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―完結に寄せて―

※注意※

本編(全章)のネタバレを含んでおります。


2013年から書きはじめた連載を、そして、私にとって初めての推理小説を、とうとう完結させることができました。

大学に入学する直前から書きはじめたお話を、社会人になってからも書いているとは、とてもこの頃は思っていませんでしたが、途中、休載を挟みながらも当初考えていたとおりにお話を完結させることができたのは、ほかでもない読者のみなさまがいてくださったからです。

本当にありがとうございます。


完結に寄せて、ということでなにを書こうかしら……と、もうかれこれ半日PCの前で固まっているので(暇か)、いつぞやのエッセイのように好き勝手に「宇治~」への思い入れを書かせていただきます。


人間の心の機微を、人間以上に理解する非人間がいたらどうなるか――そんな思いつきから、この物語が生れました。

人間でないからこそ、どんなときでも客観的に、そしてどこか他人事のように冷静に状況を観察することができる、そういうキャラクターが、人間の心が明確に表われる殺人事件を、論理的に解決していったらおもしろいんじゃないかなぁ、5年前、ふと思いました。

「人間」という生き物を最も良く知り尽くしているにもかかわらず、しかしどんなに望んでも、自分は人間になれない。

人間と変わらぬ外見と心をもっているにも関わらず、人目を避けて、見当もつかないほど長い時間を、生き続けなければならない。

せっかく人間ではないキャラクターを描くのならば、そんな重たいテーマ――フランケンシュタインや吸血鬼ドラキュラなどで扱われてきたような――に挑戦しよう、と思って、落ち葉の君をああいう設定にしました。

落ち葉の君の境遇については完全オリジナルですが、物体の残像を読み取ったり、書いた絵に命が宿ってしまうという特徴は、当時好きだったドラマやマンガからアイディアを拝借しています。


落ち葉の君を中心に、そのサイドを固める橘康之少将とその幼馴染の滋川清行。

橘少将は「とにかく自分の心に正直な善意のかたまりのような人」として描きました。

自分の心に素直すぎるために、どんなときも"正しい"選択ができる、そういうキャラクターでないと、とても落ち葉の君の相棒は勤まらないと思ったのです。

対して、その良き友であり陰陽師の滋川清行は「お堅い理屈家」。

「人間でないもの=悪」の信条に基づいて育ってきた彼が、落ち葉の君と出会うことでどう考えが変化していくか、見てみたい気持ちがありました。


振り返ってみると、全八章というそこそこ長いシリーズになったこの物語。

最終章については、これまで読んできてくださった方々のお心が弾むよう、これまでの章に絡んだ小ネタをちょくちょく仕込ませていただきました。

読み進めるなかで「この展開は!」とか「あっ、懐かしい名前!」とか思っていただけたら嬉しいです。

ちなみに最終章の冒頭で清行が着ている狩衣と単の組み合わせは、先日金メダルを獲得されたフィギュアスケートの羽生選手のお衣装を参考にしています。


さて。

重ねてになりますが、長い間、この物語を応援してくださった方々に、心より感謝しております。

本当に、ありがとうございました。



2018年3月10日

柏木弓依

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