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転生したらクズだった件  作者: 秋月 爽良


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8/9

転生したらクズ男だった件〜夫婦になってからが本当の地獄!?編

 ミア「っていうか、朝から何してんの!? この村で裸エプロンは禁止って何度言ったら──!」

 ユウマ「だってこれ、風通しが良くて……。料理がうまくなるって噂も……」

 ミア「ならねぇよ! てか包丁握る手が震えてるじゃん!」

 ユウマ「愛の震え……?」

 ミア「首を差し出せクズ!」

 ユウマ「ギャーッ!」


 そんな地獄の朝を終えたのち、俺は村の防衛隊長としての日課、つまり「めんどくさい村人対応」へと向かう。


 村人A「隊長、あの畑にイノシシが出ましてな」

 ユウマ「じゃあイノシシ退治すればいいじゃん」

 村人A「そのイノシシ、喋るんですわ。あと料理もできる」

 ユウマ「転生者だそれぇぇぇ!」

 

 村人B「隊長、井戸に落ちた村長を助けてください」

 ユウマ「なんで井戸に落ちたんだよ……」

 村人B「井戸の精霊にプロポーズしたら、フラれて自暴自棄に……」

 ユウマ「もう村長に誰か恋愛禁止令出して!」


 毎日が地獄。だがその地獄の中に、ほんの少しだけ天国があった。

 夜──。


 ミア「今日もお疲れさま、ユウマ」

 ユウマ「お、おぉ……。今日のおかず、……ミアの手作りか」

 ミア「ふふ、あなたの好きな煮込みハンバーグよ。毒は入ってないから安心して」

 ユウマ「言い方ァ!」


 このなんとも言えないやり取りも、もう日課。地味に嬉しい。

 ところがその日の夜。ミアが寝静まったあと、俺はこっそりギルドから届いた“ある手紙”を取り出していた。


「件名:元パーティーメンバーより再会の願い」

 ──そこには、あのエルドとメイの名前があった。


 ユウマ「なんで今さら……?」

 

 手紙にはこう書かれていた。


 『俺たちは変わった。もう一度ちゃんと話をしたい』

 

 悩んだ末、俺は「ミアには内緒で」こっそり会うことにした──。


 ◇◆◇


 数日後、指定された酒場で。


 エルド「久しぶりだな、クズ勇者」

 ユウマ「やかましい。こっちは新婚で地獄見てんだよ」

 メイ「でも……元気そうで安心したわ」

 ユウマ「お前らこそ今はどうしてんだ?」

 エルド「俺はもう冒険は引退して雑貨屋を始めた。メイと一緒にな」

 ユウマ「お、おぉ、そうか……。って、は? 一緒になった?」

 メイ「うん、結婚したの」

 ユウマ「えええええええええええ!? あの冷血ガルドと、あのドSメイが!? 家庭崩壊待ったなしじゃねぇか!」

 エルド「意外と上手くいってるんだよ。……まぁ、お前みたいなクズじゃねぇからな。俺」

 ユウマ「うっせ!」


 話しているうちに、どこかで確かに感じていた「仲間だった頃の空気」が蘇ってくる。


 エルド「でさ。お前、ミアと本当に上手くやれてんのか?」

 ユウマ「そ、それは……。まぁ、毎日ツッコミ地獄だけどな」

 メイ「ふふ。でも愛されてるのね」

 ユウマ「なんだよ急に。……あ、そうだ。今度村に遊びに来いよ。歓迎してやる」

 エルド&メイ「マジで!? 行く行くー!」


 ──この軽率な発言が後に地獄のトリガーとなるとは、この時の俺には知る由もなかった。


 ◇◆◇


 翌週、ふたりは本当に村を訪れた。


 ミア「いらっしゃい、おふたりとも! ユウマの昔の仲間なら大歓迎です!」

 メイ「こちらこそ。素敵なお嫁さんで驚いたわ」

 ミア「ふふ、クズ夫ですけどね?」

 エルド「分かるわぁ」

 ユウマ「味方がいねぇ!!」


 だが数日が経つと、妙な空気が流れ始める。

 ──メイとミアが妙に仲良くなりすぎている。

 ──エルドとミアが畑作業をする時間が増えている。

 ──そして何より夜、ミアの寝室から何か聞き覚えのある声が──


 ユウマ(ま、まさかな……)

 

 だが、クズの直感はなぜか冴えていた。

 ある夜、とうとうその“声”の正体を確かめるために忍び込んだ。


「……んっ、そんな、そこ……だめ、エルド……。ユウマが起きちゃう……!」

「大丈夫だよ……。俺たち、昔からこうだったろ?」


 ──衝撃の展開。まさかの寝取られ開始。


 ユウマ「ギャアアアアアアアアア!!??」


 怒りに燃えた俺は、その場に突撃しようとするが──


 ミア「違うの! これは、その……演技なの!」

 メイ「ユウマくんのために、ドッキリを仕込んでたのよ!」

 ユウマ「……は?」

 エルド「お前がまたクズに戻ってないか心配でな。危機感与えれば、夫婦の絆が強まるかと思って」

 ユウマ「おまえら全員、いっぺん死んどけ!!」

 ミア「うふふ。でも……、ちょっと嫉妬してくれた?」

 ユウマ「うっ、くそ……。ちょっとだけ心配だったわ」

 ミア「ふふ、じゃあ今夜は……。ちゃんと“夫婦の時間”を過ごしましょうか?」

 ユウマ「お、おぉぉ……! (なんかんだでご褒美かよ!)」


 ──こうして、今日も“地獄みたいなラブコメ”は続くのであった。

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