断章 第34話 戦いの予兆編 エピローグ・2 ――消された手がかり――
カイトが東京の天神市に帰還したとほぼ同時刻。天道家の誕生日パーティが開かれた数時間後。ソラは父と共に飛行機で日本にまで帰国していた。
「つ、疲れた・・・」
家に着いて早々に、ソラが溜め息を吐いた。ちなみに、彼はそう言うがファーストクラスで帰国しているので、本当はもっと疲れるはずなのだが。と、家に着いて早々に、ソラに電話が入ったと連絡が来た。
「旦那様からです」
「親父から?」
何故さっき言わなかったのだろうか、と訝しんだソラだが、とりあえずは電話を取る。
『ああ、ソラ。すまんが、伝え忘れていた。礼服はあるな?』
「あ? そりゃ、あるけどよ・・・」
『明日、三枝のご令嬢が結婚式を上げる。それにお前も出席しろ。お世話になったのだから、礼儀を通しておけ。俺も一応顔を見せる』
「ああ、三枝先生か。ちっ、まあ疲れてっけどしょうがねえか」
ソラとて、何度か勉強は見てもらっていたのだ。それ故にこの命令は断りようが無かった。
そうして、この連絡を最後に、父親は何も言わなくなる。別にソラも何か用があったわけではないので、それで電話は終わりだった。そうして、ソラもようやく眠りに就けるのだった。
翌日。久しぶりの登校日となると、教室は騒がしかった。まあ、久しぶりの登校日ということもあるが、何より亜依の結婚式も大きかった。
「ふぁー・・・」
「ふぁー・・・」
カイトとソラは揃ってあくびをする。
「お互い疲れてんな・・・」
「まあな・・・」
ソラの問い掛けに、カイトも頷いた。
「で、お前何読んでんだ?」
「おう・・・っと、そういやこれ、サンキュな」
カイトの質問に答える前に、ソラが借りていたゲームソフトを返す。カイトもそれを受け取って、鞄の中に突っ込んだ。
「で、何読んでんだ?」
「あん? 昨日渡された論文・・・」
「へぇ・・・論文ねえ。分かるのか?」
「・・・ははっ」
カイトの問い掛けに、ソラが乾いた笑いを返した。当たり前だが、論文の前書きの段階で理解出来ていなかった。まあ、それでも彼は煌士から渡された物なので、頑張って読んでいるのだが。
「なんで読んでんだよ・・・」
「これ書いたの俺の知り合いなんだよ・・・読んでくれ、って頼まれたんだ・・・」
「どうやらお前とは頭の出来が違うようだな」
「るせー! じゃあ、お前が読んでみやがれ!」
カイトの茶化しに、ソラが怒鳴ってカイトに論文の束を突きつける。
「っと・・・ん?」
「な? わかんねえだろ?」
突きつけられて、カイトも試しに論文を読み始める。そうして浮かんだ驚きの表情に、ソラが勝ち誇った顔で問い掛けた。
だが、カイトの驚きの意味はそうではなかった。直ぐに、カイトはそれを読み込んでいく。そして、最後まで読み終えて、カイトがソラに尋ねた。
「おい・・・お前これ、何処で手に入れた?」
「あ? だから言ったろ? 俺の知り合いが書いたって」
「お前の知り合いって・・・あの<<天道の麒麟児>>か! これ書いたの!」
「は?」
カイトのいきなりの大声に、周囲の注目が集まる。だが、いきなりの大声に驚いていたのはソラも一緒だった。彼は引きつった顔で頷いた。
「え、あ・・・多分、そいつ・・・天道 煌士」
「おまっ・・・これっ・・・重力場の発見と実用化に伴う超極秘の論文だ! どこの学会誌にも掲載されていない超貴重な論文だぞ! ここ数日世界中で大論争になってんだろ! 執筆者も流石に身の危険が伴うかもしれないから、って完全に極秘だぞ! お前、馬鹿か! こんなもんこんな所に持ってくんじゃねえよ!」
「何!?」
