだなァこれが! もっとも、その術が使えるセッグライ家はコイツで末代なんだがヨォ…」
オレ達の攻撃が効かない?
となると、どうすればイイんだ?
魔神はペラペラと語りを続けてゆく。
「ああ、それと今貼ってるその、変なバリアもオレ様には無効だから。回復魔法とか防御魔法とか補助魔法とかを無効にする力は本当はこのビビリちゃんにはねーんだけど……オレ、そーいう魔神だからッ!」
そう言いながら、魔神は虚空に向かって手を突き出した。と、同時に叶君が悔しそうな顔をする。
叶君はさっきデイスさんに貼っていたようなバリアを、また、張ってたんだな。
「ふゥ…。でもやっぱりこの身体はまだまだだなァ。賢者供の攻撃が効かないッてのはイイことようだが…オレは血湧き肉躍る戦いを求めるタイプの魔神だから、こんなじャダメ。ダメダメだ」
お、おい、いきなり強すぎるだろいろいろと、魔神…。
いや、国王に取り付いちまったから、厄介な力を手にしているって事なのか?
「こんなにシャベッてるのに、誰もお返事くれないの? 悲しいなァ、僕。ギヒ、キヒャヒャッ!!」
不気味に笑う。
…どうすればいい? スピードを意識してあの魔神にオレは斬りかかればいいのか?
しかし、そんな事をしたところで魔神本体が倒せるとも限らないし、相手は何をしてくるかわからない。
とりあえず、今は攻撃してきたらそれを防ぐくらいしかできねーな。それも魔法やスキル無しで。
【なあ、リル】
【わ、わふっ!? わふ、どうするの? どうしたらいいのかなっ!?】
【まあ、落ち着け。俺は無理みたいだがリル達はスキルとかの攻撃が通用すんだろ。……だが今はとりあえず何もするな。時がきたら念話で合図する】
【わかったよ】
と、とりあえずリルにそう言っておく。
下手したらリルが切札になるかもしれねーからな。
次は叶君に訊いてみるか。
【叶君、どうすればいい? 何か考えはあるか?】
【あ、翔さん、丁度今、念話しようとしてたとこでした。恐ろしいほど格段に上がったローキスさんの魔力ですが、しかしまだ量的に、俺達が勝ち越しています。ですから、単純に闘いになったも負けてしまう可能性は低いですが…問題はローキスさんの所持しているスキルです】
チラリと未だに笑い続ける魔神を見てから、叶君は俺に視線を戻す。
【スルトルは、おそらく取り憑いた先の能力とかを引き上げる能力を所持しているかと。って、さっき自分で言ってましたが……ローキスさんが本当は自分に対する賢者の力だけを無効化するのに対し、今は、俺が皆んなを瞬間移動することすらできないんです。あいつの話が本当ならかなり厄介です。桜にも念話で補助魔法を俺にかけるように言いましたが、やっぱり補助魔法も掛けられないみたいですね】
……じゃあどうすればいい?
やはりステータス差でゴリ押しするのが一番なのか?
オレはレーヴァテインを深くにぎり、構える。
その途端、魔神は目を大きく見開いて、こちらを見てきた。…体に穴があきそうなくらい見られている。
「かァーッ!! テメェ、いい剣持ってんなァ! アレだろ、ダンジョンで見つけてきたんだろ?」
どうやら俺の剣を見て褒めてるみてーだな。
俺はより、レーヴァテインを深く握る。
「よしよし、どれどれ…ソロソロ殺り合うかテメーラ! ……誰から来るんだ? ……えー、ゴホン。…キリアン、クルーセル。まさかお前達、賢者共が今、魔法を使えないにも関わらずそこで傍観しているつもりか? ……来い」
突然、口調を国王のようにした魔神は、隊長の2人を挑発する。
2人のうちの…クルーセルとかいう男の人の方は、口をぎゅっと結び、剣を構え直すと、
「ウォォォォオオオォォォォオオオッ!!」
そう、叫びながら魔神に突撃していった。
「クルーセルさん、やめて!!」
叶君はそう叫び、クルーセルが魔神の元に行こうとするのを邪魔しようとしたが、失敗した。
クルーセルは国王に斬りかかろうとする。
キリアンとかいう女の人の方も槍を握り、そちらに向かおうとしたが、それは桜ちゃんが止めてくれた見てーだな。
「ふむ、まずはクルーセルだな。僕の…ゲヘヘ、オレ様の予想通りだなァ」
国王はその手を前に突き出した。
クルーセルとかいう人は、この部屋の入り口まで吹っ飛んでいった。




