シミュレーター室へ
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巨大モニターの画面が切り替わると、二番目のチームがシミュレーション室に入っていた。
皆さっきの映像を見ていたのだろう。モニター越しでも顔が青ざめているのがよくわかる。ここからでも手足が震えている者がいるのが見えるし、全員動きが硬い。
訓練が開始しても、彼らの動きは改善されなかった。
先刻見た映像に影響され、終始消極的な攻撃と、少しモウリョウに近づかれただけで慌てて距離を取るのを繰り返すだけだった。
やがて持ち時間の五分が過ぎてタイムオーバーとなり、負傷者は出さなかったものの、モウリョウを一体も倒せず何とも中途半端な結果となった。
それからの戦闘はどれも似たり寄ったりで、初めてのシミュレーションだという点を差し引いても、精彩を欠くものばかりだった。望夢は彼らの戦いを、やはり思い思いに戦うのではなく、指揮官が正しい指示を出さないと駄目だな、と思いながら見ていた。
そうして時間が過ぎていき、ようやく望夢たちの順番がやってきた。
「ようやく俺たちの出番か。待ちくたびれたぜ」
手のひらにこぶしを打ちつけて高橋は言うが、威勢がいいわりに口元が引きつっている。
高橋から視線を移し、残りの女子三名を見る。やはり彼女たちも緊張しているようだ。いや、緊張というよりは、恐怖していると言った方がいいだろう。何しろここまでモウリョウを一体でも倒したチームは出ていない。きっと自分たちも彼らと同じようになると思っているのだろう。
だが望夢はそうは思っていなかった。自分たちがこのシミュレーションクリアした最初のチームになってやる、という意志と自信に満ち溢れていた。
「大丈夫。落ち着いてやれば、ぼくらなら勝てるさ」
高橋に向けてそう言うと、彼の不自然だった笑顔が自然な笑みになる。
「足が震えている奴が言っても、説得力がないぜ」
「え?」
言われて初めて、自分の足が震えていることに気づく。女子三人にも笑われ、望夢の顔が見る見る赤くなる。
「ちが――ッ、これは――」
慌てて何か言い返そうとするが、高橋と女子たちの笑顔と、いつの間にか止まっていた自分の足の震えを見て、望夢は小さく息をつくと、にやりと笑って言った。
「これは武者震いだよ」
「ま、そういうことにしておいてやるか」
「本当だよ」
「分かった分かった。いいから行くぞ」
笑いながら高橋が肩に腕を回してくる。身長差と体格差のせいで、肩を組むというよりは負傷して肩を借りているような格好に望夢は不満を感じたが、これはこれで仲間っぽいなと思って引かれるままに歩いた。