カイトの声に反応したのは、ティナだ。二人共様々な手立てを使ってこの論文を手に入れようとしていた者の一人だったのだが、手に入れられなかったのだ。それがこんなところに、となればカイトでさえ驚いて当然だった。
何故、隠されたのか。簡単だった。それは車や航空宇宙産業への平和利用だが利用方法にも言及がなされており、軍事転用も当然、可能だ。もしそれを潜在的な敵国に利用されるとあまりに危険過ぎて論文の詳細が掲載されていないのだ。
こんなものを書けるのだから、執筆者が伏されても、煌士の身を第一に誕生日パーティが計画されても当然だった。
「・・・ソラよ。これは今直ぐ実家に連絡して取りに来てもらえ」
「・・・え?」
「これは本来国が管理すべき論文じゃ。こんな所にあるのが分かれば、確実に大騒動になる。それと、これを書いたのがお主の知り合いである事は絶対に明かすな。最悪殺されるぞ」
ティナも読み終えると、真剣な顔で誰にも聞こえない様な小声でソラに告げる。いや、魔術を使ってさえ、他人に聞こえない様にした。
二人共、この技術の重要性を理解していた。軍事転用が出来れば、まず間違いなく軍事バランスが一変するのだ。
現に公開されていない国では声を大きくこの論文を公開しろ、と言っていて、これを受け取っているアメリカを主導とする国々はそれを絶対に拒否し続けている。なお、表向きはこれが確かかどうかわからない、ということで、だ。おそらく、スパイについても絶対の注意を払い、煌士も監視下に置いているだろう。どの国も、この重要性を把握していたのだった。
確かに、一般にまで普及するには数十年が必要だが、それでも、これは安易に取り扱って良い情報では無かったのである。
「・・・え?」
「だからお前はお空なんだよ・・・」
唖然となるソラに対して、カイトが呆れて溜め息を吐いた。流石にこればかりは何ら弁明が出来なかった。
「・・・もしかして、マジでやばい?」
「やばいどころか、ガチでやばい」
軽い言い方ではあるが、敢えて言い直している事でソラもそのヤバさを理解した。理解したら、即行動だ。彼は即座に父親に連絡を入れ始める。
「・・・いや! だからほんとにそんな事になってるなんて思ってなかったんだって!」
どうやら流石に星矢も驚いていたようだ。何度も確認が入ったらしく、何度もソラが同じ事を繰り返していた。
そうして、電話が終わって直ぐ。再び連絡が入った。どうやら相手はこの論文の執筆者の煌士らしく、ソラが苦笑していた。
「・・・いや、良いって。お互いにスマホも持ってるだろ? 今度からこんなまどろっこしい事しなくても、それで連絡取り合おうぜ。別にお前からの連絡を拒否るつもりは無いって」
そうして連絡を取り終えると同時に、教室の扉が開いた。入ってきたのは、雷蔵氏である。この一件を聞くと、大慌てで星矢が人をよこしたのだ。
「ぼっちゃん。お預かりに参りました」
「あ、頼んだ」
どうやらソラはもう持つのも嫌らしく、机の上に安置された状態だった。ちなみに、カイトとティナ以外は流石に誰も読もうとしなかった。要らない事に巻き込まれたくなかったのだ。
「では、最上様。クラスメイトの皆様。ご迷惑をお掛けしました」
「は、はぁ・・・」
実はかなり途中から最上も来ていたのだが、ソラがあまりに焦った表情で電話をしているわそれを注意しようとしたらカイトとティナがかなり真剣な表情で止めるし、と呆然と成り行きを見守るしか無かったのだ。
「皆様。どうかこの一件はお忘れになられますよう・・・ネットも、見張らさせて頂きますので」
敢えてにこやかに、嘘か真かわからない様に脅して、雷造氏は去っていった。そうして、登校日はほとんどこの一件で終わりを迎えるのだった。
その数時間後。カイトやティナ等亜依に関わりの深かった一部生徒達はスーツやドレス姿で天神市内の教会に隣接するホテルに来ていた。
