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ガーディアンズ・オブ・シコク  作者: 五月雨拳人
第一章 ガーディアンズ
33/55

出撃前

     *


「あら、あなたも出ますの?」


 以前の隊名を改め、新たに不動隊用となった転送ルームのドアの前で、麗奈は声をかけられた。その声と、あざ笑うような声色に、彼女の形のいい眉がしかめられる。


 振り返ると、麗奈の顔はさらに苦々しいものになる。そこには、かつてはランキングを争った級友の姿があった。


九条美奈子くじょうみなこ……」


 睨みつける麗奈の視線を、美奈子はにこやかに受け止める。墨で書いたかのように艶のある長い黒髪が、透き通る白い肌を映えさせる。身長は麗奈よりわずかに低いが、柳のように細くしなやかな体は日本画の婦人像を思わせる。性格、外見ともに麗奈と正反対、まるで碁石の白黒のように対照的なタイプだった。


「出るに決まってるじゃない」


「どうせすぐに全滅なさるんでしょ? だったら最初から出なくていいじゃありませんか。その方が、邪魔にならないのだから」


 邪魔という言葉に、麗奈の目つきが鋭くなる。


「邪魔ってどういう意味よ」


「言葉通りですわよ。モウリョウもろくに倒せず全滅を繰り返すポンコツチームは、さっさとガーディアンズをお辞めになった方が、みんなのためです」


「なんですって……」


「かつてはランク上位だったチームも、今となって落ちぶれたものですわね」


 ホホホ、と片手で口許を隠して上品に笑う九条美奈子。麗奈は「く……」と奥歯を噛み締める。


「そういえば、今回の戦闘で結果が出せなければ、あなたたちクビですってね」


「どうしてそれを――!?」


 一年生の間で望夢が二年生のチームに抜擢されたことが周知の事実であるように、二年生の間では次の戦闘で麗奈たちのチームが結果を残せなければ全員ガーディアンズを辞めさせられることは皆が知っていた。


 当然、丸山を始め麗奈たちは誰一人としてこのことを他言してはいない。しかし、それでも不思議とどこからか洩れるのが秘密というものである。


「これでようやく目障りなチームがいなくなるかと思うと、せいせいしますわ」


「く……」


 何か言い返したい気持ちはあるが、言葉がうまく出てこない。それに、口でいくら言い返しても結果が出せなければ意味がない。今ここで何を言おうが、負け犬の遠吠えなのだ。


「ふん!」


 結局麗奈は何も言わず、転送ルームのドアを開けて中に入った。


 ただ怒りに任せてドアを閉めたせいで、ドアが壊れるかと思うほど大きな音がした。


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