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ガーディアンズ・オブ・シコク  作者: 五月雨拳人
第一章 ガーディアンズ
34/55

いざ戦場へ

     *


 望夢は全速力で階段を駆け下り、予め場所を聞いておいた地下の転送ルームに急ぐ。モウリョウ出現が認められると、各隊は決められた転送ルームから現地へと送られるのだ。


 転送ルームの扉を開けると、すでに麗奈たちがいた。


 二年生も望夢と同様、訓練の途中でサイレンが鳴って駆けつけたはずなのに、彼より早く到着していた。初めての場所に行くので少し不慣れだったとはいえ、望夢もそうとう急いだのに。


「遅いわよ」


「すいません」


 麗奈に謝りながら、望夢はアタッシュケースを開けて拳銃を取り出す。一度マガジンを抜いて弾数を確認した後、腰に巻いたマガジンホルダー付きのホルスターに挿した。


 転送ルームの中は、六畳ほどの広さだった。シミュレーション室のように何もない無機質な壁と天井なのは、転送装置が組み込まれている関係なのだろうか。その辺りは望夢は知る由もない。ただこれから始まる実戦のことだけを考えた。


「モウリョウの出現場所は四国南部、徳島県と高知県の県境。海陽町と室戸の間ぐらいよ」


「前回は祖谷いやだったから、少しずつ県庁に近づいてるッスね」


「そう考えるのは早計だ。思い込みは良くないぞ」


「なんにせよ、あたしたちのやることに変わりはないわ」


 これまでのモウリョウ出現に、パターンのような規則性は認められていない。まったくランダムに四国の中に現れるのか、はたまた人類には思いもよらないような意図が隠されているのか。どちらにせよそれは、麗奈の言うようにいち隊員が考えることではない。ガーディアンズには優秀な研究員がいくらでもいるのだ。頭を使う仕事は彼らに任せておけばいい。自分たちはただモウリョウを倒せばいいのだ。


「そろそろ転送が始まるわよ」


 そう言うと麗奈は望夢に向かって目で合図する。そこでようやく望夢は、自分がリーダーであることを思い出した。咳払いを一つして、言う。


「全員、DSD起動!」


 了解、と女子三人が自分のDSDを起動させる。転送されるのに先立って、彼女たちの肉体が三次元とは別の次元へと引き上げられる。それと同時に無線機や戦闘服に内蔵された全身のモニターがチーム全員とリンクし、位置情報などが共有される。


『転送を開始します。繰り返す。転送を開始します』


 室内に、女性オペレーターの声が響く。いよいよだ、と望夢は口の中が乾くのを感じる。


「さあ、行くわよ」


 珍しく力のこもった声で麗奈が呟く。やる気があるのは良いことだが、独断専行だけは勘弁してほしいと思った。


 次の瞬間、転送ルームから望夢たちの姿が消えていた。

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