偉人の記憶、または記録
(´・ω・`)彼らの末路をまとめたものです
カイヴォン・N・ノースレシア
七星の全討伐、そして世界を狙う神を撃破した後、ファストリ平定に尽力する。
その後も世界を飛び回り、やがてエンドレシア北方の土地を治める『辺境伯』に就任。
その後、彼を慕い移住してきた魔族の多さが問題となり、本格的に北方の、元々未開の地であった森や山脈、その向こうの土地一帯を『ノースレシア王国』として自治権を得る。
ノースレシア王国で『初代魔王』として長らくエンドレシア王国とは良好な関係を築いていたが、一線を退いたのち、一部の魔族と、ノースレシアを認めようとしない貴族との間で紛争が勃発。事態を重く受け止めたカイヴォンは、なんと大陸を国境線で物理的に分断してみせた。
『一切の争いを認めない。しかしそれでも我が国に仇なす者があれば、私が相手になる』。
事実上の鎖国状態になったと思いきや、その力にエンドレシアの貴族達は押し黙り、そして新しく就任したエンドレシア王も『ノースレシアとは永遠に友好国であり続ける』と宣言し、その事件より先、両国間で争いが起きる事はなかったという。
大陸を断ち切る力、そして世界の平和の為に世界中で活躍した彼の歴史は、やがて伝説となり、神話となり、人々の間で『魔王信仰』という形で微かに残る事となった。
また、彼は非常に多くの子宝に恵まれ、二人の妻との間に、合計七人の子供を儲けたが、一説によると、血を引いている子供が非公式ではあるがもう数名いた、とも言われている。
リュエ・セミエール・ノースレシア
魔王カイヴォンの妻として、時に明るく、時に厳しく支え、そして多くの子供を慈しみ、あらゆる病の癒し手として歴史に名を残す。
研究者としての一面も持ち、彼女が考案した様々な治癒魔術は多くの人々を世代を越えて救い続けた。
『女神』と呼ぶものも多く、とりわけ離れた地にある同盟国『サーズガルド』では、その名で広く親しまれ、ついには『女神信仰』という形で広く伝わり残ったという。
遠い未来でも、彼女の功績をたたえ、医療関係者は『女神の羽飾り』と呼ばれる物を身に着ける風習が残り、さらに彼女の考案した『リュエ式錬金術』は、遠い未来で多くの人々を救い、人々の暮らしを豊かにしたという。
魔王カイヴォンとの間に三人の娘を儲け、まるで姉妹のようにいつも四人で仲良く森を駆けまわっていたと言われている。
レイス・レスト・ノースレシア
魔王カイヴォンの妻。よく第二王女とも呼ばれる事もあったが、それは間違いである。
カイヴォンは二人を同列の妻として、なんの区別もなく接し、そして妻同士の仲も極めて良好だったという。
彼女はギルドが創設した孤児院を含め、世界中の孤児院の為に精力的に援助活動を行い、そしてリュエと共に、新生児やその母親の救命治療の基礎を生み出した。
彼女の手により救われた子供は数知れず、そして育児が出来ない女性を救い、手助けをする制度を自国にて確立、やがてそれが世界に広まり、後の世まで『聖母』と呼ばれた。
先にある『魔王信仰』『女神信仰』と共に『聖母信仰』として、三つの宗教が生まれたが、それぞれが仲の良い家族だった事もあり、宗教間での争いはなかったという。
また、カイヴォンとの間に二人の娘と二人の息子を儲けたが、跡取りは自分達の子供ではなく、国民の意思で選ぶべきだと進言した事でも知られている。
が、実際には国民が選んだのは彼女の息子の一人であった。
後に彼らの血族ではない王も誕生したが、それでも彼女の子孫は、ノースレシアの要人として国を支え続けたという。
余談だが、恐妻家でもあったらしく、魔王に取り入ろうとする女性を、何故か魔王共々厳しく取り締まったと言うが、一部の女性だけは彼に近づく事を許し、やがて子をなしたのではないか? と言われているが、真相は闇の中である。
オインク・R・A
警察組織と冒険者ギルドを統合し『シュヴァインリッター』という組織を後に生み出した法の番人。
全ての大陸間で通信が可能となるネットワークを、何百年もかけて達成したと言われているが、はたして同じ名を継いだ人間なのか、それとも不老の秘術でも会得していたのか、それは誰にも分からない。
セカンダリア大陸の研究機関と共に蒸気機関と魔力を融合した『魔水機関』という物を生み出し、従来よりも遥かに交通の便が発達し、世界の常識を変えた偉人として後の世まで語り継がれている。
