断章 第19話 遭遇編 帰郷の実感
カイトとティナが高天原に挨拶してから数時間後。まだ明るいうちにカイトとティナは彩斗の実家に帰って来て居た。そうして何をしているのかというと、先ほど買ったゲームだった。幸いにして前作のデータが使えるという事なので、カイトはそれをコンバートしてプレイしている。
『ちょ!こいつマジやばい!一撃で体力の半分ちょい持ってかれた!』
『おい、カイト!さっさと復帰してこい!お前が居ないと始まらねえ!』
「いや、お前ら全部オレに任せるつもりだろ!」
楽しげな声が部屋の中に響く。カイトとティナは顔を付きあわせてプレイしているのだが、ティナは初プレイという事で周囲だけ異空間化させてソロで肩慣らし――プレイ時間を稼ぐ為に相変わらず魔術で時間を狂わせた状態で――をしていて、カイトは小学校時代の面々とネットで通信プレイだった。
『ソロプレイヤー・カイトの名が衰えとらん所を見せてくれ!』
『鏡夜!お前安置待機してないでバフぐらい掛けたれや!』
『あぁ!?こっち紙防御なんや!文句言うなや!ソロプレイでもジャイアント・キリングやりおるカイトと一緒にすんな!体力少しでも減った状態であいつの一撃貰えば即死やぞ!』
『カイト、時間掛かってもいいから討伐任せた!』
「ちょ、おい!」
ボスクラスの相手に単騎決戦を挑まされたカイトは必死で――魔術による認識補佐でワンフレームを見きってまで――単騎で立ち回る。とは言え、勝てないはずは無かった。
というのも、小学校時代の友人達が言うように、カイトはソロプレイでも大抵の敵を討伐出来る腕前を持っていたのだった。で、付いた渾名が『ソロプレイヤー・カイト』だったのである。それが更に魔術でワンフレームまで見切れば勝てない道理は無かった。
「おらぁ!一匹目!もう一体は全員で一気に潰すぞ!」
そうして十数分後。カイトはついに単騎で敵の一体を討伐しきる。そうして掛かった号令に、今までリスポーンの安全地帯で待機していた全員が一気に戦場に踊りでた。
『おっしゃ!さすがカイト!』
『二匹目は全員総掛かりでやりゃ勝てるやろ!』
『イケイケ!罠ありったけ仕掛けろ!鏡夜!場所把握!』
『おうよ!バフ行くで!』
「って、オレ居ねえよ!」
安全地帯から出た所直ぐでバフを掛けた一同に、カイトがつっこみを入れる。そうして、残る一匹は総掛かりになったことですぐさま討伐が終わるのだった。
『おつかれー。』
「おーう・・・久々に手に汗握った。」
『いやー、激闘やったな。カイトが。』
『なー。つーかもう少し人誘うか。今作で新規実装された大人数プレイやってみたいし。カイト、こっちの中学の奴呼んでええか?』
「おう。」
『じゃ、ちょっと待っといて。陵司の奴にもう一回電話掛けるわ。あいつどうせ昼夜逆転しとんやろ・・・』
そうして一人が色々と電話をかけ始める。待ち時間を利用して、別の友人の一人が鏡夜に問い掛けた。
『そういや鏡夜。お前最近家の手伝い忙しいんか?何や時折学校休んどるけど・・・』
『んー・・・まあ、最近ちょいちょい忙しゅうてな。親父の親戚がちょいなんややっちまったらしくて、親父に頼まれて仕事手伝わなあかん。』
鏡夜の声には、少しの申し訳無さが滲んでいた。どうやらその関係で少し付き合いが悪くなっているのだろう。
『まあ、お盆には忙しく無くなるはずや。』
「大変だな、実家がでかいと。」
『あはは。数年前に諦めついたわ。』
カイトの言葉に、鏡夜が苦笑する。そうして待つ間にティナの方が慣らし運転が終わったらしく、時間が狂った異空間から出て来た。
「カイト、こっちも行けるが、構わんか?」
「あ、ちょっと待ってろ。おーい、留学生の外人美少女が参加希望。」
『今直ぐ入れろ!』
カイトの外人美少女の一言はすごく効いたらしい。電話で他の面子にあたっていたはずの友人まで即座に返した。
「えっと、こんな場は初めてじゃから、何か不手際があるやも知れん。スマヌがそこの所はよろしく頼む。」
『・・・うん。』
カイトの一応の言葉に、威勢よく返したはずの友人の一人が少し照れた様子で頷いた。というのも、最近のパソコンには全てカメラが付いている。久しぶりの再会なのでボイスチャットだけでなく顔を見せ合ってのプレイだったのだが、流石にティナの美少女っぷりに全員気圧されるしか無かったのである。
