断章 第19話 集結編 狂走の果て
「おらよ。」
「きゃぁ!ちょっと!もうちょっと優しく下ろしてよ!」
どさり、という音と共に、魅衣は地面に乱暴に投げ捨てられた。先ほどまでは荒縄で縛られていたのだが、今度は結束バンドで腕を縛られていた。
「んぁ?なんだ?クイーン?」
「質だ。てぇ出すんじゃねえぞ。」
三島は乱雑に周囲の男達に告げる。ここは、魅衣が入り浸る地下闘技場の強者達が屯するエリアだ。クイーンとは魅衣の闘技場での渾名だ。そう、魅衣は三島の襲撃にあって、彼に連れ去られていたのである。そうして、縛られ、抵抗できなくなった魅衣を見て、闘技場の男達が下品な笑い声を上げる。
「ぎゃはは!クイーンも狂犬にかかりゃ、単なるメスガキか!こりゃいい!おい、やっちまおーぜ!」
「だから、てぇ出すんじゃねぇつってんだろうが!」
乱雑に魅衣に手を伸ばそうとした男達に対して、三島が怒号を飛ばす。魅衣は人質である以上、手を出されては困るのだ。そうして、ビリビリ、という轟音と共に、周囲が静まり返る。
この地下闘技場の無差別級のチャンプは、とどのつまりこの闘技場の全ての頂点に立つ者だ。その怒号の力は絶大で、誰もが魅衣に手を出すのを諦める。ビビリ、すくみあがった男達はそれで、すごすごと自席に近い自分のエリアに戻っていった。
「・・・人質、って誰に対してよ。」
「あの男だ。ようやくだ・・・ようやく見つけたぜ・・・」
「は?誰よ?竜馬?」
「あ?そんな名前なのか?」
獰猛に牙を剥いた三島に、一向に状況が掴めない魅衣が問い掛ける。だが、当たり前だが彼はカイトに対して情報調査なんぞ一切行っていない為、名前さえ把握していなかった。会えばわかるだろうという動物的勘に従い、ただただ関東中の地下闘技場を荒らしまわっただけなのであった。そうして、三島が牙を剥いて、魅衣に告げる。
「まあ、そんなことは良いか。お前を助けに来た、ってことは、お前はアイツの関係者なんだろ?あの男に、俺は用があるんだよ。この間の襲撃の借りは返させてもらうぜ。」
「え?それもしかして・・・天音?アイツなら私を助けには来ないと思うけど・・・」
「あぁ?違うんなら、てめえに用はねえよ。」
魅衣の言葉に三島が忌々しげに魅衣を見て、忌々しげに吐き捨てた。折角呼び寄せる手札だったのに、無駄骨を踏まされた、と苛立っていたのである。そうして、忌々しげに吐き捨てた三島に、周囲の男達が沸き立った。
「おい、じゃあ、やっちまっても良いよな!」
「好きにしろ。俺はまた出かける。」
「つっ!こら!やめてってば!」
そうして、三島が立ち上がり、魅衣の服が乱暴に脱がされ始めた時、誰もの予想に反して、轟音が鳴り響いたのである。
「三島だ。」
そう竜馬とカイトに告げたのは、御子柴であった。彼は魔力がわかる者ならばどこにいてもわかるであろう2つの魔力の奔流を感じると、密かに此方に来ていたのだ。それ故、三島の凶行も目撃していたのである。
「やっと会えたな。天音 カイト・・・で、間違いないな?」
「正解だ。」
御子柴の顔は以前会った時よりも険が取れ、まだ雰囲気に荒々しさはあったが、同時に穏やかさがあった。カイトはそれ故、報復を気にせず、自身の正体を認めたのであった。
「ふむ?三島・・・以前会った男じゃな。」
「ん?お前は・・・確か留学生のユスティーナ・ミストルティンか。」
「ほう、余の事についても把握しておるか。感心感心。」
「天音のことは粗方調べさせて貰った。ある時、いきなり変貌した事も掴んでいる。」
