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何時か世界を束ねし者 ~~Tales of the Returner~~  作者: ヒマジン
第3章 全ての始まり編

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断章 第17話 集結編 救出成功

 拐われて、とあるマンションの一室に運ばれた魅衣は今、目の前に居る数人の少女達を睨みつけていた。


「あんた達・・・!」


 魅衣の眼からは今にも人を呪い殺せそうなほどの眼光が宿っており、忌々しげに吐き捨てた。が、彼女は動けない。なぜなら、動けない様に荒縄で縛られているからだ。そして、睨まれた魅衣とよくつるむ少女たちは、悪びれもせずに魅衣に告げる。


「えー、だってー。このおじさん達が魅衣を拐うの協力したらクスリくれるって言うしー。」

「それに魅衣にだって悪くない話だって。痛いの始めだけだし。直ぐに気持ちよくなれる、って。」


 その様子は平然としていて、悪びれている様子は一切無かった。当たり前だ。彼女たちは全く、悪い事をしたというつもりが無かったのだ。

 では、そんな彼女が何をしたのかというと、魅衣に発信機を取り付けたのである。そうして常に監視されていた魅衣は、彼女が人気のない場所に行った時点で拐われたのであった。天神市に人気が無くなって、更には警官たちが猟奇的殺人事件への対応に追われている間隙を突いての犯罪であった。


「おぅ、じゃあ、こっちもってけや。」

「わーい。」


 そうして、今まで別の部屋に行っていたかなりあくどい顔の厳つい剃髪の男が、少女たちに対して何かの錠剤や粉末を渡す。中には明らかに札束を受け取る者も居た。そうして、少女たちは喜色満面で立ち去る。


「おう、嬢ちゃん。不運やったなぁ?」

「別に不運とは思うておらんが・・・」


 そうして、男が問い掛けたのはティナだ。ここに待機していた彼だが、よもやもう一人連れてくるとは思っていなかった。だが、拐ってしまった物は仕方がないし、見せしめに使えるかと考えたのである。

 そうして、少女たちが立ち去った後、魅衣達が囚われた部屋とは別室から、複数の男達がぞろぞろと入ってきた。誰も彼もが威圧感満載で、どう見てもまっとうな道を歩んでいる者達とは思えない様相であった。


「えらいべっぴんさんやな。こりゃたこう売れるで。」

「おい、誰がやるよ?」


 若干予定よりも変更が出てしまった為、男達はこれからの段取りを話し合う。そんな男達を見ながら、魅衣が涙ながらにティナに謝罪する。


「ごめん、ね?」

「むぅ?」


 小さく、だがはっきりと告げられた言葉に、ティナが魅衣の方を向く。すると彼女の眼からは涙がこぼれており、彼女の口からは嗚咽がこぼれていた。彼女とて、この後に自分たちの身に何が起こるかなぞは簡単に理解できていた。それ故、巻き込まれた形のティナに謝罪出来る内に謝罪しておいたのである。


「ごめんね、巻き込んじゃって。心配して付いてきてくれてたのに。」

「ふふふ。」


 魅衣の素直な謝罪に、ティナは場違いな笑みを浮かべる。


「別に気にする必要は無いし、心配する必要は無いぞ?直ぐに助けが来るからのう。」

「なんや嬢ちゃん。警察の事でも言っとるんか。」


 と、そんなティナに対して、男の一人がいやらしい笑みを浮かべて問い掛けた。それに、ティナが男の方を向いて告げる。そこには一切の怯えも恐怖も存在していない事に男達は疑問を覚えた。


「むぅ?別に違うぞ。」

「はーん。まあ、どっちでもええわ。取り敢えず、嬢ちゃんには悪いが、見せしめになってもらうで。べっぴんさんやけど、まあ、しょうがないやろ。あん時あの場所におったお嬢ちゃんが悪いわ。」