『っと、結局今んとこ捕まったの紫苑だけやったわ。繋げるけど、覚えとるか?』
「ああ、高峰 紫苑な。覚えてるよ。」
『うお、俺んこと忘れとったのに酷い奴。』
『しゃーない。お前の名前日ノ本 太郎やねんから。』
『何処の見本例や!樋本 大智!つーかそれやと逆に忘れんわ!』
友人の茶化しに大智が怒鳴る。ちなみに、この友人の名前は愛須 陽色である。此方は変わった名前なので忘れにくかった。
『あ、カイト。ほんとに帰って来てるん?』
そうして暫く待っていると、一人のポニーテールの少女が画面に映り込む。
「まあな。つーか男に混じってって、お前も相変わらずだな。」
『うっさいわ・・・まあ、夏休みやしね。偶には皆で集まって今度ご飯でも行こ。』
『お、ええな。そこの美人さんも誘お。』
「いや、流石に余は遠慮しておくよ。たまさかの再会じゃ。次回にでも頼む。」
ティナが苦笑しながら陽色の言葉に辞退を示す。流石に彼女とて数年ぶりの逢瀬を邪魔するつもりは無かった。だが、そんなティナの言葉に紫苑が笑って告げる。
『えー、気にせんでええよ。』
「まあ、初回ばかりは積もる話もあろう。流石に留学生の余が行けば余の話になりかねんしのう。」
『っと、他に当たったけど今直ぐはちょい少ないな。ちょい8人用の上級行きたいんやけど、カイト。お前向こうの知り合いとかおらんか?』
「んー・・・ちょっと」
カイトがちょっと待て、と言おうとした所で、スマホの着信音が鳴る。ディスプレイに表示されたのはなんとヨミの名前だった。流石に出ないのは拙いかと思い、カイトは断りを入れて電話に出る。
『カイト、数時間ぶりです。』
「おう。久しい・・・トラブルか?」
『いえ、ご友人共々お困りの様子なので。』
「どっから見てやがる!」
ヨミの言葉に、カイトが周囲を見渡す。だが、何処からも魔術の痕跡は感じられなかった。
『ふふふ、八咫鏡を舐めてはいけませんね。』
『ごめんなさい!ごめんなさい!』
ヨミの言葉に続いて、ヒメの言葉が割り込んできた。八咫鏡とは確か彼女を祀る伊勢神宮のご神体のはずなので、どうやら彼女が実行犯の様子だった。と言うか安置されているのでは無いのだろうか、と思うカイトだが、今はそんな事どうでも良かった。
「いや、良いんだが・・・で、困っているって何が?」
『あの・・・私達もプレイしてます。』
「やってんの!」
ヒメの言葉にカイトが驚愕に目を見開く。どうやら日本の八百万の神々はかなり人間の娯楽文化に染まっているらしかった。
『だめ・・・ですか?一応顔出し大丈夫です。』
「え、いや人見知りは?」
『訓練です。』
「スパルタで・・・まあ、いいけどよ・・・おい、とりあえず美人さん二人追加おけ?顔出しおけとかいう話。」
明らかにうるうると上目遣いのヒメの情景が目に浮かび、カイトが流石に拒絶を示せなかった。ちなみに、これがわかっているが故にヨミはヒメに会話をさせているのだった。
『・・・お前、どんな知り合いや・・・』
『美人かどうかは見て決める。さっさと入れろ。』
「とりあえず了承出た。携帯は一回切断して、チャットでサーバーのパスとアドレス送る。」
カイトは了承を受けて電話を切断して、二人にアドレスを送る。そうして新たにティナ、紫苑、天照大御神、月読尊という異色の面子を迎え入れて、再びプレイ開始するのだった。
それから数日後。鏡夜の方も予定が空いたということで、小学校時代の面々――当然だが先の4人以外も居る――が急場で集まってぷち同窓会が開かれていた。場所は地元ではなく、昼食を食べてその後は二次会で遊ぼう、という事になった為、場所は難波だった。
「いや、ほんとに来りゃ良かったのにな。」
「遠慮しとったからなー。」
「そんな美人やったら見たかったわ。」
中には私学に進んだ面子等もおり本当に数年ぶりであったり、カイトが転校後に転校してきた者がいたが、それも含めての同窓会だった。
「あはは、ありゃ気圧されるって。お前絶対赤面してなんも言えんわ。その後の二人もえらい美人でな。お前何処でおうとんや。」
「あっちはほんとに色々あったんだよ。」