ティナの感心した様な頷きに、御子柴が告げる。二人はそれに総じて見事、と評価を下した。
ちなみに、ティナはカイトの勝利を確信していたし、三島の存在を知らなかったので、騒動になる前に先に帰宅したのだ。だが、折角助けた魅衣が拐われたのを知り、再び戻ってきたのである。
「で?今からやんのか?」
「いや、まだだ。」
出会ったのなら戦うつもりか、と思ったカイトだが、御子柴は迷いなく首を横に振って否定した。
「まだ、早い。今お前に挑んだ所で、勝ち目は無い。やるからには、絶対に勝たせてもらう。今日は別件だ。」
「ほう。で?」
「三島を止めてくれ。アイツはあんなでも俺達の仲間でな。一度ボコボコにしてもらえば、俺達も説得しやすい。」
苦笑して、御子柴はカイトに頭を下げ、事情を説明し始めるのであった。
実は御子柴達は三島を見つけ、自分たちの策に乗るように説得したのだ。だが、彼は乗らなかった。そこで、一度徹底的に叩き潰して貰おう、と言うことであった。今のままやっても勝てないことは、三島も理解できているはずなのだ。なのに、ただただ暴走を続ける三島を心配したのである。
「じゃあ、1つだけお願いしていいか?」
「なんだ?」
そうして、事情と三島の居場所を聞いたカイトは、御子柴に1つ願い出る。そうして、一同は二手に分かれて、各々の場所へと向かうのであった。
「さーて・・・犬の躾けの時間だ。」
御子柴と別れた後、カイトとティナは教えられた地下闘技場の入り口の前に立っていた。竜馬も一緒に来ると言っていたが、魔術を満足に使いこなせない彼の移動速度は遅いし、三枝の家人達の介抱もあったので置いてきた。
そうして二人は入る時に一見さんお断りだの何だのと言われたのだが、少し交渉して納得してもらい、中に入る。まあ、交渉に熱が入りすぎて知恵が足りない彼らの何人かが熱でうなされていたが、気にする二人でもない。そうして中に入って見えた光景に、二人が目を白黒させる。
「闘技場というからどんな物かと思えば・・・なんじゃ、ここは?」
「あー、マジでこんなのあるんだな。」
そこには鉄檻に似た区切りでリングの周囲を囲い、光度の高い照明が照らす様は、まさに地下闘技場と言えた。そのリングの中では男達がステゴロでタイマンを行っており、周囲では野太い声や黄色い歓声、札束等の様々な金券が乱れ飛んでいた。
ちなみに、ティナがイメージしたのは皇国にあった闘技場だが、それはローマのコロッセオに近かった。なので闘技場と言われて出て来た舞台に、首を傾げたのだ。
「って、ありゃ・・・ちっ、面倒臭えな。」
と、そんな地下闘技場を観察していたカイトだが、ある一点を見て、苛立ち混じりに呟いた。
「む?おっと。」
そうして、カイトの異変に気づくと、ティナは大慌てで魔術も併用して耳を塞ぐ。そうして、龍の咆哮を遥かに上回る轟音が鳴り響いた。
「女にてぇ出してんじゃねぇぞ、糞野郎ども!」
ビリビリと大気だけでなく鉄檻さえも震わせた轟音は、カイトが放った大声だ。その大声は狂騒の中でも響き渡り、地下闘技場の全てが静まり返る。当たり前だが、その時、魅衣に対する乱暴狼藉も全て、停止していた。
「なんだよ、来たじゃねえか。」
「・・・嘘・・・なんで・・・?」
嬉しそうに牙を剥いた三島が、狂騒を静まり返らせた元凶を睨む。今度こそダメだと涙を浮かべていた魅衣は、再びの救出者に涙が溢れる。
だが、その救出者は白馬に乗った王子様などではなく、強者達さえ震える覇王であった。そうして、覇王は幼き女帝を従え、如何な方法でか一瞬で魅衣の横に移動する。
