断章 第33話 ニアミス編 エピローグ・1 ――華やかさの裏で――
それは、カイトがようやく平穏を得られた頃の話だった。その頃、ソラはアメリカのハワイ島のとある港に居た。正確に言えば、とある港に停泊している豪華客船の中に、だが。
「ソラさん! お久しぶりです!」
「ああ?ああ、煌士か。久しぶり」
ソラに声を掛けたのは、彼の弟・空也と同年齢の少年だった。彼の名は天道 煌士。紛うこと無く桜の実弟であった。
「最近ご加減がよろしく無かったご様子ですが、よくなられた様子で僕としても嬉しく思います」
「あはは、いや、わりいな」
煌士の言葉に、ソラが苦笑する。これは事情を知らぬ者が見れば一ヶ月ほど前にソラが体調を崩した事を指しているが、身内には彼がグレていた事を指していた。
実はグレる前には弟と年が近い事もあり、ソラは煌士の面倒を良く見ていた為、懐いていたのだ。それが普通に気さくな兄の様な存在に戻っていたのをみて、声を掛けたのだ。
「そういえば、お前学校は良いのか?」
「あ、はい。幸い研究も一段落つき、なんとか時間も得られたので父と一緒に来たんですよ」
煌士はそう言うと、少し離れた場所に居る桜の父親を示した。実は煌士は大を付けて良いほどの天才で、若くしてアメリカに留学していたのだ。その才覚は桜や他の兄弟達を遥かに超えていて、学術的な意味では天道家始まって以来の大天才と言われていた。その才覚はソラの弟と同い年にしてアメリカの大学院へ留学出来るほどで、世界的に<<天道の麒麟児>>と呼ばれていた。
彼と出張中の彼の父親の為、豪華客船はアメリカを目的地としていたのである。出国するといろいろと手続きが忙しくなるし、煌士の体調にも関わる。それを配慮したのだった。
「あ、そうだ・・・少し待っていて貰えますか?」
「おう、良いぞ。俺に話しかける奴なんて滅多に居ないからな」
グレていた事が影響して、こんなパーティの場所でもソラに話しかける者は滅多に居なかった。居て、同じく愚痴に来た魅衣や教育実習生で来た亜依ぐらいだった。そうして10分足らずして、煌士が一束の紙の束を持って帰って来た。
「あの・・・これ、出来れば読んで貰えますか?」
「・・・なんだ、これ?」
「一応、次の学会で発表する予定の論文の英文訳と和文の写しです。読んで問題が無いか、見てもらいたいんです。一応もう学会には提出しているんですけど、読んで欲しくて」
「え、いや、俺、そこまで頭がよくないぞ?」
ソラがちらりと紙の束を見て、思わず頬を引き攣らせる。そこにはびっしりと文字が敷き詰められていたのだ。
「それでも、是非」
「・・・今直ぐじゃなくていいか?」
「はい!」
ソラの言葉に、煌士が喜んで返した。というより、実はそれが目的だったりする。学会での発表は実はこの数日前に終わっていて、ソラとなんとか今後も関わりを持てる様に考えた末の手段だったのだ。そこまで慕ってくれているのがソラもわかったからこそ、こんな複雑奇怪な論文を渡されても突っ返さなかったのである。
ちなみに、この論文が発表されて世界中が大騒動になっているのは、ソラはまだ知らない。そして、この論文の写しをなんとかして手に入れようとしている者がゴマンと居ることも。
そうして、ソラはこの後も空也や煌士に慕われつつ、この日の誕生日パーティを事もなく終わらせるのであった。
一方、煌士の姉・桜はというと、当たり前だが来賓の応対にあたっていたのだが、丁度その話し相手が瑞樹だった事もあって二人は煌士に絡まれるソラの姿を見て談笑していた。
「ふふ、煌士さんは相変わらずですわね」
「煌士はソラさんを慕っている様子ですから」
「最有力の分家の長男なのに、話したことは無いんですの?」
「いろいろあって・・・」