交友の幅が広く、彼女は伝説に残る三宗教の信仰対象、魔王と女神と聖母とも懇意にしていたと伝わっている。
やがて彼女は研究の対象を『時と空間』に定め、世界からその存在が忘れ去られるまでその研究を行っていたと言われている。
その傍らには、白髪のエルフと魔族の女性もいたというが、果たして何者だったのだろうか。
ダリア
サーディス大陸に存在する旧国家『サーズガルド』における『初代聖女』。
国の内政から、他国との外交にまで幅広く従事し、時には癒し手として多くの人々の命を救った。
同盟国であるノースレシアの王女リュエと非常に仲が良く、共に新たな治癒術を生み出し、人々に愛されていたと伝わっている。
また『聖女信仰』という宗教も生まれたが、それはやがて『女神信仰』と統合され、二人の女神として歴史に名を残すこととなった。
一説では不老不死とも呼ばれていたが、ある時を境に人々の前から姿を消し、以降はどこからか現れる『後継者』が代々その称号を引き継いでいる。
何故か、その後継者は歴代の聖女と似た容姿をしていたが、彼女が誰かと結ばれたという話はどこにも残っていない。
シュン
サーズガルド大陸の守護者と伝わっている剣士。
『剣聖』とまで謳われ、世界中の剣士たちの目標にして、到達点、『最果ての剣聖』と呼ばれていた。
愛娘のように育てていた女性に求婚され、やがて結ばれ一線を退いた。
魔王カイヴォンが生まれた後、世界に大規模な争いは起きなかったが、それでも時には彼の力が求められ、国と国の衝突を抑える抑止力として平和に貢献した。
また、その数世代の後に、サーディス大陸にあるもう一つの国『セリュー共和国』と『サーズガルド王国』は『セリュミエル王国』として統合、その初代国王こそがシュンであった。
しかし彼の統治は長く続かなく、その理由は『これは一時的に俺が預かっただけの物。相応しい、我こそはという人間に譲りたい』と、就任直後に発言したためである。
余談だが、彼は聖女ダリアと同じく不老ではないかと言われていたが、結婚、そして子をもうけた後は緩やかに年をとり、親しい者達に看取られながら旅だったと伝えられている。
エル/メリア・メイルラント
私情の王妃と呼ばれた、元王女。
セカンダリア大陸に存在する『メイルラント帝国』にて生まれ、その武力で王に上り詰めたが、後に『相応しい婚約相手を見つける旅に出る』と国を去り、次に戻って来た時には子供を身ごもっていたという。
彼女の子供が世に出る事はなかったが、出産に立ち会った産婆は『魔族の赤子だった』と言ったと伝えられている。
多くの名だたる武人を下し、中でも最果ての剣聖との勝負は、後の歴史にでも人気の演目として長く伝わっている。
また芸術への関心も高く、芸術都市『スフィアガーデン』への援助も長らく行っていたらしく、彼女自身もまた、数多くの絵画を残している。
彼女独特の作品である『ウスイホン』と呼ばれる絵柄の多い冊子は、数多くの人間の手に渡り、同じ物を作りたいと言う芸術家が多く現れ、新しい芸術の在り方として後々まで伝わった。
ジニア・ノースレシア
ノースレシア王国初代魔王カイヴォンの養女となり、王家を守る騎士としてその生涯を終えた。
カイヴォンの長男と結ばれ、子供を儲けたと言われているが、その詳細は歴史に残されていない。
前述の通り、国を守る剣として『片翼の騎士』と呼ばれ、以降は国の騎士団のシンボルとして、翼と剣のマークが騎士団のマントに刻印されるようになる。
リネア
ジニアの血の繋がった弟ではあるが、彼は養子にはならず、オインクの設立した『シュヴァインリッター』の総帥として、世界の秩序を守り続けた。
『片翼と豚の蹄』の紋章がシュヴァインリッターの証だが、その片翼は彼を表しているという。
エルスペル・ブライト
サーディス大陸にて発足された『女性の生活を守り地位を向上させる党』という集団の二代目当主。
不当に扱われ露頭に迷う女性達を支援し、職人として、また『シュヴァインリッター』に入団する為の教育など、様々な活動をし、治安の向上と女性の社会進出に貢献した。
その活躍の裏には『魔王の妻』であるレイスの助力もあったという。
後に、彼女は元々自分が暮らしていた街で一人の男性と結ばれ、街の秩序を守る存在として『二代目グランドマザー』と呼ばれるようになった。