「おーう、お嬢。さっきぶり。」
「あんた、なんで・・・」
「あん?飼い主に駄犬の調教を頼まれた。」
けけけ、と笑うカイトは先と同じように、魅衣の拘束を解く。だが、カイトが拘束バンドをただ力だけで引きちぎったことに、魅衣が呆れ返る。
「あんた・・・なんて馬鹿力なの?竜馬は?」
「早苗さんなら倒れた奴らの介抱してる。」
「そう・・・ありがと。」
少しだけ頬を染めた魅衣は、小さく、だが確かに礼を言う。カイトはそれを微笑み、何も言わず、三島を振り向いた。
「おい、呼び出したからには、やんだろ。上がれよ。」
「はっ!てめえは今度こそ潰す!」
「って、おいおい!ちょっと待った!」
「あぁ!?」
そうして、カイトがリングへと向かい、三島が牙を剥いてその後ろを歩き始めたところで、ようやく復帰した会場の司会が待ったを掛ける。
曲がりなりにも、ここは闘技場で、三島はチャンプだ。幾ら強者がルールのこの場所といえど、裏に厄介な者達が多く居る以上、守らなければならないルールはある。それを逸脱してもらっては困るのであった。そうして、止めた司会を睨んだ三島だが、それを道理として告げられた。
「あんたがこの場の最強だってのはわかるし、この場じゃ強者こそがルールだ!だが、それでも挑戦者を決めるルールにゃ従ってもらわんと困る!」
「知るかよ、んなもん!雑魚しか居ねえんだから、こっちで敵ぐらい決めさせやがれ!」
「ちっ、狂犬が!ルールはルールだ!挑戦者は勝ち抜いた奴だけだ!従いやがれ!こっちは金も回ってんだよ!てめえの好きにマッチメイクされちゃ困んだよ!」
「あぁ!?」
「あん!?」
こんな所の司会なのだから、やはり口は悪いし性格も穏便でもない。一触即発となるが、その前にカイトが止めた。と、いうより、ブチ切れた。なにせ学校から帰ったのも、そもそもで小腹が空いたからだ。そこに来て、蘇芳翁を襲撃した祖先帰りと戦い、更に突発でこの一件だ。
おまけに、この後には由利の救出への救援も待っているのである。そろそろ空腹が我慢の限界に来ていたのだった。
「うるせぇぞ、てめぇら!ルールが勝ち抜きだろ!なら、いっそ全部並ばせろ!この後小鳥遊は助けに行かにゃならんし、こっちは色々忙しいんだよ!いい加減に腹も減ってんだ!雑魚相手に時間使ってる暇は無いんだよ!」
「なっ・・・」
司会者が思い切り息を呑んだ。なにせ、カイトが苛立ち紛れに地面を踏み抜いたのだが、それだけで地面にひび割れが出来たのだ。あまりの事態に、彼は思わず怒りを忘れる。人間技とは思えなかったのだ。
一方、今まで戦うつもりだったのにカイトまでルールに従うと言ったので、三島がいきり立つ。だが、カイトがそれに再び怒号を飛ばす。
「あぁ!?」
「てめぇに勝てねぇ様な雑魚が幾ら並んだ所で雑魚は雑魚なんだから、ちったぁ黙って待ってやがれ!躾けはその後だ!ウチで前に飼ってた無駄に吠えて無駄に噛み付く駄犬だって、普通に待てとお手は出来たわ!てめえは駄犬以下か!」
「あぁ!?んだと、てめ!」
『駄犬は酷すぎませんこと?と言うか、私はそれなりに器用ですよ?夜のお世話もきちんと出来たではありませんか。』
『あ、わり。って、お前じゃないし。』
『ふふふ、承知しております。』
駄犬、と言う言葉にルゥが茶化す様に反応したので、カイトが思わず謝罪する。だが当然、駄犬とは彼女の事では無く、昔クズハとアウラに請われて飼った野良犬―真実は狼型の魔物の子供―である。そうして、カイトはルゥのおかげで少しだけ落ち着いた。そうして、若干落ち着いたカイトが司会者に告げる。