瑞樹の問い掛けに、桜が苦笑する。ソラの噂は、桜にまで届いていた。それ故に両家の話し合いでほとんど話した事は無かったのだ。と、そんな桜に対して、使用人の一人が声を掛けた。
「桜様。少々宜しいですか?」
「はい・・・どうしました?」
桜が使用人の表情を見て、小首を傾げる。彼女の顔には困惑が浮かんでいたのだ。
「いえ、あの・・・旦那様が此方を、と・・・」
「はぁ・・・」
「そちらも大変ですわね」
桜の溜め息を見て、瑞樹も苦笑する。提出されたのは、白地の冊子だった。それは桜には馴染みが深い物で、彼女にこういう男が居るけどどうか、と問いかける時に出される所謂見合い写真の様な物だった。
「まあ、瑞樹ちゃんよりはマシなので、いいんですけど・・・」
「あはは、そう言われると、痛いですわね・・・」
二人は苦笑を浮かべ合う。お互いに大企業の令嬢にして、名家の令嬢だ。頭の痛い関係は絶えなかった。
「誰からですか?」
「あの・・・天城 星矢様です」
「天城のおじ様が?」
珍しい事もあるものだ、桜も瑞樹もそう思う。星矢は滅多にこういった事を推挙する事は無い。無いが故に今まで誰にも、一度もお見合い相手を推挙したことは無いのだ。
「私も見てよろしいんですの?」
「まあ、所詮写真ですし・・・」
受け取った桜が頷いた。そもそも決めるのは桜なので、使用人達も何も言わない。
「・・・え?」
「・・・あら?」
中身を見て、二人が怪訝な顔になる。そうして開いた写真と概略は、普通の少年だった。年齢は桜と同年齢。まずそこに、桜はほっとした。一回りどころか二回りも上の写真を持ってこられる事も時々あるのだ。幾ら当人の才覚が優れているから、と言っても、桜としてもそんな縁談はごめんだった。
「あの・・・これ、本当にお父様も見られたんですか?」
「ええ。それで、大旦那様には言うな、と言われてそのまま・・・」
「どういうことでしょう・・・」
桜は横の瑞樹を見るが、当然彼女に分かるはずも無い。当たり前だ。なにせ彼女は神宮寺家の令嬢だ。分かるはずが無かった。
「どう見ても普通・・・ですわね。顔は悪く無いですが・・・」
「成績にしても、この数ヶ月以外は良いどころか悪い、ですし・・・至って普通、ですよね・・・運動神経は上の下程度・・・」
二人は冊子をつぶさに観察していくが、何か取り立てて特徴があるわけではなかった。そう、これこそが、使用人達にも混乱をもたらした物だったのである。
この冊子が桜の父にもたらされた時にそれをのぞき見ていた周囲の面々のしかめっ面から使用人達が訝しみを浮かべた所、桜の父が笑って中身を見せてくれたのだ。
「聞いてみますか?」
「それは桜さんがお決めになられる事ですわ」
同じく訝しみの表情を浮かべていた瑞樹に、桜が問い掛けた。だが、瑞樹は苦笑して当然の返答を返した。そうして、二人は桜の父の下へと移動するのであった。
一方、桜と瑞樹が訝しみの表情を浮かべていた頃。桜の父は星矢と共に二人で盃を交わしていた。桜の父は少し荒っぽい雰囲気を持つ美丈夫だった。
彼は自宅では着流しの着物姿なのだが、流石にこんな場なので今日は着崩したスーツ姿だった。どうやっても衣服をきちんと着るつもりは無いらしい。彼がきちんとした服装になるのは、年に数回の株主総会等の正式な場だけだった。
「二人で飲もう、なぞどういう風の吹き回しだ?」
「あぁ? たまにゃ良いだろ。さっきからおべっか使い共がうるせえんだよ」
「マスコミが見れば五月蝿いぞ」
「ウチが持ってる客船にまで突撃出来る奴がいりゃ、逆に俺が欲しい。というか、その会社に掛け合ってヘッドハントする」
この客船は天道財閥が所有する個人所有の客船だった。その最奥のパーティ会場にまで突撃出来る胆力ともなれば、何処ででもやっていけるだろう。