流石に中学生なので、お酒は飲んでいない。だが、やはり集まれば会話も食事も弾む。そうして楽しげに会話をしていたのだが、ふと着信音が鳴る。どうやら鏡夜だったらしく、彼は立ち上がって電話に出る為にその場を後にする。
「ああ?また草陰のおっさんか?」
『ああ。一応今も秋夜くんからは何も言ってきていないが、やはり気に掛かる。』
「あいつが見きれん以上は俺にも無理や。幾ら皇花も合わせて三童子やなんや言われてもほぼ同格ってだけや。で、俺の得手はあいつみたいに多数の使い魔操る事やない。皇花の守りもある今の状況ででかいの出せるわけないやろ。」
鏡夜の従兄弟とは、実は秋夜だ。実は彼は秋夜と同じく陰陽師で、草壁家の次期当主だったのである。
『いや、それは知っている。流石に俺もそこを押す気は無い。だから簡単なので良い。ばれない事をメインに送ってくれ。』
「なんやそんな事か。そんなもん家で言えや。こっちは楽しく同窓会しとんのに、水さすな。」
『時間が無い。皇花殿も忙しく動かれていてな。俺も電話出来る時間が無い。悪いとは思ったが、仕方がなくてな。』
息子の苦言に、父も少しは申し訳ないと思っていたらしい。彼は形だけでもきちんと謝罪する。だが、そんな彼に対して鏡夜は溜め息を零した。
「ほんまやる気かいな。」
『ウチも本家もそのつもりだ。まあ、仕方がない。それがしきたりだ。』
「はぁ・・・しきたりやなんやしらんけど、死に損ないのジジババ共でええやろ。」
『鏡夜。』
息子の言葉はどうやら父親には承服出来ない物だったらしく、少し咎める様な声音が含まれていた。とは言え、これは何度か繰り返されたやりとりなので、鏡夜の方は直ぐに呆れた顔で続く言葉が告げられる前に自分から告げる。
「はいはい。わーっとります。んじゃ、切るで。流石にこれ以上は飯が不味なる。」
『ああ、すまん。』
少し強引ではあったが、元々此方が割り込んでいるとわかっていたらしく鏡夜の父の方も説教は取り下げた。そうして鏡夜が戻ろうとした所で、偶然トイレに行っていたらしいカイトに出会った。
「また実家の手伝いか?」
「ああ、えらい忙しいんや・・・はぁ、あの馬鹿は固いやっちゃ。」
どうやら芳しく無い連絡だったらしい、事情もわからないカイトにも鏡夜の溜め息からそれは理解出来た。
「あー、悩みあるんなら聞くぞ?お前のおかげでこの場が開かれたわけだしな。お礼としちゃ十分だろ。」
「あ?あー、まあ、なんや・・・喩え話やけど、ちょっと馬鹿な女がおってな?自殺しようとしとんねんけど、色々あって止められん。女は生真面目な堅物で、それが正しい思うとる。周りもな。お前ならそんな場合どうする?」
鏡夜が何を思って言ったのかはわからない。喩え話にしてはかなり感情が滲んでいたのだが、とりあえずはカイトも問い掛けたのは自分である以上その答えを考える。
「あー・・・まあ、オレに力があれば強引に止める。それが正しいかどうかはやって考える。馬鹿の考え休むに似たり、って言うからな。知恵があれば、それが本当に正しいかどうかを考えてから行動する。誰も犠牲にならないのが一番だが、次点は犠牲が少ない方だからな。まあ、でもそんな問題が来んのは政治家ぐらいだろ。」
「・・・お前、変わったわ。」
カイトの答えは勇者としての物と、公爵としての物だった。それ故、その答えを出したカイトに鏡夜は変化を実感して少し驚きを露わにする。
「まあ、そういう難しい問題がきとんねんな。今のウチ。で、そこに親戚のおっさんがなんやいらん事してそうや、って噂が出て来とってな・・・で、俺も動けって話なんや。」
「大変だな。」
鏡夜の言葉に、カイトが苦笑する。公爵としての政治を行っていたカイトにも覚えがある話であったので、そこには単なる同情心では無く、実感の篭った同情心が滲んでいた。
「つーか、お前。主賓がここおったらアカンやろ。」
「主催がこんなとこおってええんか。」
「・・・戻ろか。」
「ああ。」
そうして、二人は連れ立って再び宴もたけなわな同窓会の会場へと戻るのだった。
お読み頂きありがとうございました。
2018年7月30日 追記
・誤字修正
『次期』が『時期』となっていたので修正しました。