「ったく・・・ほら、さっさと並ばせろ。」
「ちっ・・・おい!挑戦者入場だ!お望み通りに全員一斉に入れ!ったく・・・金券やらなんやらさっさと急げ!おりゃしらねえからな。」
「あ・・・くっそ!」
そうして、忌々しげな司会の声に合わせて、挑戦者と対戦する選手たちが一斉にリングに上がる。そうなってしまえば、如何に三島と言えどもどうしようもない。彼はしぶしぶ自身の席に戻る。
そうして入場した選手たちだが、当然、全員いきり立っていた。なにせ、カイトは彼らを纏めて相手にすると言っただけでなく、彼らを雑魚と言い張ったのだ。力こそを信条とする彼らが怒らぬ筈は無かった。
「てめえ・・・覚悟は出来てんだろうな?」
「二度と飯食えねえ様にしてやるよ・・・」
いきり立つ選手達が全員リングに上がったのに合せ、金券が乱れ飛ぶ。まあ、観客の方は大喜びだ。全員一斉にと言う闘技場始まって以来の異例の事態だ。喜ばぬ方が可怪しかった。そうして、準備が整えられて、オッズが発表される。
「チャレンジャー・・・オッズ、30倍!地下闘技場選手団、オッズ1.05倍!」
「誰が賭けるんだよ!」
「だろうな・・・」
と、そんなある意味当たり前の倍率だが、ただ一人、カイトにオールベッドした者が居た。
「チャレンジャーに10万!」
「おぉー!」
「え、ちょっと、ユスティーナ!いいの!」
「魅衣、張れ!ここは穴場じゃぞ!勝てば大金持ちじゃ!」
「え!?えー、っと・・・じゃあ、3万だけ。」
ティナの自信に満ちた言葉に、魅衣が思わず3万円を提示する。それに、集金装置が魅衣から3万円を回収した。それから一分で集金と金券の発行が終わり、司会者が告げる。
「ネットで見てる奴らも準備出来たな!じゃあ、ゴング開始だ!」
「死にさらせぇ!」
そうして、この様子をネットで見ていた観客たちの賭けも終了した事を確認し、ゴングが鳴り響く。それに合わせて、挑戦者を試す役の男達が一斉にカイトに殺到する。だが、それは一歩目で終わりを告げる。
「うぜぇー!」
ビリビリビリ、と大気を震わせる轟音が、カイトの口から発せられた。勝負はそれで終わりだ。それだけで、全員動けなくなる。
「無駄に動いたら空きっ腹に響くんだよ。ま、大声出したらイライラぶっ飛んだから良しとするか・・・おい、カウント取りやがれ。」
「・・・まじかよ・・・っと、ワン、ツー、スリー・・・って、おい。マジで誰も立てねえのか?おい、誰か確認しろ!」
一向に立つ気配の無い選手団に、八百長を心配した司会が念の為に確認に向かわせる。スタッフはリングの入り口から最も近い前のめりに倒れた男をひっくり返して、目を見開いた。なんと、その男は口から泡を吹いて倒れていたのである。そうして、全員を確認したスタッフは司会を見て首を振った。
「嘘だろ・・・孫伯符かよ・・・勝者!チャレンジャー!」
司会の告げた言葉に、万雷の喝采は起きなかった。なにせ、誰もが息を呑むしか無かったからだ。自分達とは違う、それがわかったのだ。そしてこれは、長い歴史を持つこの地下闘技場の初代チャンプが敷いたある種の絶対の聖域が初めて破られた瞬間だった。
「はっ・・・やっぱ雑魚じゃ相手になんねえよな。」
それを嬉しそうに眺めていたのは、三島だ。彼は全ての選手が運び出されるよりも前に、リングに上がる。
「さぁ、やろうぜ。」
そうして、彼は上着を脱ぎ捨てる。カイトに敗れてから一ヶ月と少し。一体どれだけの闘技場で暴れまわったのか、そこには大小様々の無数の傷と、まるで彫刻の様な筋肉があった。