 そうして、一歩踏み出した男に、魅衣が涙を流しながら大声を上げる。


「あんた達・・・私が目的なんでしょ!なら私にしなさいよ!」

「はぁ・・・嬢ちゃんの方は嬢ちゃんの親父さんが俺らのお願いを聞いてくれへんかった時や。先に見せしめとかんと、俺らがどれだけ本気かわかってくれへんやろ?」

「ひっ・・・」


 魅衣の引き攣った悲鳴が響いた。男がぺしぺしと拳銃で魅衣の頬を叩いたのだ。そうして、魅衣が怯えたのを見て、男はティナにゆっくりと近づいていく。


「おう、取り敢えずカメラの用意しとけや。こんなべっぴんさんの映像なんぞ、滅多に取れるもんやないぞ。脱がすとこからとっとかな損や。」

「おーう。」


 そうして、ものの数分で全ての用意が整えられる。だが、それらを見てもなお、ティナには一切の怯えが生まれず、遂に男の一人が訝しんでティナに問うた。


「・・・何や、嬢ちゃん。こわないんか。」

「むぅ・・・怖い、と言われてものう。救援も来ておるし・・・」


 男の問い掛けに、ティナは少しだけ困った表情を浮かべる。そう、ティナには見えていた。明らかに荒れ狂う魔力が、このマンションの前に来ていたことに。これで怯えろ、と言われても無理な話であった。なにせ、自分か魅衣のどちらかに手を触れようものならば、その瞬間にカイトが介入し、確実に彼らの命は無い。それがわかっているのに、何を怯えれば良いのだろうか。


「それより、お主。良いのか?余の救援は、先の蘇芳よりも遥かに強いぞ?お主に真っ当な判断力があるなら、逃げたほうが得策じゃぞ。あ奴はお主らの様な輩には一切容赦が無いからのう。まあ、殺されぬとは思うが・・・それもあ奴の気分次第じゃ。別に死体を残さぬのは容易いからのう。」


 そうして、ティナが入ってきた男の一人に問い掛けると同時に、荒れ狂う魔力の奔流はこの部屋の前で止まる。


「何や、何を言うとんのや?」

「むぅ、時間か。もう少し早めに問いかけておけばよかったのう。5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・」


 男達の顔に浮かんだ疑問は、ティナのカウントダウンが終わるとともに轟音が響き渡り、その答えがわかるのであった。




 時はほんの数分遡る。疾風のごとく走りだしたカイトは、即座にティナ達が居るマンションの前に来ていた。だが、その前には彼だけでなく、先ほど出会った竜馬や数人の厳つい男達も一緒であった。彼らも魅衣を攫った人物を突き止め、奪還するためにここまで来ていたのだ。


「どうして来たんですか?」

「んー・・・オレの連れも三枝と一緒に拐われたらしい。メール来た。」

「なっ!」


 睨むような竜馬の問い掛けに、カイトは平然と答える。それに竜馬達が驚くが、どうやら彼らも拐われたのが二人である事は掴んでいたようだ。少しだけ申し訳無さそうにしていた。


「申し訳ありません。我々の所為でご迷惑を・・・」

「いんや、構わないって。中の一人に用事もあったしな。」


 首を回しながら答えたカイトの言葉に、男達が首を傾げる。だが、それも少しの間だけだ。彼らは各々木刀などの殺傷能力の高くない武器を構えると、同じように準備運動を整える。


「貴方は、ここでお待ちを。」


 予想に反して、竜馬が最も無茶苦茶な武器を車から取り出す。それは近年になって開発されたという、立て篭もり犯等がマンションに立てこもった際に使われる金属のドアを強引に開ける専門の道具であった。本来はまっとうな方法で入手出来る物では無かったのだが、如何な手段でか手に入れたのだろう。そんな者を持ちだした竜馬達三枝の家人達に、カイトが苦笑する。


