第三百二十二話 クリア報告 (叶・桜)
翔と再会した翌日、カナタとサクラはローキスのところにやってきていた。
ダンジョンをクリアしたことを報告する為に。
「ほう…では一応詳しく訊かせてくれぬか? どのような魔物が居たか…手に入れたアイテムなどを」
「はい」
カナタはローキスの前で、なるべく綺麗なダンジョンに現れた魔物の死体を取り出してお披露目した。
ボスであるフギンとムニンだけは頭のみだったが。
1匹1匹が、なんの魔物の亜種かなども説明する。
「ふむ、わかった。宝はどうだった?」
「はい、 宝物の方は今、桜がかけている首飾りと剣です」
「ほう…ではそれも含めて詳しく報告しろ」
カナタは事実とはほんの少しだけ、自分達にとって都合の良いように変えて、アイテムとその他のでてきた物の説明をした。
「記録は…できたな。よし。その手に入れた伝説級のアイテム2つは元の世界に帰るまで、お前らが持っていると良い。して…次は鍛えた実力の方を僕達に見せてもらおうか?」
そのローキスの要望により、騎士団の練習している城の敷地内に二人は連れてこられた。
ローキスやカナタ達の他にも、クルーセルやキリアンなどもついてきている。
「うむ…それではカナタとサクラよ。装備はそのままで、試しにクルーセルとキリアンと闘ってみろ」
その声とともに、クルーセルとキリアンは無言で武器を構える。
「あの…ローキスさん、力を見せるだけなら別にお二人と戦わなくても大丈夫ですよ?」
カナタはローキスを一瞬だけ睨み、それからすぐに表情を和らげてそう言った。
「……いや、しっかりと人で試してみた方が良い…。仮に力が有り余り過ぎてしまい、そこの二人を殺してしまったとしても僕は咎めぬ」
ついてきていた大臣などのこの国の偉い人達は、驚きで顔を見合わせる。
カナタとサクラも顔を曇らせた。
静まり返ってしまったこの空気の中で、最初に声をあげたのはクルーセルだった。
「賢者カナタ、賢者サクラよっ! もしお前の手によって私が葬られようとも、それは私の力が及ばなかっただけっ! 気にする必要はないっ!」
キリアンも一度、頷いてから言葉を続けた。
「私も同感だ」
「……な、カナタとサクラよ。二人もこう言っている。やれ」
ローキスがそう言っている頃、カナタとサクラはメッセージで対話していた。
【どうするの?】
【まあ、普通に気絶させるよね。仮にHPが0になっても、さらに攻撃を加えなきゃ死なないし。とりあえず首元でもチョップして。事が終わったらすぐに回復してあげてね、俺だけで行く】
【うん、わかった】
二人は無言で頷きあってから、カナタのみ武器を取り出した。
「準備できました。俺だけいきます」
「ふん…それもよかろう。始めろ」
ローキスがそう言うとすぐにカナタは素早さの全力を出し、『後ろに瞬間移動し、手刀を打つ』という行為を一瞬で行う。
キリアンとクルーセルは反応する間もなく気絶。
すぐにサクラがその場から二人を治療した。
「終わりましたが?」
「うむ…二人はそれぞれ単独でSランクの魔物を倒せるだけの実力はあるのだがな…。こうも簡単に…か。こんな数日でここまで強くなるとはな」
ローキスはカナタのその強さをみて満足気にそう言った。国の重役らもその強さを目の当たりにし、色々と話し合っているようだ。
そんな最中にデイスがカナタに話しかける。
「ホッホー! しかし…今のは1割の力も出していないんじゃろう? カナタや」
「なに!? そうなのか…! デイスが言うなら本当なのだろうな?」
カナタはデイスに対して余計なことを言ってくれたものだと思った。
仕方なく、その話を肯定しなければいけない。
「ええ。そうですよ」
「なら、全力を見せてみろ」
「…皆様を巻き込んでしまいますが」
「ならば巻き込まない程度に抑えろ」
「……わかりました」
カナタはある程度、皆んなを後ろに下がらせた。
自分より前に立っている者がいないことを確認し、SSランクスキルの技を発動した。
広い練習場の上空に巨大な魔法陣が展開され、そこから無数の大小長短様々な黒く輝く槍が猛スピードで、まるでバケツの中の水をひっくり返したかのように降ってきた。
SSランクスキル[闇鋼槍究極連続召喚術]の効果だ。
その槍らは地面に持ち手の先まで深く突き刺さると共に消滅していく。
およそ5秒間降り続けたその黒い槍の雨は、地面に深く巨大な穴を残してやんだ。
その場に居たカナタとサクラ、そしてある一部の人以外は全員が目を大きく見開き、この上ない驚嘆を顔と態度で示している。
ローキスも勿論のことであり、その上、彼の下半身部はじょじょに濡れてきていた。
「ほぉ…すごいもんじゃのぉ…」
デイスのみが、そう最初に声を上げる。
それを境にこの国の重役達はガヤガヤと話をし始める。
『これなら勝てる』『素晴らしい力だ』『これで全力でないなら…?』などと。
なお、ローキスは自分の粗相に気が付き、すでにその場から去っている。
「どうでしたか? ローキスさん…あれ? ローキスさん?」
皆の方を振り向きカナタはローキスを探すも、居ない。
代わりにデイスがそれに答えた。
「ほほー! ローキス様は今のことを記録するようですからな。自室に向かったのじゃ。この後は二人共自由にして良いからのぉ?」
「そうですか、わかりました。ですがその前に…サクラ、お願い」
「うん、わかった!」
サクラはカナタの隣に立つと魔法を唱え始める。
先程までガヤガヤと何かを相談していた重役達もまた、何かをするのだろうかとサクラの方を注目した。
すぐに唱え終えたその途端、カナタのスキルにより、酷くえぐれていたはずの地面が元に戻ったのだ。
人々は、再び、驚く。
そんな中でまた声を最初にあげたのはデイス。
「ほぉー! これはまた素晴らしい回復スキルじゃのぉ…。ふぉふぉふぉ…」
「じゃあ、俺達は帰りますね」
「うむ、そう伝えておく。……泊まっては行かぬのかの?」
「はい、すいません」
「いやいや、いいんじゃよ。あとは若いので…」
「あはは、そうします」
カナタとサクラは手を繋ぎ、歩いて宿泊している借家まで、誰が見ても仲睦まじまいとわかる素振りで帰って行った。