「オッズ!チャレンジャー・・・2.0倍!オッズ!チャンプ『狂犬』三島・・・1.5倍!」
全てが大慌ての中、大会の運営を行っている者達が大慌てで次の試合の掛け金を発表する。どうやら今の戦いで一気にカイトにも票が集まった様だ。倍率がほぼ同率にまで下がっていた。
集金は大慌てだった。なにせゴングを無視して、何時試合が開始されても可怪しくはなかったのだ。そして、その予想は正しかった。
「らぁ!」
「ちぃ、これだから狂犬は!ゴング鳴らせ!」
三島はコングを待たず、カイトに殴りかかる。それに合せて、ゴングが鳴り響いた。
「腹減ってるし、時間無いんだよ。さっさと飼い主に明け渡すか。」
一方のカイトは、若干疲れた様に告げる。カイトは三島の突撃を前に構えを取らず、ため息と共に右ストレートを掴んだ。そうして、カイトはそのまま一気に息を吸い込んで、大声と共に力を込めた。
「だぁりゃあ!」
「うぉおー、ぐはっ!」
三島の右ストレートを掴み取ったカイトはそのまま片腕で三島を振り回し、思い切り投げ飛ばず。そうして投げ飛ばされた三島は鉄檻に激突し、ズルズルと落下していく。
三島が鉄柵に激突し、地面に落ちた直後、カイトは三島の目の前に立つ。追撃は仕掛けない。必要が無いからだ。そうしてようよう顔を上げた三島は目の前に立ったカイトを見て、その背後に得体のしれない何かを幻視する。
「おい、駄犬。いい加減にしやがれ。てめぇの仲間も心配してんだよ。お前も今のままじゃオレに勝てねぇってわかってんなら、ちったぁ仲間の話を聞いてやれ。」
「う・・・く・・・」
静かに、圧倒的な存在感の声が響いた。三島はこの時生まれて初めて、恐怖した。とどのつまり、カイトの躾けはこれだった。ただ単に圧倒的な力を振るうだけでなく、獣相手には自身の方が上である事をわからせる。これに尽きたのである。
ちなみに、このやり方でカイトはエネフィアで天竜等の魔物を大人しくさせて普通のペット同様に飼い慣らすことに成功していたりする。使い道は飛空艇等を使わない場合での移動手段だ。彼らはその強さから道中で魔物に遭遇する確立が低くすることができ、意外と移動に便利なのである。
「来い。飼い主に引き渡してやる。」
「・・・好きにしやがれ・・・」
「え、あ、おい!どこ行くんだよ!」
「飼い主に引き渡す。勝者がルールなら、こいつの身柄を頂いていっても問題無いだろ。何、どこかに売り飛ばすとかじゃなくて、元の飼い主に引き渡すだけだ。」
ズルズルと三島を引きずって歩き始めたカイトに、司会が問い掛ける。カイトはそれをひと睨みして、何処か疲れた様に答えた。一方、睨まれた司会はカイトの眼力に抗えず、黙ってそれを見守るしか無い。
いや、それはこの場の選手たち、観客たちにしても同じだ。彼らはただ、カイトの歩みを黙って見守るか、その前に立って、怯えと共に道を譲るしか、あり得なかった。
「良し、魅衣よ。余らも行くぞ。」
「・・・え、あ、うん。」
ただ呆然とカイトの歩みを見守っていた魅衣だったが、ティナの言葉に歩き始める。そうして彼女はふと、自分を売った少女達を見つけたが、もはやどうでも良かった。今見た物の方が重要で、ただただ呆然と、カイトの後に従うだけであった。
そうして後の世に、カイトはその君臨期間の短さと大音声だけで闘技場の猛者を打ち倒し、その後の戦いをただ圧倒的な覇気だけで終わらせた事から『小覇王』と渾名される事になるが、それは彼の与り知らない事である。
お読み頂きありがとうございました。