「あー、そんなもんで開ける必要ないぞ。じゃ、お先に。」

「あ、おい待て!」


 一足先に準備を整えたカイトは、彼らに先んじて歩き始める。それを見て、慌てて竜馬達も付いていく。そうして、カイトは迷いなく目的の部屋の前に辿り着いた。


「・・・どうしてこの部屋だと思うのですか?」

「ん?勘。」


 勘にしては迷いがなかった、と一同は思うが、止めることは無い。なぜなら、その部屋こそが彼らの目指す部屋だったからだ。

 ちなみに、彼らが訝しむのも無理はなく、カイトにはどの部屋に魅衣達が捕えられてるのか教えていなかったからだ。それなのに迷いなく目的の部屋を見つけ出した彼を警戒するのは致し方がないだろう。


「さて・・・はい、しっつれいしまーす!」

「なっ・・・」


 少しだけ気合を入れたカイトは、陽気な声と共に回し蹴りで施錠された金属の扉を蹴破った。そうして、ドゴン、という音と共に、金属の扉が室内へと吹き飛んでいく。それに、後の竜馬達が目を見開いて驚いていた。


「お邪魔しまーす・・・おや、お留守かな?」

「なんやこらぁ!」

「てめえどこのもんや!」


 陽気なカイトの声に反応したかのように、部屋の中から何人もの男達が怒号を響かせながら現れた。


「外の奴らはどうした!」

「あいつらなにやっとんねん!」

「あ?全部潰したに決まってんだろ。」


 陽気さから一転、カイトは怒気を滲ませた声を響かせる。男達は拳銃や匕首(あいくち)を構え、カイトに対峙し、後ろの竜馬達もそれに合わせるかの様に各々の武器を構えた。


「あぁ?」

「はっ、はっきり言ってやったのに理解しねえ馬鹿だな。全部叩き潰して今頃おねんねしてるっつってんだろ。まあ、気持ちよすぎて向こうに居座ってるかも知れねえけどな。そこまでは知んねえや。」


 言われた事を理解出来なかった男たちの疑問を、カイトが荒々しい言葉遣いで答えた。当たり前だが、彼らとて竜馬達が魅衣を奪還しに来るぐらいは考慮している。その為、マンションの前の建物や近くに彼らの仲間が何人も居たのだが、カイトがそれを全て潰したのである。

 ちなみに、連絡されても面倒だったので、分身を使って一気に片付けた。所要時間はおよそ一分にも満ちていない。尚、一応全員息はあった。


「さって、おっそうじおっそうじー。」


 カイトは平然と歌うように掃討戦を開始する。だが、決して上機嫌であるわけではなかった。いや、それどころか、地球に帰還してから最も激怒していると言ってよかった。

 彼らは大人だし、そもそもで犯罪者集団だ。しかも、カイトが最も嫌う女を犯そうとした下衆であった。それ故、この掃討戦は以前浬達が拐われた時と異なり、手加減は一切していない。

 一応、殺すと面倒なので殺しはしないが、今後一切満足に寝れないぐらいにはしておくつもりであった。カイトやティナに対する記憶はいつも通り、魔術で消去するだけである。


「おい!・・・って、つええ。」

「竜馬さん、どうします?あいつ、拳銃も平然と潰してますよ。」

「私達も行きましょう。彼に一人お嬢を救われては面目が立ちませんからね。」

「うっしゃー!」


 そうして、竜馬達も戦闘に加わり、部屋の中に怒号と様々な音が響き渡る。当たり前だが、カイトにとって幾ら殺傷能力の高い武器を所持していようと、彼らと御子柴の配下の少年達に差異は無い。見る間に掃討されていき、遂にカイトは死屍累々を敢えて物理的に踏み越えて、ティナと魅衣が囚われたマンションの最奥の部屋に入った。