「きれー・・・」
「うんー・・・」
「うむ・・・」
魅衣と由利、更にはティナまでがうっとりとした表情で、ウェディングドレス姿の亜依に見惚れている。魅衣は妹なので親族の席の方が良いか、と思われたのだが、亜依の手配で新婦の友人達の席に座らせてもらったのだ。
「・・・なんであいつは新郎の友人の席なんだ?」
「さぁ・・・」
思わず呟いたソラの疑問に、翔が首を傾げる。そう、ここで一つだけ誤算が生じた。カイトだけは竜馬によって招待されたのだ。それ故、一人離れた席だったのである。
とは言え、実は近場に席を置かれなかった理由はきちんとあった。表向きは手違いだが、実際には違っていた。
「天音 カイト殿だな?」
ガタイの良い、着物姿の高身長の初老の男性がカイトに声を掛けた。彼は亜依と魅衣の父だった。
「すまない。少しだけ、お時間を貰えないだろうか」
「・・・少しだけ、なら」
彼のあまりに真剣な表情を見て、カイトもそれに応じる。そうして案内されたのは、新郎新婦の家族達が結婚式の前に待機する待合室だった。彼は部屋に鍵を掛けて誰もいない事を確認すると、深々と頭を下げた。
「魅衣を二度、亜依を一度・・・感謝の言葉もない!」
「なっ!」
告げられた言葉に、カイトが目を見開いた。だが、その驚きの表情を見て、魅衣の父親が首を振った。
「安心して欲しい。竜馬も亜依も私には何も言っていない・・・いや、竜馬の正体は明かされたが、それ以外は何も言っていない」
流石に結婚を前にして正体を隠し続けるわけにもいかず、二人共竜馬の正体を告白したのだ。とは言え、実はこの決心には一つの理由があった。カイトがそれとなく、魅衣の父親が竜馬の正体を知っているであろう事を示唆したのだ。
「・・・やはり、竜馬の正体を知っていましたか」
「・・・そちらも、やはり私が『秘史神』の一員だと知っている様だ。貴殿が、今日本を騒がせている蒼い髪の男で相違ないな?」
「・・・ええ。どうしますか?伝えますか?」
それを聞いて、魅衣の父がゆっくりと溜め息を吐いた。そして、彼はゆっくりと、しかししっかりと、首を横に振った。
「・・・いえ、娘を三度も救われて、更には後顧の憂いまで断たれて、娘の婿の相談に乗られ・・・何ら打算もなくここまでされて、そのような不義理は出来ない。おい」
彼の呼び出しに応じて、数人の男達が現れる。彼らは全員跪いていた。
「この場に居るのが、貴方の正体を知る全員だ。この全員の貴方の記憶を、貴方の手で削除してほしい。それが無理なら、我々はたとえ裏切り者のそしりを浴びようと、墓場まで持って行く所存だ」
カイトはその申し出に、魔術を使って真偽を精査する。そうして出した答えは、真、だった。メモさえ残していない。抵抗をしていない状態ならば、密かに記憶を抜き取る事は容易かった。
いや、それ以前に抵抗されても力技で出来た。そこから見て、この場の全員以外は知らない事は確実だった。
「・・・わかりました。私としても、あの本当の姿は親兄弟にさえ隠している。正体の露呈はなんとしても避けたい。私の配下に無いならば特に、です。申し出をお受け致しましょう」
「ありがとう」
「私が出て行った時。魔術が発動し、あなた方の記憶から私に関する情報の中で、私の正体に関係する物は全て消えます。何故、ここに居たのかさえ思い出せなくなる」
「そんな事まで可能なのか・・・」
魅衣の父親が、カイトの告げた言葉に溜め息を漏らした。だが、カイトはそれに答えず、既に扉の前に立っていた。だが、出て行く直前。最後にカイトは口を開いた。
「ああ、そうだ。一応、言っておきます。助けた理由はただ単に友人だから、です。何か対価を求めたわけじゃないので、また助けても気にする必要は無いですよ。まあ、もう告げた所で意味の無い事ですけどね」