それ故に、企業人である桜の父は笑ってそう告げた。そんな二人に対して、桜と瑞樹がやってきた。
「お父様。少々聞きたい事があるのですが・・・あ、天城のおじ様もご一緒でしたか」
「おう、桜か。それに、瑞樹ちゃんも一緒だな。なんだ?」
「あの・・・天城のおじ様。この冊子は一体・・・」
桜は持って来た白地の冊子を二人に提示する。それは先程のお見合い写真だった。
「ああ、カイトくんか」
「・・・珍しいな」
そうして見た星矢の笑みに、桜の父がおもわず目を見開いた。幼なじみである彼でさえ滅多に見ない笑みだったのだ。
「お前にそこまでの顔をさせるか・・・是非、欲しいな」
「え、いや、あの・・・お父様?」
「ん?ああ、わり。別に桜の婿に、とかじゃない」
娘の懸念に、桜の父が慌てて訂正する。
「ま、たまにゃこんな男も面白いか、と思って通したんだが・・・どうやら当たりらしいな」
「き、気まぐれですの?」
「あはは。何時も真面目くさってたら面白くねえだろ?」
瑞樹の呆れた表情に、桜の父が笑って告げる。だが、これは二人共不思議に思わなかった。こういう風に子供っぽい事を時々やるのが、桜の父だった。
「ま、そんなのだから親父に見せたらやばいと思って言うな、っつったんだよ」
「は、はぁ・・・」
そう言われれば、納得出来た。桜の祖父は桜を溺愛している。目に入れても痛くないと言うのが本当とさえ思えるほどだ。それ故、こんな平々凡々と思える相手を出せば、吊り合わないと激怒されかねなかったのだ。そうして、二人は桜の父の説明に納得して、再び去って行く。
そして悪戯として処理されたカイトの写真は、その翌日には綺麗サッパリ忘れられ、数年後にカイトの横で思い出されるまで、二人の記憶の奥底で眠るのだった。
だが、この時。二人共忘れていた。この写真は、桜の父が推挙したのではなく、星矢が推挙した、ということを。
「まだまだ、頭が足りねえな」
「すまん、覇王」
「覇王だっつってんだろ。うを抜くな、う、を」
桜の父・覇王が星矢の言葉に不満気に告げる。どうやら妙なこだわりがあるらしい。ちなみに、正式には天道 覇王が正解だ。なので星矢が正しい。
「もうちっと、あの写真を持って来たのが俺じゃないということに目をやってりゃな」
「見てくれたか?」
「ああ・・・独学で魔術を使いこなせる腕前。そして、お前を唸らせるレベルの判断力。天道財閥としてもだが・・・『秘史神』の長として、欲しい。元々天音家のカイトつやぁ祖先帰りか、と噂されるほどの魔力の保有量だ。元々才能は発露していなかったし、弟の事があって誰も気にも留めなかったが・・・それ故の盲点だったな。他の誰かが気付く前に『秘史神』の中でも天道寄りのお前が気づいてくれたのはまさに僥倖だ。神宮寺やらに切り崩される前に隠蔽に移れる」
これは実は数年後のカイトさえも知らない事なのだが、実はカイトのことはそれなりに有名だった。実家がそもそもで末端も末端であったので、彩斗や綾音さえ、いや、綾音の両親さえ、カイトだけでなく浬や海瑠が魔力関連について調査されていたとは知らないのだった。
「ここ数年で大化けしたか」
「だろう。俺の息子も世話になったようだ。話しぶりも悪くはない、外面のな。内面は・・・お前に似ていた」
「ほう・・・」
星矢の口ぶりに、覇王が笑みを浮かべる。彼はその名の通り、まさしく覇王だ。それ故、同類は少ない。そうであればこそ、自身の能力の稀有さについてよく理解していた。
だから、だった。桜の祖父に告げない様に言ったのは。彼ら二人が認めたのだ。それを桜の祖父に告げれば、確実に桜の祖父がカイトを見定めるべく行動に乗り出す。逆にそうなれば、多くの者がカイトの調略に乗り出すだろう。
父・彩斗の力量もあって天音家を引き上げたいと思っていた覇王にとって、それは望まぬ所だった。