イル・ヨシダ
彼女の名は歴史に埋もれそうになるも、数々の功績が調査の結果発覚した。
『女性の生活を守り地位を向上させる党』の初代党首であり、また数多くの貴族が『オインク』の早急な改革に反発するのを抑えたと言われている。
ひたすら陰に徹し、表舞台に出る事を嫌った人物でもあるが、その功績を称えられ、ついには彼女の没後、その銅像が彼の祖父の亡くなった地『アギダル』に設置されたのだった。
また、彼女は自分の従者と結ばれたとあるが、その子供こそ、本当に世に出る事がなかったという。
イクスペル・ダリア・ブライト・アルヴィース
セミフィナル大陸における最大の領地『アルヴィース』領の領主にして、世界中に設立された『聖母の園』と呼ばれる孤児院の総責任者。
元は領主代行という立場であったが、その功績が認められ正式に領主として就任、広大な土地に平和をもたらし、任期終了と共に孤児院の園長としてひっそりと暮らした。
孤児だけでなく、時には要人の子供の幼少期の教育にも従事し、彼女に育てられた子供だけで、一つの大陸の運営がなされていた時代もあったという。
多くの子供にとって、教育熱心で厳しい母であり、同時に秩序と優しさ、思いやりを教育した優しい母でもある。
彼女の葬儀には世界中に散った縁者、育てられた人間達が集まったという。
その規模は、街どころかその近辺まで人が溢れるほどだったという。
また、非常に高度な魔導を修めており、あの『女神』や『聖母』の教え子でもあったという彼女は『もう一人の聖母』として、今でも多くの名家の家にその肖像画が残されている。
だが、彼女たっての希望により、その名前だけは早い段階で世界から消えていった。
余談だが、彼女は強い力を持っていた故に『六〇〇』才を越える長寿ではあったが、その生涯で誰一人として夫を取らず、数多の求婚を断り続けていたという。
またさらに余談ではあるが、初代魔王の義理の娘だったという伝説も残されている。
レン・イツキ
世界を旅する剣士として、数多の伝説を作った男性。
後に旅のパートナーの一人と結ばれ、エンドレシアで平和に暮らした。
元貴族の娘とは思えない程活発な妻と共に、大陸の平和の為に生涯剣士として戦い続けたと言う。
シュヴァインリッターのエンドレシア支部の長に就任した後も前線に出続け、実際の長は妻が務めていたとも言われている。
魔王就任前のカイヴォンとも親交があったというが、その詳細は定かではない。
しかしその一方で、サーズガルドに住む『最果ての剣聖』とは非常に親交が深く、よく剣を交えていたという。
彼は他の偉人に比べ短命ではあったが、その生涯の果て、彼はついに剣聖を越え、満足して旅立ったと伝えられている。
クロムウェル・アイソード・リヒト
元々高齢で齢400を超えていたが、その後も500を超えるまでその命の続く限り、敬愛する『女神』の為に活動していた。
マインズバレーのギルド支部を後任に譲った後、彼はエンドレシア北部へと渡り、慣れない統治に苦しむカイヴォンの相談役に徹してくれたという。
その生涯をかけてカイヴォンに己の知識を与えた後、彼は数多くの『リヒト』の名を持つ者、そして敬愛するリュエとその子供達に看取られ、安らかに眠りについた。
統括すると、神話の時代に存在したという偉人の殆どが長命であり、世界の在り方に大きな影響を残している。
しかし、その名前は人々の記憶から長い時を経て消えていき、ただ平穏な世界だけが残された。
この記憶は恐らく、誰の手にも渡る事はないだろう。
ただひっそりとこの世界の境界で、人知れぬ書庫に眠り続ける。
彼らが存在した確かな証として、永遠に。
だがもしも、ここに辿り着き歴史に埋もれたこの者達の逸話に触れたのなら、この逸話と歴史を記憶に刻み込んでくれる事を願う。
著者 レイニー・リネアリス
ラン・シュヴァイン・ブゥブゥ
誰だお前。
(´・ω・`)ここにいたるまでの後日談は、番外編の方に投稿しています。
また一部の設定は、次作品の方で活用しています。
追伸 昨日10巻発売されました
番外編 https://book1.adouzi.eu.org/n6555cu/
次作 https://book1.adouzi.eu.org/n4264fx/




