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焦燥
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焦っているのは麗奈だけではなかった。
本来なら一撃で地面の染みと化しているはずの獲物が、あろうことか何度叩きのめしても倒れずにいる。ツノゴリラもまた、焦りを感じていた。
何なんだこいつは。
どうして自分の攻撃を喰らっても立っていられる。
疑問は怒りに変わり、やがて焦りとなってツノゴリラの攻撃に変化を与えた。
このまま同じことを続けていては駄目だ。こんなすれ違いざまに撫でるような攻撃ではなく、もっと重く力の乗った一撃を叩きつけなければ。
そう考えたツノゴリラは、それまで速度を重視した一撃離脱の攻撃を捨て、自身の怪力を活かすための攻撃へと切り替える。
力を乗せるには、踏ん張らなければならない。
踏ん張るためには、地面に足を着けなければならない。
そこでようやくツノゴリラは、それまで木から木へ飛び移るのを止め、麗奈の直前で両足を地面に下ろした。
そこから頭上で両手の指を組み、鉄槌の如き一撃を加えようと振りかぶる。
これで終わりだ。




