転生したらクズ男だった件〜夫婦になってからが本当の地獄!?編
ミア「っていうか、朝から何してんの!? この村で裸エプロンは禁止って何度言ったら──!」
ユウマ「だってこれ、風通しが良くて……。料理がうまくなるって噂も……」
ミア「ならねぇよ! てか包丁握る手が震えてるじゃん!」
ユウマ「愛の震え……?」
ミア「首を差し出せクズ!」
ユウマ「ギャーッ!」
そんな地獄の朝を終えたのち、俺は村の防衛隊長としての日課、つまり「めんどくさい村人対応」へと向かう。
村人A「隊長、あの畑にイノシシが出ましてな」
ユウマ「じゃあイノシシ退治すればいいじゃん」
村人A「そのイノシシ、喋るんですわ。あと料理もできる」
ユウマ「転生者だそれぇぇぇ!」
村人B「隊長、井戸に落ちた村長を助けてください」
ユウマ「なんで井戸に落ちたんだよ……」
村人B「井戸の精霊にプロポーズしたら、フラれて自暴自棄に……」
ユウマ「もう村長に誰か恋愛禁止令出して!」
毎日が地獄。だがその地獄の中に、ほんの少しだけ天国があった。
夜──。
ミア「今日もお疲れさま、ユウマ」
ユウマ「お、おぉ……。今日のおかず、……ミアの手作りか」
ミア「ふふ、あなたの好きな煮込みハンバーグよ。毒は入ってないから安心して」
ユウマ「言い方ァ!」
このなんとも言えないやり取りも、もう日課。地味に嬉しい。
ところがその日の夜。ミアが寝静まったあと、俺はこっそりギルドから届いた“ある手紙”を取り出していた。
「件名:元パーティーメンバーより再会の願い」
──そこには、あのエルドとメイの名前があった。
ユウマ「なんで今さら……?」
手紙にはこう書かれていた。
『俺たちは変わった。もう一度ちゃんと話をしたい』
悩んだ末、俺は「ミアには内緒で」こっそり会うことにした──。
◇◆◇
数日後、指定された酒場で。
エルド「久しぶりだな、クズ勇者」
ユウマ「やかましい。こっちは新婚で地獄見てんだよ」
メイ「でも……元気そうで安心したわ」
ユウマ「お前らこそ今はどうしてんだ?」
エルド「俺はもう冒険は引退して雑貨屋を始めた。メイと一緒にな」
ユウマ「お、おぉ、そうか……。って、は? 一緒になった?」
メイ「うん、結婚したの」
ユウマ「えええええええええええ!? あの冷血ガルドと、あのドSメイが!? 家庭崩壊待ったなしじゃねぇか!」
エルド「意外と上手くいってるんだよ。……まぁ、お前みたいなクズじゃねぇからな。俺」
ユウマ「うっせ!」
話しているうちに、どこかで確かに感じていた「仲間だった頃の空気」が蘇ってくる。
エルド「でさ。お前、ミアと本当に上手くやれてんのか?」
ユウマ「そ、それは……。まぁ、毎日ツッコミ地獄だけどな」
メイ「ふふ。でも愛されてるのね」
ユウマ「なんだよ急に。……あ、そうだ。今度村に遊びに来いよ。歓迎してやる」
エルド&メイ「マジで!? 行く行くー!」
──この軽率な発言が後に地獄のトリガーとなるとは、この時の俺には知る由もなかった。
◇◆◇
翌週、ふたりは本当に村を訪れた。
ミア「いらっしゃい、おふたりとも! ユウマの昔の仲間なら大歓迎です!」
メイ「こちらこそ。素敵なお嫁さんで驚いたわ」
ミア「ふふ、クズ夫ですけどね?」
エルド「分かるわぁ」
ユウマ「味方がいねぇ!!」
だが数日が経つと、妙な空気が流れ始める。
──メイとミアが妙に仲良くなりすぎている。
──エルドとミアが畑作業をする時間が増えている。
──そして何より夜、ミアの寝室から何か聞き覚えのある声が──
ユウマ(ま、まさかな……)
だが、クズの直感はなぜか冴えていた。
ある夜、とうとうその“声”の正体を確かめるために忍び込んだ。
「……んっ、そんな、そこ……だめ、エルド……。ユウマが起きちゃう……!」
「大丈夫だよ……。俺たち、昔からこうだったろ?」
──衝撃の展開。まさかの寝取られ開始。
ユウマ「ギャアアアアアアアアア!!??」
怒りに燃えた俺は、その場に突撃しようとするが──
ミア「違うの! これは、その……演技なの!」
メイ「ユウマくんのために、ドッキリを仕込んでたのよ!」
ユウマ「……は?」
エルド「お前がまたクズに戻ってないか心配でな。危機感与えれば、夫婦の絆が強まるかと思って」
ユウマ「おまえら全員、いっぺん死んどけ!!」
ミア「うふふ。でも……、ちょっと嫉妬してくれた?」
ユウマ「うっ、くそ……。ちょっとだけ心配だったわ」
ミア「ふふ、じゃあ今夜は……。ちゃんと“夫婦の時間”を過ごしましょうか?」
ユウマ「お、おぉぉ……! (なんかんだでご褒美かよ!)」
──こうして、今日も“地獄みたいなラブコメ”は続くのであった。