「おーう、お待たせ。」

「うむ。遅かったのう。魅衣が泣いてしまったではないか。」


 片手を上げて陽気に入ってきたカイトに対して、ティナも平然と軽口を返した。尚、ティナの言葉に反して、魅衣の涙は既に止まっていた。

 ちなみに、彼女が魅衣と呼んでいる理由は簡単で、ただ単に三枝と苗字で呼ぶのに呼び慣れなかったからだ。魅衣はそれを注意する余裕は無かったので、そのままである。


「そりゃ、悪かった。三枝も悪かったな。」

「え?あんた・・・まさか、天音?」

「そうだが?」


 魅衣の問い掛けに、カイトが平然と頷いた。カイトがあまりにいつもと違う表情を浮かべている所為で、カイトがカイトだと気付けなかったのだ。彼女の顔には疑問符が幾つも浮かんでいた。それに、強いと思っていたが、まさかここまで強いとは思っていなかったのだ。あまりに圧倒的なまでの力に、魅衣が最早恐怖を通り越して呆れしか無かった。


「お嬢!」

「ご無事ですか!」

「風太!それに平次も!」


 と、そんな所に、三枝の家人達も掃討を終えてやってくる。どうやら戦闘能力は魅衣を攫った者達に比べて圧倒的であったようだ。何人か裂傷や小さな刺し傷を負っているが、致命傷は居なかった。まあ、カイトが拳銃持ちを全て片付けた上、ほとんどの敵についても片付けたのだから、当たり前だ。

 彼らは縛られた魅衣を見つけると大慌てで没収した匕首(あいくち)を使って縄を切り裂き、ティナと共に開放する。


「ご無事で何よりです!」

「ありがとう。」

「おう、兄ちゃんも嬢ちゃんも済まねえな。」


 魅衣を開放した三枝の家人の男は、次いで謝罪してティナの拘束を解いた。


「何、気にせんよ。魅衣も無事で良かったのう。」

「え、あ、うん・・・ユスティーナもありがとう。」


 開放された魅衣は、ティナに照れた様子で答えた。


「お嬢!外に出ますよ!」

「嬢ちゃんも来な!一緒に出してやる!」


 そうして、ティナの手を引こうとした男だが、その前にティナが手を振り払い、手を回しながらカイトに問い掛けた。彼女もやる気である。


「余は構わんよ。ついでじゃ。掃討に付き合ってやるとするかのう。」

「へ?」

「外、増援来ておるぞ。カイト、杖はあるか?」

「んなもんねえよ。こいつで勘弁しろ。」


 準備運動を終えたティナが、カイトに問い掛ける。対してカイトが放り投げたのは、確かに直線の長い木製の武器であったが、杖というより、単なる木の棒だ。まあ、要にはクローゼットの服を掛ける為の棒である。


「うむ。たまさか暴れるとするかのう。カイト、付き合え。」

「おっしゃ。んじゃ、二人でやりますかね。」


 二人は肩を回して準備運動を行う。が、それに大慌てなのは、三枝の家人達だ。その中の一人が声を上げる。


「ちょっと待て!お前さんらも今のうち逃げんだよ!」

「はぁ・・・誰かが抑えないと、逃げ切れねえって。って、ことで、お先。道すがらは全部潰しといてやるよ。」

「うむ。」

「・・・どうするよ。」

「どうするったって・・・竜馬さん残すわけにも行かねえし・・・」


 止める男達の制止も聞かず、二人は足早に部屋を出る。そんな彼らをどうするべきか、家人達が悩むが、かといって竜馬を残すわけもに行かないのだ。竜馬は最後まで残って、今回の一件の首謀者を聞き出す為、残らざるを得なかった。だが、そんな一同に対して、竜馬が声を上げる。


「皆さんは先に撤退を。お嬢も居ますしね。できれば、先に行った彼らも回収してあげて下さい。」

「ですが・・・」

「竜兄に何かあったらお姉になんて言えばいいの?」

「はぁ・・・三枝最強は伊達じゃ無いって。さっさと行け。ここは俺に任せろ。」


 婚約したばかりの竜馬を残していく事に対して難色を示す男達と魅衣だったが、彼は笑みを浮かべて、滅多にない軽口で気さくに言う。それに背を押され、魅衣達も足早に部屋を後にするのであった。

 お読み頂きありがとうございました。

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