第九百六十三話 女子会とお風呂 (美花)
「ふぅ……ところでミカよ」
「なに、ローズ」
「アリムとミカはその……チキューとやらでは歳が四つ上なわけだろ? そっちではどんな感じなんだ?」
「どんな感じ?」
「ああ、アリムとミカはアナズムでは知らぬものはほとんどおらんほどの人気者だ。確実に歴史に深く名を刻んでいる。それで、そのチキューとやらでは立場はどうなんだ?」
なるほど、そういうことね。たしかに私と有夢はアナズムじゃすごい立場だもんね。特に有夢なんて勇者だもの。しかし立場を話すとしたら、もう少し浅いところから話す必要があるかな。
「まずは地球がどんなところか説明する必要があるよ。アナズムってさ、言葉は基本的に一つしかないじゃない?」
「なに、チキューは言葉が複数あるのか」
「あるよ。およそ七千くらいかな」
「そ、そんなに言葉があっては不便ではありませんか?」
「その通り、ものすごく不便なの」
その点アナズムは合理的よね。なにか古代文字とかもあるわけじゃないし、ずっと一つの言葉で統一されている。仮にこのアナズムが地球より小さかったとしても、これは凄いことだと思う。
「それでたくさん言葉があるから文化もたくさんある」
「こっちも文化は国ごとに多くあるよ!」
「でも大まかな部分は変わらないでしょ? 地球は例えるならそうね、同じ繋がってる一つの星の中に住んでるのに、数時間空を飛ぶ乗り物で場所を移動したらそれはもう全く別世界なの。食べ物も、人の顔も、話す言葉も、風習も、住む家の形も、何もかもが全て違う。それが複数あるの。例えばメフィラド王国にそっくりな風景が見られる土地もあるよ」
「そ、そうなんですか……! 同じ場所にいるのに移動したら何もかもが違うなんて驚きですね。では天ぷらなどはその複数ある中のミカちゃんたちの口と文化の食べ物ということですか」
「そうそう。私たちが住んでる国は日本っていうよ」
「ニホン……」
「じゃあそのニホンでは二人ともどうなのですか?」
よし、ここまではいい説明だったと思う。世界中のことを説明するなんてこのお風呂に入ってる間の時間じゃ無理だしね。
私は日本について、まあ色々と話した。私と有夢の話をしてほしいというリクエストなので、特にそこら辺を詳しく。
「じゃあニホンでは5歳までが勉強する年齢ではなく、過半数の人がお姉様達の年齢まで勉強し続けるということなのですね。それでアリムちゃんとミカちゃん、そしてサクラちゃんはまだ勉強中の立場であると」
「大変だね。でも言葉と文字とマナーと生活の仕方さえ覚えればいいのに、そんな十何年もなにを勉強するの?」
「もっともですが、地球にはスキルも魔法もない分、そうしないと苦労するんですよ」
「そういえば無いと言っていましたね。 ちょっと想像できません」
スキルと魔法は本当に便利だから。もし魔物がいなくて有夢が側にいるなら私は断然アナズムの方がいい。娯楽が少ないのはちょっとつまらないけどね。
「わふ、私が多分唯一アナズムから日本に行った人間だね」
「そうなのか!? なぁ、どんな感じなのだ? こちらから向こうへ行くのと、向こうからこちらへ来るのは全然感じ方が違うだろう?」
「そうだね、まず魔族や獣人の概念がない……いや、概念はあるけど架空の存在だから、私が向こうに行くとこの尻尾とお耳が消えちゃうよ」
「それって、我もそうなるのか?」
「たぶん」
リルちゃんから見た地球のことはやっぱり私とは違った観点だと思う。私は度々リルちゃんから、アナズムの住民から見た地球を語ってもらってるから理解してるけど、初めて聞いたときは新鮮だった。特に驚いたのは言語の違い、髪の色が基本的に数色で統一されていること、人種はあっても獣人のようなかけ離れた種族はないこと、スキルと魔法がないのに文明が異常に進んでることらしい。今もそう話してる。その話が終わった直後、カルアちゃんが質問し始めた。
「じゃあもし仮にチキューにこちらの魔法を、アナズムにカガクを持ち込んだらどうなりますかね?」
私と桜とリルちゃんは顔を見合わせる。たぶん、答えは同じ。
「アナズムにカガクや技術を持ち込んだ場合、理解されるのにかなり時間がかかると思うけど、もし成功すればうまく溶け込んでいくと思うよ」
「わふわふ、そうだね! でも私としてはアナズムはこのままでいいかな」
「それでもし向こうに魔法を持ち込んだら……」
「ねぇ?」
「たぶんAランクの冒険者一人でも町一つ滅ぼせるよね?」
「そ、そんなに……? 魔法に変わる武器などはないのですか?」
「わふ。あるよ、SSランクの魔法に引けを取らないのがある。でもその規模の兵器は数種類しかないし、仕組みも理解されたら簡単に魔法で無効化されてなすすべが無くなるよね」
「それに大勢が巻き添え食らうしね」
そうなのよね、魔法が強力すぎるからもしアナズムと地球で戦いが起こったら地球が負ける可能性が高いのよ。魔力さえ回復すれば、例えAランク程度の実力しかなくてもファイヤーマーチレスとかサンダーマーチレスとかアイスマーチレスとか、地球で置き換えたら凶悪すぎる魔法を何発でも打てるんだもの、前準備もそれほどなしで。
「じゃあもし、アナズムとチキューが接触したら……」
「わーふ、大変なことには確実になるよ!」
「アリムやミカがこちらに来れている時点でもう接触しつつあるんじゃないか?」
「うん……」
そう、そうなのよ。そういえば何もまだ問題は解決してないのよね。出現する魔物に対処できるようになっただけで。……今度は地球で起きてる怪奇現象もなんとかしないと。
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2巻の原稿締め切りが近いのに終わらないのダンス~(˘ω˘~)




