第二百二十五話 英雄と兎 前編
朝の8時頃、ある男は高い服を着て、自分の店の前に立っていた。
この男の名は、ウルト・ラストマン。
彼は今、一人の女性を待っている。
しばらくして、宿屋『光』から、これまた高い服を着た一人の女性が出てきた。彼女の名前はパラスナ・ネルヴァン。
「ごめん、待った?」
「いや、今来たところ」
「……嘘ね、この宿を私より10分も早く出たのは誰かしら? ……ごめんね? 待たせて」
「いや、良いよ…。 行こうか」
「うんっ!」
これは、戦争終了後のSSSランカー二人の休日の話。
ウルトとパラスナは、劇場へと向かっていた。
「二人でどこかに行くの、2ヶ月ぶりね。……どうかしらこの服、似合う?」
「似合うよ、とっても。……って、それ、前に俺と二人で選んだんじゃないか」
「えへへ、覚えてくれてたわね」
「まあね」
二人は恋人繋ぎで手をつなぎながら歩いている。
パラスナは普段、フードで自分の兎耳を隠しているが、この日は隠していなかった。
また、変装できる魔法を使い、ウルトや一部の知人以外からは、ただの兎族の獣人に見えるようにしている。
一方、ウルトは特に変装などはしていない。
宿屋『光』の常連がこの光景を見たのだったら、あの店主に恋人が居たんだ、程度の認識であろう。
ウルトがラストマンである事を知っている者が見たら、パラスナとデートしているとしか思わないだろう。
また、上記二つのどちらにも該当しない者は、彼がただのリア充に見えるはずだ。
しかし、ウルトの内心はこの日、普段とは全然違っていた。すこし挙動不審にもなりかけているが、パラスナはまだ気がついていない。
二人は、仕事で何があったかを話してるうちに劇場へと着いてしまった。
「当日券、2枚、お願いします」
ウルトは受付嬢にそう言った。
受付嬢は今回行われる劇のチケット2枚分のお金をウルトから受け取り、二人を劇場の中に入れる。
「ちょっと早く来過ぎちゃったかな? 空いてるわね」
「そうだね…前過ぎたら見えにくいし…前から4~5段目くらいにすわろうか」
「そうね」
二人はそのまま、舞台より4~5段目の席に座った。
しばらく二人で喋っていたが、時間が来たのか、段々と劇場内が暗くなる。
それに乗じて、ウルトはパラスナの頭の上に優しく自分の手を置いた。
「……何してるの?」
「いや…このまま撫でようかなー…と」
「……おかしなウルト。何か変なものでも食べたのかしら?」
「だったらパラスナもおかしくなってなきゃ。食べてるものは同じだろ?」
「んー…ま、良いけど。私が満足したら手を下ろしてね」
「わかったよ」
その後、劇が始まった。
今期、披露しているのは恋愛ものであった。
大商人の娘が貴族の息子に恋をするという、普通だったらそんなに身分差などの問題がなさそうな話なのだが、その息子の方に実は問題があった。同性愛者だったのだ。
しかし、最終的に"人として"貴族の息子が大商人の娘を好きになり、結ばれて終わる。
最後の最後にはキスシーンもあるのだ。
現在、キスシーンの直前だったが、未だにウルトはパラスナの頭を撫で続けていた。
パラスナはウルトの肩に寄りかかり、軽く頭を擦り付けている。
「あー、もう少しで話題のキスシーンに入るわね」
「そうだね…」
「私の頭から手を下ろしてくれるかしら?」
「はい」
ウルトは言われた通りにパラスナの頭から手を離した。
それと同時にパラスナは、片目をつむり、片目を薄目にし、ウルトの顔を向き、唇をほんの少しだけ出した。
「……何してるのかな?」
「見てわかんないの? 女冒険達の間で彼氏と劇のキスシーンでキスをするのが流行ってるのよ。ウルト、私の彼氏でしょ?」
「あー、聞いたことある……。いいよ」
劇がキスシーンへと移行した。
それと同時にウルトとパラスナはキスをする。
無論、その二人だけでなく、この劇を見に来ていたカップルのほとんどが、この劇場内でそれをしていた。
「ふふふ、これで貴方と私、何回目のキスかしらね?」
「……今週だけで11回目だね」
「あら、その言い方、嫌だったのかしら?」
「そんなわけないだろ」
二人は繋いでた手を今度は腕に組み替え、劇を出て行った。
その後、アリム公認のサンドイッチ専門店でサンドイッチを軽く食べた後、街の店などを回って買い物デートを満喫している。
そして、午後6時、夕方となった。
「あーあ、今日はめいっぱい遊んだわね! 楽しかったわ」
「そうだね。えーっと、店を予約してるんだけど、行かない?」
「予約しちゃってるんだから行くしかないでしょ、どこなの?」
「そこ」
ウルトが指を指した先には、この国で一番の高級料理店があった。
「あー、あそこね。最高級料理店。いいじゃないの。早く行きましょう?」
「うん」
「これでウルトとあそこに行くのは何回目だっけ?」
「3回目くらいかな」
二人はその店へと入っていった。
現在、短編のコンテストに応募するための作品をいくつか書いてます。
ところでこの間、初めてラノベを買い、初めて読んでみたのですが、とても面白いですね(≧∇≦)




