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Levelmaker ーレベル上げしながら異世界生活ー  作者: Ss侍
番外章 クリア後

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葬式

 全員が喪服に身を包んでいる。

 あゆちゃんとクラスメイトだった私達はこのお葬式に参加していた。あの棺の中に死化粧が施されたあゆちゃんが入ってる。お坊さんのお経の他に、大勢の啜り泣く声。


 そんな中、美花ちゃんは生気が全くないといえる状態でただ棺を眺めている。

 あゆちゃんが亡くなってからずっと美花ちゃんの目に光がなかった。眼の全てが黒目になってしまったかのよう。大声で泣き喚く事もせず、たまに意識が戻っては『どうして』とだけ呟いて再び呆然とした状態に戻る。これを繰り返していた。

 あとはお互いどちらかによる愛の告白残すのみ、そんな深い仲の相手が突然亡くなると、人はこうなるだなんて、知りたくなかった。どう声をかけたらいいかもわからない。


 あゆちゃんの大親友の火野。彼は男の子らしく、すでに現実を受け止めたような真剣な表情で前方をまっすぐ見ていた。いや、それは形だけで実際は正気じゃないことくらい誰にだってわかっている。たまに拳を握りしめ、何かに八つ当たりするように腕を上げようとするも、寸前で止める様子が見える。


 実弟である叶君は泣いていた。大天才であり感情の起伏は普通の人より少なめ……そんな叶君が、延々と泣きじゃくっていた。お葬式が本格的に始まってからは自粛しているように黙っているけれど。

 叶君とあゆちゃんの兄弟仲はすこぶる良かった。タイプが違う二人のため普段から絡んでいるようには一見見えないが、本当はかなり仲睦まじいというのは美花ちゃんや火野伝いに聞いていた。

 あの子の今抱いてる感情は、言葉では言い表せない。


 桜ちゃんは叶くんや美花ちゃんを労るような態度を見せている。今は魂が抜けた様子の姉の背中を自分も泣きながら慰めている様。御焼香が回ってきた時は、呆然としままの美花ちゃんを手伝ったり……そんな妹の気遣いも、今の美花ちゃんには全く届いていないようだけれど。


 ……あゆちゃんのご両親については言い表せない。どんな様子かなんて全く言い表すことなんてできない。私は親の気持ちはまだわからないから。美花ちゃんや火野、叶くんとはまた別次元の絶望が広がっていることしかわからない。


 このお葬式について、泣けるだけ、あゆちゃんの生前のことについて語れるだけまだマシであると言わざるを得ない。あまりにも悲しみが満ちている。


 やがてお経が全て唱えられ、死者へ花を手向ける時間となった。棺に入れられたあゆちゃんが運ばれてきて、その蓋が開かれる。元は頭が割れてしまっていたなんて考えられないほど綺麗。やっぱりどう見ても男子には見えない、深い眠りについた絶世の美少女の姿がそこにある。生気のないこの寝顔から、目を開けて可愛く、寝ぼけた声でおはようなんて喋り出してもおかしくはない。

 

 叶くんが用意していた紙袋からあゆちゃんが所持していた全てのゲーム機本体とゲームのカセットを取り出し、あゆちゃんの周りに詰めていく。

 半プロともいえるゲーマーとして有名で、動画投稿もしていたあゆちゃん。これらはあの世へ行っても退屈しないようにと準備されたもの。と、同時にあゆちゃんの生き様、あゆちゃんの象徴。それを忘れないためのもの。

 ゲームカセット自体は意外にも数が少なく、誰かと一緒に遊べるパーティゲーム以外はRPGしかない。あゆちゃんは一つのソフトを何十周もするタイプだからこうなるのも仕方がない。

 ネット上であゆちゃんのゲームプレイ動画のファンだった人達に対しての訃報はあとで叶くんがあゆちゃんのSNSアカウントを用いてやっておくらしい。


 ゲームが詰められたら、今度は各々で全身を埋めるように花を詰める。冷たいあゆちゃんの頬をひと撫でしたり、言葉をかけたりしながら次々と。もちろん私もあゆちゃんに花を手向けた。

 美花ちゃんをはじめとした絶望に打ちひしがれて動けなかった各々もふらふらとした手の運びで棺の中に花を入れていく。


 気がつけば花は全て詰められていた。これで、おしまい。あゆちゃんの顔は涙で濡れている。誰の涙かすでにわからない。だってほぼ全員泣いているんだもの。

 ……あゆちゃんの棺の蓋が閉められた。これで、これで本当にお別れ。あとは火葬場まで運んで骨を拾うのみ。


 クラスメイト単位という大所帯で火葬場まで行くわけにはいかないので、そこにはあゆちゃんの直接の血族と、美花ちゃん、火野といった特に仲の良かった人達だけがいく。


 ……この一連のお葬式が全て終わったあと、噂で聞いた話。

 火葬場でそこのスタッフと一悶着があったらしい。どうやら火葬場の人があゆちゃんの焼かれた骨を見て別人のものだと思い込んでしまったのだとか。

 というのも、あゆちゃんの骨は完全に『身長が高めの女性』のものであり、とてもではないが男性のものには見えなかったらしい。だから勘違いしてしまったとのこと。

 結局、遺体を取り違えてしまったのではないかと大騒ぎになる寸前にあゆちゃんのお父さんが彼の特異体質について事情を説明する羽目になり、事態は収束したのだとか。


 ともかく、私の友達の一人はこうして天に昇っていった。みんなに惜しむだけ惜しまれて亡くなっていったあゆちゃんは、一体あの世でどんな顔をしているのだろう。

 

 もう、私はこんな思いはしたくない。お葬式は悲しいもの。たしかにそれは当然なのだけど、あんな、あんな誰もが絶望しかしていない悲しすぎるお葬式なんて私、もう嫌だ。後にも先にも、これっきり。これっきりが良かった、というべきか。


 まさかたった二週間後に次があるなんて。

今日はレーティングかかってる版の更新もあります。あらすじのURLから年齢の条件を満たした方のみ閲覧可能です。



##雑談##


どうぶつのもりにハマったので、もしかしたら次の投稿まで間があくかもしれません。……多分あかない可能性の方が高いです。

ただレーティング版はまた投稿がそこそこ先になります。

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