第三百十四話 ダンジョン帰りの残りの時間-2 (叶・桜)
店員さんは少し嬉しそうな様子で、店の奥、どこかへ消えていったと思ったら、すぐに一人の紫色の髪の毛のおばさんを連れて戻ってきた。
その人はカナタやサクラの目から見てもわかるくらい、ファションセンスがめちゃくちゃ良いような服装をしている。
「あの…こちらのお客様なんですけれど」
「……こぉの娘? なるぅほど、ねっ…。これぇはお客様……『魅惑の美姫』の称号をお持ぉちでしょう?」
「は…はい、そうです」
「うぅん…! いいわねぇ…。でも髪型がただの二つ結び…うぅん…あ。お客様、この娘のボーイフレンズッ…またはブラザーズッ?」
「は、はい前者です」
そのファションおばさんはカナタにも話しかけてきた。
兄弟ということにしておけば良いものの、なぜか彼氏だと答えてしまうカナタ。
「髪型…切ったりぃしないから、変えてもいいでしょうかねっ。この束ねてるのを伸ばすだけでいいんでぇすっ」
「あっ…ええ。桜が良いんなら……。でもその髪型にも合うものも選んで欲しいですし、こう、ちゃんとして…汚れたら困りそうな物の他にも、街を歩けるようなのも欲しいですね」
「と、おぉ客様のボーイフレンズッ様は言っておりますが……?」
「そ、その通りで良いです……あ、でもこの首飾りに基本合えば嬉しいです。それと露出が少ない物を。胸とか太ももとか…なるべく出したくないので……」
「オォッケー! わぁかりましーた! ボーイフレンズお客様、少々お待ちくださぁい!」
サクラはハイテンションのおばさんに何処かへ連れて行かれた。
お金が何故か足りなくなりそうな気がしたカナタは周りにいた店員に一言言って、外へ出る。
先程の店で金を補充するのだ。
_____
____
___
200万ベル程新たに手に入れたカナタは再び店に戻ってきた。
カナタはまた店に会員に勧誘されたが、『用があるので、それでは』と言って一瞬で店から居なくなったのだった。
戻ってくると同時に、おばさんが奥から一人で戻ってきた。
「おぉう! お客様…! お待たせしましたぁ…。ガールフレンズッに要望と容姿に合います服を……15通り程、お選びぃ致しました!」
「早いですね…」
「んっ、はぁいっ! 私、自分のセンスに絶対なぁる自信を持っていますから」
成る程、そういうスキルなんだなと、カナタは思った。
「では……こちらでお見せできますぅので」
おばさんに言われた通りの場所に、カナタは付いていく。そこは一つだけ試着室がありその前にレッドカーペットが敷かれている綺麗な小部屋であった。
「それではぁ…お嬢様っ! ボーイフレンズッにお披露目を!」
そのおばさんの掛け声とともに、一緒についてきてた店員さん数名が試着室のカーテンを開ける。
中には髪をおろし、まるで本人のために誂えたように似合っている上に相当な高級感を醸し出し、尚且つ、着ている者の美しさを最大限まで引き出している……そんな服やスカートを着ており、また、アクセサリーや靴下…靴まで何か何まで完璧としか言いようが無い物を着けているサクラが居た。
おばさん曰く、『動きやすい服装で』という注文だったのでドレスは無いとのこと。
カナタは思わずフリーズする。
可愛いだの綺麗だのとサクラのことを思っていたが、その言葉だけでは表せないような者が目の前に居り、自分の幼馴染はこんなにも絵にもかけないほど容姿端麗であったのか…などと、色々な考えがカナタの中で一瞬で考察された挙句のフリーズであった。
一度に、カナタは考えすぎるとフリーズするのだ。
「あ…あれ? ボーイフレンズッ固まってしまいましたね」
「あ…大丈夫です。彼は驚いたりすると固まる癖があるので…。えへへ、驚くほど良かった? こんなに本気で、ちゃんとしたお洒落なんて、何かの行事以外で初めてなんだけど」
そう言いながら、サクラは固まっているカナタまで近づき、その手を握った。
その瞬間、カナタの意識は戻る。
「ハッ!? _________女神?」
「ち…ちょちょちょちょ…にゃに言ってるにょ!? しょしょそ…なにゃな…ほほひょめ褒めすぎじゃない? ね、ね、ほほ褒めすぎだってぃぇ、かにゃた…! 今日二回めにょ!」
しばらくして2人は冷静を取り戻した。
周りの店員さんやハイセンスなおばさんはこの間のやり取りをとても温かい目で見ていた。
「はーー…すいません…俺と桜共々、取り乱してしまい。お騒がせしました」
「いぃや、いいんですよぉ、残り14種もごらぁんになりますか?」
「桜、いい? 見ても」
「うん」
そのあと、サクラは一瞬で着替えが終わるマジックルームだという試着室で何度も、着替えを繰り返した。
15着、全てが良いものであった。やはりその中でも一番なのは一番最初の組み合わせなのだが。
「すいません、これら全て買うとしたら、お幾らですか?」
「そうですね…全てお似合いではありますが…506万ベルですかね? オプションのアクセサリー無しでも」
下着から何から何までこの店の高級~宝級のものなので、この値段になってしまうのは当然であった。
さすがのカナタもこれには驚く。
なお、試着しているのは本物ではなく、イメージを似たような安い服に一時的に映し出しているものらしい。
「506万ベル……ちなみにアクセサリー有りだと?」
「629万ベルでしょうか?」
アクセサリー…と言ってもブローチや髪飾りなどだったが、宝石やら色々と使っているので、やはり地球と同じように、基本、かなり高級な物となっている。
払える・払えないに関わらず、店の方は似合う物を選んで試着させているため、悪意は無い。
「629万……あーー……」
「まあ、もちろんこの中から1~3通り選んぅで頂いくって形ですが_________」
「あ、いえ。全部買います。即金で」
その言葉にサクラとエルフの店員二人は驚いた。
おばさんだけは、こういう客が稀にいるからか、驚いていないようだ。
「い…いぇあ! ありがとうございます! 本当によろしぃのですか?」
「ええ、もう会計をしても?」
「あっ…あー、こういう大きな取引用の部屋が御座いますので、そこで」
と、2人はまた別の部屋に通された。
これまたこじんまりした部屋だったが、雰囲気が重たくく、軽い気持ちでは入れない部屋であることは明白である。
「えーでは、こちらでその品物を受け渡すのですが…」
「あ、それならこのマジックバックに入れてください」
カナタはサクラに軽く了承を得てから、サクラのマジックバックをおばさんに手渡した。
と言っても629万ベルを即金で払うカナタに驚いて、今度はサクラがひどい硬直状態となっているので、少し頷いただけだが。
「はい、了承いたしました。ではまず、代金のお支払いの方を」
「はい」
カナタは自分のマジックバックから629万ベルの大金貨群を取り出し、机の上に置いた。
「ひぃ…ふぅ…みぃ…よぉ…いつ…むぅ…。はい、629万ベル、確かに受け取りました。今後とも当店をご贔屓に」
「はい、またよろしくお願いします」
お互いに頭を下げてから、カナタとサクラは店を出て瞬間移動で部屋に戻った。




