大型モウリョウ
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地図を見る。大型モウリョウは、現在進行形で他のチームを蹴散らしている。
いま戦っているチームは、自分たちより遥かに上位ランクのチームだろう。それがあっという間に灰色の点滅に変えられ、赤い点の周囲が見る見る灰色の点で埋め尽くされていく。
こんな化け物みたいなモウリョウに、果たして勝てるのだろうか。走りながら、望夢は不安になる。
いや、弱気になるな。戦う前から相手を恐れてどうする。それに現在は最低ランクに甘んじているが、麗奈たちだって元は上位ランカーだったのだ。それが過去の美化された思い出などではないことは、彼女たちの個人情報を見た望夢ならばわかる。彼女たち個人の能力は、ずば抜けているのだ。
かつて望夢は疑問に思った。どうして彼女たちは、今まで最低ランクにいたのだろうか。あれだけ高い能力を持つ人材が集まったチームなら、最低ランクまで落ちるはずがない。以前に丸山が『リーダーが欠けてからというもの、今まで楽に勝てていた戦闘すら落とすようになった』と言っていたが、その時は望夢はにわかに信じられなかった。
だが真実はやはり、丸山の言う通りだった。
それは、麗奈たちの個人情報に載っていた。
麗奈たちのチームがランクを落とし始めたのは、ある隊員が抜けたのがきっかけだった。その人物がチームから抜けて以来、麗奈たちの戦績は急降下している。その人物こそが、麗奈たちの能力を最大限に引き出せる指揮官だったのだ。
どんなに優れた個人が集まってもそれを統率し、適切に運用する指揮官がいなければチームの能力は十全に発揮されない。麗奈たちは、それの典型だった。指揮官を失った彼女たちの転落ぶりは、望夢でも目を覆いたくなるような惨憺たるものだった。
だから自分が呼ばれたのだ。
麗奈たちを指揮するリーダーとなり、再び彼女たちが能力をフル活用できるように。
そして今、自分が彼女たちの能力を十全に発揮させてやれば、
大型モウリョウにだって勝てるかもしれない。
いや、勝てる。勝つんだ。
望夢は根拠のない自信で不安を上書きする。そうしている間に、件の大型モウリョウの近くまでやってきた。合図を出し、全員その場に止まる。
木々が邪魔で大型モウリョウの姿は見えない。それなのに、この向こうに何かとんでもないものがいるという剣呑な気配だけはひしひしと伝わってくる。明らかに、今まで戦ってきた雑魚モウリョウとは格が違う。
「とりあえず、姿が見える所まで慎重に進もう」
望夢の指示に、女子全員が了解を告げる。