「紫陽と楽園が動いている以上、俺達も動かざるを得ない・・・尚の事、欲しいな。十数年先・・・いや、次次世代を考えれば、天音家を引き上げておくのも悪い話じゃない。ウチは奴らに比べて、殆どの奴が寿命が短い。世代交代は考えないと行けないからな。俺の子供とそいつとなら、おそらく強い子が生まれるだろう。財閥は春真に、その補佐を夏樹と桜にしてもらいたかったが・・・補佐を夏樹と煌士まかせて、長をそいつに率いさせるのは悪い話じゃないな」
娘を道具として見ていた親とは思えぬセリフだが、星矢は何も言わない。それが必要であると認めているからだ。
「統合するとみるか?」
「聞いているだろう」
「本題はそれか」
二人だけで話がしたい、そう申し出た時点で、星矢は何か裏があると見ていた。そして、それは正解だった。二人は、少しだけ気配を剣呑な物に変える。
「春真」
覇王はそう言って、自らの長男を呼び出した。彼は覇王と異なって、かなり落ち着いた雰囲気の青年だった。年の頃は大学生程度か。父に似て、彼もまた美男子であった。
「父さん。何でしょうか?」
「続報は来ているな。話せ」
「はい。楽園でクーデターが勃発。天城大臣、ここまでは良いですか?」
「ああ」
春真の言葉に、星矢が頷く。それを受けて、春真が続けた。
「京都の『秘史神』に所属する一家からの続報です。クーデターは失敗。首謀者とされた狗神は東の空に消えていったのが目撃されています。が、その際に眉間に金色の剣が突き刺さっていた事も目撃されており、最後にはそれが光り輝いて消滅していますので、確実に討ち死にした物かと」
「そうか。他には?」
「どうやら京都の陰陽師達が出たのは、このクーデターに草陰家が加わっていたから、だそうです。が、当該の草陰家もクーデターにて全滅」
「あの草陰家が、全滅?」
「蠱毒の一種を使ったらしいです。最後は京都の陰陽師たちが使った術式によって、蠱毒で生み出された化物も討ち滅ぼされた、と。話を統合すると、おそらく蠱毒のくびきとして使われたのが、件の狗神かと」
「成る程・・・」
「おそらく、自らを贄として使ったんだろうな」
理解した星矢に対して、覇王が推測を述べる。流石に『最後の楽園』の内部で怒っている事までは彼らも情報を入手出来ないのだった。それに、春真も同意する。
「おそらくは。およそ30の遺骨を入れる箱が楽園より運びだされ、草壁家に納入されているのが目撃されています。何らかの取引で彼らの遺体を荼毘に付して、草壁家が引き取る事で合意に得られたのかと」
カイトが襲撃者である草陰家の面々を荼毘に付した理由は簡単だった。まず第一に涼夜との縁もあったのだが、それ以上に彼らの遺体が見れぬほどに損傷していたのだ。それは、狗神によって施された傷だけでなく、呪術の代償も大きかった。そのまま返すのは偲びなく、カイトが荼毘に付して草壁家に送ったのである。
「春真、本題を話せ」
「はい・・・これは、京都の陰陽師達からの通達です。8月の最終週。京都は『最後の楽園』へと総攻撃を実施する、と。儀式と合わせた様です」
「何?」
流石に、この情報には星矢も耳を疑った。通達なのだ。既に決定された事だった。
「これはその時に通達された話ですが・・・『最後の楽園』の千年姫と人魚姫、『紫陽の里』の蘇芳を両脇に従えた男が代表として彼らと交渉に当たった、と」
「統一した、と見たか」
「だろう」
星矢と覇王が推測する。カイトは一つ、読み違えていた。統合が匂えば警戒するか、と思っていたが、彼ら陰陽師にとっては、統一の可能性さえも潰しておかなければならなかったのだ。
この読み違えは流石に仕方がなかった。カイトも流石に日本がそこまで注目されているとは思っていなかったのだ。それ故に此方の戦力を大きく見せるという交渉の常道で挑んだのが、仇となった。
