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ガーディアンズ・オブ・シコク  作者: 五月雨拳人
第二章 モウリョウ
44/55

side:TUNOGORILLA

     *


 ようやく視力が回復し、ツノゴリラは両腕を大きな単眼から離す。距離があったとはいえ、九ミリパラベラムの直撃を受けたにも係わらず、ツノゴリラの単眼には傷一つついていなかった。


 昆虫のような複眼は硬度もさることながら、単眼であろうとかなり広い範囲を視野に入れることができる。


 無数の視界の中で、ツノゴリラは獲物を見つけた。それが自分の目を撃った相手かどうかは定かではないが、兎にも角にも狩るべき対象であるということは本能で知っている。


 その本能が示す獲物を視界に捉え、ツノゴリラの闘争本能に再び火が着いた。


 牽制をかけるように咆哮を一つ。山の木々を震わせる豪快な雄叫びに、遠くの木々にとまっていた鳥たちが一斉に逃げ出す。


 だが視界の先の獲物は微動だにしない。それどころか、こちらが向かってくるのを待っているかのように、悠然と立っている。


 やがて獲物が片手をゆっくりと上げ、手の平をこちらに向けてくいくいと上下に振りながら言った。


「かかってきな」


 その動作と声がどういう意味かは理解できなかったが、挑発されたということだけはわかった。


 すでに獲物を何体も蹴散らしてきた自分よりも遥かに小さい者に煽られ、ツノゴリラはさらに昂奮する。怒りが全身に力をみなぎらせ、獰猛な気性がさらに残虐性を増す。


 こいつだけは必ず叩き潰すという明確な意思を込め、ツノゴリラは地面を蹴った。


 一瞬で獲物との距離を詰める。向こうはこちらの速さに反応できず、逃げるどころかただ身構えただけだった。


 捉えた。確信を持ってツノゴリラは右腕を振りかぶる。そして渾身の力で巨大なこぶしを叩きつけた。


 獲物はそれで動かなくなるはずだった。


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