「・・・そうか。君の友人ともども、これからも娘をよろしく頼む」
その答えと同時に、扉が完全に閉じる。そうして、魅衣の父親は安堵を感じつつ、カイトの正体に関する全ての記憶を失うのだった。
「ふむ。律儀な御仁じゃな」
「まあ、此方としては助かった」
結婚式場に戻り、カイトは先の話しをティナに伝えていた。そうして得たのは苦笑だ。カイトの正体は、どの組織も是が非でも欲しい情報だ。なので別に伝えても可怪しくはなかったが、娘の命のお礼にその情報を差し出したのだ。
「っと、カイト。余はブーケ・トスに参加してくるぞ」
「はぁ・・・どうぞ、ご自由に」
そうして話していたのだが、ティナが唐突に立ち上がる。昨今はブーケ・トスに積極的で無い女性も多いのに、彼女は熱心な事だった。そうして去っていったティナを前に、カイトが溜め息を吐いた。
「はぁ・・・んなことせんでも別に結婚してやるって・・・」
ティナとてそれは知っている。そして確実に結婚してくれるということも知っている。まあ、結局は見たこともないイベントに参加したいだけだろう。
「あ、キャッチミスりやがった」
そうしてブーケ・トスを眺めていたカイトだが、参加した多くは女子中学生だった事もあって率先して取りに行っていた。その結果は、ティナは身長で押し負けて一度は触れたものの、滑って再び空中に飛び去るという結果だった。
そうして結局キャッチしたのは魅衣だった。率先してやっていなかったのに何故か飛んできて、とっさにキャッチしてしまった魅衣が困惑する。そんな困惑する表情が絵になったのか、会場の専属カメラマンがその様子を含めて、ブーケ・トスに参加した一同の表情を写真に収めていた。
「はぁ・・・楽しそうで何よりだ」
悔しそうな、楽しそうな表情を浮かべるティナを見て、カイトが呟いた。どうやら参加した全員楽しめたらしく、亜依によって半強制的に参加させられた由利も楽しげな笑みを浮かべていた。
「よ、カイト」
「ん?」
そんなカイトに、後ろから声が掛かる。それは、なんと鏡夜だった。
「お前も呼ばれてたのか」
「そりゃ、こっちのセリフや」
カイトの驚いた表情に、鏡夜が笑って答える。
「ちょっとした縁で、オレは竜馬さんの友人でな。お前こそ、わざわざどうしたんだよ」
「あ?俺もその関係で、三枝から呼ばれたんや。草壁家次期当主としてな。親父も一緒や」
鏡夜が顎で示す先には、涼夜が居た。彼はカイトが此方を見ている事に気づくと、笑って手を振ってくれた。そこには何ら疑念や疑いが無く、かつてのままだった。
「あの竜馬って男・・・実は俺の兄に当たるんや」
「嘘だな」
鏡夜の言葉に、カイトが即断で返した。確かに二人は良く見れば似ていたが、確かに違うと断言出来る物があった。それは、魔力の質の様な物だった。それに、鏡夜が苦笑して告げた。
「・・・親父にも誰にも言うとらん。親父もお前の事気に入っとる。こんな事伝えられん。どっちにしろ、信じられんやろうしな。あ、さっきの正解は従兄弟な。あっちは知らんけど」
カイトはその鏡夜の言葉に、驚く事は無かった。それに、鏡夜が少しだけ驚きを浮かべる。自分の知るカイトならば、そこまで推測が出来る男では無かったのだ。
「お前、変わったな・・・あっちのティナちゃん。初めて間近でおうたけど・・・ありゃ、魔女や。それも、昨日の朝方大阪の空でおうた、な。お前、マジで何があったんや? それに、お前のあの姿は一体何や?」
「いろいろ、あった・・・今思やぁ、あの時お前がおってくれたら、運命も変わったのかもな・・・」
「そりゃ、すまんのう」
カイトの口調は恨み節では無く、運命を受け入れている者の諦観の口調だった。それ故、鏡夜も茶化す様に答えた。