「その男が討たれれば良し・・・」
「討たれねば・・・世界を巻き込んだ大騒動になる」
「無理を通して乗り込んできた奴はその偵察か」
星矢が、新たにパーティに入ってきた金髪の外国人を横目でちらりと見る。服装は聖職者のそれだった。そんな視線に気づいたのか、彼が横に居た連れ合いに頼んで、此方に近づいてきた。
「お久しぶりです、星矢さん、覇王さん」
「アレクセイ、久しぶりだ。そちらの男は?」
「ああ、申し遅れました。彼はイギリスの私の知り合いで、ヨハン・ベネディクト・ジョーンズ。この間のエリナの誕生日にも来てくださったのですが、その時にお会いしませんでしたか?」
アレクセイはイギリス人なので、金色の髪に青い目をしていた。とはいえ、実は彼の家と日本は関わりあいが深く、更に彼の妻は日本人、というより神宮寺当主――瑞樹の父――の妹だった。なので日本語が堪能なのである。ちなみに、エリナとは彼の娘の名前で、どどのつまり瑞樹の従姉妹の名前であった。
「ああ、そういえば会った事があったな。まあ、挨拶は交わさなかったが・・・」
「ええ。はじめまして、天道の当主と日本の大臣にお会いできて光栄です。」
紹介に会い、ヨハンが腰を折って挨拶する。どうやら彼も日本語は堪能らしい。
「これは日本語が堪能なご様子で。まあ、あまり腹芸が好きじゃないんで、さっさと本題に入ろうか。英国はどう出るつもりだ?」
「あはは、本当に腹芸が無い。英語でも?」
どうやら覇王の性格は向こうも知る所だったのだろう。彼は笑って頷いて、覇王も英語で返した。
『ああ、いいだろう』
『英国は今のところ、様子見です。が、場合によっては人員を派遣せざるを得ない、と教皇猊下が。表のではなく、女教皇様が、です』
『あの生真面目な女教皇が、か・・・アレクセイ。お前も来るのか?』
『ええ、丁度エリナの日本公演もありますので・・・その下見も兼ねて』
まだ、この会話はジャブの打ち合いだ。なので、次が本題だった。
『ヴァチカンはどうなっている?』
『他国なので、詳細はお答えできかねます。が、少なくとも、我々よりはかなり殺気立っていると。噂では、かの堕天使・・・いえ、かの熾天使が蘇ったのでは、と大慌てになっている様子です』
覇王の問い掛けに、ヨハンが首を振った。ちなみに、一神教といっても様々な会派や流派があり、イギリスの国教は欧州で主流のキリスト教でもイギリス国教だ。ここは歴史的な背景からいまいちヴァチカンと仲が良くなく、お国柄もあってどちらかと言えば日本に似た状況だった。
『ちっ・・・有名なのに男か女か、どんな容姿なのかもわからない、ってのは厄介だな。おかげでウチに現れたあの蒼い男がそうでない、と否定出来ん。奴らの狙いはそれなのかもしれんが・・・』
ヨハンの言葉を聞いて、覇王が忌々しげに舌打ちする。そうして告げられた言葉に、ヨハンも少しだけ顔を顰めて頷いた。
『ええ・・・っと、これ以上はいいですね。そちらに倣って、此方も腹芸抜きに行きます。そちらも、少しは情報を開陳していただきましょうか。蒼い髪の男について、続報は?』
『・・・昨夜目撃されたのは大阪だ。今日の朝の日本のニュースを見てみると良い。虹色の光に行き当たるはずだ。だが、楽園が本拠地かはわからない。調べるなら、好きにしろ。京都が楽園とおっぱじめるとの情報もある。止める権限は無いが、気を付けろよ。』
『ご心配、有難う御座います。アレク、行きましょう。』
『はい。では、これにて。』
それを最後に、ヨハンとアレクセイが腰を折って挨拶して、その場を後にする。ヨハンこそが、ヨミの言う諜報員だった。そうして、カイトが動き始めたのに呼応する様に、ゆっくりとだが、世界も動き始めたのだった。
お読み頂きありがとうございました。




