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ガーディアンズ・オブ・シコク  作者: 五月雨拳人
第二章 モウリョウ
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戦い終わって

     *


 ガーディアンズ本部に転送された望夢は、そのまま本部施設内の医務室に搬送された。


 望夢の容態は思ったより軽く、全治一週間と診断された。


 望夢が目を覚ましたのは、翌朝だった。


 わずかに動く首を巡らせ、自分が医務室にいる事に気づいた彼は激しく落胆した。ツノゴリラの抵抗で致命傷を受け、DSDの保護機能が働いた――つまり、ツノゴリラの討伐に失敗したと思ったのだ。


「クソっ……」


 両腕に点滴を打たれ、傷の痛みで身動きの取れない体で怒りと落胆、そして悲しみの混ざった感情を現すには、声を上げることしかできない。あと一つできる事といえば涙を流すことだが、それをする前に、


「目が覚めたか」


 突然声をかけられ、驚いて声のした方を見る。


 丸山がいた。いったいいつからそこに居たのか。壁際でパイプ椅子にどっかりと座り、腕を組んてこちらを見ている。相変わらず大きなミラーサングラスが顔の大半を隠しており、表情からは何も窺えない。


「ツノゴリラは……、あの大型モウリョウはどうなったんですか?」


 望夢の問いに丸山は「うむ」と短く唸ると、望夢が気を失う前後を説明し、望夢の不安を払拭した。


 だがそこから先は説教だった。


「俺はお前たちにモウリョウを倒せとは言ったが、本部からの命令を無視しろとは一言も言っていない。『低ランクの隊は手出しするな』と言われたら、素直に従え。実際今回は多くの者が例の大型モウリョウに戦闘不能にされたんだ。お前たちだって運が悪かったらどうなっていたことか」


 そこで丸山は一度言葉を切って、苦虫を噛み潰したかのような顔をする。


「……だが、今回は大型モウリョウの討伐と九条隊救出の功績を考慮して、命令無視の罰則は相殺することになった。

 だからと言って命令無視は二度とするなよ。次は厳罰じゃ済まないからな」


 さらに苦虫を口に追加し、


「で、お前たちが倒した大型モウリョウだが、上層部で色々と検討した結果、新型で大型というこれまでにないタイプだったことが大きく影響し、討伐ポイントもこれまでにないものになった。


 ……そのため、最低だったお前たちのランクも大幅に変更になり、一気に真ん中辺りまで繰り上がった。つまり、次回の戦闘からは、仮に今回と同じモウリョウが出現したとしても、お前たちは中位ランクなので戦闘から除外されないということになる」


「と、言うことは……」


 顔がにやけていく望夢とは裏腹に、丸山の顔はますます渋くなる。


「今回は条件クリアということにしてやる。ただし、また最低ランクに戻ったら、その時は無条件で全員辞めてもらうからな。今回のがまぐれじゃないということを、証明し続けろ」


「はい」


 決然と返事をする望夢の姿を見て、丸山の表情が少しだけ和らぐ。


「今回のことで、今後も新しいモウリョウが現れる可能性が出てきた。そうしたらお前たちはまた、データの無い状況で戦わなければならなくなるかもしれない」


 ツノゴリラであれだけ苦労したのに、今後はもっと強烈なモウリョウが現れる可能性があるのか。しかも前情報の無い状況で戦うとなると、ツノゴリラよりもさらに苦戦するだろう。先のことを考えると、頭が痛くなってくる。


 望夢が眉をしかめていると、丸山がそっと望夢の肩に手を置いた。


 大きく分厚い、大人の男の手だった。


 丸山はその手にわずかに力を込め、言った。


「その時はまた、お前がチームを守るんだぞ」


 重い言葉であった。その言葉は、手に込められた力以上に望夢の肩にのしかかる。


 しかしそれと同時に、丸山にチームのリーダーとして、そして男として認められたような気がした。


 初めて誰かに認められた喜びに、知らず涙が込み上げてくる。


「……はい」


 望夢は震える声で、それだけ言うのが精一杯だった。

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