そうして、暫く二人はスピーチを聞いた後、再び鏡夜が口を開いた。
「お前・・・討伐隊が組まれとんぞ。それも、皇本家が主導した日本の総戦力で、や。草壁や御子神、皇だけやない。わかっとるだけでも立花や藤堂、島津やらがゴマンと来る。皇本家がなりふり構わず動いとる。まだまだ、増えよるで。こないだのクーデターの時とは比にならん戦力や」
「知ってる。ヨミ・・・月読尊から聞いた。朝方その件で天照大御神からも話をされた」
「お前・・・マジで何やったんや?」
今まで何処か遠くを見ながら話し合っていた二人だが、流石にこの情報には鏡夜も驚いて横のカイトを見る。だが、そこに浮かぶカイトの表情は苦笑だった。
「会いたきゃ今度の火曜日、神楽坂呉服店の総本店に来い。ウチの母さんと一緒に着物を買い付けたいんだとよ。あ、その場合偽名はヒメちゃんな」
「そ、そうか・・・」
その言葉を最後に、鏡夜も正面を向く。そこでは父親へ向けて手紙を読む亜依が居た。二人はそれを隠れ蓑に、小声で話し合う。
「お前、どうするつもりや」
「来るなら、叩き潰す。それに、この力は守る為に滅ぼす力だ。攻めてくるというのに、使わん道理は無い」
「逃げられんのか? いや、それ以前に勝てる思うんか?」
「昨日、女から自分を忘れないで、と頼まれたばっかりだ。そいつ捨てて逃げるのは、オレの主義じゃ無い」
「お前、いつの間に女誑しになっとんねん」
「知らね。あのバカ共の所為だ。それが伝染った」
鏡夜の問い掛けに、カイトが苦笑する。だが、おちゃらけた会話もここまでだった。
ついで、鏡夜は泣きそうな顔で告げる。それは、感動していると思われて、誰にも疑われない。
「・・・俺は草壁家次期当主にして、三童子の一人。今度の討伐戦にはこないだの秋夜と共に出る。それも、お前を討つ主力や。各家の主力となる腕利き達や名を継いだ奴らと一緒や。手加減は見抜かれる。手加減出来ん」
「ほう・・・まあ、安心しろ。オレの方は手加減してやるよ。この間のガキも涼夜さんもだが・・・流石に殺すと寝覚めが悪い」
「俺は・・・お前を殺さなあかん・・・殺せんねやろか・・・」
鏡夜の問い掛けを聞いたカイトは、苦笑するしかなかった。殺す相手に殺せるのかを聞いた所で答えが帰って来るはずは無いだろう。
まあ、とは言え。鏡夜としても聞きたくなるのは仕方がないだろう。なにせ、彼は本来的には、中学生だ。それが友人を殺せ、と言われれば、ここまで悩むのは無理が無い。
「なんで殺す奴に聞いてんだよ。まあ、オレの答えは決まってる。知恵が絞れないなら、力を振るえ。力が振るえないなら、知恵を絞れ。オレはこの三十年弱。その生きて来た時間の半分以上を戦いと政略に費やした。そこで得た、結論だ。先人の知恵は聞いとけ」
「・・・お前・・・まさか・・・」
30年。その言葉を聞いて、鏡夜がまさか、と言う可能性に気付く。この世には、この世界以外にも世界が存在している。それは彼らとしても、一度は聞いた事のある噂だった。そうして、その可能性に気付いた鏡夜に対して、スピーチが終わると直前に、カイトが不敵に笑い、告げる。
「それに、一個間違えてんぜ。幾ら雑兵集めたとこで、オレもあいつも殺せねえよ。力量、見誤ってんじゃねえ。最強・・・いや、化物なめんじゃねえよ」
そのアドバイスと同時に、亜依のスピーチが終わり、拍手が鳴り響いた。そうして、呆然となる鏡夜を残して不敵な、獰猛な笑みを浮かべたカイトが立ち去り、再び二人は離れ離れになるのだった。
そうして、二人が次に友人ではなくお互いの本来の立場で出会うのは、この半月後。先日と同じく、大阪の空で、であった。
お読み頂きありがとうございました。




